北海道大学観光学高等研究センター教授、博士(学術)。高知大学農学部卒業後、1983年より石川県水産課勤務。その間にオーストラリア・ジェイムスクック大学大学院留学、金沢大学大学院社会環境科学研究科博士課程修了。1998年に石川県庁を退職後、金沢工業大学工学部、同情報フロンティア学部を経て、2007年より現職。 | ||
敷田麻美さん『地域からのエコツーリズム』を語る発売から3年、自分たちでもやれると思ったという読者の声が一番多く、それが嬉しかったとの事です(2011年4月28日収録)。聞き手:前田裕資(編集部)
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地域から創り出すことが本書の狙い前田:『地域からのエコツーリズム』を執筆された敷田先生に、この本の狙いと、ご自身が想定された読み手、さらにこの本の活用法などについてお伺いします。 敷田: この本について簡単に紹介させていただきます。この本の前後にもエコツーリズムについて書かれたものが複数出版されていますが、この本には他の本にはない特徴があります。最大の特徴は、エコツーリズムを地域で考える、地域からエコツーリズムをつくり出し、推進していくのだという視点で書いているということです。エコツアーの解説やエコツーリズムの先進地の説明がある本は多いのですが、どうしたらエコツーリズムを地域からつくり出せるのかを重点的に書いた本は、今もこの一冊だけと自負しています。 色々な役立てかたをしていただけるそのほかにも、例えば「エコツアーって実際にはどんなものなんだろう」と思った人の疑問にも十分対応できる本に仕上がっています。第1章には、北海道のエコツアーの事例を分かりやすく載せて、エコツアーを疑似体験しながら本の内容に入っていただけるよう工夫しています。また、ツアーを作る側にいる人にとっても参考になる本です。エコツアーの作り方について明確なテキストがあるわけではありません。この本の最後の章で、どうしたらエコツアーを地域で作っていけるのかを、なるべく分かりやすく書きましたので、作り手・参加者の双方の参考になるはずです。 もうひとつお薦めしたい特徴があります。それは、ツアーを作るだけで終わらせず、地域でエコツアーを使ってどのように環境の保全と地域づくりを進めるのか、さらにそれを活用した観光をどのように推進してゆくのかという流れを書いている点です。エコツーリズムが持っている理想的な姿をどう維持していくか、それを恒常的に続けていくために必要なことは何なのかというマネジメントの重要性が書いてあります。作りっぱなし、提案のしっぱなしではないところにこの本の特徴のひとつがあると思っています。 さらに、実際のエコツーリズムを推進するにあたっては地域の実例が有用です。そこで、二つの事例を取り上げて解説しています。北海道の事例は非常にリアルで、読んでいただくことでみなさん自身がエコツアーを作る、推進する当事者になった視点で学んでいただけると思います。 この本は単に、みなさんが学ぶために一読すれば良いという類の本ではなく、エコツーリズムを推進するときに常に身近に置き、困ったときや悩んだときには再び手にとって確認し、またこの発想を応用できるのではと新たな気付きを喚起していただくための本だと思っています。ぜひ、手にとってお読み下さい。 また、この本を読んでお感じになったことやご意見・ご感想があれば、ぜひ私たちに伝えていただき、それが可能ならば私たちもみなさんと一緒にエコツーリズムの推進を進めていきたいと考えています。よろしくお願いします。 自分たちもやれると思っていただけたのが嬉しい前田:この本が出てから数年経ちますが、この間のエコツーリズムの進展とかこの本の反響について教えてください。 敷田: 出版とほぼ同時にエコツーリズム推進法が施行されまして、エコツーリズムが以前より身近な言葉になりました。ですが、まだまだエコツーリズムを知らない、この考え方を知らないために、地域の自然をどういうふうに活用しながら保全したらいいのか分からず、迷っている地域の人も多いのが現実です。そういう面で、エコツーリズムをもっとみなさんに伝えていく必要があると思います。 この本を読んだ方からの感想はいくつかありますが、一番多かった感想は「自分たちでもやれると思った」というもので、これには書いた私たちも一番喜んでいるところです。 前田: どうもありがとうございました。
関連図書敷田麻実・内田純一・森重昌之編著『観光の地域ブランディング』 |
『地域からのエコツーリズム』
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