すこし近づいて隣り合う町家との境目に注目し、また、通りの反対側に立って二階の大屋根の重なり合いを見てほしい。二本の柱がほとんど隙間なく建ち上げられ、お互いの雨仕舞いを支えるべく背丈の高い方がけらば瓦1〜2枚分ていど隣地側に迫り出していることが確かめられる。これら集成の技術・作法−「連接のデザイン」のつくり方−は、時間をかけて練り上げられた独特の建て起し工法や敷地界のはみ出しを認め合う住まい手による互恵の了解によって成立している。
「連接のデザイン」の力は、都市環境デザインの質を高める有力な要件であるが、さてわれわれはこのような知恵をうまく継承していけるのだろうか。
成熟する
「連接のデザイン」の力
写真:左側は祇園祭の放下鉾町町家(ちょういえ)である。
祇園町南側の一画における「お茶屋」群の連続立面図(田端「祇園/物干し」(上田・土屋編『町家・共同研究』鹿島出版会、1975)による)
伝統的な京町家の並びがつくる町家景観の面白さや奥深さは、それぞれに異なる間口寸法や営まれる仕事に応じて変形するファサード群、多彩な暮らしぶりをかいま見させる奥行き方向などに読みとれよう。だが、これらが、「一戸建」「独立建築」という町家建築の特性に添いながら形成された集合の方法によって成立しているものであることはあまり知られていない。大阪芸術大学 田端修
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