1944年生まれ。大阪大学名誉教授。京都大学大学院修士課程修了。兵庫県技師、京都大学助手を経て大阪大学に。工学博士。都市計画、都市環境デザインが専門。日本都市計画学会元会長。サントリー学芸賞、故奥井復太郎日本都市学会会長記念都市研究奨励賞等を受賞。 | ||
『都市の自由空間』不動産協会賞受賞2010年6月、2010年不動産協会賞を受賞された鳴海さんを京町家レストラン・光安に訪ね、お話いただきました。30年前の博士論文以来、追求されてきたテーマが、つくる時代から使いこなす時代になった今こそ、役立つ。不動産協会の方からは「マンションメーカーにもヒントになるコンセプトがいっぱいある」と言われたそうです。 聞き手:前田裕資(編集部)
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○自由空間とは?前田:このたびは不動産学会賞ご受賞おめでとうございます。 まず都市の自由空間とは何かについて、簡単にご説明いただけますか? 鳴海: 都市の自由空間というのは、屋外であろうが室内であろうが、市民というか、我われが自由に入っていける場所という意味です。そういう意味で自由空間という名前をつけました。 従来はオープンスペースと言うのですが、それでは屋外と限定されてしまうので、その概念をもう少し広げたいという狙いがありました。 ○これからの時代に自由空間の意味は 前田: 最初に博士論文で書かれたのは、もう30年前ですが、それから時代が変わっています。昔は、いろいろな都市空間をつくっていく時代だったのですが、これからは財政も厳しくなり、人口も減っていきます。その中で都市環境デザインとか都市作り、まちづくりのあり方もだいぶ変わってくると思いますが、そのときに自由空間はどう関わって来るでしょうか。 鳴海: たとえばヨーロッパでも、昔から都市の魅力とか面白さを作り出すのは、建物ではなくて、建物と建物の間の空間だと未だにそう思われています。だから広場とか街路だとかが大事だと今も課題であり続けています。 これから都市がコンパクト化していくときに、人びとが自由に使える空間が、これからよりももっと価値を持ってくると考えています。 先般、不動産協会賞の授賞式にいったのですが、協会の方から「これから集合住宅を考えるうえで色々なヒントが本のなかにある。これまでマンションメーカーがあまり考えなかったコンセプトがいろいろあるので、そういう意味でも面白い」という評価をいただきました。 ○現場の人が元気を出すには
最後にもうひとつお聞きしたいのですが、時代の変わり目で、今までまちづくりを主導してきたプランナーの方や、自治体の職員の方が、少し迷ってらっしゃるというか、元気がなくないというお話を聞くことがあります。 そういう方々に元気を出せるようなメッセージをお願いします。 鳴海: 自由空間というのは、新しく造ると言うよりも、今あるいろんな空間の使われ方を見直すということが多いと思います。やってみれば、何もお金を使わなくてもできる面がたくさんあります。そういう意味でこういう時代にふさわしい方法かな、と思っています。 従来みたいに物を建設していくという発想だと、自由空間をより魅力的に使いこなしていくという発想がなかなか出てこない。その辺は、従来の発想をやめて使いこなすという観点から考えないと、たぶん今の行政では事業費なんてそんなに出ない。ところがお役所の人は事業費が出ない仕事にまだ慣れていないんですね。そういう意味では工夫をたくさんすれば、お金を使わなくても街を面白く出来るんではないかと考えています。 前田: どうも有り難うございました。 |
『都市の自由空間』
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