名古屋学院大学経済学部教授、地域連携センター長。 著書に『観光地の賞味期限―「暮らしと観光」の文化論』春風社、『観光学への扉』(共著)学芸出版社等。現在、愛知県産業労働計画策定委員会《産業部会》委員などを務める。 |
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『地域の産業・文化と観光まちづくり』出版!!観光は、文化と産業をつなぎ、地域を豊かにするのか?外部との交流による地域経済の活性化をはかる観光まちづくり。地域固有の産業や文化を再評価し、そこから活路を見出している事例を中心に『地域の産業・文化と観光まちづくり』という書籍をまとめていただいた古池さんに、本書の趣旨をお聞きしました。 聞き手:中木(編集部) |
─まもなく『地域の産業・文化と観光まちづくり』が出版されますが、本書のポイントを簡単にご説明いただきたいと思います。 いま地域経済は一般的にどこのまちでも疲弊していると言われています。一方で、観光・交流は受け止められやすい時代にもなってきました。 うまく受け止めていける地域は、経済的にもより発展していけるでしょうけれども、地域のなかでどのように受け止めていくかということが、それぞれの地域において大きな課題になっていると思います。 かつては、工場を誘致するとか、開発をすることで地域を支えていた時代もありましたが、今の時代は、人の動きを受け止めて、地域の経済や文化を伸ばしていくということが、大きなテーマになってきました。 地域経済においては観光というものが大きなウエイトを占めていると言えます。 ─観光というと、負の側面が取り上げられることもありますが、持続可能な観光まちづくりに向けたポイントというのは何でしょうか。 外から観光客が来られた時に目につくのは、まずいわゆる観光的な施設や観光用に設えられたテーマパークなどであって、そこを訪れるということが、観光の一般的なイメージだったと思いますが、最近ではそれだけではなく、いわゆる生活空間や普通の暮らしの場も、観光地化していくということが、ひとつのテーマになっていると思います。 たとえばテーマパークのような観光用施設は、もし経営困難になれば終わってしまいますが、生活の場は、それが観光客による賑わいが失われても暮らしの場としては続いていくわけです。 そうなると、地域の人が主体的に観光をマネジメントするとか、コントロールしていく必要があります。一時的に観光客が押し寄せて、さっと去っていくという波の中に生活空間が飲み込まれてしまうのは、非常に危険な問題です。 暮らしの場を観光地化していく場合は、末長い交流をつなげていくことが大事になります。 観光地化することで消費の場になってしまうといずれ限界がきますので、消費→創造→消費というサイクルを組み込んでいかないと、なかなか難しいと思います。 また、息の長い交流を続けることは、地域の生活の質を高めることにもつながります。その時には、地域の人たちが中心となって、息の長い交流の空間として、生活の場を変えていくということが大事になります。 ─アートや工芸、産業と観光の関連について、ご説明ください。 たとえば、もともと地場産業を抱えていた地域なら、そこに外から観光客を呼び込むということは、ある種、消費者と交流をすることになるわけです。 そうなると、既存の産業が観光と言うファクターを通すことによって、デザインや新しい商品開発など、そういう面で高度化していくことがあります。そうして付加価値がついてくることもあります。 また、かつて歴史的な空間にアートを入れ込んで空間の意味を再確認したり、そこがもう一度創造の場になることもあります。 つまり、観光においては、空間とアートと産業など、いろいろなことが絡まってに創造的な場ができてくるのだと思います。 ─観光まちづくりの可能性として、具体的にどのような事例が取り上げられていますか。 創造行為というのは、常に新しいものを生みだしていく力がないと持続しないんだろうなと思います。そのきっかけとして、外部との交流があります。外からの消費者の視点が加わって、新しいものが生まれてくるということです。 たとえば本書では美濃焼を中心とした陶磁器産業を取り上げていますが、陶磁器産業の場合ですと、そこでつくって、そこで消費者と交流して、刺激を受けて、また新しいものづくりが生まれて、また消費空間としても継続していく。そういったサイクルを地域の中に入れておかないと、一方的に消費するだけでは、いずれ限界がきます。そのように、交流によって創造が生まれるというサイクルをつくり上げていくという事例を紹介している部分もあります。 ─では、本の仕上がりを楽しみにしております。ありがとうございました。 |
『地域の産業・文化と観光まちづくり』 目次
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