都市観光の新しい形
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都市観光の新しい形〜「まち」をデザインする

京都の都市デザイン

新景観施策と交通社会実験

学芸出版社 前田裕資

 

 

新景観施策

 京都市は147万人の巨大都市でありながら、同時に、市内総生産の10%近くを観光に依存している観光都市でもある。その京都で、2007年9月、いよいよ新景観政策がスタートした。賛否両論が渦巻いた新春、JUDI関西でも特別体制で喧喧諤諤の議論をし、京都市へ支持表明を行なったことは記憶に新しい。

 ・参照;緊急討論・京都の新景観政策を考える
http://www.gakugei-pub.jp/judi/semina/s0703/
 さて、ここではあまり議論されなかったが、京都市がこの政策を進めるにあたって観光振興を意識していたことは間違いない。2006年4月19日の市長記者会見でも「景観づくりの取組は、歴史都市・京都だけが持つ魅力や活力を更に引き出し、〈京都創生〉の実現につながる」と位置付けられている。京都創生とは京都らしい「景観」「文化」「観光」によって京都を盛り立てようというもので、具体的には「入洛観光客数5,000万人の実現」「外国人観光客200万人の実現」をめざすというもの。もちろん文化伝統の継承など高邁な話しが色いろ書いてあるが、結局のところ観光振興、ブランド強化が狙いである。

 これに対して佐々木雅幸氏は新景観政策を高く評価するとしながらも「観光5000万人計画の実現と称してマスツーリズムに拍車をかけるような観光政策を続けていることは残念である。文化・景観は観光の道具ではなく、市民の生活の質を高めるものであ」るべきだと批判している(『創造都市への展望』2007年、学芸出版社)。

 

歩いて楽しいまちなか戦略

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社会交通実験概要(京都新聞071011)
 
 京都市は中心部の繁華街の四条通りの歩道拡幅とトランジットモール化を目指して、2007年10月に交通社会実験を行なった。第1回「歩いて楽しいまちなか戦略推進協議会」での市長挨拶によれば「市民や観光客がゆっくりとウィンドーショッピングや散策を楽しめる街」を目指したいとされている。

 一方、「地元で生活する人の利便性を損なうような規制なら不要」(京都新聞071017)、「市民生活を犠牲にしてまで外から人を集めてどうするのか」(同071016)との声も出ている。また期待されていた三条通りは地元がまとまらず、参加しなかった。

 

祇園南のまちづくり

 地元の努力と、京都市の英断で準防火地域が解除され、2.7mの路地が道路として認められた祇園南は近年の注目地区だ。その結果、路地の雰囲気を残したまま、建物の修景ができるようになった。歴史的景観修景保全地区指定の議論が始まってからの10年間で、地区の三分の二の建物で修繕が行なわれている。観光客は増えているが、高級な祇園の夜を楽しむ人が増えなくては地区の格は保てないということで、うどん屋さんには遠慮してもらうといったテナント制御にも取り組まれている。

 ・参照セミナー;祇園町南側地区のまちづくり
http://www.gakugei-pub.jp/judi/s0702/ro012.htm
 

都市デザイン専門家の役割

 私の住む地区で「歩道が整備されて、観光客が増えたらかなわん。反対や」という発言が住民の集会で出ていた。発言者は土木関係者で、電線地中化も請け負っているはずなのだが、自分のところは静かにしておいてくれ、ということらしい。

 これは極端としても京都には観光への拒否反応がある。

 新景観政策も、市民はなにも観光のために賛成した訳ではない。自分たちが暮らす街が壊れていくと実感し、少しでも止めたい、よい方向に向かって欲しいと願ったからこそ多少の犠牲は構わないと言ったのではないか。

 祇園南でも、まちづくりの切っ掛けは市による一方的な歴史的景観修景保全地区指定の動きへの反発だった。建築のデザイン規制のあり方や、歩道のデザインも重要だが、やはり広い意味で「暮らす」ということから物事を組立てなおす事が、JUDIのような専門家には求められている。

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