第2部 交流会
参加者から、講演会の内容や自身が関わる問題について、様々な質問が投掛けられた。
■住宅地におけるコミュニティビジネスについて
風見:
ニュータウンは現在、高齢化がみられる。そこには様々なビジネスチャンスがある。
住宅地では、独居老人の対策、託児支援など生活支援型のものや、カーシェアリングなど多様な可能性がある。多様な担い手がいるので、いろいろな試みができるだろう。
木下:
フュージョン長池の事例がわかりやすい。管理組合の役割を引き継ぐ組織的な取り組みがされている。ニュータウンの様々な課題解決を行っているので、非常に参考になる。
■丸亀の事例について、再開発など共同事業といったようなことを商店街でやるときに、合意形成が難しくないか。
木下:
最後は事業採算のシミュレーションをどこまで堅実に立てられるかがポイントになる。関係者で「仲良くやる」という曖昧な話ではなく、フェアかつ確実な数字をどう作れるか、にかかっている。
丸亀の場合には、古川理事長は開発にかかるお金と調達できるお金を綿密に計画したうえで、再開発予算によって借金がなくなる、というインセンティブを地権者に示すとともに、全体のシミュレーション、外部からの資金調達を明確に示すことで合意を取り付けた。一方で、その代わりに地権者は再劣後におくというリスクを付与した。さらに、税金を投入する論理として、開発後の固定資産税などの増加分の試算を行い、税収面での財政効果を明確化し、議会等の合意形成を図っている。それぞれに対して明確な定量的な説明を行っている。この姿勢が優れている。
また、同商店街では昭和50年代に駐車場事業開発も行われ、収益基盤となっている。元々独自財源目的ため、消費者向けではなく、周辺オフィスビル利用の事業者向けに整備するといったターゲティングも明確化していたため、収益を生み出し続けている。ここも他の商店街の駐車場整備と異なる点。もともと事業による地域づくりの基盤はあった。
■所有か共有か
風見:
イニシャルコストよりランニングコストが圧倒的に高いということがあまり知られていない。
カーシェアリングにも見られるように、いま所有よりも使用への転換が見られる。
所有のメリットとは便利さ。一方でみんなで共有することによる経済的メリットは大きい。
木下:
所有に関しては、世代間の認識的なギャップがある。理事長クラスと、若手には事業に対する意識も全く異なる。所有するのが一番、という発想はもう合理的ではない。
風見:
今の若い世代は所有意識が低い。
所有リスクを見てきた経験があるのかもしれない。
社会構造の変化により、共有せざるを得ない方向にあるのではないか。
木下:
上の世代にはプライドがあって、所有には「見栄」もあるようだ。
カーシェアリングや丸亀の事例でも「まちのために」ということを強調して、面子を立てつつ実利を得る。重要なのは戦略であって、大義名分をつくり上げることができる人が仕組みを作れる人であることだ。見栄で食える時代ではない。
風見:
まだ上り坂だと思っている間はコモンズの思想は進まない。いま、日本は縮小しているという事実を直視して、転換をはかるべき。
長老達を尊重しつつ、若い世代へバトンを渡していく必要がある。それが次の豊かさにつながる。
木下:
世代間のギャップも議論はしても、最後は超えられない溝はある。ただこれを超えられる関係性もある。私は自分の父や祖父の世代と仕事をするが、それでも出来る人はいる。価値観の違いがあってよいし、全員合意はそもそもありえない。小さいところから始めて、拡げていくという姿勢で取り組めばよい。
■古いものの否定は簡単だが、新しい見えないものをシュミレーションで説得できるのか
木下:
最初から合意できないところまで説得しようとしないことだ。事業は浮き沈みがあるので、諦めずにやっていくことが結果として成功と言われる。失敗なき成功はないし、成功というのはそういう不安定なものだ。
風見:
反対する人には戦略でもって挑む。
反対する人を含め、色々な意見を認めていくことから始めればいよい。
木下:
大事なのはうまくいっていない現状を克服することであり、決定的な失敗というのはないので、やってみればよい。命まではとられない。実際には、組織的に失敗が許されない行政が前に出るのではなく、民間からひっぱっていくべき。民間主導行政参加。
多少の失敗を深刻に捉えるのではなく、そこから学び、次へのステップに役立てれば良い。
■行政の中で観光・地域振興のまちづくりに取り組んでおり、「地域のコンビニ」や商品開発の提案があるが、その進め方について、アドバイスが欲しい。
木下:
食など人間の欲求に直結した事業のほうがよい。またある程度明確な客層を分析して方策を考えるのが良い。参考事例として、兵庫県佐用町、熊本の荒尾市、京都府京丹後市の常吉などがある。
風見:
鳴子の米プロジェクトで知られる宮城県大崎市の事例がある。これからは、地域で地元産品を支えていく仕組みが重要となっていく。
多少高いコメでも地域への愛着を持つ人々がそれらを購入し、さらに、その主旨に共感する地域外の人々も購入していく。こうしたシナリオが重要となる。
発展や消費行動を捉えるためには、ターゲットをきちんと捉えることが大事。これからは「食」がキーポイントになる。ブランドやシナリオづくりを徹底して行い、利益構造を組み変えることから戦略をつくっていけばよいだろう。
* * *
世代間闘争へと広がった話は、その後の第3部?(懇親会)まで盛り上がった。
(まとめ:編集N)
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