大和田順子 一般社団法人ロハス・ビジネス・アライアンス(LBA)共同代表。持続可能なライフスタイルやソーシャルマーケティングの専門家として、有機農産物の普及啓発に注力するとともに、各地の農山村を歩き、農商工連携、都市農山村交流などを通じた地域活性化の研究と実践に携わる。

大和田順子さん『アグリ・コミュニティビジネス』を語る

日本にロハスという概念を初めて紹介した大和田順子さん。いま農山村に注目し、そこにロハスな暮らしを見出すとともに、都会とつなぐ活動をしています。都会人は何に惹かれるのか、そして今後の展開を聞きました。
聞き手:中木(編集部)
 

―このたび『アグリ・コミュニティビジネス』をご執筆いただいた大和田先生にインタビューを行います。大和田先生は、ロハス・ビジネス・アライアンスの代表で、日本にロハスを紹介されました。当初、ロハスは商業的な捉えられ方もされましたが、その本来の意味など、お聞かせいただけますか。

皆さん、こんにちは、大和田順子です。普段は東京に住んでいます。
ロハスは、2002年に日経新聞などで紹介しました。もともとは環境と健康に配慮したライフスタイルを志向するというものでした。
それが日本ではオシャレな雰囲気がひとり歩きし、エコセレブなどと言われたりしましたが、もともと、コロラド州ボルダーという小さなまちに住む人々のライフスタイルそのものがロハスだったんです。例えば、食べるものはオーガニック(有機食材)であったり、健康のために自転車で通勤したり、着るものはオーガニックコットンであったり、ヨガをする、というライフスタイルです。

―今回は「アグリ・コミュニティビジネス」ということですが、そこにはロハスに通じるものがあると思います。それはどんな点でしょうか。

日本でロハスを考えていくときに、最初は都市のロハスな生活を研究していましたが、もともとの原点である日本の有機農業がどうなっているかということに関心が向くようになりました。そこで、各地の農山村や有機農業の現場を歩くようになったわけです。そのなかで、都市と農山村をつなぐ、あるいは交流によって新しい価値観というか、地域づくりが始まっているということを発見しました。

―都市と農山村の交流ということですが、大和田先生は、都会の視点、あるいは女性の視点から農業に向かわれておりますが、地域で活躍する人にむけて、それらの人々をひきつけるポイントはありますか?

(都会人は)疲れている人が多いので、森林セラピーや、田植えをしたり野菜を育てることが本人にとって「癒し」になるといったことが入り口にはありますが、地元の食材を使って、地元のお母さんの料理をいただくうちに、だんだん田舎の持っている技や人間性に惹かれていくわけです。
また、最近は遊休農地が増えています。今はススキなどがボウボウの耕作放棄地になっているところが、昔は綺麗な棚田だったりします。そこに都市の人たちが行って開墾し、もう一度棚田に戻すといったことをします。それを一番喜ぶのは地域のお年寄りだったりするのです。そういう交流の中から、今までにはない温かな気持ちが芽生えてくる。そういう体験をしている都市の人たちが増えているように思います。
都市にいると、人間関係に疎くなったり、仕事のストレスが大きかったり、心の危機があります。一方、農山村では、まだ人と人、人と生き物の絆があります。そういった絆を都会の人は一番求めている気がします。

―「アグリ・コミュニティビジネス」の次の展開をどのように考えていますか?

今回「幸せな社会」というのを副題につけましたが、今、あらためて「幸せってなんだろう」と考える人が増えていると思います。その意味ではもっとローカルにこだわっていくのがいいと思います。
それから、本書には入れられませんでしたが、流域ですね。川の上流の森林から下流の海まで、流域単位で考えるとか、それをつなぐ活動もいくつかあると聞いています。
あるいは島です。完結している島。そういったところの研究も進めながら、さらに新しいサステイナブルな暮らし方や社会を研究していきたいと思っています。

―今日はどうもありがとうございました。


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『アグリ・コミュニティビジネス』 目次

chapter1──開墾に行こう!

1 「耕作放棄地・開墾スタディツアー」に参加する都市の人々
2 食糧危機への不安、自給に憧れる都市生活者
3 自産自消は楽しい
4 65歳を超えた農業者の平均年齢
5 マーケティング3.0

chapter2──自然資源を活かしたビジネスの新機軸

2・1 都市近郊の耕作放棄地50haを菜園に再生
   マイファーム(京都府京都市)
2・2 森で周年放牧された牛たちが、ゆったり草をはむ
   アミタ「森林ノ牧場 那須」(栃木県那須町)
2・3 農家、土壌、着る人の健康を考える
   ―オーガニックコットンの草分け
   アバンティ(東京都新宿区)
2・4 植物の力を暮らしに活かす
   ―ハーブのある生活を広めて30年
   生活の木(東京都渋谷区)

chapter3──豊かな地域社会づくり

3・1 都市農山村交流で限界集落の耕作放棄地を再生
   えがおつなげて(山梨県北杜市須玉町増富)
3・2 土づくり、人づくり、美しい里づくりで40年
   霜里農場(埼玉県小川町下里)
3・3 生物多様性を育み、地域づくりへつなげる
   コウノトリの野生復帰(兵庫県豊岡市)
3・4 おむすびが人と人の絆を育む
   ふゆみずたんぼ/鳴子の米プロジェクト(宮城県大崎市)
3・5 “根のある暮らし”の提案
   群言堂/他郷阿部家(島根県大田市大森町)
3・6 みどりの風が吹く“疎開”の町
   森のようちえん/森林セラピー(鳥取県智頭町)

chapter4──都市から移住した新規就農者たち

4・1 限界集落を女性パワーで“源快集楽”に!
   キノコハウス/西会津ローカルフレンズ(福島県西会津町)
4・2 大企業社員から転身、有機にこだわる山里の農的暮らし
   ひぐらし農園(福島県喜多方市)
4・3 三ツ星レストランの給仕長から有機農業事業の経営者に
   ビオファームまつき(静岡県富士宮市)

chapter5──アグリ・コミュニティビジネスの始め方

1 事業プランをデザインする
2 地域の資源
3 都市生活者のニーズ
4 独自性、物語性の検討―SWOT分析
5 4つのCで考える―多様な主体の協働で地域価値をつくる
6 その他のポイント

chapter6──農山村力×交流力でつむぐ幸せな社会

 
 
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