1963年生まれ。1985年中小企業事業団(現独立行政法人中小企業基盤整備機構)入団。全国各地の中心市街地、商店街、ショッピングセンター、個店の診断を多数実施。また、英国でのタウンマネジメントに関する調査のほか、各地(国内、韓国)で中心市街地活性化などに関する講演多数。2011年3月現在、独立行政法人中小企業基盤整備機構近畿支部まちづくり支援課長兼支援拠点サポート課長兼地域振興課長。 |
『中心市街地活性化のツボ』を語る『中心市街地活性化のツボ』をまとめられた長坂泰之さんをお訪ねし、本書の狙いや中心市街地活性化のための「七つのツボ」について伺いました。聞き手:岩崎健一郎(編集部)
|
震災復興支援の経験から長坂:まずは今回の震災で被災されている方のご健康並びに一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。私は今大阪にいるのですが、4月から転勤で東京に行くことになりまして、仕事は震災からの復興が中心になると聞いております。 これまでの大きな二つの阪神淡路・新潟中越沖の地震でも商店街や市場の復興のお手伝いをしましたので、その経験が少しでもお役に立てばいいかなと思っています。 その経験と今回の『中心市街地活性化のツボ』、震災と中心市街地の衰退というのはどこか似ているところもありまして、今回の「ツボ」の中身も、震災に関して活かせるものがあるのではないかと思います。 本書の狙いは?長坂:全国の中心市街地の衰退が止まらない中で、全国各地のまちづくりのお手伝いをしているのですが、ハコ物重視ではなく、単なる商店街対策でもない、これまでと違ったアプローチでまちづくりをしているところが多いように思います。そういう事例を中心に、特にまちづくりをしているキーマンの取り組みを七つのポイントにまとめたのがこの本です。 まとめるにあたってのポイントは?長坂:衰退が止まらない最大の理由は、郊外の立地規制をしっかりとしていないことなのですが、政策というものはそんなに簡単に変わるものではない。一方で、政策ではなくて、自分たちで変えられるものは、今すぐにでも変えられるんじゃないかということで、今回の本では、今自分たちでできることを中心にまとめました。 「中心市街地活性化の七つのツボ」とは?長坂:一つ目は「リーダーシップとタウンマネジメント」。今まではまちづくりをみんなで一緒にやっていけばうまくいっていましたが、これからは誰かがまちづくりを引っ張っていかないと、まちは元気にならない。 二つ目は「戦略」の話です。明確な方向性を持ってまちづくりに取り組めるかどうかで、まちの活性化ができるかどうかが全く違ってきます。 三つ目は「地域の強みを徹底的に磨く」。国でも地域資源について支援策をたくさん用意していますが、新しいものを持ってくる、あるいは創り出すのではなく、地域にあるもの、埋もれている資源を磨いて、情報発信していくという視点が重要で、そういった取り組みが各地で行われていますので、そのポイントをまとめています。 四つ目は、私自身一番重要だと思っているのですが、「人」の話です。「まちのファンを育てる/まちの役者を育てる」といタイトルを付けました。まちを支えていく人を育てなければ、まちづくりは持続的に進んでいきませんし、一方でまちのファンを作って外から来ていただくような仕組みをつくらなければ自己満足の世界に終わってしまいますので、その両方の「人」にスポットを当てています。 五つ目は「連携する/回遊する/つながる」。これまではバラバラにまちづくりをしていても何とかまちに人が来てくれましたが、これからは連携しても中心市街地を活性化させることは難しい。それぞれの組織がどうやって横のつながりを作っていくかに焦点を当てています。 六つ目は「イメージアップ/情報発信」をどうするかです。「イメージアップ」ということは、まちづくりの中であまり注目されていませんが、よくよく考えてみると、イメージが悪いまちとイメージを良くする取り組みをしているまちとでは、短期的にはあまり差はつきませんが、長期的には非常に大きな差になってきます。「情報発信」も同様で、いくらまちづくりをしていても、情報発信をきちんとしているまちとそうでないまちとでは、外からの見られ方は全然違ってきます。 最後は他のツボとは少し視点が異なるのですが、「不動産の所有と使用の分離」について書いています。これまでは商店街の商店主と不動産の所有者はイコールだったわけですが、商店主が高齢化していく中で、不動産の所有者としてどうまちづくりに取り組んでいくかと考えた時に、所有と使用を分けて考えれば、まちが持続的に賑わいを維持することができるのではないか。例えば高松の丸亀であるとか、色んなまちの商店街でない裏通りにこういった取り組みがあります。「所有と使用の分離」はこれからのまちづくりのキーワードになると思います。 ※参考 長坂さんが英国の中心市街地を視察された際の映像を学芸チャンネルに投稿していただいています。編集者による紹介はこちらまたはこちら。 |
中心市街地活性化のツボ●目次●
|
長坂泰之著『中心市街地活性化のツボ』 四六判・240頁・定価2100円(本体2000円) 2011年4月1日発売 |