地域旅で地域力創造

観光振興とIT活用のポイント

はじめに(未定稿)

 

 この本の執筆者は、立場は多種多様であるが、全員が、地域振興の実務家である。
 さまざまな活動の場で接点を持つうちに、それぞれが抱いている観光立国への思いには、「苔の生えた観光ではなく、ファンをつくるための観光であり、それを梃子とした地域力の創造だ」という考えに共通点があることがわかった。
 その「思い」と「経験」を、「体系化」して、地域振興に関わるすべての人々の実務に役立つ参考書として訴えたいということから、この本を上梓することとなった。

 本書の特徴は次の二点にある。
 第一は、発地の旅行業等に依存する旅行から、地域が主導する地域旅に変えようという点だ。ただし、これは単に主催が発地から着地に変わるだけではない。
 来ていただいた方々に地域の魅力を堪能していただき、地域の自然や文化だけではなく、地域の自慢の産品も含めて、地域の継続的なファンになっていただくことをめざしている。
 そのためには、旅行前、旅行中はもちろん、旅行後も地域とつながりを持っていただくことが重要になる。
 第二は、旅行に来ていただく、そして旅行後もつながりを持っていただくためにICT(情報コミュニケーション技術)を活用しようという点だ。
 着地型、あるいはニューツーリズムといった取り組みには、安価で効果的な流通手段を持たないという弱点がある。まして地域のファンとなっていただき、地域とつながっていただくには、パソコンや携帯、スマートフォンを活用して、安価に、容易に、来訪者とつながりを持てなければならない。観光情報を提供している自治体等のホームページはあまたあるが、紙のパンフレットを置き換えただけに止まっている。
 幸い、e-地域資源活用助成事業によりデータベースを中核とする共通プラットフォーム「ふるさと楽市楽座」を地域が無料で利用いただけるようになった。これは旅行の販売ができ、その後のフォローもできる画期的なシステムである。活用いただき流通の隘路を突破し、ファンづくりに大いに役立てていただきたい。その先行的な事例も本書で紹介している。
 地域振興の観点から観光に取り組む自治体の方々、観光関係の団体、NPO、企業、地元関係者の皆様に、本書がお役に立てれば幸いである。
地域力創造研究所理事長 佐藤喜子光
総務省自治財政局長(前 地域力創造審議官) 椎川 忍

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