その後の6年間に、日本を取り巻く社会経済情勢は激変した。華やかなビッグプロジェクトは凍結され、建築や土木施設に対してはコスト・パフォーマンスの追求が至上命令とされるようになった。そして、人の目を驚かす豪華な建築や、非合理なコスト増を伴うインフラストラクチャーの“景観設計”は、社会から批判を浴びるようになったのである。
われわれ都市環境デザイン会議にとって、逆風が吹きすさんでいるようにも思われる。しかし、こうした状況は、決して“よりよい都市環境の形成”に対するニーズが減じていることを意味しているのではない。表層的で流行を追うような“都市環境の化粧”がその存在基盤を失っただけで、都市環境デザインのあり方を真摯に見つめる“またとないチャンス”が到来したのである。
さて、都市環境デザイン会議では全国に9つの地方組織を置いているが、この“都市環境デザイン'97”は、関西ブロックによる5番目の出版企画である。その趣旨は、設立から6年を経たことを受けて、会員相互の情報交換を図ると同時に、ブロック活動の経緯を記録・公開しようというものであり、関西を中心とした全国の会員諸氏から得た50余編の投稿を中心に一冊の本としてとりまとめた。
内容は2部構成としている。最初の「都市環境デザイン'97」では(1)会員の仕事、(2)第6回都市環境デザインフォーラム・関西のテーマである「仮想世界の誘惑」に関する主張、(3)都市環境デザイン全般に関する主張、を会員のメッセージとして紹介した。
また後半の「都市環境デザイン会議関西ブロック'92〜'97」では、6年間のセミナー、フォーラムの開催状況を報告し、あわせて第6回フォーラムの講演者からのメッセージを掲載している。
この冊子が会員相互の交流、都市環境デザイン会議・関西ブロックのいっそうの活性化、さらには未来の都市環境をより豊かにする一助となることを願ってやまない。
最後に、当ブロックの活動を後援・協賛などを通じて日頃から支えて頂いている関係各位、激務の中で原稿の執筆に尽力いただいた関西ブロックを初めとする全国の会員諸氏、さらにタイトなスケジュールの中で企画・編集にあたっていただいたフォーラム委員会の委員諸氏に、この場を借りて厚く御礼申し上げる。
都市環境デザイン会議・関西ブロック幹事 土橋正彦