そこで重要なのは、完全に壊すのではなく、原型を保ちながら改造によって大きく変化させることの意義が問われていると思う。また困難な課題をもった場所ほど、その輝きが増すのもうなずける。歴史的町並みの保全であるとか、あるいは「風景の発見」によって何でもなかった風景に審美性を見出すといったことであろう。
先頃、劇的町並みの再生によって有名になった滋賀県長浜市の黒壁スクエアに見学に出掛けた。町並みや建物の構造は昔のまま、それなのになぜ美しく見えるのか。そこには近景の美に徹した改造が見て取れる。建物の壁面、通りの床面、町並みの連続性、照明やサインなどの点景などである。新しく付加えられた建物も町並みに配慮がされている。
記憶する
「長浜黒壁スクエアにみる近景の美」
テレビ番組「大改造、劇的ビフォーアフター」のように、改造前と後のびっくりするような大きな違いを「デザインの力」と仮定すると、都市デザインにおいても同じようなことがあると考えるとわかりやすい。大阪芸術大学 松久喜樹
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