10/21(水)

 朝目が覚めるとやはり暗い。7時過ぎであった。そういえばサマータイムも24日まで。実際は1時間早いわけで6時だからだから、暗くても無理はないか。しかしうっかりすると寝過ごしてしまいそう。朝食を済ませて出かける準備をしても、いつもの電車までには1時間近くある。せっかくなので早くでかけることにする。30分の電車に乗るつもりで駅まで行ったら、電車は40分であった。勘違い。ちょうど反対方向の電車が来たので、隣のレコラまで行く。レコラはホームはしっかりしたものだが、無人駅のようだ。ヘルシンキ行きの電車に乗る。このころになると空は晴れてくる。朝はすこし雲がかかっていたが。太陽はまだ昇ったばかり。白樺の木に映えて美しい。今日の予想気温は6度くらい。ヘルシンキに着くとすでに6度であった。

 授業まで1時間くらいあるので、大学本館のカフェでコーヒーを飲みながらフィン語の勉強をする。単語帳を見て覚えていくが、覚えたはずの動詞もすっかり忘れている。実際に使わないとなかなか身につかない。動詞の数を増やさないと会話が難しいので、しっかり覚えなくては。

 授業では、最初に名詞の変化形についてのリストが配られ、説明がある。慣れてしまえばどうということもないのだが、最初はしっかり覚えておくことが必要。続いてテストがある。内容は基本的なもの。さっと解ける。今日は最後に「友人への手紙を書く」という課題がついていた。簡単に書いておく。それでも時間は余りあるので、裏に自由作文を書く。今日は合唱のことについて書いた。これが終了時間まで続く。ダビッドが覗いて「ずいぶん長い話だな」と笑っていた。

 朝がいつもより早かったせいか、おなかが空いた。幸い少し早く授業が終わったので、まだ行列が出来ていない本館の学食へ。今日は豚カツに茸のクリームソース、マッシュポテトつき。これだけでもけっこうな量になる。今日のはまさに「トンカツ」であった。マッシュポテトはそれだけで食べると飽きてくるので、ケチャップをつけて食べる。しかし、大学では1日にどれだけの量のじゃが芋が消費されているのだろう(笑)。

 食後はオリエンタリアでギリシア語の宿題をする。授業の宿題としては3、4つの文を訳すだけだが、自分は全部やっておくことにしている。すこし遅れているので、どんどん解いていく。恐らく今日の宿題であろうというところまで出来たのはもう授業直前であった。

 授業が始まってみると、自分がやった分は1章早かった。次回への貯金が出来たということか。宿題の解答をしてから、テストの範囲の内容について復習がある。今日は名詞の活用をみただけで終わってしまった。変化は覚えていても、訳語を覚えていないものがあるのでちゃんと勉強しておかないと。

 6時からはEOLの練習。いつもより丁寧に声出しをする。EOLの発声は少し時間が長い。今日は、土曜日にあるカリの修了コンサートのための曲。ユハラ・…という作曲家の「妖精伝説」という曲。通して4、5分の短いものだが、大変美しい。CDで聞いたようなフィンランドの音がある。1995年とあるから新しい曲だ。すでに歌ったことがあるようで、暗譜で歌っている人も多い。土曜日は残念ながら参加できないので、練習のあとでカリに挨拶だけしておく。

 駅まで歩いていく。駅のスタンドでリハパンを買う。15FIM。ミンチが入っているもの。よく見ると麦も入っている。それを食べながら電車に乗って帰る。夜にインターネットへ接続するが、話中。最近話中が多くなったように思う。といっても、ちょっと待てばつながるが。

10/23(木)

 今朝も暗い。雲はかなり厚いようだ。ヒーパッカは今日も8時に出かけている。テスト日が近いせいもあるんのだろうか。こちらはまず洗濯。洗濯・乾燥が無料で出来るのは実にありがたいことである。今朝は昨日パンを買ってくるのを忘れていたので、買い置きのクラッカーのようなパンを食べる。やはりこれだけだと余りおなかが膨れない。まあそんなことを言っても仕方がない。洗濯の間にはメールを書く。

 それから借りているタキシードを合わせてみる。一応全部のアイテムを着てみた。ズボンが長いかと思っていたが、ズボン釣りを調節すればそうでもない。特に直さなければならないことはない。ティモも言っていたが、しばらく着ているとやはり重く感じる。ステージの上ではさらに暑いだろうな、と思う。ともあれ、ひととおり揃っていることははっきりした。わりとしっかりした衣装かばんが欲しいな、と思う。何しろ、こちらの天候はどうなるか分からないことが多いから。このタキシードにについては、ティモから買わないか、という話が来ているので、コンサートがたくさんあることも考えると買っておこうと思う。彼自身もYLに入ったときに譲り受けたものだ、というから、いったいいつのものだろう(^^ ;)。ティモは92年に入団している。300FIMで譲り受けたというから、値段はそれ以下であろうし、そのくらいなら出せる金額である。日本にもって帰ってもほとんど使うことはないだろうが(^^ ;)。この間にあきちゃんから手紙が来た。新聞の切り抜きも入っている。自分が興味を持ちそうなものが入っていた。さすが妻である(笑)。

 洗濯物を取り入れてから出かける。あいかわらずどんより曇っている。新聞によると、週末は晴れるかもしれない、といった感じ。しかしまだまだわからない。今日は寒そうな予想である。ヘルシンキに着いたら6度であった。まずは、コンピューターセンターにいき、前に失敗したソフトを再びコピーしに行く。今度は、学校の機械で実際に動くことを確認した。それから、インターネットの書店で本を少し調べる。アメリカの会社だが、新しくドイツと英国にもできたそうだ。英国からは、送料が2.9ポンド+1ポンド/個。日本から買うよりは割安か。一度買ってみたい。ドイツのほうはちょっと覗いただけ。しかし、インターネットで買える本はいままでほとんど英語だけだったので、これは活用できそう。

 それから社会科学学部へ食事に行く。今日は時間がずれたので人が多い。場所がなくて往生している人もいる。今日はソーセージのストロガノフ、というのにした。ソーセージ入りのとまとシチュー、という感じ。

 午後は本来は授業であるが、明日のテストがかなり心配なので、自習の時間にする。神学部に行ってギリシア語の復習。単語を覚えていないものがかなりある。困った困った(^^ ;)。3時前に、大学本館に「YLIPOISTO」という大学の広報誌を取りに行く。これは月に2回ほど大学によって発行されるもので無料。大学本館と学部図書館においてある。記事はほとんどフィン語であるが、後ろのほうには各種の予定や伝言板などがある。この辺を読むだけでも活用できる。大学関係の主な情報はこれに載るようだ。留学生のエッセイコンテストの応募記事もでていた。たしか前は締切が26日だと思ったのっだが、今の掲示では30日になっている。さては、応募が少ないのか(笑)。他に、真ん中には博士論文を提出した人の写真と論文内容なども載っている。これを見て、自分の励みにしよう(^^ ;)。ついでに学部図書館へ行き、売出しの本を見てみる。新約聖書関係の本が1冊あったので買っておく。

 3時からギリシア語。今日は動詞の活用の復習。不規則なものなどで質問が幾つかあったので、時間すべてをこれに使ってしまった。まあそれはそれで構わないのだが。来週からは、文法と同時に、新約聖書のテキストを読んでいくとのこと。

 6時に授業が終わって、帰る。途中までユハと歩いていく。彼は専門としてギリシア語をやっているわけではなく、新約聖書をもっと読んでみたいから、といっていた。そういう学生もいるのであるなあ(笑)。電車に乗って家まで。今日は結局、1日中どんより曇っていた日であった。暗くなるのも早い。スーパーによってから家まで。ヒーパッカは帰っている。ここのところは、彼のほうが帰るのが早いくらい。ペッカは全く姿を見せない。手紙をとっていないところを見ると、ここには来ていないのだろう。スウェーデンからの手紙や、スウェーデン語のものなども来ているので、やはりなんらかのスウェーデン関係者のようだ。

  10/24(金)

 今日はテストの時間が9時からと早いので、寝過ごさないように…と思って7時に目覚ましをかけておいたが、目が覚めたら6時過ぎであった。当然、真っ暗。暗い中からごそごそと動き出す。先に少し勉強し、7時過ぎから食事。早めに用意ができたので、少し早い電車で行ってコーヒーでも飲みながら勉強するか、と思ったが、天気も怪しげだし止めておく。8時過ぎに出かける。雨ではないが、霧がかかっている。しかし暖かいのは事実で、ヘルシンキに着いたら11度であった。

 大学本館で試験があるので、そこまで行く。本館の1階にある大教室。階段型の、200人くらいは入りそうなところである。ドアにはってある、教室の使用予定表を見たら、この教室は主に試験に使われているようだ。今日の午前中は神学部の試験、午後はまた別の学部の試験らしい。9時についたが、すでに何人も来ている。荷物を窓際に置いて、自分の席に着いている。あとから注意して回っていたので、足もとにおくのはだめらしい。みんなが何か紙を取りに行っている。普通のノート用紙だが、解答用紙らしい。こちらは論述でもないし、多分問題用紙に直接書き込む形だろうから、必要ないと思って取りに行かない。論述の試験が多いせいか、こういう直前の時間になってノートを見ている学生などは少ない。そのうちに、みんなが自分の席を確保して座る。出る都合か、やはり通路側に集中している。9時15分位になって、試験問題の入った封筒が配られる。今日はアルファベット順に3つのグループに分け、順に名前が呼ばれて封筒を受け取る。全部配り終わり、みんなが席に着くと「封筒を開けて始めてください」と告げられる。封筒を開くと、問題用紙が一枚。やはり直接書き込む形になっている。問題はオーソドックスで、語形の分析、指定された形に変化させる、翻訳。特に難しいものではないが、少し忘れているところがあった。危ない危ない。あとで調べたら、一つは間違っていた。むむ。9時45分には、できたら退出してもよい、という指示がある。怪しげなところをしばらく考えていたが、覚えていないものは仕方ないし、授業もあるので、10時過ぎに提出する。封筒に再び問題用紙を入れて試験官に持っていく。ここで、学生証の提示を求められる。提出して、試験室を出る。

 続いてフィン語の授業。まずは先日のテストが返される。そしてそれについての解説がある。それにほとんどの時間を使い、残りの時間であたらしく分格の用法を学ぶ。このコースはけっこうのんびり進むな、という感じがする。テキスト以外の資料も使っているせいだが、もっと先へ進んで欲しいな、という気がする。ダヴィッドには今でも早いくらいだそうだが(^^ ;)。まあその辺は自分で勉強すればいいだろう。

 お昼に、学部図書館へ行ってすこし本を見る。それからメッツェタロで食事。12時15分過ぎだったが、列は大変短かった。授業が45分に終わるので、15分前後は空いてくるのだろう。今日はロールキャベツの野菜あんかけとさいころじゃが芋が一皿に盛ってある。けっこうな量なので、今日はご飯をとるのは止めておく。野菜あんはちょっと味が濃いが、人参その他がたくさん入っていておいしい。

 食後はトラムに乗って駅までいく。このころには大分霧が濃くなっている。洋服に使う埃取りブラシを探してみる。まずティーマッリへ行ってみるが、ここにはない。ついでに便箋とアルミホイルを買っておく。これがあると、オーブンでの暖めができる。店の真ん中は飾り付け物とローソクがさくさん。もうクリスマスの飾り付けの準備ものの売出しらしい。ローソクも実にたくさんある。フィンランドはローソクを大変たくさん消費する国だそうだが。ともあれ、それだけ買ってから、今度はストックマンに行ってみる。セール中のようで、黒山の人だかり。ひととおり覗いてみるが、やはり見当たらない。しかも、もしあったとしてもかなりいいもののような気がする。日本にあるようなポケットタイプのものはないのではないか、と思う。セールにも少し気が引かれたが、いま必要なものもないし、お金も心配なので何も買わない。そういえばタキシード用のポケットチーフがないので、安いであろうハロネンまで歩いていく。ここでブラシについて聞いたら、うちにはない、ストックマンにあるだろう、といわれる。結局、まあいいか、ということにしておく。歩いて郵便博物館まで行ってアドベントカレンダーをもう少し買っておき、駅へ行く。

 駅で、年末にあきちゃんが来る分のホテルを予約しておくことにする。12月31日などは高いかもしれないな、と思う。先の日のことであるし、電話での予約も問題が起きる可能性があるので、駅にあるホテル予約センターの窓口で尋ねてみる。ホテル・アンナを予約してみる。ホテルに確認し、OKとのこと。12/31,1/1ともに週末料金が適用されて一泊480FIMであった。普通は620FIMだが。これはラッキー。予約手数料が20FIMであった。この手数料は、1件の予約に付き払うようだ。予約の控えをもらう。英語で話ができるので楽である。とりあえず年末の分は押さえることができた。あと新年に入ってからの分も予約しなければならないが、日程が決まっていないのでまた後日。2時過ぎだが、電車に乗って帰る。

 家に帰って見ると、共同部分が片付いている。ペッカが来たようだ。こういうことはちゃんとできる人間のようだ。ヒーパッカとまるで逆である。こういう2人がともに住むのは難しいようにも思うが(^^ ;)。自分は、自分のものは自分で片付けるが、人のものまでは片付けない、という主義。ともあれ、ペッカがほとんどいないのであまり問題も起きない。楽譜を読むが、ちょっと眠気がするので、昼寝することにする。2時間弱くらい寝ていた。6時前だったが、食事などを買いにスーパーへ出かける。魚のフライを買ってきた。あとラーメンを食べることにする。買い物に出たときに、隣の建物のごみ置き場にローボードが捨ててあった。まだ形はしっかりしているので、帰りに拾ってくる。ちょっと重かったが、部屋まで運ぶ。オーディオ用のローボードらしい。ちょうど部屋にあう感じなので、いい拾い物をした。ヒーパッカが帰っていて、物音ででてきた。「部屋が片付いていたので驚いた」といっていた(笑)。あきちゃんに電話をしておく。食事をして、楽譜を読む。パルムグレンは大分読めるようになってきたが、早い部分がつらい。フィン語でもいくつか間違える。傍で聞いている分にはおかしく聞こえることだろう。言葉のまとまりや意味を知っていることは記憶に重要である、というのを痛感する。いまは意味を調べている時間もないので、旅行中にでもできれば調べてみよう。

10/24(土)

 今朝は6時に起きる。いよいよ演奏旅行である。出かける用意をし、7時半の電車でヘルシンキへ。外はまだ薄暗い。が雲が多いのであまり寒くはない。朝の電車はわりと込んでいた。遠出をする感じの人が多い。電車を降りるところで、バリトンのテオと会う。といっても、話をするのは初めて。話ながら歩いていく。彼はヘルシンキ大学で勉強しているが、今はヨエンスー大学にいるという。そこにはギリシア正教を学ぶ学部があるそうだ。義理の兄弟がいて、弟も神学部だという。昨日博士課程を終わったそうだ。

 バスはすでに来ている。2台に別れて、荷物を預け、乗車する。ぼつぼつと人が集まってきている。8時過ぎに出発。自分の乗ったバスは、最初にオリンピックスタジアムまで行き、ここでさらにメンバーを拾う。ここからも15人くらい乗ってきた。全員乗ったはずのところで出発。名簿で出席を細かくチェックなどしないのが欧米の国らしい。あくまで自己責任。バスはヘルシンキを出て東へ向かう。日曜の朝というせいもあり、車も少ない。ヘルシンキの近郊では高速道路になっている。しかし料金などはかからない。途中の車窓には農村風景が広がる。今はもう何もないが、実りの季節にはきれいかもしれない。11時頃に休憩。小さなドライブインで休む。みんなはコーヒーとムンッキを食べている。ムンッキは「ドーナツ」と訳されるが、いわゆる菓子パン。日本のドーナツとはちがう。自分はそんなにおなかもすいていないので、アイスを食べておく。外を少し歩いてみる。風があるが、晴れているので快適。ここでもう1台のバスと落合う。しかし、そちらに乗っている人はまた同じように休憩なので、こちらは先に出発する。この辺からは快晴。実に快適である。ドライブインで買ったらしいビデオを流している。ジェームズ・ボンドもの(笑)。英語だが、フィン語の字幕が付いている。英語がよく聞き取れないとフィン語の字幕を見てまた考える、というややこしい状態になる(^^ ;)。外には白樺の林が広がる。時々湖が見える。カレリア地方は湖が多いので、それらを縫って道が走っている。時折、林の中にコンクリートの陣地のような建物が見える。戦時用のものだろうか。バスは直ぐに通り過ぎてしまうのでよくはわからない。バスは制限が100kmらしいが、100km前後で走っていく。片側一車線、対面通行の道が多くなる。ただの田舎道のように見えるが、標識による制限速度は100kmないし80km。あまりいい道ではないと少し揺れるが、大した問題ではない。こういう道が、ずっとまっすぐ続くということは少なく、高速道路のように緩くカーブしていることが多い。しかしともかく山がない。丘くらいしかない。見えるのは森ばかりである。

 そうこうしているうちに、2時前にヨエンスーに着く。まずは練習場所の教会へ。食事を用意してもらっているので、昼食になる。バイキング形式になっている。パンはいわゆるカレリアパン。ご飯が乗ったやつで、ヘルシンキでもよくみる小判型のもの他に、じゃが芋の薄パンでご飯を巻いたものもある。そういえばここはそのカレリアである。カレリアパンはそのまま食べるのかと思っていたが、みんなバターを塗っていた。たしかにそのほうがおいしい。デザートは、ベリー類を緩く固めたもの。ちょっと甘い。

 食後は、教会の礼拝堂で練習。新しい教会のようだが、オルガンもわりと大きいのがある。明るくていい感じである。体操・発声は団員がする。それぞれ別の人物がして、終わると拍手をする。感謝の念を込めてのようだ。続いて練習に入る。今日はパートの配置が変わり、バリトンがトップの後ろに、バスが向かって右側になった。今回はこれで行くようだ。トルミス、ラウタバーラ、パルムグレンを練習する。相変わらず、いわゆる愛唱曲に属するものは練習しない。しかし、1曲愛唱曲ではないのだが、前に歌ったらしいものがあるが、一度も歌っていないものがある。ちょっと変な曲なので、全体像を知りたいのだが…と思っていたが、結局練習はなかった。この練習においても若干の変更点がでてきたりしている。最後まで考えている、といったところのようだ。楽譜は本のまま持ってもいいのか、と隣の人に聞いたら、本とはわからないのが望ましいので、黒のバインダーに挟む込む形で見ればいい、という。全体合唱の練習が終わってから、小合唱の練習。その間は待機。ここでおやつ?らしい、パン・ジュース・バナナなどが入った袋が配られる。演奏会前用らしい。

 練習がすべて終わってから、またバスに乗って会場の教会へ移動。ここは木造の教会。ちょっとした丘の上にあり、なかなか映える。中に入って、並び方を確かめ、少し歌う。さすがに80人位が並ぶとちょっと狭い。教会は300人くらい入る規模だろうか。中の装飾もきれい。オルガンも2台ある。それが終わってから、近くの建物に行き、着替えて待機。学校のような感じの建物である。着替えをしながら他の人を見ていたら、白の蝶ネクタイをしている。聞いてみたら、夜の8時を過ぎると普通は白のものをつけるという。自分は黒しか持ってきていなかった。幸い2つ持っている人がいたので、借りておくことにする。しかし、これは思いもよらなかった。正装をする習慣がないから、こういう決まりは全く分からない。一通り着てからうろうろしていると、ポケットチーフを注意される。普通?に3つ頭がでるようにしていたが、それは指揮者だけで、団員はチーフが水平になるようにするとのこと。いろいろ決まりがあるもんである。着替えたあとは荷物をまとめ、バスに積んでおく。ここには何も置いておかない。

 歩いて教会まで行く。教会はライトアップされている。すでにお客さんは来ているが正面から入って、ロビー?で待つ。教会なので待機場所がないせいもあるが、こういうのはわりとオープンである。ロビーにはYLの歴史を綴ったボードも置かれている。大学で以前見たものである。立ち話などしながら待つ。このとき話をしていた人は、オーストラリアに住んでいたことがあり、そのときにはアイスホッケーをしていたとか。一番フィンランドに近いものだからだそうだが。また日本語もそのときに少し学んだという。しかし、数字の読み方が、普通に数えるときと着物やその他のものを数えるときに変わるので、そこで挫折したという(^^ ;)。しかし、発音は似ているので、その点は楽だったとか。また、日本語とフィン語で同じ音の言葉がどんなのがあるか、と聞かれる。あまり注意して考えてはいない、というと、例えば「ハナ」というのがある、フィン語では蛇口のことだ、という。なるほど。

 開始10分ほど前に外にでて整列。マッティから、楽譜を見る人はかじりつきにならないように、と注意がある。端のほうから2列で入っていく。お客さんは100人くらいか。教会全体から見ると半分くらいだが、回廊部分にはほとんどいないのでぱっと見たくさんに見える。演奏が始まる。暗譜で歌ったシベリウスは歌詞の間違いをちょこちょこした。ラウタバーラは場所を見失いそうになる。パルムグレンは比較的まともに歌えたが、音が高いだけにまちがったところ(低い所)で音を取ってしまったりする。マッティの指揮をよく見ている余裕が全くない。時々、マッティ自身が簡単にプログラムの解説をしている。休憩は15分くらい。休憩後はまず小合唱なので、客席で聞いていることにする。聞くほうは楽である(笑)。生で聞いてみると、なるほど、とおもわされることは多い。声として荒削りのところもあるが、音楽としては素晴らしい。同じ楽譜を持っているとは思えない。小合唱が終わってから再び外で整列し、また入場。トルミス・パルムグレンと続く。最後の曲は歌ったことのないものだったが、マッティの解説によるとラップランドの民族音楽のようだ。同じフレーズの繰り返しが主なので難しくはない。しかしステージで初めて合わせるというのはちょっと困る。途中でトップのアドリブによる民謡調のソロが入る。一番最後の部分は、ハミングの中で、アドリブで鳥の声の真似が入る。それがいかにもそっくりであってすごい。それで終了。拍手のあと、アンコール。これはカレリアの木を歌ったものらしい、ソロ付きのもの。そのあとで、さらにアンコールがある。やばいな、何を歌うのかと思ったら、フィンランディアであった。予告無しなので準備はしていないし、もともと1番しか覚えていないししかも記憶があいまいである。なんとか合わせていく。これで本当に終了。8時半前なので、けっこう早く終わっている。

 近くに止まっているバスへ戻る。途中で何人も「最初の演奏会はどうだった」と声をかけられる。「ユタカはフィンランディアには驚いただろう」といわれる(笑)。マッティが一番好むアンコール曲だそうだ。これは早く覚えておかねば。バスに乗って、ホテル・アトリウムまで行く。レセプションで鍵をもらい、5階の部屋へ。バリトンのヨハンネスと相部屋になる。ホテルはわりと普通のタイプ。さっさと着替えて、パートの集まりがあるという部屋へ行く。まだ着替えていない人も多い。行くとウィスキーを勧められる。なんでも、前のシーズンに新しく入った人が、新しいシーズンの最初の演奏会で差し入れをする習慣だとか(聞き違えているかも知れない)。今回は新人練習もしているエサが差し入れをしたとのこと。そのうちにマッティが来て、話をしていく。残念ながらよく分からない。みんな適当に出ていく。フロントで絵はがきを買い、バーで何か食べようか、と思っていたら、サウナに行かないか、と声をかけられる。それもいいので、先にサウナに行くことにする。3階にあって、8人くらい一度に入れるサイズ。入りながらぼつぼつ話をする。そのうちにたくさんの人が入ってくる。全部で14、5人くらいか(^^ ;)。そこで歌い出すのは合唱好きの常。サウナの歌から始まり、幾つか歌っている。暑くなってきたので、先に出ることにする。そのあとでレストランに行こうかとおもったらちょうど閉まったところであった。バーに行ってみて、何を飲もうかと考えると、2階のほうに行ってみよう、と声をかけられる。2階はレストランだが、レストランが終わるとバーになるようだ。YLのメンバーもいたので、ビールを買ってから同じテーブルにつく。ビールはカルヤラというもの。20FIMだが、YLのコンサートの余ったチケットが2枚ずつ配られていて、それを使うと10FIMの割引になるという。それをつかって、10FIMで買うことができた。飲みながらいろいろな話をする。この町の出身の人も多いようだ。何人もと話すが、名前を聞きそびれているのでちゃんと覚えられていない。YLのメンバーには日本好きも多いようだ。店は土曜の夜のせいもあってか、大混雑になってくる。1階に行くと、また別のメンバーがいるのでそこに加わる。ここでまた南カレリアのビール(名前は忘れた)をもらう。会話はできるだけフィン語でするようにしている。語彙が少ないだけに苦しいことが多いが、それでもかなりのことを話すことができる。12時過ぎくらいに部屋へ戻って、あきちゃんに葉書を書き、寝る。

10/25(日)

 目が覚めて時計を見たら、なんと9時。たしか9時が出発の時間。しかしそれにしては暗すぎるし、ヨハンネスもぐうぐう寝ている。どうも変だ、と考えていたら、昨日の夜にサマータイムから時計を直すときに、1時間戻すところを1時間進めてしまったらしい。ということは、今は7時。ちょっと頭が痛い。まあこの程度なら、食事をすれば直るだろう。

 はっきり目も覚めているし、朝食後は直ぐ出かけるようなので、この時間に散歩に行くことにする。ホテルのとなりが郵便局だったので昨日書いた葉書を投函し、川沿いに歩く。ちょうどホテルの裏に小さな運河がある。運河の上に橋が架かっているが、遮断機があるところを見ると跳ね上げ橋になるらしい。川はこのあたりでもけっこうの川幅がある。公園などもあり、風景としてはきれい。ここにもやはり白樺がある。ホテルのとなりに市役所+劇場がある。どこかで見たことのある建物だなあ、と思っていたが、あとで聞いたところではヘルシンキ駅の設計者エンゲルによるものだとか。なるほど、である。教会までの川沿いの道には、古い建物が並んでいていい景観である。そもそもこの町には高い建物がほとんどない。2、3階のものが大半で、中心部のビルが4、5階というくらいである。教会まで歩いていき、写真を撮る。開いていないので残念ながら中には入れない。教会の前を歩いていると何か走っていくので、よく見ていたらリスであった。実物を見るのは初めてである(^^ ;)。町のわりと真ん中なのに、リスがいるというのも驚き。さらに歩いてヨエンスー大学まで行く。赤い煉瓦調の建物が並んでいる。余り時間がないので、キャンパスをゆっくり見ている時間はない。案内板を見たら、確かに「正教神学部」というのがある。ここから歩いてホテルまで戻る。広場の近くに煉瓦造りの古そうな建物があったが、あとで調べたら美術館であった。時間が早いせいもあり、中が見られないのが残念。しかし、町中の時計はまだサマータイムのままである。

 ホテルに戻って、朝食。8時から。基本的にどこでも余り変わらないようだ。そういえばゆで玉子を食べるのはすごく久しぶり。前にホテルに泊まって以来だろうから、2カ月振りくらい。食事をしながら、サマータイムから時計を変えるときはいつなのか、と聞くと、午前4時に、3時まで戻すのだという。不幸にして日曜日のせいか、町中の時計を変更する担当者はいないようだ。しかし、公共の時計としてはまずいのではないだろうか(笑)。ゆっくり食べていたら出かけるまで余り時間がないので、部屋に戻って急いで準備する。バスにのる前に一人と話をしていたが、YLはついていくのも大変だ、というと、「そうだねえ、YLはセミプロだから」といっていた。やはり団員の中にもうそういう意識があるのだ。そうでなくては、これだけのレベルを維持していくのも大変だろう。

 9時に出発。またバスに乗っていく。ヨエンスーは曇りであったが、途中で霧が出てくる。時折雨も降っている。今日は余りさえない天気のようだ。バスの中で、演奏旅行のあとでついでに何個所か回ることもできたかな、と思うが、今回は準備もないし、演奏旅行で十分疲れるのでやはり止めにしておく。3時間ほどでイマトラへ。会場になる所は文化センターのようだ。荷物を楽屋に入れ、ホールへ。新しいホールのようで、きれい。多目的ホールのようだが、木がたくさん使ってあり、音楽に向いているようにできている。客席の一番前と舞台の高さがほんの少しの差しかない。椅子も大きくてゆったりしている。まあこちらの人にはこれでちょうどいいのであろう。椅子の背のところから空調が出るようになっているのが珍しい。コーヒーの時間、といわれてみんな大挙してロビーにいきかけるが、まだ準備ができていないようで戻ってくる。先に発声をすることになる。昨日と同じように、体操・発声。それだけしてから、今度こそコーヒータイム。コーヒーと、ムンッキが何種類か。カレリアパンもある。みんな2、3個ずつ取っている。この時は1時くらいで、まだ自分は特にお腹がすいていない。2個取るが、1個だけ食べておく。

 そのあとでリハーサル。最初はタンゴの練習。団員による即席オーケストラが伴奏。バイオリンやチェロ、サックスやアコーディオンなど、いろいろできる人がいるもんだ。音楽教育の幅の広さを感じる。しかし自分はついていくので精一杯。そのあとでトルミスとパルムグレン。練習中にピザの注文書が回ってくる。余談であるが、十数年前にYLで指揮をしていた松原千振氏の話題はあちこちででてくるが、彼はよく音叉を落としたとかで、それ以来誰かが音叉を落とすと「チフル!」と声がかかるらしい。昨日だったかに聞いていたが、リハーサル中に新人のミッコがたまたま音叉を落としたら、何人もから「チフル!」と声がかかった(笑)。10年以上前なのに、おそるべしである(^^ ;)。途中の休憩で、オッリに楽譜を借り、コピー機を探すが、日曜日ということで事務所も閉まっているとか。しかたないのでフィンランディアの歌詞を手で書き写す。ついでに、音名も書いておく。これで楽譜の代わりになる。全体合唱の練習が終わってから、小合唱の練習。残りの人はバスに乗って待つ。このときでバスの時計で4時前。しばらく待っているが、なかなか終わらないようだ。5時からの演奏会なのに、これでは食事の時間がないのではないかな、と心配していたが、4時10分過ぎに出てきた。

 バスに分乗して食事に出かける。ピザ屋にでも行くのかと思っていたが、けっこう遠くまで行く。止まったらところは工場のようなところの門。ここでおじさんが乗ってくる。その案内で工場の中へ。食事をするのではなかったのかしらん、と心配になってくる。工場の中でバスを降り、建物の中に入る。もう4時半過ぎである。ここは製紙工場のようだ。大きなロールが置かれている。途中でマッティが「これは我々のお金だ」という。紙幣になるのかと思っていたが、「No paper, No life」と続けて言ったところを見ると、紙の重要性をいったつもりらしい。そのうちに別の部屋へ入ると、そこは工場の食堂であった。なるほど、それでただで食事ができるのか。協力してくれるところに頼っているようである。食事付き工場見学、といったところか。時間については、ここで自分の時計を見たらまだ3時半過ぎ。バスの時計はサマータイムのままだったのだ。一安心。ここでも食事のスタイルは大学などと同じ。メインを持ってもらい、サラダやパンは自由に取る。レジにも人がいるが、我々は無料。そのまま座って、各自食べる。自分はおやつのパンもあってほとんどお腹がすいていない。このままステージに乗っても大丈夫なくらいであるが、メインとサラダくらいを食べておく。しかしみんなよく食べる。不思議なくらいである。細い人など、どこに入っているのだろう、という感じ。自分もよく言われることであるが(^^ ;)、こちらの人にはかなわない。食事をしながら、工場長らしきおじさんの話を聞く。この紙会社についての話のようだ。フィンランドでも有数の企業らしい。聞くほうもけっこう真面目に聞いている。質問もわりと活発に出る。食後のコーヒーも無料であった。一通り話を聞いてから、バスに戻る。このときで4時半前なので、今度は本当に時間が少ない。バスがホールに着いたのは開演25分くらい前。すでにロビーにはたくさんの人がいる。そのロビーを抜けて、楽屋へ行く。着替えてから待機。ロビーで待つ。5分くらい前に、整列。再びマッティから、楽譜の持ち方についての注意がある。そして、タンゴは暗譜で歌う、とのこと。そんなことはもっと前から言って欲しい(^^ ;)。覚える、ということは全くしていないのに。

 ともあれ、演奏会は始まる客席の通路を通って舞台へ。やはりマッティの解説を交えながら、休憩まで歌う。今日のほうがさすがに余裕があるが、やはりぼこぼこ間違えてしまう。休憩になって楽屋でひと休み。さすがにホールの舞台は暑い。タキシードでは大変。休憩は手違いか、長くなっていた。この間に、CD販売の担当団員がロビーでYLのCDを販売していたらしい。あとで聞いたら、入団1年目の団員は1枚20FIM(!)で買えるという。それ以後は100FIMらしい。これはぜひ買っておかなくては。演奏会のプログラムにもCDのリストがのっているが、1986年のシベリウス以来、ほぼ毎年のように新しい録音が出ている。しかし、この休憩のときはタンゴの楽譜を必死で覚える(^^ ;)。休憩の後は小合唱。こちらはロビーで待機し、終わってから加わる形で再び客席から舞台へ。トルミス、パルムグレンと歌って、最後のタンゴ。結局、ほとんど歌えなかった。音はある程度覚えていても、言葉が全く付かない。これはどうしようもない。なんとか口ぱくでごまかす。黒髪の東洋人でただでさえ目立つのに、間違えているとなっては情けない。大きな拍手が起きる。拍手は手拍子になる。アンコールはカレリアの木、それからフィンランディア。楽譜を先に見ていただけに少しはましであったが、ステージで見て歌うわけにもいかないので、やはり2番はかなり怪しかった。演奏が終わっても大きな拍手が起きる。最後には何人ものお客さんが立って拍手していた。終わったのは7時前。こちらは2時間弱であった。

 楽屋に戻って着替え、荷物はバスへ預ける。それからリハーサル中に頼んだピザを食べる。しかし、今日は3時間おきに食べている(^^ ;)。団から支給のビールを飲みながら食べる。余り時間がないので急いで食べる。出発は7時半。さらにビールが一人2本ずつ支給される。ほとんどの団員はそのままバスで帰るようだ。バスに乗るときに、マッティが声をかけ、「君はラッキーだ、今日のようないい演奏会に出られて」という。聴衆ののりがよかった、という。帰りのバスでは夜なので風景も楽しめない。今回の演奏旅行の幹事であるミッコのガイドにより、新人へのインタビューもある。このバスに乗っていたのは、たまたまセカンドの4人であった。聞いていて分かるものもあるが、分からないところが多い。自分の番になると、いちおう英語でも聞いてくれるが、こちらはなるべくフィン語で答える。なぜフィンランドに来たか、に「YLで歌うために」というと喝采(笑)。最後は「なにかジョークをいうと、ビールがもらえる」とのこと(^^ ;)。こういうのはとっさに思い付かない。なんとか話してみたが、日本語をしらないと分からない落ちだったのでうまく伝わらなかった(^^ ;)。言葉足らず。あとでミッコは落ちがわかったらしい(笑)。あとはビデオを流している。寝て帰るつもりだったが、あまりねむくない。適当にビデオを見たり、ぼんやり前を眺めたりする。途中で今のYLで一番おじさんの人が立って、今日の演奏会は自分が知っている長い間の中でも素晴らしいものだった、という。この人は1962年に入団、一時ブランクがあってから、また戻ってきたそうだ。YLでは、一度入団すると基本的にいつでも戻ってこれるらしい。自分も入ることができたので、もしまたここに来ることがあればいつでも歌うことができるそうだ。そういう意味では、OBというのはいないのかもしれない。途中で一度ドライブインに止まる。さらに走って、ヘルシンキに近くなってきたところで再びトイレ休憩。といってもただの駐車場なので、露天で(笑)。自分も降りて新鮮な空気を吸うが、ふと気が付くと空には満天の星。市街地からは離れているので、とてもきれいに見える。他の人も空を眺めている。北極星が高いので、下にある大熊座もほぼ全部見える。秋の天の川もはっきり分かる。こういう星空を見るのは実に久しぶりである。バスはヘルシンキへ向かう。

 このあたりから、マッティと話をする。パートの並び方について。いつもYLで使っている並び方は、いろいろ試した末でベストだと思う並び方だという。トップとバスがお互いによく聞けること、バスはすべての基礎になるので、全体に聞こえるのが望ましいから後ろにおく。ただしこれはハーモニックな曲をやる場合で、ポリフォニーの場合は日本でのような並び方のほうが、各パートが独立していいだろう、という。並び方は曲によって決まる、YLはロマンティックなコーラスだから、今の並び方がいいだろう、ただし現代曲などの場合はハーモニーよりも各パートの独立性が大事なので、また別の並び方になる、という。他にこういう並び方をしているところはあるか、と聞いたら、以前に行ったエストニアの合唱団はそうだった、といっていた。混声の場合はどうだろうか、とも聞くと、女声が前、男声が後ろで、ソプラノとバスが前後になるのがいいだろう、ただもちろん曲によってはソプラノとテナーが前後になることもある、とのこと。  話終わった辺りで、もうヘルシンキの町中へ。時々止まって降りていく。オリンピックスタジアムでたくさん降りる。最後に学生会館前まで戻る。このとき11時過ぎ。そのまま駅に行く。日曜日なので電車は少なく、少し待つ。各停に乗って、家に帰ってきたのは12時過ぎであった。暗いうちに出かけ、暗いうちに戻ってきた。さすがに疲れた。しかし次の火曜日にはビデオ撮りがある…。

10/26(月)

 目が覚めたら8時前。よく寝た。ちょっと疲れが残っているのか、目が重い。ともあれ、洗濯をする。食事をしてから、週末の分の日記を書く。洗濯の間はずっと書いていて、それでもまだ終わらなかった。3時間くらい書いていたのだろうか。結果は約1万字になった(^^ ;)。もう12時近いが、とりあえずメールを出しておく。雨がわりとざあざあ降っていることもあるし、出かけるかどうかで迷うが、食事をするために出かけることにする(笑)。

 ヘルシンキに着いたら雨は降っていなかった。あまり雨の跡もないところを見ると、こちらでは雨はほとんど降っていなかったらしい。20kmくらいでずいぶん違うものである。気温は8度。食事は大学本館で。鳥のチリソースであった。ここの食堂はいつも混んでいるので、あまり好きではない。1時半なのでちょうど間のの時間になったから行列はなかったが、自分がでていくときにはまた長い列ができていた。ランチではご飯・じゃが芋・サラダは自分の好きなだけ取れるが、だからといって自分の食べられるだけをとるとは限らないようで、ご飯がたくさん残った皿を下げていたりするのをよく見る。こちらが貧乏性なのか、考え方が違うのか。

 食後はFAZERにいく。CDや楽譜を見る。CDもけっこうな値段なので、そうそうは買えない。合唱のものは、フィンランドのものはたくさんあるが、その他のものは作曲家別に並べてあることもあってあまり見つからない。しかし総数としてはかなりある。楽譜では、基礎学校用の教科書をぱらぱらと見る。面白そうなので買ってみたい気もする。こういうのは知り合いから譲ってもらう手もあるかな。見ていたら、カンテレの入門書もあった。5弦のカンテレは5つしか音がないが、いろいろな曲があるものだ。カンテレもぜひ欲しいのだが、店に並んでいる新品は500FIM以上。どこかで出物を探すほかはないようだ。声楽の楽譜でフィンランド作品集の1があったので買っておく。2は2月に来たときに買っておいた。1は高・中・低声の3種類がある。中声の方が人に貸したりできるかな、と思ったが、自分に合わせて低声にしておく。他にもフィンランドの19世紀からの代表的な曲を収めたものもあったので、またの機会に買っておきたい。ソロの曲は練習する機会がほとんどないのが残念。

 神学部に行って、文献を少し読む。そのうち眠くなるので、少しうとうと。新刊の書籍をぱらぱらとめくってから、4時半過ぎに出る。駅に向かうが、時間があるのでアンティラに寄っていろいろ眺める。ここでもCDが安く売っている。ただし種類は限られるが。しかし一度見てみる価値はあり。電車の時間まで待ってから、駅へ行く。駅でフィンランド国内の旅行パンフレットも少しもらっていく。そろそろスキーツアーの広告が目立つようになってきた。ラップランドでは早くからスキーができるようだ。中部フィンランドは1月くらいから。

10/27(火)

 今朝は7時に目が覚めた。昨日10時と早く寝たこともあるし、もう起きることにする。食事をして、少し勉強をする。だいぶ勉強も遅れをとっている。12月はクリスマスコンサートで忙しいはずだし、今のうちにしっかりやっておかなくては。といっても朝は少ししかできない。大学へ出かける。今日はYLのビデオ取りがあるので、タキシードを持っていく。重い。

 朝方にも雨が降っていたようで、まだ地面がかなり濡れている。電車からティックリラの川を見たらずいぶん増水していた。ヘルシンキは雨の跡もあまりない。今日も曇り。気温は8度。寒くなるのもひと休みか。

 衣装を神学部のロッカーに預けてから、フィン語の授業へ。テキストはなかなかすすまない。27章あるのにいま10章だから、ちょっと中途半端で終わるような気がする。しかも、フィン語2ではテキストが代わる可能性もある。OHPを使うのはいいが、色の薄いペンで小さい字で書かれたりすると、ちょっと後ろの席だと見えなくなる。今日はOHPを見て答えるようにいわれたが、「見えない」というとパスになった。なんとも(^^ ;)。明日向けのちょっとした宿題も出る。授業のあとで、数の概念について少し尋ねる。「たくさん」に当たる表現はmontaとpaljonがあるが、これらからフィン人はどのくらいの数を思い浮かべるのか、と聞いたら、前者は10くらい、後者は100くらいとのこと。これらの使い分けは辞書にはのっていないので、直接聞くに限る。

 朝が早かったせいか、けっこうお腹がすいている。しかし今は込んでいる時間なので、先に神学部に行ってラテン語を読む。しかし、お腹がかなりすいてきた。ご機嫌斜めになると勉強もすすまないので、食事に行くことにする。このとき、時計を家に忘れてきたことに気づいた。社会科学学部まで歩いていく。曇りの日には大聖堂は冴えない。やはり青空を背景にしたときが一番美しい。12時15分過ぎだったが、まだ混んでいる。しかし並ぶことはなかった。今日はツナのソースのパスタ。といっても、固まりのツナが入っている(^^ ;)。パスタがあるのにうっかりしてご飯をとり過ぎたので、ちょっと食べ過ぎた。

 食後は散歩。パソコンショップに立ち寄り、次にカイサニエミの模型屋によってみる。前はよく通るが、入るのは初めて。左半分は模型屋、右半分は手芸や飾り付けの素材を売っているようだ。模型屋のほうを見てみるが、鉄道模型やプラモデルなどがある。プラモデルは、タミヤやニッショーなどの日本製がたくさんあった。日本製品の世界制覇?はこの分野でも著しいようだ。船の模型は、プラモデルよりも木で作るキットが中心のようだ。150FIMくらいものが中心だから、日本よりちょっと高いか。あとは学部図書館、学生組合書籍部に寄る。ハロネンで白の蝶ネクタイを買おうとしたが,79FIMと以外に高い。これならストックマンと変わらないな、と思ってストックマンまで見に行くと、75FIMというのがあった(^^ ;)。まあこの辺であろうとおもうから買っておく。ドレスシャツも見てみたが、いずれも300FIM以上と高い。ハロネンには170FIMのものがあったが、まあとりあえず今あるものを着ることにしておこう。さらにアカテーミン書店により、旅行ガイドを少し見る。ヴァーサ関係の宿泊情報を調べておく。電車やバスなどが載っている時刻表が110FIMで売っていた。バスの時刻表はまとまったものは見たことがないので、便利かもしれない。ここまで歩いてから、大学に戻ってラテン語の続きをする。

 神学部の建物のエレベーターは珍しく?自動ドアのものだが、「開く」のボタンがあっても「閉じる」のボタンはない。自動的に閉まるまで待つしかない。これはお国柄なのか。他の建物でみてみないと分からないが。

 4時までやっても全部終わらず、少し残ったので家ですることになる。YLの新人練習に行く…が、4時過ぎになっても誰もこない。今日はビデオ取りだし、予定に変更があったのかな、という気分になる。しばらくしたら1人やってきた。それから少し集まってくる。事務員に頼んで音楽室を開けてもらった。今日は参加者が少ない。フィンランドのグリークラブアルバムを歌っていく。ポリフォニックなものや民謡?調のものなど、けっこういろいろな曲が入っている。しかし基本的に1回歌っておしまい。少し早めに終わり、タキシードに着替える。

 6時から発声。タキシードを着て来ている人も多い。着たままではさすがに動きにくい。発声が終わってから、移動式の壇に並び、練習する。こうみてみると、楽譜を見ながら歌っている人もおおい。必ずしも全員が完全に覚えているわけでもないようだ。だからといって安心はできないので、必死で覚える。しかし、全くといっていいほど覚えられない。何回も歌って直していくので、回数としてはけっこう歌っているはずなのだが、情けないほど覚えられない。次に出てくる言葉がほとんど予想できない。これはやはり意味が分かっていないからだろうか。朝に少し調べたが、細かいところまでは調べきれなかったのでよく分からない単語も多い。やはりそういうものは覚えられていない。休み時間などにも懸命に楽譜を見る。ビデオ取りなので、ビデオカメラでまとめてとるのかと思ったら、最初に声だけを録音し、それを流しながら、ビデオで撮る、という形であった。そのほうが音はよく響く。これだと、ビデオ取りのときには軽く歌っておけばいいので幸いだが、しかしそれでも口パクに近い状態であった。自分が情けなくなる。8時に終了し、今日は練習もこれで終わり。来週の日曜日がレースだということ。どこかで見られるだろうか。練習後にティモを捕まえ、タキシードのお金を支払う。これで一応自分のものになった。YLの演奏会で使うくらいなので、これで十分なものであろう。シャツなどは自分でも買える。しかし、靴などまで1式揃えたら本当に3000FIM以上かかってしまう。

 早く終わったのでゆっくり帰れる。駅のスタンドでビールを飲み、ハンバーガーを買って電車の中で食べる。コイブキュレに着いてもまだスーパーが開いている時間だったので、おやつやティッシュペーパーなどを買い込む。出たときにはもう入り口が閉まっていた。帰ってからラテン語の続きをする。あきちゃんから手紙が来ていた。年賀状の申し込み用紙も入っている。絵を描いて送り返さねば。自分の知り合いの分は、こちらから絵はがきでも出してみようか、と思う。

10/28(水)

 目が覚めたのは7時。また雨が降っている。けっこう強く降っているようだ。風もある。食事をしてから、朝の勉強。いつもの電車で出かける。出るときにはちょっとした雨だと思っていたが、風があるせいもあってけっこう濡れてしまう。電車に乗っているうちに乾くが、ヘルシンキでも雨。新聞で頭だけは濡れないようにして歩く。気温は4度。これは寒いし、冷たい。ちょっと冷えたので、授業の前に学食でコーヒーを飲む。10時ころにはけっこう賑わっている。ひと休みしてから教室へ行く。

 今日は最初に自由会話。今日は中国人のリュウが割り当て(笑)られる。おなじ神学部だが、いままで話したことはなかった。中国では生物学で大学を出たが、ここで勉強して牧師になるつもりだ、という。中国には教職者は少ないから、とのこと。しかしこの学期はフィン語とギリシア語しか取ってないというから、大丈夫なのだろうか(^^ ;)。大学のシステムの違いに戸惑っているようだ。しかしよく勉強している。フィン語で話すにしても、こちらはたくさん話すが間違いも多いので、時々訂正された(^^ ;)。残りの時間はテキストを読んでいく。内容的にはなかなか先に進まない。まあ気にしないことにしよう。

 お昼は、神学部に行っていくつかのコピーを取る。D論のための文献表などもちゃんと作らなくてはいけない。さぼってばかりである(^^ ;)。40枚ほどコピーを取ってから、食事に行く。いつものように社会科学学部へ。今日は鳥の炒め。高いほうには鳥の足が出ていた。あれは食べにくそうなので敬遠(^^ ;)。ご飯はちょっと茶色になっていたが、あれはそういうものなのか、あるいは水が足らなかったのか。今日は食べすぎないようにした。

   食後はオリエンタリアヘ行き、コプト語の文法書を読む。問題を全部やっていると時間がいくらあっても足らないので、まずは文法解説を一通り読むことに方針変更。こうしないと、テキストを読むところ迄行く前にまた挫折しそう(^^ ;)。ほかに、写真入りの考古学の本などをぱらぱらとめくる。こういうのは一番気楽に楽しめる。それから神学部に戻って、サマリア研究の宿題テキストを読む。ヘブライ語だが、文法的な形を見抜くのがちょっと大変。しかし、こういう言葉でも話している人たちがいるのだから、わかるはずである、と思うとちょっと気が楽。でも分からない(^^ ;)。

 4時からギリシア語の授業。授業の前にユハと話し、カッリオ教会の近くに神学書の古本屋があることを教えてもらう。これはラッキー。自分は昨日休んでいたので、封筒に入ったテストを返される。3マイナスであった。後でみたら、分かっているところ以外にもちょこちょこ間違えていた。今日は文法事項の解説だけで終わる。聖書の本文を読むのは来週からになりそうだ。

 6時からEOLの練習。このころには雨は止んでいた。今日はプーランクを歌う。クリスマスのための4つのモテット。クリスマスコンサートに向けた曲のようだ。1、2番を練習する。連絡では、12/19がクリスマスコンサートとのこと。この日はYLのコンサートもあるが、YLの方はたくさんあるし(^^ ;)、この日はEOLになる。重なったのは残念。練習場の近くにあるOLD CHURCHが会場。連絡中にテームがまわってきて、何人かに振込用紙を渡している。自分ももらった。EOLあてで150FIM。これが半期分の団費のようだ。

 エンリクと一緒に駅まで歩いていく。急いで歩いていったが、彼は電車に乗り遅れた。バス乗り場のほうにいったので、バスで帰るようだ。こちらは電車まで少し時間があるし、お腹がすいているのでピザを買って食べる。家に帰ったのは10時前。

 EOLのホームページを見たら、来年の予定も出ていた。CDのレコーディングは6月頭とのこと。そのときにはもうここにはいないので、残念ながらレコーディングには参加できないだろう。惜しい。

10/29(木)

 今日も7時過ぎに目が覚める。ここのところ寝起きがいい。今日の朝も雨。本当に雨が多い。早く起きると勉強する時間もあるのでいい。といっても、夜にさぼっている分を取り返すだけだが(^^ ;)。フィン語を少しやって、9時半の電車で出かけることにする。外に出ると、雨。昨日に懲りたので、傘を取りに戻って、傘を差して出かける。しかし南のほうを見ると晴れ間もある。どうも傘を持っていかないと雨になり、傘を持っていくと晴れるようだ(^^ ;)。ヘルシンキでは路面は濡れていたが、雨は降っていなかった。今日はパシラで降り、トラムに乗る。

 昨日ユハが教えてくれた古本屋に行ってみる。ハカニエミ広場までいって、歩いてカッリオ教会の近所まで。特に迷いもせずに行けた。週日の10-18時が開いている時間。中に入ってみると、ずいぶんたくさんの本がある。たまたま目についた聖書の棚から見てみるが、フィン語や英語だけでなくいろいろな言語のものがある。ロシア語、フランス語、ヘブライ語、エピオピア語のものまであった。それぞれの本に挟んであるしおりに番号がついているところを見ると、在庫はコンピューターで管理されているようだ。まあ、棚に二重に並べてあったりするので、そうでもしないと探すこともできないだろう。「何かおさがしですか」と主人に声をかけられるが、見ているだけ、と答えておく。一般向けの本のほうが多いように思う。聖書学のものは少なく、教会史や組織・実践神学向けのものが多い。しかもほとんどはフィン語。英語のものはたまにしか見かけないくらい。しかしよく探せば掘り出し物はありそうに感じた。今日は特に何も買わずに出る。

 せっかくハカニエミ広場まで来たので、マーケットホールも歩いてみる。2階で飾り封筒を買う。各地方の民族衣装の人形がついているもの。29FIMとちょっと高いが、なかなかきれい。ここにもマリメッコの店舗が入っているが、ちょっと場違いな気がしないでもない。1階の食料品はお昼ころなので賑わっている。魚を店で捌いたりしている。見ているだけでもなかなか楽しい。一回りして、トラムに乗る。

 社会科学学部の近所で降り、食堂へ。他の店舗と共通のメニュー表にない鳥の足があるのは、昨日の残りに違いない(笑)。ミンチのチリソース炒め?のようなものを食べる。今日は11時半といつもより早い昼食。お腹がすくかな、とちょっと心配。

 食後にはオリエンタリアへ。入り口に日本語や中国語、ハングルで「ようこそ」と書いた旗が立っていたり音楽が流れていたりとやけににぎやか。そういえば、掲示板にアジア・アフリカ学部の学部紹介のようなものがある、というのがあったのを思い出す。なかには着物を着ている女性もいる(笑)。こちらは本物の日本人だが(^^ ;)。いったん開いていた教室に入ってコート掛けに傘を掛けたら、席に着いていたおばさんに「それはいけません」といわれる。どういうことかととまどったが、「それは見苦しい。そこはコート掛けであるし、しかも小さくまとめなくては。Simple is best.」といわれる。なるほど、と思い、しかもこれからここは別の授業(サンスクリット語入門)のようなので、そそくさと退出(^^ ;)。あんなおばさんがサンスクリット語を勉強しているというのにも驚いたが、フィン人の美的感覚?の一端を見た気がした。

 ともあれ、予習のために図書館へ。このときには雨が降っていた。やはり傘を持ってきてよかった(笑)。しかし、ここにも音楽が流れている。図書館で音楽を流すとは何たることか、と思う。勉強している人たちも同じようで、早々にどこかへ移っていった。こちらはサマリア研究の予習をする。ヘブライ語ー英語の辞典が見つからないので、スタッフに尋ねる。しかしなかなか見つからない。たった2つ分の棚なのだが。結局、一番下の棚から1冊見付けた。アジアアフリカ学部にして、現代ヘブライ語の辞典が1冊しかないとはちょっとお粗末なように思うが…。ともあれ、それを使って読む。

 1時過ぎから授業。最初に試験についての説明がある。概説的な内容の説明、用語の定義、サマリア文字の翻字が柱だそう。読むべき文献もしていされているので、そう難しくはなさそうだ。1月の末が試験。続いてサマリアの新聞記事を読む。訳も尋ねられるが、基本的にサマリア文字からヘブライ文字への翻字ができればよいようだ。途中であてられたが、名前を「タユカ」といっているので直す(^^ ;)。すると、先生は「人間は知らない言葉を自分の知っている言葉に近いものに直してしまうものだ」といい、「日本語では「ユタカ」とはどういう意味なのか」、と尋ねるので、「豊富」とか「心が広いと答えると、「それはヘブライ語では「セファー」という、それで覚えられた」といっていた(笑)。しかし本当に覚えられたかどうかは来週まで分からない(^^ ;)。まあ7人しかいない授業ではあるが、学生の名前を直ぐに覚えているのはすごいと思う。今日でほとんど読んでしまった。予習をはるかに超えている。まあ翻字には余り問題はないが、意味をとる段階では固有名詞に惑わされる。これこそ、自分にはなじみがない言葉だ(^^ ;)。授業のあとでオリエンタリアに行き、コプト語の入門書を借りる。まだ木曜日だが、「週末のために」といったら月曜日までの貸し出しにしてくれた。

 あるいて神学部へ。雨はやんでいた。ギリシア語の授業に出る。今日も文法説明のみ。けっこう時間がかかるものである。しかし残るは接続法だけなので、来週からはいよいよテキストに入る。しかし、これまでやってきたことも忘れないようにしなくては(^^ ;)。

 授業の後は家に帰る。このときは激しく雨が降っている。地下街を通って駅へ行く。そういえば、大学の周辺に地下街を作るという新聞記事があった。まだまだヘルシンキの工事は続きそうである(笑)。コイブキュレまで帰ってくると雨はぱらぱら、になっていた。スーパーによる。酒類がたくさんつまれている。そういえば土曜日はハロウィン。しかしどういう行事があるとかはわからない。レジで尋ねたら、土曜日は休みだが日曜に短時間営業するとのこと。それはありがたい。果物売り場に、日本のみかんとそっくりのものがあった。

 夕食にはピザを食べる。それから、学生組合の留学生エッセイコンテストの原稿を書く。「友達100人できるかな」を枕にして、合唱を通じて2カ月で本当に100人の友達ができた、ということを書いた。入賞者にはいろいろな賞があるそうだが、さてどうなることやら。

10/30(金)

 朝が暗いのは、もうそういう時期になった、ということのようだ。7時過ぎは暗い。急に暗くなってきたような気がする。今日は朝食を食べてから、8時半の電車で出かける。出るときに雨が降っていたので、傘を持っていく。このころの電車はちょっと混んでいる。ヘルシンキについたら雨はもう降っていなかった。最初にコンピューターセンターへ行く。昨日書いたエッセイを印刷。する。この建物のなかの他のプリンターでも印刷できるようだ。カラーもできるようだが、そういうところには集中するのであまり使わないほうがよさそう。ついでに、セム語のクラスの案内も印刷しておく。それから大学図書館へ。シリア語の本について請求するが、一昨日が期限なのにまだ返っていない。予約しておくことにする。料金の5FIMは本を受け取るときに払うようだ。予約だけでお金がかかるのもなんだが、本が返却されたら葉書で知らせてくれるので、その送料も入っているということだろう。多分来週になるだろう、という。それからトラムで学生組合の事務所まで行き、先程印刷したエッセイを提出する。

 まだ授業まで少し時間があるので、学生組合の建物にポスターが貼ってあったカンドミノ合唱団の演奏会のチケットをチケットセンターで買う。来週の月曜日になる。額面は30FIMだが、センターの手数料がついて33FIMを支払う。オペラでは手数料がつかないから、団体によってついたりつかなかったりするようだ。いくつかパンフももらっておく。来年のサボンリンナ・オペラフェスティバルの案内もすでに置かれていた。チケットは高い。来年4月のタンペレでのオペラの案内もあったが、これは1週間ほどの公演で、一番安いものでも250FIM以上する。やはりオペラハウスのように定常的にしていないところでは日本と同じように高くなるらしい。それでもまだ時間があるので、スオマライネンで立ち読み。再びトラムを拾って、大学へ戻る。

 今日のフィン語の授業は、食べ物の話題。肉や魚の話になる。こちらの魚はよく分からない。しかしなかなか先へ進まない。ちょっと不満。授業のあとで少し質問をしておく。お昼にはもう晴れ間が見えている。まずフィンランド文学協会の書店へ行き、今使っているテキストの第2巻と単語集を買ってくる。全2巻なので、両方あったほうが全体を見るのに役立つ。他にも文法書など幾つか欲しいものがあったが、今日は止めておく。それでなくても今月はちょっと使い過ぎているようだ。それから社会科学学部まで歩いていき、昼食。今日は魚がある、とおもっていたらツナのスープだった。まあいつかはスープも食べてみたいと思っていたので構わない。小さい人参など野菜がたくさん入っていた。

 食後はぶらぶらと学部図書館へ。特に見るものもなかったが、フィン語の文法書を借りる。今日は祝日の前日なので、図書館もいつもより早く閉まるようだ。日本では考えられないが、こちらでは「前日」というのもいろいろ変化がある。うっかりしていると大変である。午後は大学で勉強しようかと思っていたが、家ですべきこともたくさんあるし、帰ることにする。その前に床屋へ行く。どこにしようかといろいろ考えたが、ポルタニアの正面にある所にする。わりと大きなところ。感じは日本とよく似ている。理容師は女性ばかりのようだ。余り待つこともなく、椅子に座る。最初に、学生証の写真を見せて「こういう感じに」といっておく。櫛を通そうとしたら少し固めているせいもあってうまく通らないので、「先に髪を洗ってもいいですか」といわれる(^^ ;)。顔を上に向けるタイプで、全ての席に備え付けられている。髪を洗って、カット。一通り刈ってもらい、写真では分からない後ろなどに少し注文をつけて、出来上がり。顔剃りなどは別になるようだ。これだけで学割で120FIM。まあ日本と似たようなものか。髪が短くなると頭が軽くなっていい(^^)。

 駅まで歩いていき、ちょうど出るところの電車に乗る。電車の中で「100」を読んでいたら、今日はブラームスのドイツレクイエムがあるという案内があった。聞いてみたいな、と思ったので、次のパシラで降りる。まだ2時過ぎ。ついでなので、ここから近いヘルシンキ市立図書館に行くことにする。中は2階になっていて、真ん中には池?もある。1階は子供の本と一般書。子供の本のコーナーも広い。ぶらぶらと棚を眺めていく。詩は、特別のコーナーとしてまとめられているところに、この国でのステータスを感じる。フィン語・スウェーデン語のほかにも、英語・ドイツ語・フランス語のものがたくさんある。子供の絵本のコーナーには、さらに多くの言語のものがある。日本語もあった。子供の本についてたくさんの言語があるのは、子供の教育を重視しているのだろう、と思う。2階は雑誌・新聞と音楽。思い付いて、この前のタンペレでの演奏会の記事がないか探してみる。タンペレの新聞の名前をレファレンスで教えてもらい、翌日とその翌日の新聞を出してもらう。が、残念ながら見当たらない。自分に送られてこないこともあるし、没になったか(^^ ;)。新聞も外国語のものがいくつか置かれている。音楽のコーナーの入り口には、特別にセンサーが置いてある。いくつかCDプレーヤーが置かれており、CDを聞くことができるようになっている。クラッシックからポップスまで、幅広く置かれているようだ。音楽書のほかに、楽譜やオペラのライナーなどもある。合唱の楽譜も少し置かれていた。CDでは聞きにくいなあ、と思っていたら、テープが目についた。CDよりも数は少ないが、これも幅広くある。フィンランド国立オペラの演奏テープがあるのには驚いた。メリカントの歌曲と、マテトーヤのオペラのテープ、それから台本を借りる。コンピューターで登録すると、レジのようにレシートがでてきた。ここに借りたものと返却期日が書いてある。2週間になっていた。他の棚には、レコードが何枚か売り出されていた。レコードでは買っても困るので、買うのはやめておく。

 この時点で4時。なぜかあまりコンサートにいく気乗りがしない。7時半の演奏会までどうするか、図書館は6時で閉まってしまう、などと考えたら、もういいか、という気分になった。別にもったいないという気もしないので別にいいだろう。パシラの駅まで歩いていく。時間があるので、パシラの駅舎の中をぐるっと歩く。ファストフードや花屋、中国用品の店や古道具屋まである。ペットショップ、というかペット用品の店もある。ちょうどここはジャンクションなので、そういう需要もあるのだろう。電車の時間まで待ってから帰る。

 コイブキュレに着いたのは5時。スーパーで夕食を買おうと思ったが、デリカは大分並んでいる。家で焼けるものにしておく。しかしうろうろしている間にレジに行列ができている。しかたなく並んでおく。家に帰るときにはもうかなり暗い。星や月が見えているから曇っているわけではないようだが、ずいぶんな暗さである。これからまだまだ日が短くなっていくとは、大変である(^^ ;)。家に帰ると、妻から手紙が来ていた。夕食にと思って買ってきたのを焼いて食べるが、人参?のペーストのようなもので、これはそのまま食べるものではないようだ。パンに塗って食べる。前のレバーといい、5FIMくらいと安さにつられて買ったが、これはあまりよろしくない買い物のようだ(笑)。学習しておこう。

10/31(土)

 8時に目が覚める。ちょうどいい時間なので洗濯をする。夜は毎日予約がつまっているが、午前中は当日でも大丈夫なくらい。しかし、やはり乾燥機の1台は壊れているようで熱くならない。その間は食事と勉強。日本からもってきたフィン語の入門書を一通り読むことができた。基本的な文法は頭に入っている「はず」なので、後は語彙と慣れの問題。フィン語ははっきりと発音される言葉なので、単語さえ知っていれば聞き取りはわりと容易。しかし、時々会話で全く分からないこともある。積極的に会話し、書くことで慣れていくしかない。この時間に、妻から頼まれていた年賀状の原稿を描く。これを日本に送り、印刷して出してもらう。自分の関係分は、せっかくなのでこちらから出してみたい。しかし葉書大の紙を探し、またそれがコピーできるところも探さねば。大学のコピーセンターで聞いてみるのがよさそうだ。しかし送料だけでもばかにならないが(^^ ;)。

 12時過ぎに出かける。今日は祝日なので、ダイヤが普段の土曜日とは違うと思うのだが、自信がない。実際にいってみたら、日曜日の時間で電車が来た。ヘルシンキまで行って、駅で11月のガイドをもらおうとしたがまだ置いていなかった。10月のガイドは山積みになっている。紛らわしくないように、とのことだと思うが、置いてくれてもいいと思う。そのままトラムでDOMUSまで行き、食事。今日は豚のシチュー。シチューといっても、普通の皿で出てくる。スープに近いものになじんでいるので、ちょっと違和感があるがまあそういうものだろう。パンにバターをたっぷりつけるのが習慣になってしまった。以前妻がそうしているのをみて顔をしかめたものだが、今では同じようになっている(笑)。バターがおいしいせいもある。バターの類は、スーパーに行くと10種類くらいあるようだ。バターだけで1つの棚があるくらい。バラエティーが豊富である。それはチーズも同じ。フランスには400種類のチーズがあるそうだが、フィンランドも負けていないと思われる。しかし、唇の後ろに間違って噛んで作ってしまった口内炎がいたい(^^ ;)。

 今日は久々に町を歩いてみることにする。トラムに乗っていく。家族連れの姿をよく見る。町中の商店はほとんどが休みで、アレクサンテリン通りなどは人がまばら。開いているのはファーストフードとお菓子屋、キオスクくらい。人々はどこに行くのだろうか、と思うが、博物館や美術館などは開いているようだ。マーケット広場まで行ってみるが、見事に何もない。個人の店だから、やはり休みになるのだろう。意外にも旅行案内所は開いていたので寄ってみる。11月のヘルシンキ周辺の音楽・劇場ガイドがあったのでもらっておく。ここにもヘルシンキガイドやHelsinki This Weekの最新版は置いていなかった。棚を見ると、「ヘルシンキを歩く」の英語版がある。これは前にフランス語版をもらったやつとはちょっと違う。5つほどのコースが示してあり、解説もけっこう詳しくついているのでこれは使える。一度これらのコースを歩いてみたい。

 そこから再びトラムに乗り、エイラまで行く。今日は雨がぽつぽつ当たる天気。前から気になっていた教会の近所を通ったので、寄ってみることにする。鋭い塔が印象的な、アグリコラ教会。中には誰もいない。大きな教会で、1300人入ると入り口の消防署の検査票に書いてあった。祭壇の部分の壁が赤に塗ってあるのが珍しい。また側廊の鴨居にも絵が書かれている。椅子には背まで布団が付いているのが珍しかった。たいていは木のままである。ちょうど聖歌隊の練習でもあるようで、2階のオルガンのところに人が集まっていた。そこから西に歩いて海まで行く。エイラ地区は美観で知られるが、なるほどひと味違った建物が多い。イタリア大使館などは小さいが、Old Student Houseに似た外観。その他、なにかはわからないが様々な建物があって、散歩には楽しい。

 海まででると遊歩道が海沿いに続いている。曇りでもありちょっと寒い。海はコーヒー色。雨のせいか。遊歩道の中に、頂上に火がともしてあるモニュメントがある。見てみると、海で亡くなった人たちを記念しているもののようだ。月桂樹の花輪がそなえてあった。直ぐ近くには、昔の灯台の跡らしい石もあってプレートがついているが、これがなければただの石としか思えない(^^ ;)。ずっと歩いていくと、前に来たことがある海沿いのレストランに着く。休みかと思いきや開いているようだ。ここからヨットハーバーになるが、たしかに夫婦で散歩している人や犬を連れている人など、けっこう寒いのにたくさんの人が歩いている。こちらの人は散歩が好きなようだ。夜中でさえ見かけることがある。さらにハーバー沿いに歩いていく。ヨットも多くは陸に揚げられている。シーズンは終わったようだ。つがいの鴨が直ぐ近くで泳いでいたり、陸を歩いていたりする。わりと近くまで行っても大丈夫なようだ。ハーバーが尽きると公園にたどりつく。カイヴォプイスト公園。この公園の中を歩いてみる。入ったところで、なにやら人が集まっている、といっても5、6人だが、所がある。行ってみると、なんと屋外チェス場であった。地面に5、6つほどチェックが書いてあり、その上で大きなコマを動かしている。なかなかたのしそう。しかしけっこう寒いのだが(^^ ;)。この公園には小さな山があるので昇っていく。山の上にも大きな岩。ヘルシンキ市内ではあちこちで岩の露出を見る。大きな岩盤の上に乗っていることがよく分かる。一つ山を越えたら、もう一つ山があって、上に何やら建物が見える。これにも昇ってみる。雨が多いせいで足場が悪いが、階段も整備されつつあるようだ。上まで行くと、海のほうに見晴らしがきく。ヨットハーバーが一望できる。スオメンリンナもよく見える。さっき見えていた建物は大変小さなものだが、観測所と書いてある。開いていなかったが、夏の晴れている日となどに開いている、という。10FIM。あとで「ヘルシンキを歩く」でみたらちゃんと説明があって、星を見るところだとあった。なるほど、晴れた日に開いているわけだ(笑)。

 そこから降りて、さらに海沿いに歩く。大分寒くなってきた。ちょうどカフェの横を通ったので、入って暖まることにする。カフェ・ウルスラ。コーヒーは10FIMとちょっと高い。ケーキや簡単な食事もできるようだ。中からは海がよく見える。夏には混雑しそうなところである。ひと休みしてから、今度は町の中を歩いていく。ずっと真っすぐ歩いていくと、教会が見える。どこかな、と思ったら聖ヘンリー教会。カトリックである。中に入ってみると、割りに小さい。天井には木の梁がある。ステンドグラスもそれぞれの窓につけられていた。中では何人かが祈っている。静かに中を見せてもらう。そこからさらに真っすぐ行くと坂になってきて、それを昇り切るとまた観測所らしきものがあった。これも後で調べたら、エンゲル設計の観測所であった。現在もヘルシンキ大学天文学部の所有であるとのこと。ヘルシンキの南部の中ではかなり高台にある。そこから降りていくと、目指すドイツ教会があった。ここで今日、Cantores MinoresのOB合唱団のコンサートがある。フィンランドによくある、煉瓦色の教会。比較的古いほとんどの教会建築はこの色で、大聖堂とテンペリアウッキオが例外なくらい。入り口で「プログラム代」30FIMを払い、両面コピーのプログラムをもらう。ついでにこの教会の案内ももらっておく。ここも規模としてはそう大きくない。ドイツ系のルター教会で、ドイツ語の礼拝をしているようだ。こういう教会の演奏会ではけっこう寒いので、コートを着たままというのが普通。最初脱いでいたが、座っていると寒くなるので再び着た。

 演奏会は4時から。最初は2階にあるオルガンの独奏。続いて、合唱も2階から聞こえてきた。オルガン伴奏のためのようだが、当然姿は見えない(^^ ;)。しかし、プログラムにも現在はオペラなどで活躍と書いてあるとおり、もと合唱団出身のソリストたちは素晴らしい声。合唱のほうもしっかりしている。間にソロの曲も入る。その間は合唱が休憩になるので、全体としては休憩の時間は無し。半分ほど過ぎたところで、合唱団が下に降りてきて祭壇の前に並ぶ。30人弱、男声ばかり。男声の児童合唱団の出身とある。今度はピアノ伴奏の曲もある。最後は「フィンランディア」。YL以外の団体が演奏するのは初めて生で聞いた。解釈の違いなどが面白い。演奏は素晴らしかったのに、拍手が小さかったのが不思議。お付き合いできている人が多いのだろうか。1時間15分ほどの演奏会であった。

 歩いてエスプラナーディ通りへ。見たことがある風景だな、と思ったら、ドイツ教会は日本大使館の直ぐ近くであった。マーケット広場からトラムに乗り、駅まで行く。トラムも日曜時間のようだ。待っている間に時刻表を眺めて、1番のトラムは土日は走っていないことを発見。トラムはいつでも走っているような気がしていたので、意外に思う。元老院広場を通ったが、もうライトアップもなくて、大聖堂は時計だけが光っていた。駅地下のスーパーでカレリアパンを買って帰る。

 もう真っ暗。家まで帰ってくると、ヒーパッカもいなかった。彼の行動はどうなっているのか、よく分からない。妻に電話し、明日のF1を録画してもらうように頼む。こちらでの放送は生中継のようで、朝にある。演奏会のときに気になっていた、「フィンランディア」の歌詞を訳す。いくつか文法的に分からないものがあるので、フィン語の先生にメールで聞いてみることにする。フィンランド語のキーボード配列をいれておいたが、そろそろ役に立つときがきたようだ。  こちらの人の靴の感覚について。ヒーパッカは廊下から共同部屋に入った時点で靴を脱ぐ。ペッカもその点は同じ。しかし、出かける前などは靴でも共同部分を歩く。教室や図書館でみていると、靴を脱いでいる人はけっこういる。読書室にはじゅうたんが敷いてあるが、靴を脱いで勉強している人は多い。EOLの練習では、練習室では靴を脱いで靴下になって座っているも多い。しかし脱いでいない人もいるので、座っているときには靴をはいている人と靴下のままの人が隣同士になったりする。演奏会のときには、教会の中で靴を脱いで歩いている人もいた。石の床だったので冷たくないのかな、と思う。いわゆる「部屋」というところでは、靴下のままでもいいというのがこちらの人の考え方のようだ。また靴下というのは靴に近い感覚のものらしい。日本人の感覚とは異なる点だと思う。


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