12/1(火)

 目が覚める。この季節は暗いので、時間が分からない。が、飛行機が飛ぶ音がするところからしてそんなに早い時間ではないはず。時計を見ると7時半であった。今朝は0度。朝食を食べて出かける準備をする。今日は演奏会なので、燕尾服やその他の小物をもっていく。授業のテキストも入っているので、鞄が重くなるのがつらい。燕尾服は重いようで、スーツの袋にいれていたら袋が痛んできた。衣装ケースはいずれ買った方がいいのかもしれない。あまりのんびりする間もなく出かける時間になる。

 いつもの電車でヘルシンキへ。神学部によって、燕尾と靴をロッカーに預ける。これで随分楽になる。フィン語の授業に出る。今日はまた人が少ない。もう最後に近いので、テスト向けの復習が多くなる。一度やったことなので難しくはないが、時々忘れていることに気づく。しかしフィン語1よりも3の試験の方が先にあるというのはつらい。取り敢えずパスすればいい、という感じである。授業の後で、先生にメールで出しておいたフィン語の同義語辞典について回答をもらう。小さいものとしてはかなり古いものがあったが今では手に入らないだろう、とのこと。同義語辞典は一般的ではないようだ。フィン語の語彙はわりと少ないのかな、という感じがしていたが、これも一つの傍証と言えるかもしれない。

 今日はなにか先生にあるようで、早く終わる。よって、空いている時間に食事ができる。メッツェタロまで行く。あまり良さそうなものがないので、昨日と同じブタのシチュー?を食べることにする。ナイフやフォークを見ると「made in Japan」と書いてあったりする(笑)。満腹。食後はどこで勉強しようかな、と考えて、オリエンタリアへ行くことにする。しかし、楽譜の暗記が気になるので、今日はとにかく暗記をすることにする。ひたすら楽譜を眺めるが、この時に実はけっこう音が曖昧なところを発見する(^^ ;)。いかんいかん。難しくはないので一人でもとれるが、ちゃんと覚えてしまわねばならない。EOLと共通する曲などはこんがらがってくる。ぶつぶつとつぶやきながら、何度もさらう。そのうちに疲れて来るので、気分転換を兼ねてコーヒーをのみに行く。本館のカフェは一杯。最近は常にいっぱいだ。そして自分はマクドナルドに行くことになる(^^ ;)。こちらは昼下がりは空いている。ここでも楽譜を眺める。覚えられたかな、と思って楽譜をはずして繰り返すと、やっぱり覚えられていない。これのくり返し。覚えられない自分が情けなくなる。そもあれ最初と最後(きよしこの夜)は暗譜するように努力する。意味が判らない言葉は覚えられない、ということを痛感する。

 そのうちに3時を回ったので、いったん駅前まで行き、買い物をする。ちょっと雨がぱらついてきている。いやな天気だ。神学部まで戻ってきたらもう3時半。4時が集合なので、急がなくては。衣装を取ってきて、7Bのトラムに乗る。これでハカニエミまで行き、そこから歩いてカッリオ教会へ。坂を上っていく形になるのでちょっとつらい。丁度4時くらいについたが、まだ4、5人がいるだけ。受付を見ていたら、教会で行われるクリスマスコンサートについてまとめた小冊子があった。教会がまとまってつくっているものらしい。12月で、100以上のコンサートがあるようだ(^^ ;)。YLも載っているが、なぜかEOLは載っていない。しかし、一覧できるので実に便利。

 ステージ用の段組みが始まる。といっても、教会の倉庫にあるものを自分たちで持ってきて組み立てる。3段の、けっこう大きな雛壇ができた。リハーサルが始まる。発声はなし。しまったな、と思う。最初に玄関に集まって、入場の練習。歌いながら入っていき、ステージに並ぶ。これは暗譜にせざるをえない(^^ ;)。それから最後の練習。「きよしこの夜」を客席にまで広がって歌うが、移動はその前の曲を歌いながら。ということはこれも暗譜。これは盲点だった(^^ ;)。しかも3番まである。「きよしこの夜」ですら危ないというのに。それから舞台に戻り、曲の練習。テナーは高い曲が多いので、発声をきちんとしていないとつらい。ホルン、ファゴット、ソプラノと合わせていく。一度歌ったら終わりだが、一応全部の曲を歌う。6時前まで練習していたが、もうお客さんが来始めている。裏の控え室に入り、着替えと待機。今日の演奏会は、どこかの老人団体?のもののようだ。待機中に、PikkuJouluの会費を支払うように呼び掛けられる。たまたまお金を持っていなかったので、土曜日に払うことにしてもらう。また、服装はどうすればいいのかと聞いたら、ジャケット着用でいい、スーツの必要もない、とのこと。どういう会なのか楽しみだが、こういうときは服装にいつも気を使わねばならない。こちらの人の常識を知らないと大変なのは、白蝶ネクタイの件でもわかっている。

 時間になり、外をまわって玄関へ移動。そこで整列し、歌いながら歩いて入場する。聴衆は200人くらいだろうか、平土間は結構埋まっている。壇上に整列して歌いおわる。今日はマッティの解説もなし。その前に、司会者が簡単に説明していたようだ。フランスのクリスマスキャロルはみんなにとって新曲のよう。全員が譜持ちのためか、やや柔軟さに欠ける演奏。速いところはいくつか言葉をこぼしてしまう。次はイギリスのクリスマスキャロル。これは過去にも歌っているようだが、ジャズ風の編曲で、とにかく走る走る(^^ ;)。マッティも必死で押さえているが、特にバスがやたらに速くなる。それで楽器とも指揮ともずれてくる。こちらもどう合わせていいのか分からなくなる。最後の曲には指を鳴らし手打ちをいれるところがあるが、これもばらばら。一番最初の指鳴らしをしたのは自分だけだったのでは(^^ ;)。練習の時もよく落ちていたが、本番でもとは。しかし何回もあるうちに自分も結構こぼす。この組曲に関してはひどいものだった。この聴衆は曲の終わりにもなぜか拍手をしないのだが、演奏のせいもあったのか。

 ここでいったん下がり、オルガンソロが入る。その間は休憩。再び壇上に整列し、後半のプログラム。フィンランドのクリスマス曲ということで、基本的に暗譜らしい。みんなには馴染みのあるものなのだろうが、自分には新しいものばかりで、言葉をつけるだけで大変。譜持ちで歌う。人によっては、ある曲だけ楽譜を見ていたりしている。しかしどうも言葉が口についていない。これは自分の練習不足だ。甘く見ていたのがいけなかった。反省しきり。最後の一つ前は暗譜で歌うが、がんばったけど半分以下しか歌えなかった。「きよしこの夜」はさすがに歌えるが、これは客席に広がり、しかもテナーで混ざっているので、となりは違うパートの音を出している。ハモってはいるが楽譜通りなのか、時々心配になる。意外にも途中で落ちてしまった。ともあれこれで終わり。それなりの拍手はもらう。最後に讃美歌を全員で歌いながら退場する。この歌を歌うというのも全然聞いていなかった(^^ ;)。メロディーは日本の讃美歌にもあるもので知っていたが、もちろん歌詞は知らない。適当にごまかして歌う。常にこういうのがあるのはかなわない(^^ ;)。アンコール対策?としてフィンランディアは勉強しておいたのだが…。着替えの時も、あまりいい雰囲気とはいえない感じ。やはりみんなも不満な演奏だったようだ。適宜解散で、舞台の片付けを新人がする。教会を出たのは8時過ぎ。演奏会としては、1時間強といったところか。

 ハカニエミまで歩いて戻り、地下鉄で中央駅まで戻る。地下鉄の行き先表示は液晶で、次の電車までの残り時間が表示されるのが面白い。しかも、行き先表示はフィン語の文法通りの方向を表す形で、ふつうの形とはちょっと違っている。普通の電車の駅での表示は、普通の形。意外なところで違いを発見する。電車に乗って、ふと気がつくと、たしか後ろにもう1両つながっていたはずなのに、つなぎ目になる部分には扉がない。車両の移動はできないようになっている。いろいろ特徴があるものだ。中央駅で食品を買い込んで、スタンドでフランクフルトを買って食べる。電車で帰ってきたら、10時過ぎ。なんか、疲れた。

12/2(水)

 今日は目が覚めても体がだるくてなかなか起きられない。やっと起きたのが8時半。今日は朝から出かけなくてはならないので、急いで準備をしなくては。気温はプラス2度。朝食は最近カレリアパン。ご飯が乗っているせいか、腹持ちがいいように思う。準備ができたらもうでかける時間。気温が割と高いから、道路はぐしゃぐしゃになっている。こういうのがいちばん困る。凍っている方がましだ。天気は、どんよりとした曇り空。

 ヘルシンキに着いたら、そのまま大学へ行く。気温は5度。随分暖かい。授業まで問題集を読む。授業は、復習とさらにテキストの続き。反復練習が多いのでちょっとつまらない。しかし、交換留学生などの「ちょっとフィン語をかじってみよう」という程度の学生に教えるのはそれはそれで大変だろうな、とも思う。フィン語の文法がややこしいところがあるのは、先生も認めていた。とにかく文法的に先のことには触れないようにして、困難さを避けようという姿勢が出ている。

 お昼の時間に、文学協会へフィン語の文法書を買いに行く。建物の前を通ると、「セール」の看板が出ている。そういえば、前に広告を見ていたセールがあるのだった。本館の玄関ホールでやっているようなので、見てみる。そんなにたくさんの本ではないが、いろいろ並べてあるのを眺めていく。買ったのは、現代フィンランド文学のアンソロジーの英訳、これは同志社にフィンランドの大統領が来た時に置いていったもの。フィンランドの各時代から集めた詩のアンソロジー、これも英訳。カンテレの演奏のテープと、民族音楽?のテープ。これらは古いものなのか、10FIMと随分安かった。あと、ハンガリーの民謡の楽譜。フィン語の対訳がついている。自分でも歌えるものだし、使えそうだ。これも10FIM。フィンランドではウゴル語族の研究が盛んなためか、ハンガリー関係のものがたくさんある。中欧のハンガリーと、北欧のフィンランド。何の関係もなさそうだが、こうしてたくさんの本があるのを見ると不思議な感じがする。それから本屋の方へ行き、フィン語の定番文法書を買う。鞄がいっぱいの時に限って、いろいろ買ってしまう(^^ ;)。

 その後はオリエンタリアへ行き、フィン語の勉強。問題集を読んでいく。さすがに第2巻はちょっと難しくなる。1日3課をやっていけばテストまでに一通り読めるが、なかなか大変だ。ある程度やってから、1時半くらいに食事に行く。社会科学学部まで歩いていく。実にどんよりとした天気で、気分も重くなる。今日の食事は、ブタのステーキにカレー風ソース掛け。少しにしておくつもりが、いつもたくさん取りすぎてしまう。残している学生も多いが、それは自分の主義に反する(^^ ;)。いつも食事時間は30分弱掛けているから、余裕がある。食べながらテキストを読もうかと思って持ってきたが、やはり食べる時はゆとりを考えたい。本を読みながらの熱心な学生もいるが。

 食後は再び勉強の続き。ギリシア語の勉強もする。フィン語のテストの方が先なので、ギリシア語は少し後回しになっている。しかしいずれにせよ、来週でギリシア語は終わりだ。ここに授業の時間までいる。それから神学部に行き、コーヒーを買ってから教室へ行く。そのうちにユハが来て、「チケットは持ってきたか(笑)」という。前にメールでYLのコンサートにこないか、と誘っていた。幸い空いていて、家も教会の近くらしい。40FIMのチケットだが、20FIMで売る。半額は自分で負担。初めてフィンランドでチケットを売った(笑)。授業は、テキストを読んでいく続き。自分の読みが結構曖昧なのが分かる。もっとしっかり勉強しなくては。ギリシア語にしてもフィン語にしても、ある程度進んでくるとやはり大きな辞典が欲しくなる。フィン語は買った。しかし、授業に持っていって参照する、というわけにはいかない。ギリシア語のものは家にあるので、買うのもちょっと。まあ大学で読めばいいのだが。しかし、辞書類は図書室から持ち出せないので、授業に借りていって参照、ということができないのが残念。ほぼ定時に終わる。

 EOLの練習に行く。練習場の建物にある掲示板に「タピオラ合唱団」の広告が出ていた。しかし、予定を確かめたらEOL関係の演奏会があって、聞きに行けない。残念。今日はクーラの曲が新しく入った。日本で楽譜を持っているやつだ。途中に1ヶ所ローCが出てくるが(^^ ;)、あとは歌える。あとはクリスマスの歌と、プーランク。とにかく、早く覚えるように努力する。プーランクはラテン語だが、なぜかすぐに覚えられる。フィン語では苦労するのに。演奏会のプログラムは未だに明らかにならない。しかし、チラシとチケットはできたとか。ただチケットはみんなに配るわけでもなく、売らなくてもいいのかな、という感じ。よく分からない。ノルマは特に無いようだ。会費から支払われるのか。しかし、演奏会の広告もどこでも見たことがないが(^^ ;)。定時に終わる。

 駅まで歩いていく。ちょっとお腹が空いたので、ピザを買って電車で食べる。家に帰ってきたら10時過ぎ。

12/3(木)

 目が覚めたら外が明るい。時計をみたら9時。えらく遅くまで寝てしまった。気温は3度、暖かい。少し疲れが出てきているのか、朝もなかなか頭が回らない。とにかく食事をして体を起こす。洗濯物もたまってきたので、洗濯場所へ持っていく。幸い空いていた。予約用紙が変わっていて、朝は9時からになっている。8時からは使えないのかしらん。実際に見てみてみないと分からない。食後はフィン語の勉強。1課進むのにもほんとに時間がかかる。テストまでに一通り読めないかもしれない気がしてきた。とにかく、読む。10時半くらいになって、そういえば今日はタピオラで合唱セミナーがあるのを思い出す。夜の演奏会は行くつもりにしているが、昼間のセミナーはどうしようかな、と思っていたもの。前々から悩んでいて、さらに今も悩む。チラシに「合唱指揮者には大切なチャンスです」とあるのをみて、とにかく行ってみようと決断。12時からの開始なので、もし会場が一杯で入れないようなことがあれば、それから大学に戻っても授業まで十分時間がある。そうなると11時の電車に乗らねばならないので急いで準備する。みると郵便が来ていて、図書館からの、コピーが届いたという連絡と、あきちゃんからの手紙。手紙がくるのは何だか久しぶりのような気がするのでちょっと嬉しい。電車に乗ってヘルシンキへ。

 ヘルシンキからはバスでタピオラに向かう。事前にバスの番号を調べておいたが、念のためバスの運転手に確認して、104に乗る。タピオラ行きは52、54のプラットフォームから出るようだ。バスの中で、あきちゃんから来た手紙を読む。いろいろ大変なことがあるようだ。ふと気がつくと見慣れない風景になっている。前に乗ったバスと違って、これは南周り、ラウッタサーリを経由するバスだった。こちらのほうが速いはず。しかし、窓の汚いこと。雪や雨の跳ねあげで、ものすごく汚れている。結構高速で走るせいもあるのかもしれない。15分ほどでタピオラへ。

 会場は前に行ったことがある文化センターなので、歩いていく。途中にマクドナルドでハンバーガーを買っておく。3時までなので、お腹が空くだろう。このあたりは商業地区で、前には気づかなかったが随分たくさんの店がある。ヘルシンキに行かなくても十分なものが得られそうな感じだ。社会的インフラはかなり整っているといえる。会場について、チケットを窓口で買おうとしたら「無料だ」とのこと。チラシには30FIMと書いてあったのだが。まあありがたいことだ。今晩の演奏会のチケットも買っておく。ここはタピオラのチケットセンターになっているようだ。ふと見るとカリがいた。たまたまそこに居たおじさんに紹介してくれる。ドミナンテのセッポ・ムルトであった。いきなりだったので言葉が出ない(^^ ;)。後で考えたら聞きたいことはたくさんあったのに。少し時間があるので、急いでハンバーガーを食べる。

 12時からセミナーが始まる。会場は文化センターの小さい方のホール。文字やOHPが読めないと困るので、前の方に坐る。前には気がつかなかったが、名前は「ロウヒホール」。カレワラの人物の名前だ。今年の合唱フェスティバルのひとつの目玉なのだと思うが、参加者は30人くらいか。ちょっと寂しい。しかし、タンペレからバスで来る団体もあるという。ふと見るとマッティも座っている。セミナーの講師はスウェーデンのアンデルス・エビュ、モデル合唱団は彼の創設したミカエリ室内合唱団。30名弱の団体である。英国のお客さんがいる(知り合いの指揮者?らしい)ので英語で話した方がよいでしょう、と。これは実にありがたい(^^ )。フィン語での講義を覚悟していたので。おかげで、内容がよく分かった。資料としてスウェーデンの作曲家のリストが配られる。またOHPで楽譜の冒頭を映し出す。日本なら楽譜のコピーが配られるところであろうが、それはだめなようだ。

 話の最初は、「スウェーデン・サウンド」について。これにはどういう秘密があるのか、と私もよく聞かれるし、エリック・エリクソンもよく尋ねられると言っていた。しかし、答えるのが難しい、という。なぜなら、私にとってこれが当たり前のサウンドだから。それはそうだ(笑)。その上で、いくつかの理由をあげていく。スウェーデン語自体がメロディックなアクセントを持った言語であること。また、二重母音・母音の音が他のヨーロッパの言語と異なること。これについて、「スウェーデン語の母音で歌った場合」「フィン語の母音で歌った場合」というのを同じ曲について試してみていた。また歌い方としては、非常にソフトでメロディックな特徴がある。さらに特に歌詞に対する感覚、これは特にスウェ語の作品について。スウェーデンの合唱のもつ独特の詩的雰囲気。ちなみにスウェーデンの民族音楽は短調でメランコリック、デンマークは長調で明るい、とも。また社会的な背景としては、第二次大戦後に合唱が音楽教育に取り入れられ、基礎的な能力が皆にあること、家庭を中心としたサロン的な音楽環境。これについては、スウェ人が余暇にすることは第一にスポーツ、第二に合唱である、といっていた。それから、これらを背景として特にストックホルムにおいてはたくさんの高度なアマチュア合唱団がプロのすぐ下に控えている、ということ。ミカエリ室内合唱団もそういうアマチュアの一つだという。

 つづいて、19世紀の始めから代表的な作曲家について簡単に解説し、曲の一部を歌って紹介していく。もちろんほとんどはスウェ語。しかしたまにラテン語などがあるようなので、チェックしておく。19世紀にはドイツの影響、20世紀にはドイツとフランスから影響を受けているという。全部で20人くらいについて解説があっただろうか。幾つかは今晩の演奏会で演奏するとのこと。またスウェーデンの音楽財産については、国家の支援が大きいと言っていた。もちろん音楽の中心は昔から教会だったが、16世紀に教会が国有財産化されてからは、国家によって支援されてきたことは明らかである。だからこそ、例えばイースターにストックホルムのいくつもの教会で受難曲のような大がかりなものが演奏できるのだ、と。しかし、2000年に国家と教会は再び分離されることが決まっていて、私や同僚たちは憂慮している、教会が今までと同じように音楽にお金を使うことは恐らく不可能であるだろうから。とにかくどういう風になるのか見守っていきたい、とのこと。

 他に気づいたこと。この人は指揮する時にかならずどちらかの足の踵が浮いているということ。しかし腰は安定している。紹介された曲は全てアカペラ。「もし合唱をclearlyに歌おうとするなら、ピアノは使えません」と。だが、ステンハンメルの「春の夜」についてはピアノがついていても大変美しい、という。またある曲について、これはスウェ人の作曲家だがデンマーク語の歌詞になっている。だから我々は音楽は理解できるが言葉を完全に理解することはできない。デンマーク人はその逆だ(笑)とのこと。3時までのセミナーでは時間が足らないくらい。実に充実したセミナーであった。日本に帰ったらあれもやってみたい、これもやってみたいと夢が広がる。

 セミナーの後は、いったんヘルシンキに戻る。再びバスに乗る。また南周りのバス。ヘルシンキのバスターミナルに着く前に、例のトンネルを通る。別に何の変哲もないトンネルだが、町の中にあるのが妙。そういえば、新聞にヘルシンキ中心部を横切るように車のトンネルをつくる、という計画が出ていた。それはそれでいいことかも。しかし、ヘルシンキのしたにある岩盤を掘るのは容易なことではないだろう。高架にするのではなく、地下に入れてしまうというのがこちらならではの発想。日本だったら高速道路にするところだ。バスターミナルから駅前まで歩き、メッツェタロまでトラムに乗る。ここで遅い食事。もう3時半。ここは4時半までランチがあるのでありがたい。今日はブロイラーのハンバーグだった。さすがにお腹が空いている。

 食後には図書館に行き、本の借り出しの更新をする。それから少しフィン語の問題集を読むが、あきちゃんに電話しようと思って外に出る。キオスクでテレホンカードを買う。これを買うのも久しぶり。町中の電話から掛ける。家からだと意識しないが、やはり度数がどんどん落ちていくのは心臓によろしくない(^^ ;)。結局50度数を使いきってしまった。まあたまにしか使わないから問題なし。早めにタピオラに行って向こうで勉強することにして、またトラムに乗ってバスセンターへ向かう。バスセンターには110Tのバスがいた。これはタピオラへ行くはず。いつもとプラットフォームが違うが、夜だし場所が変わるのかも、と思ってそのまま乗る。相変わらず窓は汚くて、夜になると中が明るいからほとんど外が見えないくらい。バスは北に向かっていく。これは北周りのバスだったか、まあいいや、時間はあるし、と思う。しばらく乗っているが、どうも様子がおかしい。前とは全く違ったコースのようだ。まあコースが違うのは番号が違うからだし、と思う。しかし、なかなかタピオラに入った様子がない。だんだん暗いところ、住宅地を走るようになる。このあたりから次第に不安になってくる。これはもしかしたら間違えたのでは、と思い出す。バスの番号をよく見なかったのか、あるいは番号を覚え間違えていたのか。30分経っても着く様子がないので、これはおかしすぎる、と思う。ふと止まったところを見ると、駅が見えている。タピオラは駅からは遠いので、随分違ったところにいることになる。ここで降りれば電車で帰ることもできるか、と思い、運転手にこのバスはタピオラへ行くのか、と聞いてみる。すると行く、という返事。後どれくらいか、とも聞くと、10分くらいだ、という。ともあれ、行くことは分かったので一安心。一番前に坐り、いつ着くか、と案じながら乗っている。しかし10分経ってもそれらしいところには行かない。運転手が行くといったのだから大丈夫だ、とは分かっているが、それでもいきなり「終点だよ」と住宅地の真ん中に放り出されるのでは、という不安は心を離れない。時々明るいところを通り、もうすぐか、と思うが、また住宅地に入る。やっと車がたくさん走るところにくる。多分これはタピオラの中心部を通っている道だろう、と思う。ふと見ると、運転台の横にこの系統の時刻表があった。これを見てみると、やっとわけが分かった。このバスは循環系統だったのだ。つまり、反対側の方向に乗ってしまったというわけ。京都なら、京都駅から河原町へ行くのに西大路経由で行くようなもの。やっとタピオラのストックマンが見えてくる。結局乗っていたのは50分くらい。とんだ小旅行であった(^^ ;)。もう疲れてしまった。

 ホールに着いたのは6時半。演奏会は7時からなので、少し待つ。ロビーにはコーヒーなどの販売の用意もしてあるが、お客さんはまばら。ずいぶん集まりが悪い。開演前になってやっとある程度集まってきた。プログラムは30FIMで売っているが、セミナーで無料で配っていた。ありがたや。もっとも歌詞が無料で配られていたので、実質的にはこれを見れば曲のタイトルも分かることになる。プログラムの冒頭には市長・副市長の挨拶が書いてあるが、いずれも女性。またこちらのホールは、クロークにお金がかかるようだ。

 演奏は、やはり高度なもの。前半はスウェーデンの作品。なかなか難易度の高い曲が多いが、十分こなしている。たまに不安定なところがあるくらい。この辺がプロとアマの違いか。音はピアノで取っている。3和音でもピアノをたたいているので平均率の響きがするが、歌う方は純正率で取っているようだ。1つのまとまりが終わるごとに指揮者は指揮台から降りて拍手を受け、しばらく歌い手の休憩のため?待つ。それから音取りを支持して、おもむろに指揮台に乗る。照明が少しずつ変化するが、ちょっとうるさい。一度、照明の担当者か、トランシーバーの会話が演奏が始まったところで会場に入って、演奏を最初からやり直していた。休憩の時に歩き回っていたら、マッティにYLの幹事長のミッコ、EOLのトゥオマスとサミがいた。後半は英語とフランス語のもの。これも80年、90年代の新しいもの。拍手に答えて、アンコールが2曲。最終的に入っていたお客さんは200人くらいか。ずいぶんもったいない。合唱フェスティバルの呼び掛けは盛んだが、他の日も実際どれだけ入っているのだろうか。

 演奏会後にはホールでCDの販売を団員がしていた。6、7枚出ているようだ。1枚は日本で見たことがあるものだ。日本で見かけないと思われるレーベルのものを1枚買っておく。当然?英語での会話。うっかりフィン語で話し掛けそうになるが、彼はスウェーデン人。フィン語は普通話せないはず。ちょっと不思議な感覚に襲われる。自分にとってフィン語は外国語なのに、ここはフィンランドだから普通の言葉。しかし彼はスウェーデン人でフィンランドから見れば外国人だから、英語で話し掛ける。それに従って自分も英語で話すわけだが、フィン語が使えないから英語を使う、ということになっている。日本人がそういう思考過程をたどる、というのもなんだかおもしろい。

 バスに乗ってヘルシンキへ。今度はスムーズに、バスターミナルまで。ソコスで食品を買って、駅へ。電車に乗って帰ると、10時半。それから日記を書くが、長くてなかなか書きおわらない(^^ ;)。1時半になっても終わらないので、もう寝る。

12/4(金)

 目が覚めたら明るい。時計を見るとなんと9時45分。これには驚いた。朝のフィン語は寝倒してしまった(^^ ;)。やっぱり疲れは著しいようだ。まあこれで十分寝たともいえるが(笑)。お腹も空いていないので、リンゴを齧りながらメールを読む。ホームページの更新までは手が回らない。それからまたフィン語の問題集を開く。単語がなかなか覚えられないのが悲しい。ふと外を見ると雪が降っているし、今日は出かけようかどうしようかと迷うが、家にずっといるとやはり気分的によろしくないし、家賃の振り込みなどでどうせ一度は出かけないといけないので、食事に出かけることにする。郵便が来て、図書館にもうひとつの論文のコピーが届いたという連絡と友人からの葉書。「すき焼き」の写真の絵葉書。これは面白い(^^ )。しょうゆが売っているということは、その気になればすき焼きもできる「はず」。まあ試そうという気もないが(^^ ;)。もちろんこちらにはすき焼き鍋のようなものはない。フライパンもずいぶん底が浅くて、ピラフとかをつくろうとしたらこぼれそうだ。また深い鉢がないのもラーメンを食べるのに困る。

 12時過ぎに出かける。さらさらとした雪が降っている。風があるのでちょっと寒い。天気予報によると、週末は寒波が来るそうだ。ヘルシンキもうっすら雪化粧している。メッツェタロまで歩いて行き、食事。今日はブタのカツ。1日の楽しみはこの昼食か(笑)。食後に駅までまた戻り、銀行を覗くがたくさんの人がいるのでここはやめ。駅で新しい30日切符を買い、ヘルシンキ10の郵便局の方に行くが、ここも結構混んでいるのでやめ。電車に乗ってコイブキュレに帰って来る。ここの郵便局に行って振り込みをする。それからスーパーで食品を買い込んで帰ってきたのは2時。今日は寒い。

 またひたすら問題集を読む。まったく受験生の気分(^^ ;)。じっと読んでいると体がなまるので、時々体操をしてほぐす。ぼきぼきいう(笑)。毎日重い荷物を背負っているのだから無理もないか。ラジオを聞きながら読んでいたら、YLのコンサートのCMが流れていた。夕食はサーモンスープとハンバーガー。あまり健康的ではないが(^^ ;)。ハンバーガーはいったん分解してオーブンへ。しかし食事に不満はないのでいいことだ。食後に食器を洗おうとしたら、どこかで聞いたことのある音がする…と思ったら自分の電話であった(笑)。あきちゃんから。しかしこちらの時間で8時ということは、日本は午前3時。まったくいつまで起きているのか(^^ ;)。また勉強の合間にメールのチェックをしたり返事書きをしたりする。遅れていたホームページの更新もする。10時半くらいまですると、もう頭が飽和状態になってきて考えられなくなって来る。まあかなり進んだので今日はよしとしよう。しかし寝るには早いので、楽譜を見る。できるだけ多くを暗譜する必要がある。意味が判った方が覚えやすいのは確かなので、辞書を引きながら何度もつぶやく。結局、口に覚えさせるしかない。適当に切り上げて、今日はおしまい。

12/5(土)

 今日も目が覚めたら9時半。昨日は1時くらいに寝たのだが、それにしても少し遅いようだ。確かに起きるにもちょっと体がだるい。サウナに行くか、プールにでも行くかしたいところだ。気温はマイナス2度。また少し雪が降ったようだ。ヒーパッカは一昨日から帰ってこない。明日は祝日でもあり、多分家に帰っているのだろう。マルクスはたまに郵便を取りに来るくらい。なぜこの部屋を借りているのかが不思議なくらいいない。朝食を済ませてまたフィン語の勉強。ぶつぶつとつぶやきながら読みすすめる。昼食を食べに出かけるかどうかで迷うが、晩に出かけることでもあるし、家で食べることにする。

 1時過ぎにスーパーへ買い物に行く。冷凍食品を見ていたら、調理済みフライらしきものがあってオーブンでの調理法も書いてあった。チキンナゲットだが、これを買ってみる。それとラーメンを食べることにする。お昼を食べた後で、やっとフィン語の問題集が一通り読み終わる。もっとも一度読むだけでもだめなので、またテキストや単語集を見直さねばならない。でも通せただけでも良かった。とにかく合格点をとることを目指す。

 6時の電車で出かける。一応いつも来ているようなシャツにネクタイをして、ジャケットを着ていく。とにかく「パーティー」なのだから、スーツの方がいいかな、と思うが、まあそれ程フォーマルなものでもないだろう、と思う。ヘルシンキに着くと雪が結構降っている。駅から3Tのトラムに乗り、エイラまで行く。そこから海岸まで歩いていく。さて、どこに店があるのか。ざっと通りを見てみても、それらしきものは見つからない。取り合えず東に歩いてみる。ちょうど向かい風になり、雪も降っているのでそう長くは歩けない。それらしき屋根がついているところがあっても、全部違う。東の端まで歩いて、ないなあ…とおもった瞬間に、ヨットハーバーにあったカフェがそういう名前だったことを思い出す。こういうのは不思議な、虫の知らせとでもいうのか。なるほど、店の場所を聞いた時に説明するのに困っていたはずだ。「行けば分かる」といっていたが。でも、これは以前にいったことがあるから思い出したのであって、そうでなかったらさまよっていただろう(^^ ;)。無事到着。7時の10分ほど前である。

 入ったところでラウリが会計をしているので、学割の110FIMを払う。すでにたくさんの人が集まってきている。ほとんどの人はスーツを着ている。あるいは蝶ネクタイをしているひとも。基本的に妻ないしガールフレンド?と来ているようで、派手ではないにしてもみんなドレスアップしている。こういうのはどうも苦手(^^ ;)。ウェルカムドリンクをもらう。自家製ビール?のようだ。もちろん貸し切りで、バンドが演奏している。ともあれ席に着くべきなようだが、どこにすわっていいのか。席は決まっていないというが、みんな二人ずつで座っているので1人で行くと半端になってしまう。あちこち見て決めかねていたら、バリトンのミッコが「こっちにこい」と声を掛けてくれた。ありがたや。席について待つ。7時から開始の予定が15分ほど遅れて始まる。自分のとなりにはさらに行事委員?のミカが座る。彼はこういう場の事務をするので、忙しく立ち回っている。全部で150人くらいはいるのだろうか。時々歌が始まる。誰かが仕切るというより、自然発生的に歌い始める。テーブル毎にわりと独立性が強い、というか。

 そのうちにオードブルが来る。自分の丁度向かいの席は空き席になる。あきちゃんがいたらな、と思う。残念。まあいても言葉が解らないから大変だろうが(^^ ;)。その間に、詩?の朗読がある。もちろんこのPikkuJouluに関係のあるもの。内容はよく分からない(^^ ;)。メインが来るまでにだいぶ時間がある。煮た鳥のポテト添え。おいしく頂く。その間にも時折歌が入る。もちろんまだメインが来ていないテーブルからだろう。メロディーは辛うじて覚えていても、歌詞はさっぱり(^^ ;)。しかし、テーブルでの会話がつらい。ミカは用事で立ち歩くので、彼の奥さんのソフィーが1人になる。話をしなければ、と思っても、何を話題にすべきなのか分からない(^^ ;)。典型的日本人と化してしまう。もちろん言葉が不自由なこともあるのだが。ちょっと苦痛になる(^^ ;)。ともあれ、話題が思い付いた時にぽつぽつと話す。デザートはアイスクリーム。例の、薬のような味がするやつだ。ストロベリーソースが白い皿に回しかけてあるのを見て、ソフィーが「日本の旗の色ね」という。日本の知名度がフィンランドでも高いなあ、とまた思う。後で聞くと、「経済上で重要だから」というもっともな答。しかしデザートが終わったのは9時。実に2時間弱。

 食事についているワイン以外は、各自で払ってカウンターから買っている。特に今はいらないので、コーヒーをもらって来る。これは無料。食事がほぼ終わったところで、アトラクション。今年の責任パートはバスだそうで、企画をしなければならないらしい。「この合唱団はどこ」というので、バスのメンバーがいろいろな合唱団の真似をする。中には女声合唱団やタピオラの真似も。しかしこういうことができるということはそれだけ各合唱団に特色があるということ、またそれぞれの合唱団をみんながよく知っているということになる。テーブル毎に解答を用紙に記入して、あとで集計する。結果では、全て正解というテーブルがあって、ワインが賞品だった。時々マッティが前に出て、曲を歌う。時々「セレナーデ」がでる。それぞれ自分が招いた女性に歌う、という形。自分は相手もいないし、第一全然覚えていないので歌いようがない(^^ ;)。でもこれは一種の伝統かな、と思う。ちょっと優雅な感じ。

 アトラクションが終わると、またバンド演奏が始まる。躍り始める人達が出る。こちらは席に着いたまま眺めることにする。時々、何人かが挨拶?に来る。ラウリは奥さんと来ている。彼らはクリスマス休暇にインドへ行くとのこと。しかも5週間と随分長い。修士論文がうまく行くだろうから、ということだそうだ。また、別のメンバー(名前を忘れた(^^ ;))は、日本に行くそう。何でも京都の製紙会社に勉強に行っている友達がいるとかで、東京に3日、京都に2週間ほど居るという。京都はここよりも寒いかもしれないよ、と話しておく(笑)。アジアもわりと身近な存在なのかもしれない。

 テーブルの周りに人が少なくなってきたので、うろうろと歩き回ってみることにする。カウンターで何か頼もうと思っていたら、セカンドのテームが声を掛けて、一杯おごってくれる。彼はチケットのようなもので払っていた。それを持って、歩き回る。何人かと挨拶を交わす。そのうちにたまたまマッティと、話をしていたおじさんのところに出くわす。いきなり「オオー、チフル!」と来た(笑)。マッティの解説では、このおじさんはちょうど松原さんが居た時にいっしょに歌っていたそう。今は金融関係?の仕事をしているらしい。「プッカ?」だとかなんとかいう名前? 一度聞いただけでは聞き慣れない名前は覚えられない(^^ ;)。こちらに来て3ヶ月、というと、「君はチフルよりも素晴らしい、少なくとも彼はフィン語は全然だめだった(笑)」とか(^^ ;)。マッティもまた「この男は非常に優れている」と持ち上げる。残念ながら1年の滞在だ、というとマッティが「もっといる気はないのか」という。テームが「彼には日本に奥さんがいるから」とフォローする。

 ついでにマッティとさらに話しを続ける。年明けの練習には自分の妻がフィンランドに来るが、練習を見学に来てもいいか、というと、もちろん構わない、と。それから、なぜかこういう話が続く。「自分はシベリウスアカデミーで勉強してから、10年間教会のオルガニストをしていた。それからアカデミーに招かれた。だから、教会とのかかわりもある。興味深いのは、君が神学を学んでいるということだ。それは日本では普通のことではないだろう。特に、君の両親、特に父親よりも母親は、フィンランドのような遠いところで、しかも神学などをやっていることについてどう考えているのか」という。自分の親は子供については子供に任せている、というと、「きみの両親は偉い人だ」とといってくれる。また日本の宗教については、日本人はあまり宗教に強い関心を持っていない、というと「なるほど」と納得していた。このあたりの説明になるとフィン語では力不足なので英語が必要になる。しかしつい口をついて出て来るのはフィン語になる。フィン語で考えるようになってきたというか。ただし文法はむちゃくちゃだが(^^ ;)。英語とフィン語が混在してしまう。マッティは「それでも大丈夫だ」といってくれたのでよかった。

 さらに、もし機会があるならフィンランドの歌曲についても少し学んでみたいのだが、と聞いてみる。「もちろんシベリウスアカデミーやコンセルバトワールでも学べるが、お金がかかる。まずは、ボイストレーナーのマッティ・ペロに相談してみるのがいい」という。もちろんそれが良さそうだ。さらに、もし学ぶことになれば、書類をつくることで団から半額の補助金が出る、という。合唱団の活動の一環、ということになるようだ。しかし今のところいくらかかるかすらも分からないので、まずは相談から。しかしたとえ1、2回でもレッスンが受けられるなら受けてみたい。マッティは「君はタレントがあるし、学ぶのはいいことだ」という。「短期間のうちにずいぶんたくさんのことを学んでいる」とも。なんでそんなことが分かるんかいな、と怪しんでしまうが(^^ ;)。ところでペロは現在どこで仕事をしているのかと聞くと、マッティも知らないという(^^ ;)。あちこちで講師として働いているようだ。ともあれ、ペロに会うであろう新年まで多分この話は持ち越し。

 ホールでは相変わらずバンド演奏が続いていて、わりとたくさんの人達が踊っている。大体主な人達とは話をしたし、一人で座っているのもつまらないのでダンスに加わる。これは自分としては非常に例外的な現象(^^ ;)。いわゆるディスコ音楽?という感じの曲が続いていく。ちょうど運動になっていいか(笑)。時々ワインを飲む。グラスに一杯注がれるのではなく、3分の1くらい。なんかせこい気もする(笑)。貧乏性だなあ。カウンターに寄り掛かっていると、おばさんが話し掛けて来る。誰かと思ったら、作曲家のユッカ・リンコラの婦人であった。リンコラ自身にも紹介される。リンコラの曲は、クリスマスコンサートで取り上げている。作曲家に会うというのは自分にとっては実に珍しいこと。YLにいたおかげというか。婦人と話しを続ける。自分が神学をやっているというと、「フィンランドにはルター派のほかに、少数ながらアメリカ系統の敬虔主義の教会があって、彼らは独自の音楽を持っている。オペラすらもある。フィンランドで神学を学ぶのなら、彼らのこともぜひ学ぶべきだ」と。「興味があれば教授に尋ねてみるといい。もし分かったことがあったら、ぜひ私にも知らせて欲しい」と電話番号を教えられる。

 この場で何人とも話して思ったことは、フィンランド人は会話をする時の相手との距離が随分近い、ということ。まさに顔がくっつく、というくらい。こちらはつい圧倒されそうになる。寒い地方の人達の習慣なのかどうかは分からないが、ほとんどの人がそうなので一般的な傾向なのだろう。

 そのうちにそろそろ閉店の時間。もう午前2時。結構な人数はもう帰っているが、それでもまだ30人くらいはいるか。こういう団体はなかなか動かないのが世界の常(笑)。店員も電灯を点滅させたり、いったん消したりと追い出す努力をする。それでもなかなか動かない。入り口で座っていると、とある女性(知らない)が来て、「私は日本語の文章を4つ話せる」と。日本人の留学生?が友達にいたそう。「私は…です」とか「ありがとう」はともかくとして、「私はばかです」というのも(笑)。誰が教えたんだ(^^ ;)。ちょうどマッティも来て、挨拶される。こちら式の抱擁と挨拶の接吻(^^ ;)。これにはどうも慣れない(笑)。うっかりしているうちに、こちらは電車がなくってしまう。しかも日曜日なので、6時まで電車がない(^^ ;)。どうしようかしらん、どこかのバーで待つか、と考えていると、ミッコが「うちに来るか」と声を掛けてくれる。とにかく感謝感謝。2時半に店から追い出されるが、タクシーは呼んでもなかなかこない。土曜日の夜だし、やはりつかまえるのは困難だ。おまけに雪が降っているので結構寒い。タクシーがこないので、ミッコが連れてきた女性が親を呼んで(^^ ;)、そこに便乗させてもらってミッコのアパートまで行く。彼はテーレに住んでいるので割に近い。彼の部屋にいれてもらう。一人部屋。ソファーが広げるとベッドになるのでそこで寝させてもらう。この時点で3時。さすがに、こういうことはもう2度としない(^^ ;)。まあ、こちらのパーティーがどういうものなのかはよく分かったので、次からはちゃんと時間までに帰ろう(笑)。

12/6(日)

 10時に目覚める。よく眠れた。ジュースを一杯飲ませてもらう。ミッコはこれから勉強とのこと。日曜日であるというのに、こちらの学生は熱心だな、と改めて思う。礼を言って帰る。目の前の通りにはトラムが走っているので便利。まだ雪が降っている。日曜日なので車も少ないせいか、車道も真っ白。トラムに乗って駅まで行く。あまりお腹が空いていないので、そのままホームへ。49分だと思っていたら、45分出発。もう時計はほとんど45分。慌てて走っていく。あやうく乗り過ごすところだった。日曜のこんな時間にヘルシンキから乗ることはまずないので、時間が違うことは考えてもいなかった。時間があると思ってなにか食べ物を買っていたら、30分待たされるところであった。

 コイプキュレももちろん雪。ずいぶん積もっている。さらさらの雪。地理の本によると、大西洋から来る風がスカンジナビア半島にぶつかって雪を降らせ、乾燥した空気がフィンランドに来るからのようだ。日本の冬と同じような理屈。しかしこれだけさらさらだと雪玉もできないのでは、と試しにすくってみたら、やはり玉にならない。これでは雪合戦もできない(^^ ;)。そういえばそういう姿は見ないし、だいいち雪だるまを見ない。この雪ではなるほどできないはずだ。家に帰って、シャワーを浴び、食事をする。その後はフィン語の勉強。ざっと見返しても、忘れているところや曖昧なところが多いのに気づく。これでは合格点も危ういかも(^^ ;)。

 5時前の電車でヘルシンキへ出かける。今日は独立記念日で、元老院広場で歌うとか。着替える場所もないだろうから、燕尾服を着て出かける。相変わらず雪は降り続いている。舞台用の革靴は底が平らなので滑りやすいし、おまけにすぐに冷える。これはよろしくない。ともあれヘルシンキまで行き、雪の中を元老院広場へ。元老院広場をかこむ建物の窓には全てろうそく型の電灯がともされ、大聖堂前の階段にはろうそくが灯されている。階段には雪が積もっていて、子供が滑り台がわりに遊んでいる(^^ ;)。学生帽、というか高校卒業者帽というのだが、をかぶった人がぼつぼつといる。また聴衆も集まってきている。しかし、YLの顔ぶれは見かけない。勝手が分からないので、とにかく様子を見ていることにする。5時半過ぎになるとだいぶ人が集まってきた。40分くらいに、学生帽をかぶった人達が階段に集まる。行こうかどうしようか迷ったが、ここは見ている方が無難と考えて下から眺めていることにする。そのうちに、マーケット広場の方から旗を掲げた行進が来た。フィンランドの国旗、それに続いて各大学の学生組合?の旗のようだ。階段の途中まで昇り、横に並ぶ。45分過ぎになると、まず歌が始まる。これは歌ったことはあるが覚えていない。それからヘルシンキ市長?らしき女性の挨拶文。フィン語、つづいてスウェ語で。それから歌。これは知らないもの。続いて、学生組合の代表の学生が6人ほど短い演説をする。内容はよく分からないが、歴史を振り返っているらしい。最後の学生は女性だった。最後には「万歳三唱」のような、「エラケーン(フィン語の「万歳」)三唱」があった。それから「フィンランディア」、フィンランド国家を歌う。これが終わったところで、おしまい。この時6時15分くらい。雪の降りしきる中で立っているのは大変だが、広場にはたくさんの人がいた。

 結局歌わずに帰る。ほとんどの歌は覚えていないものだったので、まあいいか。ちょっと買い物をして、電車に乗る。帰ってきたら7時半。夕食に、缶詰を温める。缶についている写真ではイカのトマトソースかと思っていたが、開けてみたらパスタであった。ちょっと肉が挟んである。ちょうどギョウザのような感じ。食べたらトマトソースが少し辛い。あとは再び勉強。明日の朝は寝過ごさないように、早めに寝ることにしよう。

12/7(月)

 昨日は10時過ぎにベッドに入ったが、いったん目が覚めたら12時。次に目が覚めたら4時。で、6時。まだ早いのでもう一度寝たら、目覚ましの音で7時に目覚めた。首が痛い。寝過ぎもよろしくないようだ(^^ ;)。寝起きでまだぼけている頭に、ふとリンコラ夫人の言っていたことが浮かぶ。「敬虔主義」についてだったが、それを「モルモン」といっていたのを思い出し、彼女の言っていたことが閃くように明らかになった。なるほど、確かにモルモン教には独自の音楽文化がある。しかしフィンランドにも来て、一定の地位を占めているとは驚き。これはぜひ図書館で調べてみよう。ヘルシンキにもモルモンの教会があったはずだ。こういうもうろうとした頭の状態で閃くことは不思議である(^^ ;)。記憶の深層が呼び起こされるのかしらん。ともあれ、起きることにする。食事をして、メールをチェック。ラジオを聞き流していたら、「今日の日の出は9時7分」というのが聞こえて驚く。いそいでカレンダーで調べてみると、確かにそのとおりだ。もう8時半なのに、まだ日が出ていないとは…。ともあれ、いつもの電車で出かける。

 郵便局に寄って葉書を出しておく。「サンタクロースの手紙」というパンフレットがあったのでもらっておく。今は時間がないので、詳しくは帰りがけに調べることにしよう。トラムに乗って大学へ行く。昨日から雪は降り続けているようで、道にもだいぶ積もってきた。まあ凍っていないので危なくはない。大学は今日は本館の表の方の部屋。入り口にあった案内を見て、2階にあると思って階段を上っていったら違っていた。ちょうどウニオニン通りから入ったところが2階になる。ややこしいことこのうえない(^^ ;)。すでに先生は来ていて、黒板に注意書をしている。こちらの教室はOHPを使うことを前提にしているせいか、黒板を照らす照明というのがない。よって、黒板が暗くて字が見えにくいことがよくある。今日のように天気の良くない時はなおさらである。荷物は窓際に置き、適当に席に着くと、先生が問題を配る。5枚綴りになっている。その間にもぼつぼつと生徒が集まって来る。いつ始めるのかなと思って「もう書いてもいいのか」ときいたら「どうぞ」とのことなので始める。時間はほぼ2時間。最初はテキスト本文にあった内容について。「フィンランド料理には例えばどんなものがあるか」「フィンランドの歴史について知っていることを書きなさい」というのもあって、半分くらいは自由作文の趣き。それから文法的な問題。単語を正しい形にする、文の書き換えをする。書く練習はしておらず口頭の練習だけだったので、「これでよかったっけ」と不安は残る。最後に「あなたの家族・友達ないし仕事について述べなさい」という作文。合唱関係のことを書いておく。しかしいちばん難しかったのは、条件法の文に答えるもので、「もし百万のお金があっても、しないことはなにか」(^^ ;)。いざ考えると、ありそうでなさそう。しかも手持ちの単語は限られている。最初はゆっくり考えていたが、そのうちに時間が迫って来るので慌てて埋めていく。結局最後まで粘り、一通り総べて埋めることはできた。内容は疑問。提出すると、「金曜日に授業で返却するが、こられるか」という。その日はフィン語1の授業があるので、授業のあとでそちらに寄ることにする。

 社会科学学部まで歩いていき、食事。今日はマカロニパスタ。できたてでないとパサパサして食べにくいし、あまりおいしくない。今日の食事はあまりおいしくなかった。そこから学部図書館を経由して駅前まで。カードを買いにスオマライネン書店へ行く。たまたまムーミンのフィン語版を見たら、「セール」の札が貼ってあって通常の半額くらいになっている。丁度いい機会なので、既に買ってあった1冊を除いて残り6冊をまとめて買う。それでも100FIM以下で済んだ。通常なら200FIMを超えるところ。妻に頼まれているカレンダーも見てみるが、たくさんあってどれを選んでいいかわからない(^^ ;)。別に品切れになることもなさそうなので、もう本人に任せた方が良さそうだ。ちなみに卓上カレンダーというのはこちらではあまり見かけない。郵便局によって、朝見たサンタメールについて調べる。申し込み用紙を買って送ると、向こうから指定した宛先に送ってくれる、という方式のようだ。1枚30FIMだから、ちょっと高い。しかも、海外向けは11/27までにどうぞ、とある(^^ ;)。まあ試しに出して見よう。他にクリスマス切手も少し買っておく。

 帰りの電車の中で大学の広報雑誌を読んでいると、「フィン人はお喋りになったか?」という記事が出ていた。町中でもよく話し声が聞こえて来る、と書いてある。そういえば先日のパーティーの時の話の中で、「フィン人は外国人とはあまり喋りたがらないでしょう?」ということを言っていたのを思い出す。伝統的に寡黙な人が多いと言われていてよく国民性の一つにあげられるが、それほどでもないな、というのが実感。もちろんアメリカ人のように陽気によく喋る人はほとんどいないが、日本人と変わらないくらいかな、と思う。こちらが英語で喋っている限りはなかなか会話が進まないのかもしれない。自国語の方がいいのはどこの人も同じだろうし。

 スーパーに帰りがけによって、3時過ぎに帰る。今日の日没は3時過ぎなので、ほぼ日の出とともに出かけ、日没とともに帰ってきたことになる(笑)。なまくら学生でもそういう暮らしができる(^^ ;)。ラテン語の訳をはじめる。コーヒーを入れようと思って湯を沸かしていたら、出かける様子のヒーパッカが声を掛ける。湯が沸いた、というのと、コーヒーを入れるなら1杯飲ませてくれないか、という。それは別に構わないので、二人分入れる。待っている間に珍しく?彼はテーブルの上をざっと片付けている。といっても、少し紙を捨てた程度だが。3のマルクス、また今はいない住人宛の手紙は床に放り出してそのまま。あきれた男というか。こちらは訳を早く作らないといけないので、自室に戻る。彼はコーヒーを飲んだら出かけていった。訳を続け、合間にメールを書いたり、手紙を書いたりする。年賀状?もそろそろ書かねばならないだろう。7時くらいにシャワーを浴びる。今日はあまりお腹が空かないので、バナナを食べる程度にしておくことにする。訳は何とか終わった。ちょっと頭がぼけてきているので、楽譜をさらっておく。言葉の少ないものから覚えるようにしなくては。メロディーは大丈夫なのだが…。11時過ぎにマルクスが帰ってきたようだが、自室に入ってしばらくしてまた出ていった。よく分からない。

12/8(火)

 7時半に起きる。気温はマイナス5度。朝食を食べながらメールを読む。ここのところ少し疲れがあるのか、朝もあまりさわやかに起きることができない。暗いうちから起きる、ということもあるかもしれないが。いつもより一本遅い電車で出かける。今日はいい天気だ。寒いけれども、明るさが気持ちいい。コンサートがあるので、荷物が重いのが難点。そのまま授業に行く。授業は以前のテスト問題などを使って復習。先生の方が、早くしなければ、と慌てている感じ。復習なので、忘れていることを確認するのみ。結局15章までは進まず、14章までが範囲になる。フィン語3のテストでも、事前に14章までと聞いていたが問題は11章までだった。あまり遅れると次の学期に影響しそうだが。時間一杯までやって、おしまい。

 お昼の時間に、大学図書館の端末からエストニア音楽についての蔵書を調べる。英語のものとエストニア語のものが幾つかあるようだ。あちこちの学部に散らばっているらしい。調べた結果を印刷してから、食事に行く。メッツェタロで。今日は珍しく?イワシのような魚の開きのフライだった。4つとは少し寂しい。それにマッシュポテトがドン、とついている。これがあるのでご飯は控え目にしたつもりだったが、やはり多すぎた(^^ ;)。食後に、荷物はメッツェタロのロッカーに預けて音楽学部に行く。本館からは東の方で、そんなに遠くはない。歩いていくと、ステンドグラスの店があった。音楽学部は、普通の建物の中にある。中庭から入るようになっている。中に入ってみると、なるほど音楽関係のポスターなどが貼ってある。ここは基本的には理論を扱うところ。しかし演奏関係も少しあるようだ。図書館でエストニア音楽史の本と、指揮についての本を借りる。1ヶ月借りられたので、ゆっくり読める。ここの図書室にも楽譜があって、ストラビンスキーの全集?が目についた。

 再び戻る。同じ道を帰るが、ふと見るとヘブライ文字が見える。?と思って良く見ると、イスラエル大使館だった。この界隈にもいくつか大使館が集まっているようだ。学部図書館へ行って、本を読む。エストニア音楽の本は代表的な作曲家について簡単な伝記と作品目録がついているので重宝する。しかしソ連時代の印刷なので、活字のスタイルも印刷の感じも「いかにもソ連製」という感じ(笑)。「ソ連」として共通なものがあったのだろう。関係する本などを眺めていたら3時過ぎになるので、出かけることにする。本を読んでいる時に、黒の靴下を忘れたことに気づいたのでアンティラで買う。それから郵便局に行き、切手を幾つか買う。トラムを拾って、フィンランディアホールへ向かう。

 ホールについて、左側の方にある楽屋入り口から入る。入ったところのリハーサル室?が楽屋になる。もう4時だがずいぶん集まりが悪い。平日でまだ早いこともあるのだろう。そのうちにマッティも来て、少し声出しをする。舞台に移動し、リハーサル。ここに入るのは2度目だが、2度目にしてステージに乗っているとは(笑)。最初に入場。いったんロビーに並び、客席の間を通って歌いながら入る。入祭唱の趣き。それから最後の練習。基本的に前回と同じで、「きよしこの夜」の前に通路まで広がり、そこで「きよしこの夜」を歌う。それから再び舞台に戻って、他の曲を歌っていく。少しは覚えられたか、と試しながら歌っていく。最後にもう一度「きよしこの夜」の並び方と、退場をする。退場は、前回と同じシベリウスの聖歌を歌いながら。歌詞は調べていなかった。それで練習は終わり。ホールの中にある、出演者用のカフェで振る舞われたコーヒーとパンで軽食。この時に既に6時10分前。6時からと聞いていたが、演奏は6時半からのようだ。こちらでは直前までホールには入れないようになっているので、直前まで練習ができるのがありがたいというか便利。それだけ集合時間が遅くて済む。着替えている時に、シベリウスの歌詞がまわって来るので、ざっと見ておく。特に最初の方を覚える。

 6時半前にロビーに移動し、歌いながら入場。プログラムが進んでいく。リンコラはほぼ覚えられていたが、その前のフランス語に引き続いて楽譜を持ったままの人がほとんどなので、自分も持っておく。最後の曲の指慣らしや手拍子はほぼ間違いなくできたが、歌うのを忘れていた(^^ ;)。裏打ちが入って来るのでなかなか困難。指鳴らしは、また一人だけのことがあった。休憩の間はステージ裏のラウンジで待機。後半は楽譜を持たないほうがいいのか、と思っていたが、割にたくさんの人が楽譜を持っているので自分も持っていく。歌詞が多いものだけみることにして、半分くらいは暗譜で歌ってみる。やはり実際に歌うと曖昧なところがたくさんあった。最後に客席に広がり、「きよしこの夜」。その後にアンコールと退場を兼ねてシベリウスを歌う…はずが、歌い出していつまで経ってもみんな動き出さない。前にはまだマッティやソリストたちもいるから動きにくいのだが、しかしたしか自分が最初の方に動くはずだ。自分はすぐに退場するからと思って歌詞も1番しか見ていない。2番以降はなんとか口パクでごまかす(^^ ;)。自分が動かないと他の人も動きようがないのかしらん、と、2番の途中で動こうとしたが、みんな止まっている。他の人と目で話して、このまま立っていていい、と言われる。いつのまに話が変わったのかしらん。気がつかなかった。すべて歌いおわってから、退場。後で楽屋で話していたら、聴衆が立って歌っていたし、ソリストもまだいたので動けなかった、と。でも「君が唯一正しかった」とは言ってくれた。間違いではなかったようだが、予定外の変更、ということのようだ。慣れないとなかなかつらい。ホールを出たのは8時過ぎ。

 トラムを待っていたがなかなかこないので、歩いて駅まで行く。ここからなら歩いてもすぐ。駅地下でハンバーガーを買い、電車に乗る。家に帰ってきたのは9時過ぎなので、わりと早かった。京都の友人から荷物が届いた、という伝票が置かれている。救援物資のようだ。ありがたや(^^ )。取りに行けるのは木曜日になりそうだ。

12/9(水)

 目覚ましの音で目が覚める。今日はテストなので早めに起きていかねばならない。体がだいぶ疲れているので、やはり目覚ましを掛けて正解だったようだ。朝の気温はマイナス6度とまあまあ。朝食を済ませて、早々に出かける準備をする。いつもより1時間早い電車で出かけるので、まだ薄暗い。空気の冷たさが肌にしみる。電車に乗ってヘルシンキへ。

 まっすぐに大学へ行くと、いちおう9時15分開始の予定で10分くらいに着いたのだが、もう何人かは試験を始めている。一斉の試験ではない場合には、割と自由にできるらしい。この辺も日本との違い。とにかく問題をもらって書き始める。もちろんフィン語の3に比べたらはるかに易しい。授業で散々やった内容なので別に問題はない。どんどん書き進めていく。たまに分からない単語があったりするが、そういうのは考えてもしかたないので、規則通りに変化させておく。全部で5枚あるので、わりとさっさと書いているつもりでもなかなか先に進まない。最後は自由作文で、「自分の国の新年について」「なぜフィンランドに来たか」というテーマから選んで書く。前者は知らない単語が多く必要になりそうなので、後者で書いておく。合唱と、神学と。最後には「結局はフィンランドが好きだから」と書いておしまい。時計を見ると10時前。いつ部屋を出られるか、と聞くともういつでもいいと言うので、そのまま提出して出る。他のみんなはけっこう頭を悩ませているようだ。

 本館を出て、新学生会館(New Student House)の学生組合の事務所まで歩いて行く。そういえば以前に応募したエッセイコンテストの結果がまだ分かっていない。連絡が無いのだからまあ落選だろうが。事務員に聞くと、ここにのっている、と組合の新聞を見せてくれた。予想通り落選。次点にも入っていないのは残念。そのまま歩いて、アカテーミン書店へ行く。エストニア関係の音楽書はあるかと見てみるが、やはりない。タリンで買わねばならないようだ。音楽関係にも面白そうなものがあるが、特に輸入物は随分高い。店内をぐるっとまわってから出る。ついでに、Kirjapo:rssiという本のディスカウント店に寄る。前に見掛けたタピオラ合唱団の本「Tapiola Sound」を買っておく。前にあった隅ではなく平づみになっているが、なぜか39FIMの値段がついている。確か前は29FIMだった…と思って山の下の方の本を見たら、やはり29FIMの値札がついていた(笑)。そこから取る。他にタリンの小さなガイドブックがあったので買っておく。これは今年の夏のものだったようで、季節が過ぎているので5FIM。ここにせよ駅地下のKirjantoriにせよ、売れそうな本を大量に仕入れて安く売る、というかたちのようだ。フィンランドは原則的に買い切り製らしい。やや古い本など、アカテーミン書店でも値下げして売っていることがある。

 そこから神学部に戻る。文献のコピーをとり、雑誌を幾つかチェックしてから昼食へ行く。メッツェタロまで歩く。まだ11時半なので、十分空いている。「フランス風の肉」とあったが、中身は普通のビーフシチューだった(笑)。食後に大学図書館へより、届いているコピーをもらう。見ると大英図書館のサービスであった。日本と値段はあまり変わらないかも。枚数の割には高い。それから音楽図書室にある端末から、インターネット上のフィンランド音楽関係のページをたどってみる。シベリウスアカデミーには講師としてマッティの経歴も出ていた。フィンランド音楽協会というのがあって、いろいろ出版物もだしているらしい。ヘルシンキ西部のラウッタサーリにあるそうなので、機会があれば行って見たいところ。それから神学部に戻り、ギリシア語を勉強する。今日するところというか、テスト範囲までを何とか終えなくては。途中、エストニア語の講座はどうなっているのかと気になって、また音楽図書室の端末から大学の授業案内をみる。授業としては通年しかないようだ。ということは、自分で本を買って、あるいは言語センターで自習するしかない。また暇がある時に少しかじっておくことにしよう。スウェーデン語は、春の学期に取るつもり。発音がややこしい言葉だし、生で勉強できる機会は貴重だ。また神学部に戻って続きをする。なんとか一通り調べることができた。ただ訳はつくっていないので、実際に書いてみる方がいいだろう。試験まで10日はあるので、余裕はある。授業までの時間、関係する神学書を幾つか眺める。1冊借り出そうとしたら、「これは授業用なので2日しか借りられないよ」とのこと。そういう表示は全くなかったが、データに登録されているらしい。一応少しでも読むために借りておく。

 4時からギリシア語の授業。今日が最後の時間になる。最初にテスト用の封筒書きをする。それからテスト範囲の内容についての質問を受け、またテキストを読み進めていく。最後の15分は授業についての感想を述べる時間となった。普通は1学年8ヶ月ですることを半分の時間でしたわけなので、大変だったという感想が学生から。先生からは、自分の経験から見て平均よりもよくできるクラスであった、とのこと。ともあれまだ最終の試験が残っているが。最後に挨拶をして出る。といっても、来年もいろいろ質問するつもりだが。

 EOLの練習に向かう。といっても、今日は金曜日にある大学合唱団の合同クリスマスコンサートのための練習がある。発声と、すこし練習をして、7時前にトラムでカッリオ教会へ向かう。既に人が集まってきている。どこかの合唱団が前で練習していた。しばらくすると前に集まるように指示される。女声前列、男声後列。後ろの方に行ったら、段が無いので指揮者が見えない(^^ ;)。平均的な背の高さが自分よりも少し高い。練習が始まる。最初は女性の指揮者で、聖歌を一つ。何番の歌詞を歌うかで混乱する(笑)。次にひげのおじさんが出てきて、クーラの「祈り」をする。これがクリスマスに関係する歌だとは実は知らなかった。しかも「私の子供をもう一度与えてください」というちょっと寂しい内容。しかし音が十分に取れていなかったので最初戸惑う。が事情は他の合唱団の人も同じようで、入りは曖昧だしテンポはずれている。それでも何回か歌ううちにましになってきた。続いてカリが前に立つ。が、歌う前に2分間あちこちを歩き回りましょう、だいぶ長く歌っているから、と。こういうのはカリは割とよく考えていると思う。EOLでもやっていたメンデルスゾーンで、中間部にソロがあるのをEOLだけが担当する。真ん中の方に集まったので歌いやすい。よく響く。それが終わってから、各合唱団別の練習が希望するところのみある。EOLは1団体待って、次にプーランクを練習する。まあまあだが、ピッチがあわないところが幾つかある。ハーモニーの中で覚えるということをしていないようだ。まあプーランクはそれが難しいが(^^ ;)。後で聞いたら、金曜日は譜持ちでいいとのこと。この状態では、自分の演奏会でも譜持ちだろう。10時前に終わるが、さらに次の団体があるよう。遅くまで大変だ。本番では、各合唱団の演奏が10分くらいずつあり、最後に合同演奏、ということらしい。

 ハカニエミまで歩いて地下鉄で帰る。駅のスタンドでホットドックを買って食べる。家に帰ってきたのは11時過ぎ。今日も広告が入っていた。最初の頃は無視していたが、結構見ていると楽しいので最近はいつもみるようにしている。クリスマス前だし、なかなか賑やか。

12/10(木)

 気がつくと、またヒーパッカがわめいている。まだ暗いけどもう朝かな、と思って時計を見ると5時。最近は静かだな、と思ったらこれだ。わめきながら歩き回っている。こちらは無視して寝る。まあ同じことばかり言っているので、いいかげん慣れてきた。次に起きたら9時半。体がだるい。気温はマイナス6度。湯を沸かしながら、ヒーパッカがちらけているテーブルを見ていたら、自分あての郵便か置かれていた。とうとう扉につけてある袋に入れることもしなくなったか。大事な郵便を見失っては大変なので、これから注意しなくては。郵便はSULASOLの機関紙だった。どこかで住所を書いたのだろう。こういうDMはありがたい。フィンランドの合唱団関係の記事が出ていて大変面白い。これは定期的に読んで見たい。年間120FIMと書いてあるが、日本でも送ってくれるかな。授業は午後のみなので、午前中はゆっくりする。といっても起きた時間が遅かったので、日記書きやメール書きなどをしていたら出かける時間になる。

 11時半の電車で出かける。曇りなので薄暗い。ただでさえ昼間が短いのに天気まで悪くては、確かに気が滅入る。まさに北極圏の暮らしや如何に、という感じ。メッツェタロで食事。今日はハンバーグ。肉のうちでも、どうも鳥の割合が多いような気がする。ご飯はふにゃけているととてもまずい(^^ ;)。水気の少ない方がパリっとしておいしく食べられる。丁度いい、という感じがなかなか無い。食後に散歩を兼ねてエスプラナーディの観光案内所まで行く。12月の行事予定などをもらっておく。そういえばここでもホテルの予約ができるな、と思って、先延ばしにしていた新年のタンペレのホテルを予約する。空きはちゃんとあった。ブローチャ―を出そうとしたら、機械が調子悪いのか入力できないとかで、手書きでつくってくれた。いざ支払う段になって価格を見ると、前にガイドで見たのよりずいぶん高い。これは通常の価格では、日曜日だから週末料金になるのではないか、と尋ねてみる。ホテルにも電話して確認してくれたが、やはりこの通りだという。日曜日泊で月曜日発になるから通常料金というような感じの話。以前は日曜泊でも週末料金だったからおかしいのだが、ホテルにも確認してのことなので、間違いもないのだろう。あるいは、土曜日から泊まると週末料金になるのかもしれない。ここでは、手数料と宿泊料金をまとめて払うことになっているようだ。宿泊がダブルで690FIM、手数料が30FIM。これはヘルシンキ以外のところに適用される。ヘルシンキのホテルは20FIM。他にチケットの手配は手数料が10FIMと、自分で探すより随分高くなっている。あまりお薦めはできない。ブローチャ―をもらって、また大学に戻る。

 1時過ぎから授業。今週ですべての大学の授業は終わることになっている。前からの続きの、ユダヤのテキストとサマリアのテキストとの違いについて説明し、最後には14世紀の写本のコピーを読んでいく。まだ字になれていないのでちょっと大変。しかしテストではこれを読まねばならない。冬休みの間にもすることが一杯ある。授業が終わってから、ストックマンへ行って衣装鞄をみる。やはりちゃんとしたものは400FIMくらいはするようだ。まあそんなものといえばそうなのだが。もう少しさがしてみることにする。今日は特に他の用事はないので、駅に行って電車に乗る。どんよりと曇っていて、ときおり雪がちらつくという天気。新聞によると、この寒気は東の大陸からのものだとか。その影響を受けていないラップランドの方がこのあたりより気温が高い、という面白い現象も生じているようだ。また週末は冷えこみそうな予報になっている。そういえば、店で売っている温度計には、-50度という目盛りがついているものがわりとよくある。まんざら冗談にも思えない(^^ ;)。

 コイブキュレまで帰ってきて、郵便局に行く。京都の友人からの荷物を取って来る。スーパーにも寄ってから、家に帰る。荷物を開けて見たら、「救援物資」と称して「カップうどん」が入っていた。「ラーメン」はある、ということからの判断か。内容物の「12個」というのは何かしらん、と思っていたが(笑)。他にも小物が幾つか入っていたが、「ショウガ湯」はなるほど、と思った。これは気づかなかった。家では自分もよく飲んでいたのだが。ありがたくいただくことにする(^^ )。5時過ぎくらいなので、あきちゃんに電話してみる。こちらからの呼び出しには出なかったが、折り返しかかってきた。家から掛けるとつい話しが長くなる。用心用心。スーパーで買ってきた冷凍のコルドンブルをオーブンで温めている間にシャワーを浴びる。しかし、体がだるいのはいまいち解消されない。お湯も沸かして、カップうどんをつくる。できて見たら、タイ製ラーメンと同じような薬のような匂いがする。やはりあれはスパイスであったのだ(笑)。カレーうどんとコルドンブルというのも妙な取り合わせだが(^^ ;)。ちゃんとお礼のメールを出しておく。
メールはこちら:  yutaka70@mbox.kyoto-inet.or.jp

All rights reserved. Copyright by Yutaka Maekawa, 1998.