船上や対岸からの景観に配慮し、長江景観帯では建物は中層以下に抑えられ、豊かな梅林などの緑に覆われる。ヒューマンスケールの街路と住宅群・長江を眺める店舗群・モニュメント公園などが配置される。交通アクセスが良く、自然環境が豊かな不動産価値の高いエリアとなるはずである。保全だけでは解決しえない課題を、開発の力を逆手にとった提案と言えよう。
開発と保全のせめぎ合いにおいて、私たちは様々な試行錯誤を繰り返しつつ、ある「型」にたどり着く。
「地」の力を呼び覚まし、環境・社会・経済のパワーバランスと共振するような「型」である。
自然と共振する
開発と保全のパワーバランス
中国のある都市で、長江沿いの新都市開発プロジェクトに参加した。河岸にモノレールが走る幹線道路が計画されていたが、道路が都市と河川の関係を分断する最悪のケースを知っている私たちは、代替案を検討し、道路を水際から引き離して、巾500mの「長江景観帯」を設けることを提案した。当初は古い港町や農村風景を保全する緑地として発想したが、住宅や商業施設を導入することで開発商(ディベロッパー)の合意を得ることにした。ランドデザイン 中村伸之
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