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はじめに

 都市環境デザインフォーラム・関西は14回目を迎えました。都市環境デザイン会議・関西ブロックでは、 毎年、秋には日頃の活動の集大成として都市環境デザインフォーラムを開催し、メンバーのみならず、多くの参加者を得て議論を深めています。折りしも、本年、景観法が施行され、都市の景観形成を担う専門家として、私たちメンバーの役割が益々重要になってきていると認識しています。つまり都市環境デザインの専門家として、空間デザインに関わるのみならず、空間をとりまく「ヒト」や「コト」と共に都市を考えていくことが求められているからです。そこで、今年の都市環境デザインフォーラムでは、「都心のまちづくり、その担い手」をテーマにフォーラムを開催し、 生活者、 就労者、 来訪者の視点から、 これからの都心の環境デザインを浮かび上がらせようとしました。
 日本は2007年をピークにかつて経験したことがない人口減少社会を迎えます。明治以降の日本の都市は人口増加による都市拡大という枠組のなかで動いてきましたが、これがドラスチックに変化していくことは否めません。すでに中心市街地が空洞化していることは大きな問題になっています。こうした状況のなか、都市再生の動きが全国各地で展開していますが、商業・業務機能が集積した都心も人口が減少していく社会のなかで、新たな方向が求められているといえます。大都市圏を中心に進められている再開発や都市再生の試みは、規制緩和などにより資本活動を容易にし、巨大な公共投資を集中させることで新たな都市が生まれています。しかし、そこで就労する人たち、あるいは古くから居住している人たちとは無縁の空間をつくりあげてしまうことも懸念されています。
 都市を代表する場所でもある都心部は、多くの担い手がかかわる可能性があるものの、現状は誰のものでもないものになっています。大阪は町衆のまちといわれてきました。まちを自分たちの手でつくりあげるという伝統を持つ大阪の都心部で、共に地域をつくる「ガバナンス=共治」に向けて、それぞれの主体のまちづくりへのかかわり方、連携の仕方、課題と今後の展望などについて議論し、これからのひとつの方向性を提示したいと考えています。
 こうしたテーマに関連して、これまで2001年には「街の遺伝子」、2002年には「かたちと関係の風景デザイン」をテーマにフォーラムを開催して来ました。 それぞれのフォーラムでは、専門家の存在意義や役割が変わりつつあることが実感させられました。また、 今年はフォーラムに併せて「中之島と御堂筋で都心のまちづくりを考える展」も同時に開催します。 こちらは大阪を代表する中ノ島や御堂筋のユニークなまちづくりを紹介しようとした試みです。
 フォーラムとまちづくり展の双方から、都心部に様々な担い手が関わり、より魅力的な空間づくりに向けた手がかりが得られれば幸いです。
 最後に、 本フォーラムの開催にあたり、 後援して頂いた各団体と協賛頂いた各企業の皆様に心よりお礼を申し上げます。
関西ブロック幹事  宮前 保子
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