ASPSCM2001に参加して
前川 裕(なにわコラリアーズ)
シンポジウムでは、ワークショップとクリニック、およびコンサートが柱となります。ワークショップでは、指揮法や歌唱法のクラスのほか、各国のレパートリー紹介、招待合唱団による「合唱団との出会い」などがあります。歌唱法では、「倍音唱法」(いわゆる「ホーミー」)のクラスもあり、「誰でもちょっとした訓練でできるようになる」とのことでしたが、覗けなかったので真偽のほどは定かではありません。「合唱団との出会い」は、それぞれの合唱団が自国の合唱曲や合唱団を紹介し、一緒に歌ってみたりするというものです。なにコラもこの「出会い」を行い、前半は日本の男声合唱曲の紹介、後半は「なにコラの紹介」として私たちがよく歌っている作品を紹介しました。ワークショップ終了後には、聴衆として参加していたロバート・ズンド氏(オルフェイ・ドレンガー指揮者)から声を掛けて頂き、「大変面白いプログラムでした」と誉めて頂きました。また「私たちのHP(http://www.od.se) に男声合唱の目録があるから、ぜひ利用しなさい」とも勧めていただきました。
コンサートは、招待合唱団がそれぞれ夜・昼一回ずつ行います。残念ながら合唱向きの会場ばかりではありませんでしたが、特に夜のコンサートは比較的多くの聴衆が集まり、本格的なものでした。なにコラは台湾の合唱団と同じ日になり、その演奏を聞きましたが、バラエティーに富んだ選曲、鳴り物や楽器の駆使など、エンターテイメントの要素を強く感じました。後で「日本の合唱団はまじめでつまらない」という感想も頂きましたが、他国の合唱団を見ることでそれがよくわかりました。
国際的なシンポジウムでは、交流も魅力です。ズンド氏に声を掛けられたのは驚きでしたが、他にも名刺を交換した方々がたくさんあります。「ぜひ私の国の合唱祭にも参加して下さい」というような話はすぐに出てきます。近隣国との合唱団の交流は、私たちの合唱への視界を広げるためにも不可欠だと感じます。そもそも、近隣国の合唱団についての情報は非常に少ないと改めて思い知らされました。それぞれの合唱団は、自分たちの地域に密着した音楽をたくさん取りあげています。ひるがえって、私たちはどんな作品を歌っていたかと考えると、実に西洋的なものばかりだということを痛感します。自分たちの合唱観がいかに偏ったものであるかを知らされます。グローバルに受け入れられるような日本の合唱音楽の創造が、私たちに課せられた宿題である、と思いました。
今回招待された10の合唱団の内訳は、混声6、男声1、女声1、児童2でした。ほとんどの合唱団がプロないしプロ級であり、なにコラは最低のレベルだったと思われます。また実際にプログラムをもらうと、ルンド大学合唱団がコンサートをしていたり(前日なので聞けませんでした)と、なにコラには不利な条件が揃っていましたが、それでも暖かな聴衆のおかげで楽しくスケジュールをこなすことができました。ただ、なにコラはプログラム後半の15日〜17日にかけて公式日程が組まれていたので、残念ながら自分たちが参加するもの以外のプログラムにはほとんど参加することができませんでした。実質丸二日の中で、コンサート二つとワークショップ一つをこなすのはかなりしんどい作業だということを実感しました。
今回の一般の参加者は、主催者によると300人程度ということです。それだけと見るか、これくらいは集まったと見るか。数だけで判断することは難しいでしょう。ただ、シンガポールはそれほど合唱が盛んなところでもないということも関係しているようです。中高校生を集めたワークショップを覗いたら300人位は参加していたので、今後に期待しましょう。これを機会に、日本とアジア・太平洋の合唱団との交流が深まることを期待します。
なにコラの行動等については、私のHPに旅行記を掲載しておりますので、興味がおありの方はどうぞご覧ください。
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