茶谷 1946年大阪生まれ。69年早稲田大学第一政治経済学部政治学科卒業。同年、鞄d通入社、大阪支社クリエーティブ局CMプランナーを経て、81年同社退社、褐o営企画センター設立。「アーバンリゾートフェア神戸’93」「ジャパンエキスポ南紀熊野体験博」「長崎さるく博」「大阪あそ歩」などのプロデューサーを歴任。主な著書に『まち歩きが観光を変える
 

「まち歩き」をしかける
〜コミュニティ・ツーリズムの手ほどき〜

『まち歩きが観光を変える』の著者、茶谷幸治さんが、今度はまち歩きをしかける人たちのための入門書をご執筆されました。その狙いを聞いてみました。
聞き手:前田裕資(編集部)
 

まち歩き本を書く動機

前田:
 これからまち歩きのしかけ方をテーマに本をお書き頂く茶谷さんにお聞きします。どんな方にどういう形で役立てて頂きたいのかをお話し頂けたらと思います。
茶谷:
 今度、まち歩きを仕掛けるという本を書いてみようと思っています。
 長崎さるく博をきっかけにして、日本全国の都市でまち歩きが実際にずいぶん実施されているし、それを企図しているたくさんの方々に私自身が出会いました。ただし、まち歩きにはうまく行っているところと、うまく行ってないところがあるんですね。うまく行ってない原因は何なのかを考えると、やはりまち歩きそのものの捉え方がどうも正確に…と言うか、上手に理解されてないことに気づいたんですよ。
 どういうことかと言われても、それは難しいことではないんです。単に地図を作ってコースを作って、さあこのルートを皆さんと一緒に歩くんですよという形で示していけばいいのがまち歩きです。しかし、行政がそれを担当しますと、極端なケースでは、どこかの業者にそれを全部一括して発注する形になります。そうすると、形式としてはとっても素晴らしいものが出来上がってくるんですけれど、それが実際に効果をもたらすかと言うとそうもいかないんですね。
 まち歩きは非常に大きな効果をもたらすということが、長崎さるく博やその後の大阪でのしかけ「大阪あそぼ」で明らかになってきました。ですから、具体的にどうやったらまち歩きが成功できるのかが、みなさんにとっての大きな課題ではないかということに気づきましたので、この5年ほどの私の経験をかなり細かく丹念に掘り下げて書いてみようと思いました。これが、本書を書き下ろす大きな動機です。
 もう一つ、本書は非常にやさしく書こうと考えて、今それに取りかかっています。というのも、まち歩きはそんなに難しいことではないんですね。でも、その考え方や作法については丁寧にたどっていかないといけない。それを理屈っぽく書いていくのではなく、みなさんに分かってもらえるようにお伝えしたいと思うのです。その作業を今進めているところですので、ぜひこれをお読み頂ければと思います。
 私自身、この本でまち歩きの展開に関して、ひとつのあり方を示したかなと考えています。興味のある方、あるいはまち歩きに携わっている方々に是非ともお読み頂ければと思います。

まち歩き成功のポイントとは

前田:
 もう少しお聞きしますが、まち歩きがうまく行く場合のポイントとして、一つあげるとすると何がありますか。
茶谷:
 まち歩きをどう考えるかが、最大のポイントだと思いますね。
 面白半分に街を歩くと言っても、街にはいろいろなイベントがあったり、名所旧跡があったりしますから、それを訪ねて歩くのはまち歩きのごくごく単純な入り口ですよ。でも、まち歩きをもう少し深めて行くと、もっと面白くなっていく。それは見えているものをより細かく見ていくという作業でもあるし、あるいは見えていないものを見てしまうというとっても面白い行為でもあります。そういうふうにちょっと深みにはまってみるまち歩きというものをお薦めしたいと思いますね。
前田:
 まち歩きをしかけていく主体としては、どういう方々を想定していらっしゃいますか。
茶谷:
 今、全国でまち歩きがとっても盛んになっています。その主体になっている人々のひとつは、自治体のまち歩きの担当者…正確には観光担当の方々です。もうひとつは、実際にコミュニティの中でまち歩きをやろうとしている方々で、こういう人たちが今本当にたくさんいらっしゃるんです。こういう方々にこの本を参考にしてもらって、自分たちのしかけに活かしてもらえればと思います。上手なしかけを作ってもらいたいんです。そして、街の中のまち歩きを息長く育てていくにはどうしたらいいかも本書の主眼として書いていこうとしております。
前田:
 期待しております。よろしくお願いします。

 
 

「まち歩き」をしかける


●主要目次●

序──コミュニティ・ツーリズムとしての「まち歩き」
 1 ことのおこりは二〇〇六年の『長崎さるく博』
 2 次の展開が『大阪あそ歩』

1 いま、なぜ「まち歩き」なのか

 1 いまこそ、まちとの関係修復を
  (1)マス社会への失望
  (2)テレビ番組への反発
  (3)インターネット情報の発達
  (4)高齢化による社会の成熟
 2 「まち歩き」は、なぜおもしろいのか
  (1)ライブであること
  (2)自由であること
  (3)つながりがあること
  (4)知的スポーツであること
  (5)低費用で実現すること
  (6)健康スポーツであること
 3 「まち歩き」の効果
  (1)大きな集客効果
  (2)低費用と持続性
  (3)市民主導・市民主体・市民協働
  (4)市民が元気になる
  (5)「まち歩き」は「まちづくり」

2 「まち歩き」の考え方

 1 見えているものを、よく見る
 2 見えていないものを、見る
 3 謎を解く
 4 まちの時間をつかみとる
 5 自分を語る

3 「まち歩き」のしかけ方

 1 準備作業
  (1)「まち」を設定する
  (2)「まち」の特性(コンセプト)を探る
  (3)コースを調査する
  (4)コースを決定する
 2 制作作業
  (1)コース・マップを作成する
  (2)解説を加える
  (3)コース・タイトルをつける
  (4)複数コースをつくる
 3 実施運営作業
  (1)ガイドさんを養成する
  (2)実施のしくみをつくる
  (3)参加を呼びかけ、予約を受け付ける
  (4)実施する
  (5)しくみを継続する

4 「まち歩き」のこれから

 1 どこまでも多くの人びとが関わること
 2 ガイドさんはスターであり続けること
 3 あくまでも自立していること

  おわりに
 

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 四六判・192頁
 定価1785円(予定)
 2012.8 初版発行

 


大阪あそ歩「新町マップ」より

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