4/11(日)

 目が覚めて、ベッドでごろごろ。そのうちにヒーパッカが帰ってくる音がする。起きだしてみると、11時半。特にむちゃくちゃ気分が悪い、ということがないのはやはり食事をしていたからだろう。霧雨模様。気温は10度くらい。いつものロールパンの朝食にしようかと思ったが、水分を多めに取りたいのでカップそばにする。それから日記を書き始める。目が疲れているので長くは続けられない。眼鏡の調整が必要なようだ。休み休み、書き続ける。時々はベッドに横になったり、また起きたり。とても勉強をする気分にはならない。うだうだと過ごしてしまう。先日買ったスヌーピーも読む。口語表現がたくさん入っているので、意外に役立つ。もうちょっと早く気づいていれば、さらに良かっただろう。また楽譜類の荷作りをする。上の空間が空いているので、冬物の服も少し入れておく。荷作りが終わってみると、割に軽い気がする。10kgもないかもしれない。残っているノートや書類などを見ていると、あと1つか2つは送る必要がありそうだ。それからシャワーを浴びて食事にする。買い込むのを忘れていたので、カップうどんとリンゴになる。夜もあれこれと考え事はするが、結局今日はこれといった成果もあげられずじまいだった。

4/12(月)

 7時に目が覚めるが、まだ眠いし、そんなに早く起きる必要もないのでまた寝る。8時になってから起き出す。ヒーパッカは扉を開けたままで寝ている。彼の部屋や服などからは、強烈な匂いがする。汗によるものらしいが、少なくともここでは2、3週間に一度しかシャワーも浴びないのだから当たり前である。一緒に住んでいる者には迷惑この上ない。ともあれ、朝食の用意をする。今日は昼食が遅目になることが予想されるので、パンを2個食べる。2個目の終わりには、ちょっと飽きてくる。それから出かける用意をする。9時前に、昨日荷造りした小包みをもって出かける。今日は日も差して、まあまあの天気。郵便局は朝からわりと込んでいて、10人待ち。しかし窓口も3つ空いているので、わりと流れていく。小包み用の関税申告用紙に記入して待つ。前よりも軽い気がしていたが、実際に量ってみたら12kgと重かった。270FIMになる。今度はどのくらい時間が掛かるだろうか。予定通りの電車に乗ることができる。「100」を読んでいると、自転車の広告が目立つようになってきた。町ではローラーブレードを使っている人も見かけるようになる。

 ヘルシンキについてから、今日は午前中はシベリウスアカデミーで講義。ソコスの前からトラムに乗る。単に「テーレ車庫行き」としか書いていないが、マンネルハイミン通りを真っすぐ行くのか、テーレ通りを回るのか分からない。聞いてみたら前者だったので、これに乗る。ヘスペリア公園で降りて、湾とは反対側へ1本入った道を歩く。シベリウスアカデミーのビルは直ぐ分かった。煉瓦風だが新しい建物。入っていくといろいろと広告が貼ってある。「楽譜販売」という字が目に付く。まだ少し時間があるので、ちょっと立ち寄ってみる。ここは大学ではなく、民間会社が入っている、という形のようだ。小さなスペースなのでたくさんとはいえないが、理論書や演習書はたくさん並んでいる。他で見かけないものもたくさんある。ぱらぱらと見てみると、国内物は安いが、輸入物はずいぶん高い。合唱の楽譜はやはりあまりないようだ。しかしじっくりと見てみる価値はありそう。今日はもう時間切れなので、また次回に。

 エレベーターで5階へ上がる。ちょうど正面は図書室の入り口。アカデミー所蔵の自筆楽譜がいくつか展示してある。シベリウスのほか、現代作曲家のものも。講義は、少し大きめのアウディトリウムである。集まった学生は20人くらい。最初に先生が尋ねたところでは、半分くらいがアカデミーの学生。これは珍しいことだそうだ。簡単なフィンランドの歴史から、中世の音楽文化について説明していく。結局のところはあまり残っていないのだが。1時間ほどで休憩。学生が一人、今日は「クラシック音楽」の話ではないのか、早く先に進んでくれ、と文句を付けている(笑)。しかし個人的には、ロマン派以降は楽譜もレコードもたくさんあっていくらでも聞く機会はあるのだから、初期の音楽文化の話のほうが面白い。休憩時間に、隣の図書室を覗く。ここは参考書室のようだ。参考書と雑誌、また作曲家の全集。当たり前のことだが、たくさんの作曲家の全集があるものだ。ヒンデミットの全集の合唱の巻など、実におもしろそう。またここにはビデオやLD、CDもあって、聞いている学生もたくさんいる。

 休憩が終わる前に、先生に講義の必須になっているいくつかのコンサートへの参加について、他のものではいけないのか、と尋ねてみたら、明日までに事務と掛け合ってみる、とのこと。リストに上がっているのは、単に無料で入れる、ということのためだけらしい。実際、フィンランド音楽はほとんどプログラムに入っていない(^^ ;)。また話の中で、フィロメラの団員でもある学生がいることがわかった。月末にまた演奏会があるらしい。オペラの予定と重なっているが、なんとか調整して聴きに行きたいところ。後半の話は続きで、とりあえずフィンランドの古典派までは終わる。

 昼食は、同じ講義に来ていたセバスチャンと共にアカデミーの食堂で食べる。1階にあって、AMICAが入っている。セルフシステムだが、メインディッシュも自分でよそうこと、パンは別料金になっていることなどが異なる。自分の好みの量を取れる、ということになる。今日のメインは、牛のソテー。ヘルシンキ大学の学生証も有効だった。パン込みで18FIM。セバスチャンと雑談しながら食事する。彼も今日の夜のオペラに行くとか。食事が終わってから別れて、外に出る。いい天気。トラムを拾って、大学方面に向かう。ストックマンの前で降りる。ここに今日はカフェテラスができている。お金を降ろしたら、もう残りは65FIMしかない。ATMでは降ろせなくなってしまった(^^ ;)。アンティラでモバ用のボタン電池を買う。出してきてもらって、お金を払おうとしたらずいぶん高い気がする。よく見ると、2個セットだった。これしかないというし、もうレジも打ってしまっていたので、まあいいか、とそのまま買う。それから再び大学へ向かう。神学部でラテン語の訳を作る。ちょっと難しかった。それからさらに他の研究書を読む。6時過ぎから日記を書き始めたが、全部書けないうちにもう6時半。急いでトラムに乗り、オペラ座へ。

 今日は「フィガロの結婚」。この演出では98回目だそう。もう10年くらい同じ演出で続いていることになる。もちろん出演者は異なるので、プロフィールのガイドも置かれている。9割くらいの入りのようだ。3階はほぼ満員。2階に大きく空きがあるのがちょっと気になる。座席についてから双眼鏡を取り出すのを忘れているのに気づき、またクロークにいって鞄だけ出してもらう。舞台装置などはかなりシンプル。基本的に同じ大道具で、置物で辺かを付けている。舞台が1面のための工夫がいろいろ凝らされている。衣装は基本的にはオリジナル時代設定。今日のソリスト陣は優れていたので、アリアも十分楽しめる。ソロのアリアでは盛んな拍手が贈られる。休憩時間には、たくさんの入りにもかかわらず2階のカウンターは開いていないので、1階が大混雑。今日はオレンジジュースを飲むだけにしておく。終演は予定時間通りだった。

 駅までトラムに乗って、電車で帰る。少し寒いなあと思ったらプラス1度だった。家に帰ると、HOASから5月〜8月分の家賃の振込用紙が届いている。年に3回送付するのがシステムのようだ。いずれにせよ、5月分しか必要ではない。メールだけ読んでから寝る。

4/13(火)

 目が覚めると、どうも予定より遅いような気がする。時計を見ると7時半。7時に目覚ましをセットして置いたのに、電池切れのようで鳴らなかったらしい。8時過ぎには出かけなければならないので、危ないところだった。急いで朝食を用意し、出かける用意をする。予定通りの電車に乗ることができた。今日は朝が0度と、少し寒くなっている。寒気が入ってきているようだ。ヘルシンキについて、アカデミーに行こうとトラムに乗るが、2台来ていて、後ろのに乗らなければならなかったのに、前のに乗ってしまう。途中で曲がり出してから気が付いた(^^ ;)。しかし戻っても仕方ないので、このまま近くまで乗っていくことにする。幸い、テーレの広場から近かったので、時間には間に合った。

 今日の講義は国民音楽の時代から。わりとのんびりした授業であるので、アカデミーの学生などはだんだん話を聞かなくなる。しかしシベリウスのところだけはわりと真面目に聞いているようだ。シベリウスなんかどこででも話が聞けるのに、わざわざここで聞かなくても、と思う。しかし他の作曲家についてはやはり関心が薄いようだ。聞かないのなら、この講義に出ている意味もないと思うが。話し言葉によると、ドイツの学生たち、またロシアの学生たちらしい。休憩も短めにして、20世紀の初頭まで話が続く。細々とした新しい知識もあるのでメモしておく。

 授業後、1階の楽譜屋を眺める。歌曲に関しても、全般的に揃えている、というところ。特にフィンランドの作曲家が多いわけでもない。値段もFAZERで売っているのとそう変わらない。音楽の入門書もあるが、どの本もわりと似たり寄ったりのシステムのように思える。フィンランドの音楽教育について、という英語の小冊子があるので、それを買う。それから外に出るが、雪がちらつき始めている。積もるようなものではないのだが。歩いて、近くの古本屋へ立ち寄る。音楽関係を見るが、特に新しい楽譜などはない。作曲家の伝記なども興味あるところだが、買うかどうかは迷うところ。日本ではもちろん出ていないはずなので、役には立つだろうが。何も買わずに出る。それからトラムを拾って大学へ向かう。FAZERをみたら、「移転セール」と出ている。どこかに移るのかしらん。いずれにせよ、見に行かねばならない。ともあれ、大学本館で食事にする。もう1時過ぎ。朝も少なかったし、お腹が空いた。今日は鮭。パイナップルのスライスも乗っている。食後に神学部に行って、日記を書く。やっと追い付いた。

 それからスウェ語の授業へ。今日は6人とまた少ない。元々厚いテキストを使っているのだが、授業終了までに4分の1くらいが終わりそう。やっとスウェ語にも慣れてきた、というところ。町で歩いていてもスウェ語が識別できるようになってきた。しかし内容理解にはまだまだ。授業後、FAZERに寄ってみる。楽器と楽譜のセール、という広告が出ているが、楽譜に関してはセール品の展示などもない。そろそろ買って帰る楽譜も見定めていく。合唱はだいぶ買っているので、あとはソロの楽譜が少し欲しい。もうお金もあまりないので、沢山は買えないからよく吟味しなくては。メジャーなものだけでも2、3買っていくつもり。それから神学部に戻って、スウェ語の宿題をしてしまう。

 5時前にVANHAに行き、YLの新人練習に出る。「新人練習」とはいうものの、基本的には愛唱曲をマスターするまで出るべきものといえる。YLの愛唱曲の中にはなかなか難しいものも幾つかある。どんどんさらっていく。本練習までに20分ほど時間があるので、マクドナルドでハンバーガーを食べておく。本練習が始まる時間に戻ったら、ペロではなくてマッティが座っている。今日は休みらしい。マッティが発声から始めていく。今日はVANHAのホールでロックのコンサートがあるようで、大きな音が響いてくる。練習ではソリストが来て、週末のレコーディングのためのパルムグレンの練習。いいかげん、フィン語のものはだいぶ覚えてきた。スウェ語のものはそうもいかないのは言葉への慣れの問題だろう。休憩の時にセバスチャンが遅れてくる。彼はやっと愛唱曲の楽譜を入手することができた。また、エスコにメーデーの時に歌う曲について尋ねる。はっきり覚えていないが、とのことだが、とりあえず愛唱曲集の中で歌うであろうものをチェックしてもらう。半分くらいは歌ったことが無いように思えるので、練習しておかなくては。休憩のあとには、まず先週の音楽理論の試験の返却がある。最初の話をちゃんと聞いていなかったが、今回は落第者はなかった、と言っていたように思う。名前を呼ばれてマッティから答案を返してもらう。8-とついている。近くの人に尋ねると、4から10までで、今回は7以上が合格だとか。なんとか合格点は取れたようだ。4-10というのは普通の学校の採点のシステムらしいことは、スヌーピーを読んだ時に出てきていた(笑)。大学になると1から3なのが面白いところ。それからパルムグレンの続き。とにかく全ての曲を一通りなぞるということで、10時前まで練習が続く。さすがにみんな疲れていた。

 練習後、電車までだいぶ間があるので、またラッピに行く。今日は夏合唱についての話をしていた。2年おきに、副指揮者が中心になってする演奏旅行のこと。今年はナーンタリでやるそうだ。行けなくて残念だなあ、といっていたら、「ビザなんかは、マッティが『こいつは合唱団に必要なのだ』とか書いて大使館に送れば滞在許可は延長できるだろう」(笑)などという声も上がる。まあ今年は無理だが、プログラムは愛唱曲の中からも多いようなので、また次回以降に参加できたらいいなあ、というところ。電車の時間を見て帰る。駅にはオープンテラスの用意や、アイスクリームのスタンドも出るようになっている。家に着いたらもう11時半。メールを読み、日記を書いてから寝る。

4/13(水)

 8時前、目覚ましの音で起きる。だいぶ眠い。しばらくベットにとどまるが、意を決して起き出す。今日は曇り。朝食の用意をしようとしたら、ハムがもう一部いたみ始めている。さすがに300gは消費できなかった。といっても、もう残りは少しだったが。念のため、処分してしまう。チーズだけ挟んでパンを食べる。ヨーグルトや果物もないので、ちょっと少ないがしかたない。さっさと用意したら、出かける前に少し余裕があった。駅まで歩いていく。さすがに道の雪ももう僅かになっている。道に出来ていた氷の層もすっかり取り除けられた。しかし空気はちょっと冷たい。電車に乗ってヘルシンキへ。午前中はフィン語の授業。もうテストまでそんなに回数がない。まあ合格点を取れたらいいか、くらいの軽い気持ちでいるのだが。文法演習が中心になる。

 お昼は歩いて社会科学学部まで行く。セナート広場にはベンチも置かれるようになった。しかし日が差さないとまだまだ寒い。今日のお昼は、鳥のシチュー。食後は歩いて神学部に向かう。今日は、試験の結果を書いてもらうつもりで学生ノートを持ってきた。事務所で先客を半時間近く待ってから、お願いする。コンピューター上で自分の成績データを読み出し、それを見ながらノートに記入してくれる。これが成績の証明になる。もちろん、全てを一覧にしたものももらえるが、それは大学の事務からになる。サマリア研究やクムランの成績はまだ登録されていなかった。図書室に行くと、YLのテオに合う。彼は実践神学ということで、正教会の司祭になるつもりのはず。こういう知り合いがいるというのも面白い(^^ )。

 それから外に出かける。トラムを途中で拾って、フィンランディアホールへ。もう改修工事はほぼ終わっている。チケット売り場で、明日のコンサートのチケットを入手する。ここはホールの中にあるけれどもチケットセンターという例の別組織になっているので、手数料が3FIMかかる。が、ヘルシンキフィルのコンサートは学生割引で20FIMになるのはありがたい。ここのチケットセンターにはフィンランディアホールの絵葉書やガイド、はげおちた壁?まで売っている(笑)。入り口にはガイドツアーの表示もあるので、定期的にガイドがあるらしい。そこから歩いて、昨日も寄った古本屋へ。気になっていたエストニア語の入門書を買う。きれいな本だったし、新品からは3分の1くらいの値段なので、買っても損はないだろう。他には特にこれといったものはなかった。なぜか、店内でインタビューの録音らしきことをしていた。

 そこからシベリウスアカデミーまではすぐ。まだまだ授業までには時間がある。まず6階の図書室に行ってみる。ここには書籍類、それから楽譜が置いてある。楽譜はさすがにたくさん置いてある。合唱だけでも、ずいぶん棚が広い。歌曲についても、聞いたこともないエストニアの作曲家のソ連時代の3巻ものの全集があったりする。こんなものはもう入手できないだろう。北欧系の音楽の勉強には欠かせない場所だ。まさによだれがでそうなところ(笑)。もっと早くから知っていれば、さらに詳しく見ることも出来たのに、残念。いったん1階に降りて、カフェでコーヒーを飲む。さっきのエストニア語の入門書をぱらぱらとめくり、とりあえず発音のところだけ読む。テープが欲しいところだ。エストニアには今回はいけないと思うので、発音についてだけでも大まかに学んでおきたい。本屋にはテープも売っているだろうが、高そう。飲み終わってカップを返そうとしたら、ここではグラスは上向きに置かれている。ヘルシンキ大学ではすべて逆さまに置くので、違いにちょっと驚く。YLのメンバーは逆さまに置くのだが。今度は5階の図書室に行って、全集ものの楽譜を眺める。ヒンデミットやグリーグの全集から、合唱の巻を出してきて眺める。こういうのを見るのは初めて。合唱の巻だけでも手に入れたいものだ。中には面白そうな曲もある。それから、雑誌の棚も眺める。グラモフォンなどの一般雑誌のほか、専門雑誌まで。「合唱とオルガンのための雑誌」というのがあるのを初めて知った。

 4時から講義。残りの時間は早足で現代のフィンランド音楽について。なかなか聞く機会もないので、なかなか興味深い。しかし、たまたまグループで来ているというせいか、アカデミーの学生たちは態度が悪い(^^ ;)。聞く気がないのなら来なくてもいいのに来ている、というのは日本の最近の学生と似ているかもしれない。ともあれ、今日の分でクラシック音楽についての部分は終り。次は来週になる。外に出ると、雨が降っている。大したことはないか、と思って歩いてEOLの練習場まで向かうが、さすがに距離がある。だいぶ濡れてしまった。お腹も空いてきたので、途中のスーパーでパンを買って、練習の前に少しかじる。

 練習は発声の後、コンサートのプログラムから。レズュールは怪しいものだ(^^ ;)。他にパレストリーナも新しいもの。コンサートだというのに、わりとおおざっぱなのが不思議。ヘルシンキ市内以外では、いいかげんにやっているのかもしれない、という気もしないでもない。あと1回しか練習がないというが信じられないところである。練習後は駅まで歩いていき、駅地下のスーパーであしたの朝食を買ってから電車に乗る。もう雨は止んでいる。家に帰ると10時前。

4/14(木)

 7時過ぎに目覚めるが、眠いのでもう少し寝る。めざましが鳴った8時に起き出す。今日は朝から大学に行かねばならないので、手早く準備する。朝食を済ませて出かける用意をすると少し時間が余るので、メール書きをする。今日は朝から雨が降っているので、傘をもって出かける。傘の出番が来たのも実に久しぶり。9時半の電車に乗ってヘルシンキへ向かう。新聞の天気予報では曇り時々晴れ、となっているのだが。ヘルシンキもやはり雨がぱらついている。気温は4度。そのまま大学へ向かう。フィン後の授業は、今日で一応テスト範囲の文法が終わる。結局、先に予告していた分から1章を残すことになり、8章から20章まで。フィン語4になると文法事項も多くなる、と先生は説明しているが、しかし言語そのものに慣れてくるのでそうややこしいとも思わない。もちろん、練習をしないと使いこなせないのは確かだが。学期の途中からだんだん学生が減ってきているのは、別の試験をパスしたからなのかもしれない。文学部などのフィン語が義務になっているところではいろいろと試験のシステムもあるらしいが、よく知らない。

 授業が終わってから、社会科学学部まで歩いて食事にする。もう雨は止んでいる。お昼は豚のグラッシュ。食後は調べもののために歩く。まずスラソルまで歩いていく。頼まれている楽譜の在庫を調べる。フィンランドもの以外のヨーロッパについてはあまりたくさんあるとはいえない。ざっと眺めて、女声の楽譜を買う。財布を見たらもう現金がなかったのでカードで。男声の基礎合唱曲集用に、パート別の音取りテープも売っていた。それから今度はFAZERに行く。ストックマンはセールのようで、セールの袋をもって歩いている人があちこちにいる。FAZERに入ってみると、楽譜のコーナーにも15%引きの表示が出ている。全ての楽譜がそうらしい。店員に聞いてみると、楽譜は250FIM以上で免税で買える、ということだった。普段はパスポートをもち歩かないので、急には免税での買い物はできない。しかしセールがいつまでかとかの表示がないので、早めに買っておくほうがいいかもしれない。

 ヴオリ通りの校舎へ行き、食堂でコーヒーを飲む。スラソルでもらってきたパンフレットによると、この夏はオーランドで北欧各国の合唱指揮者のセミナーがあるとか。北欧合唱協会といったようなものがあって、3年ごとに開いているようだ。また北欧合唱祭というのも、今度は2001年にノルウェーであるとか。しかしパンフはスウェ語で書いてあるし、基本的に北欧はスウェ語と同じ系統の言葉であることを考えると、スウェ語でのセミナーなのかもしれない。特に言語については書かれていない。2時過ぎからスウェ語の授業。文法の理屈は難しくはないので、あとは練習しかない。歌ったことのある言葉がでてくると、いまさらながら内容が理解できたりする。授業後に外にでたら、快晴になっている。まことに急激な変化である。神学部に行って日記書きをする。しかしどうにも気分が冴えない。外に出る。

 天気が良くなったので気持ちいい。少し歩いてみることにする。古本屋へ行って、またスヌーピーを2冊買う。それから、前にシュミッツに教えてもらった古本屋へ行ってみる。ドムスの近くになるので、ちょっと歩く。まだ4時過ぎなのだが、お腹が空いたようなすかないような、変な気分。冷やしたのかしらん。ともあれ、サンモン通りにある古本屋へ。なかなか立派な店構え。いろいろと見てみるが、特にこれといった物はない。18世紀ものの神学書?らしきものが平然と棚に置いてあったのは驚いた。手に取って見られる。価値はすごくありそうだが…。ぐるっとまわってみると、床においた箱の中に楽譜があるのを発見する。ピースのほか、本の物も。しかし多すぎるので、山の上の方を見るだけにする。古い地図なんかも置いてあって面白いところ。主人はいかにも古本屋の、という感じの頑固そうな人(笑)。何も買わずに出る。たしかこの近所のルネベルグ通りにも古本屋があったはず、と思って探してみる。すぐに見つかった。ここは古いアパートの1階、入り口の両側に店舗用スペースがある。最初は別々の店かと思っていたが、一つの店だった。音楽関係も割りとたくさんあって、ミニチュアスコアも置いてある。両方の店内を見てからさらに音楽書はあるか、と尋ねたら、楽譜が置いてある扉つきの棚を教えてくれる。多くの古本屋に楽譜が置いてあるようだ。古い物が多いが、中にはわりと新しい物もある。しかし合唱ものは滅多にない。少し丁寧に探してみる。フィンランドの歌、という古い歌曲集があったのでそれを買う。これはスウェ語とドイツ語によるもの。探しているうちに、もう店を閉めるのだが、と声を掛けられる。明るいので全然気づかなかったが、もう6時。楽譜には値段がなかったが、ご主人が見定めて「20FIM。」と一言。それなら安いくらいだ。それからドムスへ歩いていき、夕食を食べる。パスタはいつも似たような物ばかりだし、いまいちおいしくない。

 まだ30分ほどあるので、歩いてフィンランディアホールへ向かう。トラムのルートはぐるっと回らねばならないし、歩けばほぼまっすぐ行けるはず。テンペリアウッキオ教会の横を抜け、国立博物館の裏側に抜ける。博物館の裏辺りに、アメリカンブックスという英語書籍の本屋があった。結局ホールまでは15分ほどだった。開演10分前。クロークにコート、鞄、傘を預ける。ホワイエにあがると、沢山の人がいる。もうドアは開いているが、まだまだみんな話をしている。今日はバルコニー席なので、2階に上がる。2階はドアでなく、階段を上がりきったところに係員がいる。ここでは半券をちぎられる。フィンランディアホールに来るのも、年末のコンサートで歌って以来。客席で聞くのは1年半振りである。2階のほぼ正面で、たしかにいい席。椅子は大きめだし、快適。続々と客が入っている。入りは6割くらいか。2階席は、正面以外は空きがたくさんある。

 楽員が入ってくる。かなり大きな編成になっている。最後にコンサートマスターが入ってくると拍手。チューニングが始まる。それから指揮者が入ってくる。このホールの構造上は、指揮者などは客席の一番前を歩いて、真ん中の階段から舞台に上がるようになっている。最初はシベリウスのプロモーションマーチ。なかなか軽快な感じの曲である。これは5分ほどの小品。いったん指揮者が下がって、その間に合唱団が入ってくる。フィンランドフィルハーモニー合唱団は、今日は70人ほど。女性は濃緑のパンツスーツ、男性は燕尾。再び指揮者と、ソリスト二人が入ってくる。プロモーション・カンタータ。2楽章で30分弱の曲だが、いかにもシベリウス、という感じの部分があちこちにある。またフィンランドのトラディショナルなメロディーも取り入れられている。フィン語の歌詞なのでいまいち聞き取れないが。ときどきドイツ語のように聞こえるのも不思議。初演から数えてこれが3回目の演奏だそうだが、まあ無理もないな、というのが正直な感想(^^ ;)。特に面白いということもない。ここで休憩になる。オケ関連のグッズやCDなどを売っているテーブルが出ているので覗いてみる。ロゴ入りのTシャツやマグなどもある。CDは、市価よりも少し安いようだ。モニカ・グループの歌曲のものがサービス価格だというのでしばらく考える。が前から買おうと思っていたラウタバーラの男声合唱曲集も置いてあるのに気付き、値段を聞くと100FIM。たしか市価は150FIM近かったはず。これは買わねばならない、と思ったところで後ろから「ユタカ!」と声がかかる。こういうところで知り合いに会うとは全く予想していないので驚いて振り向くと、セバスチャンとハンナだった。彼らも2階席にいて、こちらがいるのは知っていたとか。ともあれ、CDは買う。しかし自分にはプレイヤーがないし、セバスチャンも興味がありそうだったので、彼に貸すことにする。またカンタータについての感想は、「Strange」だった(笑)。自分はここで帰ることにする。今日の目的は達したし、後半はドヴォルザークの第9なので今更聞くまでもない。何より、今週はもう随分疲れているので、帰れる時には早く帰りたい。荷物を受け取って、駅へ歩いていく。

 8時だが、明るいこと。こうなると、北欧にサマータイムが必要なのか、という気もしてくる。ともあれ電車に乗って帰る。コイブキュレでスーパーによる。レジを通ったら、誤ってダブルカウントされている品目があった。文句を言うと、多すぎた分を計算して、その分についてレジを打ち、「訂正」というレシートをつくる。それに自分がサインして、取りすぎの分を返してもらう。きっちりとシステムがつくられているようだ。家に帰ると9時。母から葉書が来ていた。とにかく疲れているし、メールを見て必要な返事を書いてから、11時前と早くベッドに入る。

4/16(金)

 十分に寝てから、起きて出してみるともう10時。しかしまだちょっと体が疲れている。また雨模様の天気。洗濯の予約を入れてあったのだが、すっかり過ぎてしまった。念のために見に行ったら、まだ少し空いている。完全に乾かないかもしれないが、ともあれ洗濯することにする。それから朝食を用意する。メールを見ると、ちょこちょこと楽譜の調査や購入の依頼が来ている。追い込みになって、急に増えてきた(笑)。それから日記を書く。洗濯物は、ちょっと湿りも残っているがまあ問題ない程度。それから出かける。今日も傘を持っていかねばならない。

 ヘルシンキは小雨。最初にFazerに行く。合唱の楽譜を一通り見てみたいのだが、というと、奥にある職員の控え室に案内される。合唱の楽譜についてはすでに注文くらいにしているようで、量も少ない。混声、男声、女声と一通りチェックする。これは持っておきたい、というものを、ピースを中心にして集める。ざっと眺めてからいったんレジに行くが、免税範囲に届かないようなので、もう2、3追加。いったん計算してもらうと、15%引きで260FIMほどであった。ピースが多いので、細かい。タックスフリーのチェックを切ってもらうが、店員が下敷きを挟むところを間違えていて、コピーが出来ていなかった。もう一度書き直す。商品の袋に着ける番号のシールは自分で直す。しかしまたもや同じミス(^^ ;)。3度目にしてちゃんとできた。戻ってくるのは25FIMなので、手間をかけさせてこちらのほうが申し訳ない(^^ ;)。返金される額は、対象金額に対して厳密に何%というのではなく、5FIM刻みくらいになっているようだ。約9%。チェックと商品を受け取る。他の客が話をしているのを聞いていると、店はカイサニエミに7―8月に移転するそう。ホテル・コラムスの下、といっていたから、前に模型屋が入っていたところだろう。この春は、他にも移転とか閉鎖する店をよく見かける。

 いったん帰ろうと思ったが、ついででもあるし、今日は荷物も少ないのでCDも買っていくことにする。女声のもの、混声、トルミスなど、日本で見かけないものを買っておく。6枚で570FIMほど。こちらの返金額は65FIM。ということは11%。楽譜とCDの税額の違いもあるかもしれない。レシートを見ると、楽譜は8%、CDは22%の消費税がかかっている。免税といっても、全額が免除になるわけではないようだ。こちらのレジでは無事チェックが切られる。レジのお姉さんによると、滅多に免税で買う客はないとか。CDでそうなら、楽譜はなおさらだろう。CDのほうで待っていたら、楽譜の方の係員が、レシートを渡すのを忘れていたので、持ってくるからここで待っていてくれ、と言われる。レシートはレシートでちゃんと切られるようになっているのだった。

 買い物はこれで終り。2時過ぎ。まだ雨が降っている。大学本館にいって食事をする。たまたま並んでいたら、後ろの男女は日本語で会話している。パンのテーブルで声をかけてみたら、やはり学生で、フィン語を勉強しているとか。日本人学生は珍しくて、といったら、よく見かけますよ、との返答(^^ ;)。勉強している環境の差もあるのだろう。ともあれ、それだけ。今日の昼食はビーフシチュー。おいしく頂く。それから、またもやスラソルへ向かう。頼まれている楽譜と、価格調査のため。入っていくと、「また来たか」という顔をされる(笑)。今日はそんなに時間もかからないで、必要なことを調べて帰る。駅まで歩いていき、電車に乗る。まっすぐ家に帰ると、4時。

 コーヒーを入れてメール書きをしてから、少し寝る。気がついたらもう8時半。シャワーを浴びて、ラーメンを食べる。結局またうだうだと過ごしてしまっている。これではいかん。日記を書いて、寝る。

4/17(土)

 昨日は夕方に寝たせいか、なかなか寝付けない。やっと眠れたかな、と思っていたら物音で目が覚める。またヒーパッカが騒いでいる。時計を見ると1時半。いいかげんに腹が立つ。起きだして、HOASに抗議のメールをすぐに送る。ついでに、証拠として騒いでいる声も録音しておく。土日は休みだから、実際に何かしてくれるのは週明けになるだろう。彼は一度外に出ていって、帰ってきたら静かになっていた。こちらももう寝る。

 目覚ましで目が覚める。7時だが、今日は50分の電車に乗らねばならないので起きてすぐに用意しなくてはならない。朝食を食べる。今日からふたたびカレリアパン。出かける準備をして、駅へ向かう。雨が降っているので、また傘を差していく。いつもの3番線から出ると思っていたら、案内版と案内放送で今日は1番線から、と言っている。電車を待っていると、ライノが声を掛ける。そういえば、隣の建物に住んでいるのだった。一緒に乗っていく。ぼつぼつと話しながら行く。この夏は、夏期講義で勉強だとか。またドイツ出身なので、どの辺がお薦めか、とかも尋ねてみる。やはり一言では言い切れない、というところ。ヘルシンキについてから、Vanhaへ向かう。8時20分だが、バスはもう来ていた。しかし自分たちが一番乗り。30分になっても他のメンバーが来ない。その後に、続々と集まってくる。雨のせいで遅れているようだ。40分の出発予定が、50分くらいになる。オリンピック公園を経由し、また途中でメンバーを拾いながら北へ向かう。会場の近所では何も買うところがないので、途中でドライブインに寄る。

 リーヒマキまでは1時間ほどかかる。秋の時と同じところ。今度は雪もほとんど溶けていて、鳥の声がする。10時過ぎと少し遅れて到着。椅子を並べて、さっそく体操・発声が始まる。睡眠不足のせいか、いまいち声の乗りが悪い。最初に2、3の曲の部分で、録音レベルのチャックをする。それから順次レコーディングに入る。すぐに済む曲もあれば、なかなかOKが出ない曲も。3、4回と繰り返すと、みんないらいらしてくる(^^ ;)。おやつとして、マンダリンとバナナが用意されている。また1時過ぎにはサンピュラが出る。ソリストもやってきて、ソロつきの曲もレコーディング。録音は当然他の音が入ってはいけないのだが、椅子のきしみや、建物のきしみなどが入ったりする。一度は鳥の声が入った(笑)。

 3時に食事。施設の食堂で食べる。車で行くメンバーもあるが、こちらは歩いていく。郊外にあるところなので、気持ちいい。もう雨も降っていない。食堂は前に行ったところは違って、新しい建物だった。すでに長い行列が出来ている。1列しかないので進みが遅い。メインは鳥のカレー風スープ。昼休みは45分だが、並んでいるだけで20分くらいかかってしまった。早々と食べ、また教会に戻る。レコーディングの続き、となるはずだが、ノイズが入る、という報告。全員が携帯電話の電源をオフにするが、それでもまだ止まらないと。施設の本部に確認したりしているが、どうも通信施設からの高周波らしい。とんだ邪魔が入ってしまって、マッティも困った様子。とりあえず、練習をして待つ。結局20分ほどしてから録音を再開。途中でソリストは帰り、合唱だけの録音が続く。そういえば3はなかなか発売されないが、とラウリに聞くと、3と4がいっしょに出るからだ、ということだった。多分秋になるだろう、という。まだ外は明るいが、もう6時近い。5時すぎにはもうバスが来て待っている。さすがにみんな疲れてきている。6時半になって、今日の予定の9曲の録音が終わる。再びバスに乗って、ヘルシンキへ向かう。帰りはもう寝て帰る。

 途中でメンバーを降ろしながら、最後はいつものVanha前でなく、ソコスの前で解散になる。電車まであと4分。ラウリと急いで駅へ向かう。幸い間に合った。8時過ぎにコイブキュレに戻ってくる。明日の朝のバスの時間などを調べるが、結局7時23分の電車に乗るのが良さそうだ、という結論になる。ライノがこちらの部屋で食事しないか、と誘うので話に乗る。パンがないのだが、というので、こちらからカレリアパンを持っていくことにする。その前に、自分の住んでいる建物について、簡単に案内する。テレビ部屋や洗濯室など、まだあまりよく分かっていないらしい。彼がテレビのニュースを見ている間に、部屋に帰ってパンを取ってくる。ニュースを見てから、隣のB棟へ行く。隣だが、普段用事はないので入るのは初めて。彼の部屋は三階だった。やはり3人の共同部屋。部屋そのものは自分のところと同じ構造。が前にも聞いていたとおり、共同部分に机がない。ライノの個人の部屋は、棚がたくさん置いてある。パソコンやCDプレーヤーなども。CDやDATが並べてある。ドイツだが、フランス語で学ぶ高校にいたというので、ドイツ語・フランス語・フィン語などの本が並んでいる。

 ともあれ食事にする。彼の方からチーズやハム、サラダを提供。サラダはポテト・ピクルス・ゆで卵をマヨネーズなどで和えたもので、こういうポテトサラダはドイツの伝統的な家庭料理だとか。なんでも祖母からのレシピらしい。日本で見るポテトサラダとよく似ている。それに、カレリアパンにハム・チーズを乗せて食べる。パンを温めるのにレンジを使う、というのだが、レンジは隣の部屋の住人の持ち物だそう。チーズは塊なのでどうやって切るのかと思っていたが、カンナのように薄く切ることが出来る専用のカッターがあった。これはフィン人の家庭には必ずあるとか(笑)。一通り食べ終わったところで、デザートに「ムンマ」を食べる。これはフィンランドの伝統的なイースターのデザート。黒い、ちょうどキャラメルがペーストになったような感じのもの。クリームをかけて食べる。ちょっと甘いが、悪くはない、というところか。いろいろ雑談をするが、気がつくともう10時過ぎ。明日も早いので、この辺で帰ることにする。

 自分の部屋に戻って、シャワーを浴びてからメールを読む。それから日記書き。適当なところで寝る。

4/18(日)

 朝は目が覚めたら6時過ぎ。しかしもう太陽の光が差し始めている。今日はいい天気のようだ。眠い目をこすりながら朝食を用意する。手早く準備して、7時過ぎには出かける。駅でライノに会うが、彼も眠そう。ヘルシンキについてから、彼は大学の研究室に行くという。こちらは駅のカフェが開くのを待って、コーヒーを飲みながら本を読む。日曜の朝8時から開くのはここくらいしかない。朝は旅行者風の人や、朝食を食べに来た人達などがいる。高い天井に、どこかの広告用の風船が2、3個張り付いていた(笑)。8時半過ぎまでここにいてから、Vanhaへ。今日はすでに何人かが待っているが、バスの方がなかなか来ない。ほとんど出発時間になってからやっと来る。これに乗り込んで出発。昨日と同じように走っていく。今度は半ば寝ながら行く。途中でこんなところに湖があったかな、と思っていたら、どうも畠に溢れた水らしい。雪解けの季節、ということか。しかしすごく大きな湖になっている。10時前に教会に着くが、まだ鍵が開いていない。天気がいいのが幸いで、外で待つ。風があるが、鳥の声がさわやか。鳥の話をしたら、ライノが鳥類事典を鞄からだし、説明してくれる。日本の鳥とはだいぶ違うようだ。そのうちに10時になって、鍵を持ったマッティがやってくる。マッティはベンツに乗っているが、ナンバーが「YL10」。YLに来て、10年目の時に取ったナンバーだとか。もう10年前だが。ともあれ中に入って準備する。

 体操・発声をする。朝と疲れのせいで声の乗りが悪い。控え目に声を出していく。それからレコーディングに入るが、高い部分に声がうまく乗らない。ちょっと苦労しながら歌う。今日は休憩も少な目。なかなか決まらず、半分くらいずつに分けて録音するものも多い。レコーディングディレクターの評価はもう一つ、という感じだが、一つづつOKが出て行く。合唱のみのものを先に終え、ソロ付きのものに入る。1曲済ませてから、2時に食事。歩いて食堂に行く。今日は1時間くらいあるので、ちょっとゆっくりできる。しかし行列は長い。今日はトンカツであった。付け合わせにもサラダやポテトがあったので、ちょっと取りすぎた。帰りは車に乗せてもらって戻る。時間どおりに始まらず、少し遅れて再開。残り3曲を順々に録音していく。最後に一番長い曲を録音。4時過ぎに最後のOKが出て、すべて終了。自家用車組は、我先にという感じで帰っていく。後片付けということを考える人が少ないのは、この国の習慣の一つかもしれない。ともあれゴミの片付けなどを終えてから、バスで出発。いったん施設内のゴミ置き場に寄ってから、ヘルシンキへ向かう。

 ぱらぱらと雨が降っている。ここのところよく雨が降る。ヴァンターくらいまで来ると雨は降っていない。最後は再びソコスの前で降りる。駅へ行くが、電車まで間があるので、駅地下のスーパーで食品を買う。それから家に向かう。車窓には傘を差している人が多くなる。コイブキュレは本格的な雨。濡れながら早足で家に帰る。7時過ぎ。シャワーを浴びて食事をする。すっかり疲れていて、これといったことも出来ずに9時過ぎに早々ベッドに入る。

4/19(月)

 夜中に目が覚める。またもやヒーパッカの叫び声。時計を見ると午前3時。うるさくてすっかり目が覚めてしまったので、またHOASに苦情メールを書く。しばらくしてやっと静かになったので、また寝る。次に目が覚めると8時前。十分寝たので起き出す。朝食を食べて、メールを書いていたらもう出かける時間になる。先週に送った荷物は土曜日にもう日本に着いていたとか。5日だから、航空便の手紙並み。これは飛行機で送られているのは確実だ。朝から日が差していて、いい天気。電車でヘルシンキへ向かう。天気予報では、明日からは17度くらいの陽気になるとか。日本と変わらないくらいだ。セーターを着なくても大丈夫。駅前からトラムに乗ってアカデミーに向かうが、トラムの先頭から、頭にケープをかけた女性が乗ってくる。新しい趣向かな、と思っていたら、やはりタキシード風の男性がいて喋りだす。なんでも結婚したばかりだそうだが、トラムの中で知り合ったのだとか。同じ停留所から乗って、同じところで乗り換えて、読んでいた図書館の本を見て同じ図書館に行って…という成り行きを語りながら、飴を乗客に配っている。自分も一つもらう。共に3、40歳台にみえたが、まあいろんなことがあるものだ(笑)。

 アカデミーでは、今日はジャズとポピュラー音楽についての講義。講師はアカデミーの先生で、ジャズサクソフォンのプレイヤーでもあるとか。最初にジャズについての概説的な説明をして、それに合わせてフィンランドのジャズの傾向を説明していく。休憩時間に、コーヒーを飲みに下に降りる。コピーカードをどこで買うのか分からなかったのでその辺にいた学生に聞いたら、楽譜販売のところで買えるというので行ってみる。150度数のものが欲しかったが、売り切れ。他は多すぎるか少な過ぎるので、まあやめときますわ、といったら、別の係員が、私の持っているので良ければ譲りますが、というので、店先で個人売買をする(笑)。またサクソフォンを出して、即興演奏の模範も見せてくれる。即興演奏はどうやって学ぶのか、という質問には、ピアノで、音やリズムのパターンを限定してすると好い、ということだった。ほとんどの時間はジャズに費やされる。ポピュラーについては、タンゴに触れた程度。3時間しかないのだから無理もないところ。

 昼食はアカデミーの食堂で食べる。メインは鳥のカレー風シチューで、ライスにかける様になっている。米は薄茶色のもの。セバスチャンや、一緒にいた学生たちと食べる。他は皆ドイツ語が出来るので、ドイツ語で会話している。自分は聞いて分かるところも多いが、すっかり忘れていて、フィン語しか出てこない(^^ ;)。一人、台湾からワイマールに来ていて、交換留学でここに来た、という女子学生がいた。近くのテーブルにどっかでみたおじさんがいるなあと思っていたら、合唱指揮者のセッポ・ムルトだった。ここの講師もしているらしい。セバスチャンによると指揮はもう一つ、ということだったが。食後は、外に出て中心街へ向かう。

 Fazerまでトラムに乗っていく。頼まれていた楽譜を買う。ついでに棚に置いてあったカタログ類ももらっていく。入れてくれる袋は、ただの透明なものになっている。これも費用削減のためか。それからスラソルへ行く。これも頼まれている楽譜について尋ねるが、在庫がないので注文になる。1、2週間とのことだが、念のためもし帰国までに届かなければ注文をちゃらにする、ということでお願いする。他にもいくつか面白そうなものもあったが、またまとめて買うことにする。歩いて駅まで戻る。ちょっと時間があるので郵便博物館に寄ってパンフレット類をもらっていく。それからフィンエアーのオフィスによって、ここでのチェックインは出発の何時間前から出来るのか、と聞くが、ビジネスクラスなら出来るが、エコノミーではできない、と。言われて改めてみると、確かに看板にビジネスクラスのチェックイン、と書いてある。変わったのかしらん。エコノミーは空港でしかできない、ということで残念。帰国日のプランを練り直さねば。

 電車に乗って帰ろうとするが、目の前で電車が出てしまう。もうほんの近くだったのに、ちょっと不親切。しかたないので次の電車に乗って待つ。コイブキュレでスーパーに寄ってから家に帰る。電話代の請求書と、請求していた家賃の振込み用紙が来ていた。結局請求した後から届いていたので、必要なかったのだが。電話代はちょっと高かった。市内通話が多くなっているが、これはうまくつながらなかった分の代金も入っているのだろう。メールを見ると、HOASからの返事が来ている。弁護士に持ち込むが、手続きとしては数週間かかるだろう、ということ。まあそれはもっともである。それなら、もっと早くから苦情をつけていればよかった。一休みしてから、日記を書き始める。途中で、妻に電話する。それから夕食。ピザと、買ってきたポテトサラダ。ライノのところで食べさせてもらったのとよく似ている。食後は日記書きの続きやラテン語の下調べ、試験勉強などをして過ごす。明日は早く起きるつもりで、早めに寝る。

4/20(火)

 6時半に目が覚める。早く寝たし、まあいいか、と思って起きることにする。今日もいい天気。朝食の用意をしながらメールを読む。7時前なので、まだ割引の時間帯。食事を終えてから、ラテン語の訳に取り掛かる。9時半までに仕上げなくてはならない。途中8時に洗濯をする。もう洗濯用の石鹸がなくなったので、普通の石鹸を使うことにする。のんびりやっていたが、9時過ぎには訳を終えることができた。それから洗濯が終わるまではフィン語のテスト勉強をする。問題集やテキストを見て復習。割りと気楽にしている。11時過ぎの電車で出かけることにする。暖かそうなので、セーターは不要。

 電車に乗って「100」を読む。今年は雪解けが早くて、川などの水位も非常に高くなっているとか。先週末の雨でほとんど溶けてしまったから、そのためだろう。確かにあちこちの川はあふれんばかりに流れている。テーレ湾にはもうボートも浮かびはじめた。駅から歩いて、社会科学学部へ。カイサニエミの公園は鳥の声で賑やか。学部の中庭にもテーブルが出されて、外で食事をしている人達も。まずは食事。今日は「リンゴのカツ」というのがあって、なんだろうかと悩む。結局、無難にイワシのような魚のフライをとる。他の人が食べているのを見たりしていると、豚のカツで、リンゴが入ったソースがかかっている、というのが正解のようだ。

 食後は散歩がてら学部図書館に寄ってから、神学部へ行く。テーブルに幾つか古い本が置いてあって、ご自由にどうぞ、とある。だいぶ古いが、フィンランドの神学、といったような英語のものもあるので2、3冊もらっていく。貼り紙で、他にもセールの本がどこそこで売っている、とある。リストで見ている分には特にこれといったものはなさそうだが、他にもあるかもしれない、と思ってついでに見に行くことにする。セナート広場を横切っていくと、大聖堂の階段には沢山の人達が座っている。まさに夏の風景。歩いていると暑いくらい。キルッコ通りの14番、と探していくと、なぜか社会保障省というプレートがついている。おかしいなあと思ってしばらく考えるが、もう少し行ったところにやはり14番と書いてある入り口を発見する。普通はA、Bとか書いてあるものだが。前にも来たことのある本屋だった。確かにセールとして神学関係のものが売っている。一通り見てみたが、これといったものはない。ついでに他の本も見てみる。全天星図もあったが、フィンランド用なので、南の星座が少なかったりしているのは面白い。また各学部が出している叢書類もここが扱っているようだ。特に何も買わずに出る。店先に、フィンランドの地図についての展示、というポスターがあるのが目に入る。すぐ近くだし、まだ授業には時間があるので、ついでに見に行くことにする。

 道路関係の学校が入っている建物の、5階。エレベーターで上がっていくと、展示してある部屋には誰もいない。1899年の地図と、1920年代、60年代、現在、と比較して、自然、人口、産業などのテーマ別に地図が並べられている。これを見ると、フィンランドは戦間期に最大版図だったことが分かる。カレリアはともかく、北に北極海への出口を持っていたとは知らなかった。学校の分布を見ると、スウェーデン語圏なども一目瞭然。ラップランドには今でもぽつぽつとしか学校がない。実に面白い展示である。帰りは階段で降りていく。建物自体もわりと古い感じがする。下まで降りて、外に出る。

 歩いて、学部図書館の中を通り抜ける。そこから地下まで降りる。ふと思い付いて、お菓子屋さんで「サルメッキ」と「ラクリッツ」を買ってみる。サルメッキが入ったものにはいくつも種類がある。見ていると、2、3FIMといった小さな単位で買う人も多い。念のため、少しずつだけ買うことにする。外に出てサルメッキを食べてみると、やはり話に聞いていた味だった。しかしむちゃくちゃまずいというわけでもない。例のメンマとも通ずるところがある味である。ラクリッツの方は、普通のキャラメルみたいなものだった。こっちの方がよろしい(笑)。そのままヴオリ通りの校舎へ。

 スウェ語の授業はいつも定時に始まる。今日はテストについての説明も配られる。筆記試験のみ。答案を自分で見る時間がある、ということは返却はしないようだ。また、このスウェ語1に続くべき2は、この秋にはなくて、来年の春学期になる。秋学期から始める、というのが基本になっているよう。まあ自分には関係ないのだが。フィン語が終わったら、スウェ語の試験の準備に入らなくては。しかし学んだ文法事項は随分少なかったような気もしないでもない。授業の後は、大学の書籍部に寄って、フィン語の参考書とフィンランドの地理の概説書を買う。これは前に英語で読んだものだが、類書で手頃なものがないのでこれが一番良さそうとみた。

 それから頼まれているフィンランド製のハンカチを探して歩く。キーレフに行ってみたが、それらしきものはない。ムーミンのぬいぐるみは200FIM以上と随分高かった。それから、最近できたカンピに行ってみる。Fazerの向かい当たりになるが、衣料の店などが入っている。真ん中にあるエスカレーターの上の屋根はガラス張りになっている。3階にはオープンキッチンやアイスクリームも。ハンカチを探して歩くが、それらしきものは見かけない。マリメッコで何種類かを見つける。とりあえず覚えておくことにして、エスプラナーディの方へ抜ける。公園には沢山の人出。芝生に座っている人もたくさんいる。見ていると、クロッカスが所々で花を咲かせているが、まだほんの少し、というところ。店先にはテーブルも出ていて、オープンカフェは大賑わい。お土産物を売っているところに入ってみる。スカーフのようなものはあるが、ハンカチサイズではムーミンものだけ(笑)。念のため、スカーフを示してこんなのでもっと小さいのはないか、というとない、という。ハンカチが欲しいのだが、そもそもフィンランド人はハンカチを使うのか、と聞くと、年配の人は使うこともあるようだ、という返事。滅多に売っていないし、ストックマンにあるんじゃないか、ということだった。結局、何でも最後はストックマンになる(笑)。最後にストックマンに入ってみるが、前と同じで、ハンカチサイズは少ない。イタリア製かインド製のもの。また考え直すことにする。

 Vanhaの方に出てくるが、ここの広場も大変な人ごみ。4時を回っているのでもう仕事が終わった人も多いのか、オープンカフェでビールを飲んでいる人も多い。半袖やノースリーブで歩いている人もたくさんいる。Vanhaに入ってみると、音楽室は会議で使用中。たまたまトンミが来ていたので、新人練習はあるのかねえ、というと、さあ、と。彼は部室の鍵を持っているので、中に入る。少し雑談をする。彼は法学部の学生だった。鞄からフィンランド法の1巻を出してくる(^^ ;)。5時近くなると、小合唱の練習のために何人か集まってくる。幹事長のミッコが、今日ある合唱団のコンサートの話をする。なかなか面白そうだし、よかったら行けば、ということだった。ちょっと考える。ともあれ小合唱の練習にみんないってしまうので、自分も外へ出る。

 どこへ行くかとしばし考えるが、トラムを拾ってシベリウスアカデミーの図書館へ行くことにする。資料のコピーを取りたかったが、あいにくコピー機は全て故障中。しかたないので、図書室にあるレコードを聞いてみることにする。目録を繰ってみると、合唱という項目建てもある。古いものが中心なのか、ほとんどレコード。しかしメロディアレーベルのエストニアの合唱団のものや、YLの古いものなどもある。エストニアのものを聞いてみることにする。レコードを使うのも久しぶり。ちゃんとブース毎にレコードプレーヤー・CDプレーヤー・カセットデッキなどが置いてあって、アンプを通してヘッドホンで聞くようになっている。エストニアものは初めて聞くが、フィンランドものに似ているというべきか。男声や混声を聞いてみる。またスオメン・ラウルという混声合唱団や、YLのレコードも。貴重な音源がこうして聞けるのは素晴らしい。結局今日はコンサートを聞きに行くことにして、YLはお休み。

 6時半まで居てから、歩いて演奏会場のアカデミーのコンサートホールがある方へ歩いていく。チケットは1時間前から売っているとのことなので、売り切れになっても困るし、早めに確保することにする。学生割引で20FIM。チケットは、ここでのコンサート全てに共通のものらしく、「入場券」としか書いていない。プログラムもぺらぺらではなく、ちゃんと冊子になっていたので、これも5FIMで入手する。それから先に食事をしに行く。少し歩いて、テニスパラツィにあるキャロルでハンバーガーを食べる。プログラムを見ていくと、現代ものばかり、ずいぶん意欲的なものだ。ゆっくり食べていると時間がなくなってくるので、急いでまたホールに戻る。先にトイレに寄ったら、セバスチャンに声を掛けられる。やはりコンサートを聞くらしい。クロークはいつもは人がいなくて勝手に置いていくのだが、やはりコンサートではちゃんと人がいる。ホールに入る前の間仕切りのところでチケットを回収される。ふと見ると、EOLのエンミがCD売りをしている(笑)。「仕事でね」とか。どこに座るか、とセバスチャンと考えるが、このホールは舞台が高いので、1階よりも2階のバルコニーの方がいいのでは、と提案する。ちょっと天井が狭いのだが、合唱団はよく見える。

 7時半から演奏会。最初はシェ―ファー。それからラヴェルなどが続く。演奏は、まあまあ。全部で30人くらいだが、女性が20人近くに対して男性が10人くらいとは少ない。女声は上手だが、テナーがもう一つの出来だった。録音があるみたいで、マイクがたくさん並んでいる。途中で誰かの携帯電話が鳴りだしていたが。休憩時に、コーヒーを飲みに行く。カフェは開いていて、コーヒーが6FIM。昼間とは違う値段かもしれない。どこに座ろうかと思っていると、手を挙げて合図する女性がいる。こんなところに知り合いはいないはずだし、と思ってしばらく考えて、やっとセバスチャンの彼女のハンナだと分かった(^^ ;)。なんでも2分遅れたら、もう入れなかったとか。ラジオの録音をしているそうだ。しかしセバスチャンの意見では、放送はされないだろう、イントネーションが悪い、という辛口の批評。ハンナは手芸についての勉強を大学でしているという。そろそろ修士論文の準備らしい。休憩は随分短い感じがした。後半が始まる。5年前の、北海でのフェリーの沈没事故についての曲、というのもあった。こういうもののあとでは、拍手をすべきか迷う。がみんなは拍手していた。全部終わったのは9時。

 荷物を請け出して、早々に失礼したら電車に間に合った。まだまだ明るいのがなんともいえない。気温は14度と出ている。昼間は20度近かったかもしれない。メールを読み、日記を書いてから寝る。


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