2/1(月)

 目覚ましよりも少し早く目覚める。昨日は一日どこにもいかなかったせいか、寝付きが悪くて困った。朝の気分はまあまあ。少なくとも風邪の兆候はない。そのうちにヒーパッカも起きだしたようだ。またぶつぶつ言っている。わめきながらうろうろするので、壁を強く2回ほど叩いたら静かになった。こちらもぼちぼち起き出す。今日は雪も降っておらず、明るくなりそうな雰囲気だ。朝食を食べて出かける用意をする。月曜の朝から授業というのはしんどいような、無理にでも起きるということではいいような。ともあれ、駅へ向かう。少し時間があるので、家賃を払おうかと郵便局によるが、やはりたくさんの人待ち。9時過ぎであるから、当然お年寄りが多い。住宅地であることも手伝って、結構人が集まるようだ。お金をおろすためだけに来る人も多いようで、必ずしもカードが普及しているわけではないらしい。ともあれ駅に戻る。まだ時間があるので、丁度来た逆方向の電車に乗り、ひと駅レコラまで行ってから、ヘルシンキ行きに乗る。ここから乗る人は少ない。

 ヘルシンキについてからはまっすぐ大学へ。気温はプラス1度。生暖かい感じ。ファビアニン通り側の入り口は工事のために入れない。どっちにせよウニオニン通り側なのだが。教室まで行くと、「今日は休み」という貼り紙がある。結局これで3回連続休みになってしまった。臨時休講らしい。そのまま歩いて観光案内書に行き、2月のヘルシンキの催物案内をもらう。それから再び神学部へ戻る。今日返す本をもう少し読む。お昼は早めに大学本館へ。今日は豚のステーキにトマトソース。ご飯とともに、珍しくスパゲッティも置いてあった。一通り食べてから、また神学部へ戻る。腹ごなしの散歩も兼ねて、あちこち回ることにする。まず大聖堂横の郵便局へ。この頃にはすっかり快晴になっている。郵便局は混んでいた。20人以上の待ちになっている。順番札だけとってから、フィンランド文学協会へ向かう。本屋で少し眺める。いつのまにかセール品の棚が出来ている。薄いエストニア語の文法書があったので買っておく。他に絵葉書などと、カレワラに関するパンフレット、カンテレの本など。まとめて買っておく。フィンランドの民話という本があってそう高くもなかったが、重い。勉強のためにもいい本だが、大きくて重いのは持って帰るのに大変だ。ちょっと長居しすぎたかな、と思って郵便局に戻ると、丁度二人前だった。家賃を支払う。時計を見ると、約30分の待ち時間だったようだ。歩いてアジア・アフリカ学部へ。先週の試験の掲示は特に何も出ていない。他には日本語の試験の結果なども出ている。「文法」「漢字」の2部に分かれているようだ。それからポルタニアに寄って文具を買い、神学部に戻る。

 今日は2時から神学部と古典学部合同による客員教授のレクチャーがあるようなので、それに出てみようと思う。それまでしばらく本を読む。時間前に教室へ行くと先客が一人。しかし時間になっても誰も来ない。これはおかしいので、事務室に行って聞いてみる。他の人にも確認して分かったことは、教授がロンドンの霧のために飛行機が飛ばず、足留めされているために今日の講義はキャンセルになった、ということ。「今日はヘルシンキの空港もストをしているけど、これはロンドン側の問題のようだ」と力説?していた(笑)。しかしヘルシンキ10時の講義に、その日の朝に出かけるとは、さすがヨーロッパは近い。ともあれ休みでは仕方がないので、明日もある予定の講義に期待。そのまま帰ることにする。

 帰りがけに服屋に2、3立ち寄る。室内着か膝掛けでも欲しいなあ、と思ってみてみるが、もう一つ。ついでにお金をおろしたら、すでに残り8000FIMしかないことを発見。これではいけないので、何も買わずに帰ることにする。電車に乗って、家へ。スーパーに立ち寄ることは忘れない(笑)。いくつか食品を買い込む。今日は随分暖かかったので、道の雪も一気に溶けている。おかげでぐしゃぐしゃだが。4時前に帰ってきた。緑茶のティーバックを入れ、ラテン語を読む。そのうちヒーパッカも帰ってくる。トイレットペーパーも買ってきたようだ。シャワーを浴び、食事。鮭のグラタンのようなものをオーブンで焼いて食べる。食後に日記を書こうか、と思ってファイルを開こうとするが、見つからない、と出る。おかしいな、と思って確認すると、ファイルがカードから読み込めなくなっている。慌ててモバで確認しても、こちらでも読めない。さあ大変である。いろいろ策を講ずるが、効果なし。日記など本体にコピーがあるものもあるが、英文読書ノートの1ヶ月分が消えていることになる。たくさんの量ではないのだが、これは痛い。ただでさえ読んだ内容を忘れてしまっているのに(^^ ;)。ちょっとやる気を喪失する。

2/2(火)

 8時くらいに目覚める。今朝も少し冷えこんで、マイナス10度ほど。もう8時といっても割に明るい。朝食を食べ、出かける準備をする。今日は午前中に特別講義があるので、いつもより早く出かける。9時半過ぎにはもうごく普通の明るさ。天気は薄曇り。しかしずいぶん空気が冷たい。やはり10度を切るとなかなか厳しい。普通に歩いていてもすぐ熱が逃げてしまう。急いで駅まで行く。ヘルシンキもやはり少し冷たい。しかし道の雪はかなり溶けていて、路面が見えてみるところも少なくない。

 神学部にいく。荷物をロッカーに入れて、講義室へ。略号がわからなくて少しあちこちの教室をうろうろするが、無事発見。入ると資料が少し置いてある。席をどこにしようか、と思っていると、先生風の人が挨拶してくる。今日の講師のホースレイ教授だった。ずいぶん気さくなものである。これがオーストラリア流なのかしらん。他の出席者の学生たちとも挨拶している。定刻に始まる。出席者は10名ほど。講義は、現在編纂中の新しい辞書について。1930年代の定番辞書を新しい資料によって書き換えよう、という試み。もっとも担当しているスタッフも少なくて、なかなか進まない、ということだが。辞書の定義の作り方や資料の整理の仕方などを説明する。ギリシア語についてはスペインで新しい辞書の編纂が進んでいるらしい。あちらの方が予算も人員もたくさんついている、とぼやいていた(笑)。司会者が「辞書の編纂をする時にしてはいけないことなどは」と尋ねると、「辞書には携わらないことです(笑)」ということだった。なかなか面白い話だった。こういう話を聞いていると、自分のやる気も出てくる。

 もうお昼だ。混む時間だが、お腹も空いているので早く食べたい。久々に社会科学学部まで歩いていく。こちらならそう混んでもいないはずだ。しかし歩いていく道々は寒い寒い。気温は全く上がっていないよう。冷えきらないうちに、早足で歩いていく。幸い場所は十分あった。今日のメインは、ジャガイモとハムの角切りを炒めたもの。上に目玉焼きが乗っている。目玉焼き、というのも見そうで見ない食べ物。ゆで卵の方がよく見かけるが、これは調理の手間の関係もありそう。味はまあまあだが、ジャガイモが多いから見掛けよりもお腹が膨れる。食後はいったん学部図書館によって、それから神学部に戻る。坂道が少し凍っていたりしてちょっと危ない。ヘルシンキは坂が多いが、凍ると危険である。図書室で少し本を調べる。先日のコピーカードをもらおうとカウンターに尋ねる。探してくれるが、見つからないようだ。そのうちに無名のカードについて、これをさし上げますよ、という。しかし度数が多すぎるし、だいたい自分のカードが行方不明というのは納得いかない。その旨主張すると困ったな、という感じだったが、もう一度探すと見つかった。無事回収。といっている間にスウェ語の時間になる。今日は荷物が大きいので、必要なテキスト類だけを持って別の建物まで歩いていく。

 スウェ語の授業はいつも通り。今日は時間の言い方。テキストによれば、スウェーデン本土の時間の言い方はやや複雑なようだ。1時間は20分ずつに区切られ、0分を中心に「20分前」「20分後」まで。それから30分を中心に「10分前」「10分後」となる。理屈では別にややこしくもないが、耳で聞いて理解するのは大変だろう。ただ、フィンランドではこの言い方は使わないとのこと。授業のあとで、コピー代を支払うのに使うという振り込み用紙をもらう。休んでいる間に配られたようだ。教材としてのコピーなので、テキスト代と同じ扱いになるらしい。授業のあとはまた神学部に戻って、本を見る。そろそろここで読むべき本とここでなくてもいい本とを区別して整理していかねばならない。しばらく棚を眺めていてから、5時過ぎにでる。

 今日はYLの新人練習に参加する。演奏旅行でのパーティー時用に、酒飲み歌を練習していた。楽譜が少ないらしく、何人もで一つの楽譜を見ている。幸い自分の楽譜があるので、それをもって加わる。さすがに何度か歌ったことがあるものが多いが、あいかわらず言葉は付いてこないし、音を間違っているところもいくつも発見する。酒飲み歌にはありがちであるが(^^ ;)。ほかにセレナーデもいくつか歌う。見かけない顔も居るが、先週から加わったメンバーのようだ。9日まで入団テストがあるので、まだ少し増えるだろう。6時過ぎから本練習。今日は演奏旅行前の最終練習なので、すべての曲を繰り返す。暗譜で歌う曲も幾つか指定される。全然覚えられていないことはないが、正確には程遠い。復習をしなくては。休憩時間では特にお腹も空いていなかったので、お菓子屋に行ってナッツを買ってきて齧る。今日は9時半に終わった。早めの電車に間に合う。寒いので駆け足で駅へ向かう。

 家に帰ると10時半。あきちゃんからの葉書、友人からの手紙などが来ていた。今日は早々と寝る。

2/3(水)

 7時頃に目覚める。またヒーパッカがうるさいので、壁を叩いて静かにさせる。そのうちに出かけていった。こちらもぼちぼちと起き出す。今日は朝食にハンバーガーを食べる。パンに、買っておいたハンバーグを焼いてチーズと共に挟む。焼き立てなのでおいしい。しかし買ったのはカツだとばっかり思っていたのだが…。通りで安かったはずだ。それから昨日の日記を書き、ラテン語の訳の続きを完成させて送る。幸い手早く終えられた。9時半に出かける。今日は小雪模様。コイブキュレはちらちら程度だったが、ヘルシンキはわりと降っている。時間ぴったりの電車なので、そのまま大学に向かう。もうファビアニン通り側からも入れるようになっていた。こちらから入って、中を抜けて教室へ行く。

 2回分抜けた間に、ちょっと進んだようだ。プリントが配られて、現在分詞の復習。去年のテスト前にやったところだし、大分忘れている。がさすがに説明を聞けば思い出す。テキストに沿ってやっているのだが、本文は家で読んできて、特に質問がなければ飛ばす、という形。えらくおおざっぱな気がしないでもない。問題集については、こことここをやっておいてください、というのが指定される。授業では質問がない限り取り扱わないようだ。先生の声はあまり通りがよくなく、後ろの列に座っているので聞きにくい時がある。前列に座っている女子学生たちはずいぶん熱心だ。しかし語彙を別にすれば、全体的なレベルは自分に丁度いいくらいだと思う。5分ほど早く終わった。

 早々と食堂に向かう。まだ空いているので、食べることにする。今日は鳥のカレー風パタ。コーンの甘みがある。たまたま相席になった男が、「日本人ですか」と聞いてくる。そうだ、というと、「僕は8年ほど日本にいました」という。父親が宣教師で、大津にいたそうだ。上手に喋る。今は神学部にいるとか。意外なところで意外な人に出会うものである。先に「失礼します」と去っていった。こちらはゆっくり食事をしていく。食後は神学部へ行って勉強する。研究書と、ギリシア語。ぼちぼちと読んでいく。3時半過ぎに、郵便局へ出かける。多分混んでいるだろうと思って、待ち時間に読むつもりで本をもって出かけたら、がらがらだった。しかも窓口は全部開いている。ちょっと無駄。ともあれ、スウェ語の授業の費用を払い込み、ついでに「友人の日」用切手を買う。2/14はフィンランドでは一般的に友達を思う日で、カードを送る習慣らしい。クリスマスカードと同じくらいのカードがこの時期に送られるそう。そのための切手も毎年出るようだ。これは6枚で1シートになっているシール切手だった。また神学部に戻って、続きを読む。5時過ぎに出かける。早めの夕食をどこにしようかと思うが、いつもハンバーガーというのもなんなので、フォーラムまで歩いていく。結局ピタのケバブを食べてみる。紙包みにはなっているが、とてももっては食べられない。フォークとナイフで切って食べる。まあまあ。ケバブはいつもご飯で食べているので、ピタは初めて。20FIMと安かった。それからフォーラムの裏から出て、EOLの練習場へ向かう。

 裏から入って行こうとしたら、二階のドアが締まっている。そういえば電気もついていなかったし、場所が変わったのかしらん、そういう連絡もなかったが、と思う。帰ろうかな、と思っていたら他のメンバーも来た。1階だという。しばらく待って、中から開けてもらう。表の玄関の方から入れたようだ。改装した部屋のようで、ずいぶん奇麗。ちょっと狭いが。ここで練習する。いつものように発声・練習。シャンティクリアのレパートリー集からのルネサンスもの。それからシュッツのマタイ。後半にはデズュールの2番をする。これがなかなか難物で、12声もあるし、音も難しい。バスは歌うところが少ないので暇が長かった。9時を少し回ったところで終わる。駅まで歩く。まだ雪はちらついている。気温はマイナス2度だから、大したことはない。電車に乗って帰ると、10時。メールを読もうとするが、繋がらない。どうも大学のサーバーが止まっているようだ。

2/4(木)

 目覚ましと共に起きる。今日はマイナス3度ほど。あいかわらずメールは読み出せない。出かける直前まで試みるが、結局つながらず。9時半の電車で出かける。出がけに空き瓶をスーパーに持っていく。駅で新しい定期を買おうとしたら、丁度朝のお休み時間だった。駅から大学へ歩いていると、ユハが声を掛ける。先日のギリシア語のテストは上々だったとか。テキストを読んでいない方の問題も、だいたい意味が分かったのでそちらも解答した、とのこと。ふと思うと、彼はまだ1年目だから、彼とは10歳近くも違うということになる。ううむ。朝はフィン語の授業。過去分詞の説明。あいかわらず説明は速い。補足のプリントを配っても、まだ全部目を通していないのに「はい、なにか質問は…特になければ…」という感じ。週末向けに作文の宿題が出る。いくつかテーマが提供される。「冬のフィンランドへの旅行者が受けるカルチャーショックについて」というのもある。以前に新聞で見たことがあるような話だ。まだ始めのためか、わりと時間が経つのが早く感じる。授業のあとは食事に行く。大学本館の食堂に近いのと、最近は早めに終わるのが幸いしている。今日は赤い色のハンバーグに、野菜のクリームソース掛け。赤いのは、そういう色素のようなものが入っているのか。味は普通のハンバーグであるが。ここのところはいつも「自家製ビール」を飲んでいる。といっても酔うようなことは全くない。

 食後に神学部に行き、研究書を少し読む。それから散歩がてらに本屋へ行く。外に出ると、雪が降っている。しかも結構な量。歩いてスオマライネンへ。今日からセールが始まっている。店内はたくさんの人。レジには長い列が出来ている。セール本は事前に宣伝されているわけだし特に目新しい物があるわけではない。「北欧の植物」という事典は面白そうだが、写真入りなので小さくても重い。特に何も買わない。外に出ると丁度2番のトラムが来たのでそれに飛び乗る。カイサニエミまで。いったん学部図書館を覗いてから、地下を抜けてヴオリ通りへ。ここにある学食でコーヒーを飲む。ここはあまり広くない。しばらく本を読んでから、教室へ行く。スウェ語の授業は時間の言い方の続き。とにかく数字に慣れておかないとうまく言えないし聞き取れない。先生の発音とテープの発音も大分違うし、なかなか大変。新しい課のテキストを読み、内容をとったところで終り。そういえば、フィン語で冠詞の苦労がなかった、と思ったらスウェ語ではまた憶えなくてはならない。なかなか面倒な物だ。

 相変わらず雪は強く降っている。駅へ向かう。近郊電車のホームは、突端の部分を拡大する工事をしているようだ。時間があるのでいったん駅舎まで行き、しばらく待ってからまたホームへ。ちょっと歩いても体に雪が積もる。電車に乗る。気温はマイナス1度程度なので寒くはない。コイブキュレで定期を買う。「1ヶ月」でなく「30日」なので、ここ2ヶ月ほどしばらく日が前に進んでいたが、2月は短いのでまた戻った(笑)。スーパーで買い物をしてから帰る。4時。そのうちヒーパッカも帰ってくる。しばらくしてノックをするのでなにかと思うと、「セロテープはないか」という。なにか貼り紙をするようだ。広告お断り、をドアに張るのだ、という。なるほど。彼にしてはまともな知恵である。ついでに自分の名前もドアに張り出していた。しかし1年半住んでいて今始めて名前を張り出す気になったのかしらん。まあ郵便などは住所で来るからそう問題はないのだろうが。インターネットで日本の大学図書館の蔵書を調べる。結構な部分は日本にある。日本にない物はこちらにもない(^^ ;)。なんのこっちゃ、という感じもする。まあいくつかこちらにあるものはコピーするか読んでいくことにする。シャワーを浴びて食事する。ギリシア語も少し読む。フィンエアーのマイレージでは、往復の切符がもらえるようだ。1回分の国内旅行ができるので、帰るまでにどこかに行ってみたい。1ヶ所、というとなかなか悩みどころ。やはり一番北まで行くのがいいか。

2/5(金)

 目覚ましの少し前に起きる。朝から洗濯。今日はいい天気だ。気温も0度くらい。これが続けば、絶好の旅行日和。午前中は家にいて洗濯もし、旅行の準備をする。なるべく荷物を軽く、と考えるが、燕尾服がいちばん重い。まあ泊まるのはホテルだし、あまり細かい物はいらないか、と思う。暇潰しになるかと本を少し、それからラジオも持っていくことにする。まだ時間があるので、少しギリシア語を勉強をする。出かけたのは1時過ぎ。電車でヘルシンキへ向かう。まずは大学本館に行って食事をする。夕食は8時過ぎだし、しっかり食べておく。豚のカツにキノコのホワイトソース。たまたま親子連れが向かいに座る。わりと小さな子供だったが、食べた量はかなりあったと思う。このくらいからすでに大食漢が養成されているのだろうか(笑)。食後は駅地下のスーパーでペットボトルの水を買っておく。新しい小品か、フィンランド製のミネラルウォーターがあった。当然、エビアンなどよりも随分安い。半額くらいである。まだ集合時間まで少しある。天気は悪くはないが、雪がちらついている。時間潰しに郵便博物館に立ち寄る。特別展示でいろいろな個人の収集品を展示しているらしい。実際に行ってみると、普通の館内のあちこちにショーケースが置いてあって、その中に品物が並んでいる。持ち主の写真もついている。まさにいろいろあって、人形やカードなどはもちろん、マッチ箱・コーヒーのパッケージ・バナナに貼ってあるシール・ホテルなどでもらえるボールペン・ミカハッキネンの有名になる前のいろんなテレホンカード(これは日本企業の名前入り)などなど。まあ何でも極めるというのは偉い物である。そのうちに集合時間になるので駅に行く。

 集合は駅の西側、コインロッカーのある広間。どんどんと集まってくる。切符も各個人に渡される。ちゃんとYLの名前が入っている。だいたい集まってから、ここで2曲ほど歌う。特に宣伝しているわけでもないので聞いている人も多くはないが、一種のセレモニーといったところか。それからホームに向かうが、まだ乗るべき列車は来ていない。長距離列車がたくさん出る時間のようで、いろんな方向への列車がどんどん入ってきては出て行く。見かけない列車があると思ったら、たしか新聞で見た、今度新しく近郊電車に導入される電車だった。ライノが眺めている。彼の父親はドイツの鉄道会社で働いているとかで、興味があるそうだ。少し来るのが遅れているらしい。あとから出発する列車の方が先に入線している。そのうちにやっと到着。インターシティーで、YLには2階建の車両の部分が割り当てられている。めいめい自分の席を確保する。が、2階の一部に指定された切符を持っている人達がいて、一部のメンバーは移動を余儀なくさせられた。ちょうどそこには子供向けに小さな遊具や滑り台などが設置されている。親子連れであったので、おそらくこれに近いところを指定していたのだろう。YLのほうは具体的に席番号で指定されているわけではないので、あちらに分がある。ほぼ定時に出発。最初はラジオも聞いていたが、そのうちに使えなくなるので聞くのをやめる。適当に車窓を見ながら過ごす。みんなはすでにビールを飲んだり話をしたりとそれぞれ。客の子供は飽きずに遊んでいる。こういうところへの配慮はさすが、という感じ。2時間でタンペレ。もうすでに真っ暗。ここからは逆方向に列車が進むのには驚いた。さらに2時間でユヴェスキュレ。途中は真っ暗なので面白くもないが、時々トンネルがあるのに驚く。フィンランドにトンネルがあるとは思ってもみなかった。しかし山間部のトンネルなのか、中に電灯などはない。トンネルに入るとなかの気温は少し高いようで、トンネルを出た途端に窓が曇る。トイレに入ると、これは飛行機と同じ真空式だった。

 到着は7時過ぎ。真っ暗で寒い。が、ホームにはかがり火ならぬ、大きな松明が置かれている。ここで現地の合唱団シルッカとYLとの顔合わせ。1曲共に歌う。それから赤じゅうたんがひかれて(笑)、その上を歩いてホームに隣接するバーへ。ここで歓迎会があるらしい。ここはカラオケバーのようだ。荷物を適当において、カウンターからビールを受け取る。皆が入ったところで、進行役が前に出る。歓迎会は、「カラオケコンクール」ということのようだ(笑)。それぞれの合唱団から3人ずつと、指揮者が出る。審査員は両団の幹事長。YLからはカレ・ラウリ・ミッコの長髪三人組(笑)。カラオケは日本と同じで、内容に合った?背景に字幕が出る。これをみるに、こちらでもなかなか人気があるようだ。もちろんみんなフィン語の歌であるので、いまいちよく分からないが。それぞれ順に歌って、最後は指揮者。マッティのカラオケというのも滅多に見られない(笑)。曲は幾つか指定された中から選ぶようで、さすがにマッティもよく知らないらしく、助け船が何度も入る。審査の結果はYLの勝ちとなる(笑)。勝利記念でカレとラウリがもう一曲歌う。といったところでこの場は終わる。最後になぜか?ミッコ・ケットゥネンが一曲歌う。彼はこういうのは大好きなようだ(笑)。

 入ったところとは逆の、駅前への出口から出て行く。ホームとの間に改札などがないからできることである。歩いてホテルへ向かう。ゆきはそう多くはないが、随分寒い。メインストリートらしきところを歩いていく。温度計が街角にあって、マイナス18度になっていた。寒いはずだ。ホテルはソコス系列のユヴェスホビ。町のど真ん中にある。ガイドによるとユヴェスキュレでもかなり古い方のホテルらしい。鍵などをもらって部屋へ行く。4階。さすがにいいところ。二人部屋で普通の部屋のようだが、随分広い。洗面所には石鹸が備え付けになっていた。鍵がないのか、と思ったが、ハンドルを回すと鍵がかかるタイプだった。ドライヤーももちろんある。相室になるのはマルクで、彼はドイツ人だが日本語を随分上手に話す。仕事でしばらく日本にいたらしい。出身はケルンの近くだという。もちろんフィン語は普通に話す。9時過ぎに夜食がある。これがお昼以来の食事になるので、ずいぶんお腹が空いた。適宜集まったところで簡単な挨拶があり、食事。といっても簡単な物で、パンとピクルス、ポテトのクリーム煮など。しかし暖かい物があるのは嬉しい。食べて飲んで、適宜歌が入る。11時前くらいに一応お開き。といっても、これからまたあちこちに出かける人が多い。バーや映画館など、みんな元気だなあ、と思う。こちらは葉書でも書こうと思ってフロントに聞いたら、売ってないとのこと。向かいのソコスにある、という。それではしかたがない。少し外を歩いてみるが、とくに何かがあるわけでもない。温度計にもなっている電光掲示板には、明日のコンサートの案内も出ていた。部屋に戻って、部屋に備え付けの便箋で手紙を書く。フロントにおいてあった、簡単な地図なども入れておく。明日の朝にはサウナもあるし、今日はそのまま寝ることにする。

2/6(土)

 目が覚めると7時前。朝のサウナは6時半から入れるはずなので、まずはサウナに行くことにする。3階のサウナに行ってみると、まだ誰も来ていないようだ。一番乗りはまだサウナが暖まっていないのであまりよろしくない(^^ ;)。どんどん水をかけて蒸気を出す。やっと暖まった頃に、ぼつぼつと人が来はじめる。30分ほどで出る。朝食は7時半から。2階になる。やはりバイキング形式。一通りの物は揃っているが、魚が2、3種類あるのが珍しい。少し塩がきついが。ゆで卵には6分ものと3分ものの2種類がある。パンも6、7種類は置いてある。デザートに野イチゴやベリーもある。カレリアパンに、ハムやチーズ、ゆで卵を乗せて食べる。慣れるとこの食べ方がなかなかいい。ちょっと食べ過ぎかな、という感じになってしまった。食べながら、ここのオーケストラの演奏会案内を見ていたら、シルッカの演奏会の広告も出ている。今日の演奏会の切符はなんと80FIM。地方の合唱団にしては随分高いようだ。

 8時半にホテルを出発。出かける前にフロントで昨晩書いた手紙を出してもらおうとしたら、「切手はおいてない」とのこと。やはりソコスで売っているという。あとで買いに行こう。歩いて会場へ向かう。気温はやはりマイナス18度。歩いて10分強といったところだが、さすがに寒い。会場になるのは、中学校の体育館。日本でもよくあるような、舞台つきのものである。すでに雛壇も椅子も並べられ、録音用のマイクも立っている。最初は客席の方に座って体操と発声。さすがに朝の9時過ぎではなかなか声が出ない。練習に入っても、なかなか皆の調子が出てこない。1回休憩があって、そのあとは雛壇に上がって歌う。体育館であるから、わりと響きはいい。最初もたもたしていたので、11時の予定が15分ほど延長して終わる。続いてシルッカの練習があるようだ。また歩いてホテルに戻る。学校のあるところは少し高台になっている。眼下には凍っている湖が見える。ホテルに入る前にソコスに寄って、絵葉書と切手を買う。ここにはユヴェスキュレの絵葉書も売っている。土曜の午後ということで人も結構出ているようだ。ホテルに戻って2階で昼食。パンと、肉のスープ。これは自由に取れるのではなく給仕してくれるので、たくさんは取れない(^^ ;)。みんなには足らないんではないかしらん。食事のためには、ちゃんとシルッカによって専用のチケットが用意されているので、これを渡す。ここではコーヒーはついていないようなので、1階に降りてカフェでコーヒーを飲む。テラスに出る。ここは屋根がついていて、冬でもテラスが使えるようになっている。いちおう通りにもなっているので、買物客などが通っていく。ここで絵葉書を書く。ショッピングセンターの方にも歩いていってみるが、コートを着ずに行くとホテルの客というのが丸わかりだし、あまりよろしくない。適当に引き返す。部屋に戻って、燕尾服に着替える。12時半にまた会場へ出発。その前にソコスにまた入って、中にあるポストに葉書を放り込む。

 今度はバスに乗っていく。ホテルのまん前は歩行者道路になっているので少し離れたところにバスは止まっていた。礼服用の靴はそこが平らなので歩きにくい。バスで行けば5分ほどで着く。YLの楽屋になるのは、被服用の教室らしい。アイロンやミシン、織機などが置いてある。しばらくシルッカの練習が終わるのを待ってから、合同曲の練習をする。楽譜を見てもいいのだが、前列との間が狭くてちゃんと見られない(^^ ;)。シルッカの指揮者のユハ・ホルマは作曲もしているようだが、指揮はいまいち上手とはいえない(^^ ;)。ユハの担当の曲、マッティの担当の曲をしてから、アンコールの曲の練習もする。ラップランドの曲(クルンペンフラウ作曲)でのヨークのそろは、いつものカレとともに指揮者のユハも一緒に入るようだ。掛け合いがなかなか面白い。歌の練習が終わってから、記念写真を撮る。10枚くらいか、随分たくさん撮っていた。それから楽屋に戻って待機。

 第1回目の演奏会は3時から。途中までは楽屋で待っている。適当なところで入り口付近に並ぶ。一部のメンバーは後ろの方で聞いていたようだ。シルッカの分が終わったところで、YLが入場する。お客さんは結構多くて、500人くらいはいそうだ。2曲合同で演奏した後、休憩。といってもカフェなどもなく、お客さんの方も何をする、ということもないようで、わりと早めに後半が始まる。今度はYLの番。事前に最初の音を取っておき、客席の後ろから入場。マッティが入ってきて、こちらを向いたところですぐに演奏をはじめる。シベリウス、パルムグレン、タンゴ。演奏はまあまあか。それからシルッカが入ってきて、合同でやはり2曲。盛んな拍手を受ける。アンコールにはユハが2曲、マッティが2曲。しかしアンコールの3曲目のクルンペンフラウはソロがずいぶん受けて、再び演奏した(^^ ;)。これは予定外。最後にフィンランディアで締め。お客さんの反応、ノリも随分いい。こちらも楽しんで歌える。

 演奏会のあとは、まずは軽食。学校の食堂に集まる。カルヤラパンとハムキッチュなど。最初は1個ずつだったが、余った分は自由に取れた。雑談をしたりしている。次の演奏会までは2時間ほどある。楽屋でテレビを見たり、寝ていたり、中にはタクシーを呼んで町に戻る連中もいるようだ。そこまでするのもなんなので、自分は楽譜をぱらぱらと眺め、また長椅子にしばらく横になる。この2時間は随分長かった。

 7時から2回目の演奏会。今度はYLの出番まで一番後ろで聞いていることにする。体育館なので、積んであるマットの上に座る。やはりお客さんは500人くらいか。なかなかの動員力である。プログラムの中には、フィンランドではポピュラーな曲のほか、指揮者自身の作曲になるテナーサックスつきのグロリア、マリー=シェ―ファーなども含まれている。なかなか上手だが、基本的にはYLと同じようなロマンチック・コーラスで、あまり現代過ぎる曲は似合わないように思う。全体的な年齢もわりと高いようだ。まあYLのメンバーの大半は若いということもあるが、いわゆる「おじさん」といった感じの人が多い。YL との合同演奏のあとで、休憩。今度は食堂でカフェが開かれているようだ。たくさんの人が移動していく。シルッカのCDや記念誌なども売られている。100年記念のピンバッジは5FIMと安いこともあって好評のようだ。何人かのYLのメンバーも買って、燕尾服につけている。ホールと違って、休憩終了の合図がないために随分長い休憩だったような気がする。30分近くはあったのではなかろうか。お客さんが戻ったところで、後半が始まる。YLの演奏のあと、シルッカとの合同。それからアンコール。クルンペンフラウでは今度はスタンディング・オベーションを受ける(^^ ;)。「また、2回目をするのか?!」という声も上がるが、結局最後のフィンランディアへ。終わったのは9時過ぎだった。随分好評な演奏会だったようだ。

 演奏会のあとは再びバスに乗って、ホテルに戻る。楽譜などの荷物を部屋に置き、燕尾服のままで1階へ。昼にコーヒーを飲んでいたテラスが打ち上げの会場になっている。すでにシルッカのメンバーは座っている。ウェルカムドリンクのカクテルをもらい、招かれた席に着く。やはりおじさんが中心である。若いメンバーも何人かいるが、中心とは言い難い。YLのメンバーの方が遅れて入ってきている。ほぼ揃ったところで、1曲歌ってパーティーが始まる。食事のテーブルには、またもや長い列(^^ ;)。適当に待ってから、列につく。野菜や魚などのほかに、肉やポテトの温かい料理もある。お酒のテーブルは別につくってあって、カクテルなどもつくってくれるようだ。明日の帰りの電車の長旅のこともあるし、今日はお酒を控え目にしておく。食事と一緒にワインを取る。やはり時々歌が入る。さびの部分以外は正確に覚えていないのが残念(^^ ;)。シルッカの幹事長からYLの幹事長への記念品贈呈、また逆にも同じく贈呈がある。YLからはドイツ製の指揮者用譜面台が贈られた。またシルッカの幹事長からは、他に関係者にも記念誌が贈られる。中には作曲家のコスティアイネンも含まれていた。今回シルッカが演奏した中にもコスティアイネンが含まれていたが、いろいろシルッカのためにも作曲しているようだ。ごく普通のおじさん、という感じだったが(笑)。あとは自由な雰囲気でパーティーが進む。時折、両団からカルテットや小コーラスが出て歌い、喝采を受ける。YLの一部のメンバーによる「組み体操」のような余興もあって受けまくっていた(笑)。そういえば、YL115年の歴史を展示したパネルに、その一部の写真が載っていたのを思い出す。時々やっているようだ。この辺はいかにも学生合唱団の名残がある。といっても、やっているのは立派な社会人だが(笑)。そうこうしている間に時間は随分たつ。適当に雑談をしていく。話の中で、「君がYLにいるのは我々にとっても名誉なことだが、フィンランド人はシャイなのでなかなか話をしたがらない、ぜひ君の方からも積極的に話しかけてきてくれ」ということも言われる。YLの面々はわりとよく話し掛けてくれるが、それでもそういう感じはもっているのだなあ、と思う。しかし、こちらから話し掛けるのならともかく、会話の輪に入ってついていくのはなかなか大変である。相の手を入れるというのは難しいものだなあ、と改めて思う。2時前になって、さすがに疲れてきたので部屋に戻る。玄関で普通の服に着替えたメンバーがいて、これから外に出てバーに行くという(^^ ;)。なんとも元気なことである。誘われるが、もうビールも飲みたくないし、疲れたので寝ることにする。なかなか長い一日だった。

2/7(日)

 目が覚めるともう8時半過ぎ。今日のサウナは7時から。またブランチが11時からなので、ずいぶんと時間がある。まずはともあれサウナに行く。すでに先客も何人かいる。サウナのあとは部屋で寝る、という人も。2回ほど入ってから、籐椅子に座って会話に加わる。今の横綱は誰かという話しにもなるが(^^ ;)、さすがに覚えていない。適当に体を冷ましたところで部屋に戻る。

 これから食事までの間、少し町を歩こうと思う。まずはホテルから外に出る。9時半くらいだが、メインストリートにはほとんど人がいない。やはり日曜日の朝である。ホテルからは裏手になる丘、ハルユを昇っていく。雪が積もっているので階段は危なっかしい。幸い手摺があるのでそれに頼っていく。一番上には展望塔がある。もしや開いているかも、という期待を持っていったが、やはり冬は休業であった。残念。普通に立っているだけでは林が邪魔をしてよく見えない。ここから尾根に沿って西に歩いていく。先人の歩いた跡があるので、特に困難ではない。ずっと歩いていくと、昨日演奏会をした学校の裏手に出てくる。ここから下に降りる。犬を散歩させている人も多い。犬も元気な事である。学校の隣に、ユヴェスキュレ大学がある。ここのキャンパスに入ってみる。ここまでで30分くらい経っているので、大分寒くなってきた。大学を入ったところにある図書館には電気がついている。もしや開いているかも、と思って掲示を見ると、日曜日も開いていた。これ幸いと中に入って暖まる事にする。ごく普通の大学図書館という感じだが、入ったところにカフェが作られているのがこちらの大学らしい。さすがに日曜日は休みのようだ。図書館そのものは一般の人でも自由に入れる。カウンターなどは開いていないようだ。見ているとパソコンが並んでいるコーナーがある。試してみると、やはりインターネットに繋がっている。ここから、日本の掲示板に書き込みをする。展示スペースには「スポーツの本」というテーマで古めの本が並んでいる。見ると「柔術」と書かれた本もある。サイン帳があるので「日本から」と書いておく。さすがにこの展示を見る日本人は自分だけかもしれない(笑)。ここで絵葉書も書く。

 大分暖まったので再び出かける事にする。ちょうど図書館の入り口にポストがあったので、ここに投函。キャンパスの中の道を歩いていく。途中から折れて、湖の方に向かう。たまたま途中に時計と温度計の電光掲示板があったが、マイナス23度だった(^^ ;)。前にこのくらいの気温で散歩?して風邪を引いたのは記憶に新しい。注意しなくては。雪はヘルシンキ近郊と同じく、たくさんは積もっていない。もともとこういう気候のようだ。取り付け道路で、丁度湖がよく見えるところに出る。やはりすっかり凍っている。記念にセルフタイマーで写真を撮っておく。しかしこのデジカメ、マイナス20度でもちゃんと動作しているのが偉い。大分寒くなってきた。いそいでホテルに戻る事にする。寒いな、と感じはじめると一気に冷たくなってくる。小走りに中心街へ戻る。と、途中で市立図書館にぶつかった。人が入っていくところを見ると開いているようだ。ここで暖まれるはず。急いで中に入る。図書館そのものは閉まっているが、ロビーやオープンスペースに本が並んでいる。古本市をやっているようだ。見ると、それぞれの店の名前も出ている。ヘルシンキから来ている業者も多いが、その外の町から来ている店もある。暖まるのを兼ねてぐるぐる歩いて見てみる。一つの店で、楽譜がいくつか積まれているのを発見。少し漁ってみると、歌の楽譜もあるようだ。一通り全部見てみる。バラの楽譜のほか、曲集もある。値段を考えて、フィンランドの歌曲などが入った曲集を4冊買う。随分古いFazerの版だが、十分使えそう。思わぬ掘り出し物をした(^^ )。

 もう11時を回ってしまった。あとは特に変わった物もなさそうなので、図書館をあとにする。教会ではまだミサをやっているだろうし、中には入れないだろう。博物館などは11時から。店を見ても、日曜はほとんど休み。まだヘルシンキのように世俗化?はされていないようだ。未だにホテル前のメインストリートを歩く人はまばら。ホテルの2階でブランチになる。もうみんな食べている。基本的に朝食と同じ内容であった。ゆっくり食べる。それから部屋に戻る。少し時間があるのでテレビを見てみる。フランスのテレビではたまたま水俣病のドキュメンタリーを放送していた。そのうちにヨルダンの国王逝去の臨時ニュースが流れた。BBCで詳細を見る。そのうちに出発の時間になる。駅までまた歩いていく。駅は近くに見えている。列車が着くまではしかしまだ30分以上ある。ぼけっと待っているのもなんなので、少しうろついてみる事にする。駅の構内には、昔のSLが置いてあった。説明版がないので分からないが、案外最近まで使われていたのかもしれない。それから駅前の観光案内所へ。今日はお休みだが、建物自体がちょっと古い建築のようだ。そこから思い立って、中心部にある教会まで行ってみる。レンガ積みの教会。時計が塔についているのはわりと珍しい。中に入ってみると、天井も随分高い。シャンデリアが豪華な感じである。祭壇の上の天井にも絵が描かれている。オルガンは随分新しいもののようだ。わりとこじんまりした感じだが、なかなかいい雰囲気。再び歩いて市立劇場の横を抜けて駅に戻る。ぼちぼちホームへ移動しはじめる。そのうちに列車が入ってくる。普通の青い車両。今度はYLのために1両分確保されているようだ。シルッカのメンバーも見送りに来ている。席を確保して、そのうちに発車。

 団からいつものようにビールが支給される。今回は3本ずつ。しかしちょっと疲れているので、飲まずに鞄に入れておく。今度はいい天気でもあり、車窓がよく見える。といっても一面の雪であるが。わりと丘が多い地形である。途中で列車が止まり、バックしはじめた。しばらく走って止まる。放送が入って、反対列車との交換をするとのこと。テープの放送になっているところを見ると、ちゃんとダイヤに組み込まれているようだ。ユヴェスキュレ行きの列車が行った後に再び走り出す。マルクと話をする。フィン語の聞き取りの練習のためにも映画を観るといい、と勧められる。そのうちエスコが加わって、日本語で何と言うか教えて欲しいのだが、という。その文というのは「私は二人のダイバーと一緒に来ました」(笑)。何の意味があるのかよく分からないが、ともかく学んだ言語でこれを言えるようにしているという。案の定、イタリア語を学んでいる時に同じことを聞いて、「なぜだ?」と言われたらしい。ともあれ、日本語のできるマルクとともにエスコに教える。耳で聞いているだけでは難しいので、マルクがポケットからシャープの「パワーザウルス」を出して日本語でメモを書く。最初は漢字混じりだったが、それだと難しいのでひらがなだけの文に直す。それを見てエスコは覚えていた。マルクはこれを日本で買ったそうだ。あれこれとマルクと会話していたら、エスコが「ドイツ人と日本人がフィン語で会話しているというのは愉快なものだ」という(笑)。

 そうこうしているうちに列車はタンペレへ着く。この列車はトゥルク行きなので、ここで乗り換えなくてはならない。ヘルシンキ行きの列車を待つ人は随分たくさんいるが、やはり1両確保されているので安心。しかしこの車両に乗ってきた人こそ災難である(^^ ;)。どこかに表示しておいた方が親切なのに。列車はヘルシンキへ。相変わらずいい天気。ハメリンナのお城もよく見えた。その代わり気温は低く、マイナス20度あたり。ヘルシンキも同じ調子のようだ。薄暗くなりはじめたところでヘルシンキ到着。さらにバーに行くメンバーもいるようだが、自分はそのまま近郊電車のホームに行き、家に帰る。さすがに疲れた。家に帰ってメールを読み、あとはビールを飲んで寝る。まだ8時前だが、疲れを残さないようにしたい。

2/8(月)

 起きたのは8時前。途中でも目が覚めたが、結局12時間くらい寝ていた(^^ ;)。おかげでずいぶん元気になった。気温はマイナス26度(^^ ;)。ますます冷えこんでいる。朝食を食べてから、フィン語の作文の宿題をする。分詞を使って書くとのことだが、なかなか大変。出かけるまでになんとか仕上げる。9時半の電車でヘルシンキへ。こちらも薄曇り。やはりマイナス19度ほど。駅前広場の雪はすっかりどこかに運び去られていた。こうなると寒いだけ、という感じになってしまう(^^ ;)。大学本館の教室へ。午前中はフィン語の授業。未だに頭が授業に着いていききれない。というより、フィン語2、3でやっているはずの内容がいまいち身に付いていないようだ。もちろん語彙の不足も大きい。しかし授業の進度がかなり速いのも事実。どんどん先へ行ってしまう、という感じがある。最近フィン語はサボりぎみなのも影響しているか。ともあれ、もう少し熱心にやらないとまずいな、という気がする。

   食事には社会科学学部まで歩いていく。ユヴェスキュレと同じくらいの気温のはずなのに、こちらの方が寒いような気がするのは不思議。思わず足も早くなる。さいわい食堂は空いていた。大きな講義がないのだろうか。肉と野菜のシチュー、といういわゆる日本で見るようなビーフシチューだった。食後に学部図書館によって本を返し、それから駅へ向かう。もう家に帰るつもり。少し電車まで時間があるので、駅前の国立劇場を覗いてチラシなどをもらってくる。そろそろ面白そうな物があれば見てみたい。といってもあまり分からないだろうが(^^ ;)。1時前の電車に乗る。近郊電車のホームでの工事は、駅をくぐる地下道の建設のようだ。当分は完成しないだろうが。コイブキュレでスーパーに寄る。隣接してある2つのスーパーは何れも大きなチェーンだが、共にすでにユーロ表示をしている事に気づく。ユーロは確実に近づいているようだ。家に帰ると1時半くらい。あきちゃんから郵便が来ていた。これは1日の消印なので、ちょっと日がかかっている。部屋から丁度太陽が見える。ちょっとまぶしい。まずは日記を書くことにする。が、なかなか書きおわらない。休みを入れながら、どんどん書いていく。結局は3日間で1万字くらいになった。6時過ぎにシャワーを浴びて、夕食。今日は冷凍の魚スープというのを買ってきた。部屋に冷凍庫はないが、幸い(笑)気温は冷凍庫よりも低いので、窓に保管してあった。これを鍋に空けて溶かす。ポテトも入っていた。ちょっと身が少ないかもしれない、という気がしたので、ハンバーグを加える。これとパンを食べる。なかなかおいしい。しかし冬にしか使えない手段ではある(^^ ;)。あまりきっちりしたパックではないので、溶けてしまうと保管が難しいと思う。まだ旅行ぼけが残っているが、早く回復しなくては。

2/9(火)

 7時半過ぎに目覚める。朝の気温はマイナス20度。相変わらずの冷え込みである。朝食を済ませてから、ラテン語の訳に取り掛かる。今回は随分難しくてかなり悩む。そのうちに外は明るくなってきた。今日もいい天気らしい。木々は氷がついているのか、白く輝いている。なんとか訳をつくってから、出かける。積もった雪が再凍結して、太陽の光にきらめいて奇麗。こういうのは写真には撮れないものだ。しかしさすがに寒い。快晴。電車に乗っていると、太陽の光がまぶしい。ラジオでも言っていたが、新聞によると昨日の夕方は近郊電車の一部?が止まっていたようだ。早めに帰って良かった。

 ヘルシンキの気温もマイナス17度くらい。すぐに服が冷えてくる。急いで神学部まで行き、荷物をロッカーに預けてから大学本館で食事。スイス風のうんたらかんたら(笑)だったが、中身はミンチとポテトの煮込みだった。いろいろな名前がついているものだ。食後は少し散歩する。マーケット広場まで出てみる。さすがにもう海は凍っていた。スオメンリンナへの船着き場のあたりは氷がくだけていて、海面から湯気が上がっている。カモメやカモなどが、海の上の氷の上に座り込んでいるのはなにかおかしさを感じる。スオメンリンナに行くのは氷の中を抜けていくことになるので楽しそうだが、今日はカメラも持っていないし、やめておく。広場に出ている露店も数少ない。ちょっと寒くなったのでマーケットホールに入る。ぐるっと歩いて見てまわる。とくに新しい物があるわけではない。おやつを量り売りしているところがあったので、カシューナッツを買う。買って、立ち去ろうとすると、「ちょっと待って」と若い店主が声を掛ける。「あなたは中国人、それとも日本人」と聞かれる。日本人、と答えると、うちでは日本のお茶も扱っているよ、という話になる。「茶」という漢字も一時店に掲げていた。焼き物や鉄器の土瓶なども置いてある。また店先には岡倉…とある英語の文章が飾ってあるので、この人を知っているのか、というと、もちろん知っている、といって「茶の本」の英訳を出してきた。4回読んだ、という。他にもいくつか茶道の本を見せてくれた。色々な人がいるものである(笑)。まあなかなか愉快である。挨拶して、その場を去る。ここにもMac Plusが置いてあった。

 再び大学に戻る。時々空気中にきらめくものが見えるのは、ダイヤモンドダストなのか、あるいは屋根などの雪が落ちてきているのか。しかしこれも奇麗である。神学部に戻って、ギリシア語を読む。2時からスウェ語。あいかわらず発音で悩む。心なしか、どうも先生に避けられているような気がしないでもない。当てられることが少ないように思う。まあ別に構わないが。しかしテキスト付属という録音テープをクラスで使っていても、速すぎて全然ついていけない。一語一語を聞き取ろうとしてはいけないのだろう。フランス語のように「フレーズ」で捉えるべきなのか、と思う。まだまだ授業時間は速く過ぎていく。また神学部に戻って、さらに続きを読む。練習の前には何も食べないつもりだったが、5時半過ぎにはずいぶんお腹が空いた。あまり空腹だと調子が悪くなる怖れがあるので、食べておくことにする。またCarrolに寄る。今月のサービスは例の野菜バーガーだが、満足するかどうか疑問なので普通のにしておく。野菜はまた別の機会に。

 YLの練習は6時過ぎから。今日はさすがにずいぶん集まりが悪い。発声の最初には5、6人しかいなかった。最終的にも、いつもの3分の2弱くらいか。最初に演奏旅行の反省など。あちらでの新聞記事が幹事長のミッコから紹介される。YLにはあまり好意的な書き方ではないようだ。マッティからもいろいろと反省点が述べられる。それから、パルムグレンの音取りをしていく。効率をあげるために、テナーは別室に行って音取りをする。それからまた戻ってアンサンブル。3曲ずつ、3回繰り返す。今日は9曲歌った算段になる。全体で歌う分は16曲なので、すでに半分以上が済んだ。といっても、次の演奏会までは1ヶ月強なのでそのくらいでないと追い付かないか。10時前に練習が終わる。今日もまた2人ほど入団テストがあるようだ。外に出ると、やはり随分寒い。駅前はマイナス15度。電車に乗って帰る。日記だけ書いて、寝る。

2/10(水)

 7時半くらいに目覚める。今朝もマイナス22度。もう一週間近くこういう感じだ。平年の気温はマイナス6度くらいなので、これは随分寒いことになる。ラップランドの平年の気温と同じくらいだ。パンは少し長い間置いてあったのでかびが生えていた。バナナなどはあるので、それを食べる。メール書きなどをしていたら大分時間が経った。今日は9時過ぎに出かける。注文していた本が郵便局に預けられているので、出がけにそれを取りに行く。開いたばかりで混んでいるかな、と思ったが、空いていた。よく見ると、開くのは平日は7時だ。夕方は8時までやっているし、便利なものである。ベッドタウンだからかもしれない。ともあれ、郵便を受け取る。9時半前の電車に間に合うな、と思って待っていると、構内放送。乗るはずの電車は運休になったとのこと(^^ ;)。次の電車までは20分ある。みんなどこかに出て行く。ホームで待っていても寒いだけだからだろう。いったん下に降りてヘルシンキ行きのバスの時間を見るが、次の電車と変わらない時間だった。駅の待合室でしばらく新聞を読んで過ごす。今ヴァンター空港はストに入っていて、この土曜日は空港が閉鎖されるそうだ。日本からの便はタンペレに降りるらしい。こういう時に来ると大変だ(^^ ;)。しばらくして来た電車に乗る。一杯である。通路に立つが、自分で立ってみて初めて、この電車は立つように作られていないことが分かる。立っていると通路がほぼ塞がれてしまう。幸いすぐに席が空いたので、そこに座れた。

 ヘルシンキはマイナス10度くらいと、割に暖かい。急いで大学本館へ。午前中はフィン語の授業。作文なども返ってくるが、問題が多いといわれた(^^ ;)。やはり1から4へ進むと、学生のレベル差も大きくなってくる。似たようなものもいるが、ずいぶん話せる学生もたくさんいる。ちょっと気分が落ち込みかける。しかし基本的には語彙の問題なので、自分の努力しかない。

 お昼休みはしかし気分が沈んでいるので、気晴らしにスオメンリンナに行くことにする。今日はカメラも持ってきていた。食堂が混む時間になってしまったので、荷物だけ神学部に預け、身軽になってぶらぶらとマーケット広場まで歩いていく。日があたっていると暖かい「気が」する。しかしお腹は空くので、マーケットホールで春巻とエビのフリッターのようなものを食べる。前にも来たが、ここは中国人の経営のようだ。レンジで温めてくれるから、熱々で食べられるのが嬉しい。入り口の付近で食べてしまってから、スオメンリンナ行きのフェリー乗り場へ行く。しばらく待っていると、いつものとは違ったフェリーがくる。通常のものは調子が悪いようだ。この船は運転台が一方向にしかないようで、いったんバックで港を離れてから向きを変えて航行していく。船の通るあたりの氷は小さめに砕けているが、それから少し離れたところにはやや大きめのテーブルの氷もたくさんある。航路以外のところは完全に凍っている。島の近くでは、氷の上に足跡もついている。時々氷の端に近づき、がりがりと砕いていく。ちょっとした砕氷船の気分(笑)。特に氷をものともせず、普通に航行していく。デッキにも上がれるようだが、「階段とデッキは凍っている」という注意書があるし、ただでさえ寒いのでやめておく。なかから写真を撮る。

 スオメンリンナに来るのは夏以来。全体的に薄く凍り付いているのはヘルシンキ本土と同じ。とりあえず歩いて観光案内所まで行く。さすがに立ち寄る人も少ないようで、係員も暇そう。ここに併設されている博物館は冬は閉まっているが、コンピューターによるガイドはある、面白いから見ていきなさい、というので、2階に上がって見る。なるほど、フィンランドの博物館によくあるようなパソコンによるスオメンリンナの歴史ガイドがある。一通り見てみたが、なかなか面白かった。戦前の映像なども入っていて興味深い。結局のところ、スオメンリンナはドックが中心になっていることがわかる。また1階に降りる。係員が「フィン語を話すか」と聞くので「少し」と答えると、「これにもいろいろ情報が載っているから」と新聞のようなガイドをくれる。「フィン語を話せるなんてなかなか珍しいねえ」と言われる(笑)。他にスオメンリンナの絵葉書も買う。冬の風景のものはなかった。そこから歩いてさらに南に向かう。ポストがあったが、スオメンリンナに特別に郵便局があるわけではなさそうだ。ヘルシンキ本土に持っていくらしい。所々で写真を撮りながら歩いていく。冬の昼間ということもあって、人がほとんどいない。鳥の声だけが元気である。建物が混んでいるところなどは風が当たらないのでわりと暖かい。さすがに一番南まで行くのは大変なので、スシ島を西へ行く。堤防のような感じのところに階段がついているのが見えたので、それを昇ってみる。ちょうど海がよく見えるところに出た。見渡す限り凍っている。晴れていて明るいので気持ちいい。堤防に沿って歩いていく。一番西の端まで行ってから、また普通の道に降りて戻る。さすがに冷えてきた。スシ島にあるカフェ・チャプマンでコーヒーとケーキを取る。ここではランチも食べられるらしい。一通り食べたら、もう船の時間が近い。次は1時間後になってしまうし、それまで待つのはちょっと長い。急いで波止場に向かう。図書館が目に入ったので、乗り遅れたらここで待つかな、とも考える。幸い船には間に合った。出港してから、検札がある。ここではまさに逃げようがない(笑)。またマーケット広場に戻ってくる。2時半なので、2時間ほどの小旅行だった。

 神学部に戻る。そういえば1月の試験の結果が出ているはず。見に行ったら、3がついていた。他の一緒に出ていた人達は二つの分野を同時に受けているようだ。こちらはテキストを丁寧に読むこと自体が大事なので、気にせずもう一つの部分を3月に受けることにする。図書室でギリシア語を読む。しばらくすると少し調子が悪い気がしてくる。熱が少しあるようだ。まずいな、冷えすぎたかな、と思うが、どうしようもない。おとなしくしている。幸いひどくなる様子はない。そのまま動かないのが無難なので、しばらく勉強を続ける。5時半くらいに神学部を出る。おなかを温めようと、ストックマンの6階に行く。しかしお目当てのスープはあまり熱くなかった。スープと、パンだけ取る。それでもお腹には良かったようで、調子が良くなる。食べおわったらもう練習に行く時間。下に降りる。

 練習はいつも通り。今日はバスの集まりがよくなかった。新しく入団テストを受けに来た男もいたが、どうも結果は芳しくなかったようだ。幾つかの曲を並行してやっていくが、中心は難しいデズュールの曲になる。なんとか2曲目の音取りも済ませられた。カリが「自宅で復習しておくように」というのも珍しい。9時前に終わり、歩いて駅まで行く。気温はやはりマイナス15度。スーパーでパンとバナナを買って、電車に乗る。ティックリラではマイナス21度。寒い寒い。急いで家に帰る。


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