「ア・カペラとは?」
前川 裕

 「無伴奏合唱曲」を意味するア・カペラとはイタリア語で、a capella と綴る。capellaとは英語でいえばチャペル chapel。a は前置詞で「〜のように」(「プリン・ア・ラ・モード」の「ア」と同じこと)。つまり「教会風に」となる。なぜ「教会風」だと無伴奏なのか? 古くから西欧の教会では「人の声」を重視し、楽器を取りいれることをしなかったからである。現在でもギリシア正教会(京都だと二条柳馬場にあります)では楽器を全く用いていない。のちに、「人の声に最も近い」ということでオルガンのみ楽器の使用が認められるようになった。

 なぜ無伴奏が良いのだろうか? 音階には、平均律と純正律がある。ドレミファソラシドの音階のそれぞれの音の間隔は微妙に違う。広いところもあれば狭いところもある。しかしそれでは、ピアノなどの和音をつくる楽器では調性ごとにそれぞれの音階に調整した楽器が必要となる。また、曲の途中での転調も不可能となる。これを解消しようとしたのが平均律であり、各音の間隔は一定に調整されている。これによってピアノ等の楽器は表現の幅を広げたが、その代償として自然な音階がもつ純粋な和声の響きを犠牲にしたのである。(なお、平均律の長所を宣伝するため?に作曲されたのが、バッハの平均律曲集である)

 ただし純正律も完璧ではなく、全音に二種類あること、レ―ラの5度は不協和音程になる(平均律では完全音程)ことなど、問題点があることには違いない。

 普通合唱において問題になるのは、ドミソの和音におけるミの音である。数値としてどうこうというよりも、ピアノで弾くのと歌ってみるのとで、響きの違いを実際に体験してもらいたい。ピアノの音に合わせるのではなく、自分の耳、感覚を大事にしよう。これは合唱において常に必要なことでもある。


メールはこちら:  yutaka70@mbox.kyoto-inet.or.jp

All rights reserved. Copyright by Yutaka Maekawa, 2001.