10 拾翆亭と下御霊神社

京都御所の中に、拾翆亭という旧九条家の別邸があります。江戸後期に茶会や歌会の場として建てられたそうです。

開放的な縁側から池を望むことができる拾翆亭を、庭園から見る。

建物は二層の数寄屋風書院造りで、1階の広間からは、大きな広縁を介して池を中心とする庭園が望めます。
この開放的な広間に加え、もうひとつ三畳の茶室があります。
対照的な薄暗い空間になっており、蛍壁と呼ばれる黒ずんだ壁には、蛍のようにところどころぼんやりと斑点が浮かび上がっています。静寂な空間です。
現存する貴族の茶室として貴重なものですが、毎週金土曜は拝観することができます。

薄暗い茶室のなかで蛍壁を撮影中の塚本さん(シルエット)。

御所から一歩南へ、寺町通り沿いに下御霊神社があります。このあたりは、京の三名水の一つに挙げられている染井(梨木神社の境内にある)とともに、水が美味しいことで知られています。
社殿の裏側に、朽ちかけてはいるものの蔵があって、扉には菊とオモダカの立派な鏝絵(レリーフ)が施されています。オモダカは、この神社の紋章のようです。
蔵の鏝絵は、左官職人による芸術作品です。いまはこんな立派な技を持つ人は、限られているのかもしれませんが、日本の伝統文化として、伝えていきたいものです。


下御霊神社の蔵。重厚な扉の内側には、見事な鏝絵が。


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