都市観光の新しい形
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都市観光の新しい形〜「まち」をデザインする

高取山登山口の町・新長田駅北地区東部

久保都市計画事務所 久保光弘

 

 

震災復興土地区画整理・新長田駅北地区東部では

 震災復興土地区画整理が行われた神戸市の新長田駅北地区東部では、まちづくり協議会が主導してまちづくりが行われてきました。民民間による景観形成市民協定「いえなみ基準」による成果としての家並みが見えてきました。「くつのまち・ながた」としてのシューズギャラリー構想、アジアギャラリ―構想の取り組みも町の中に組み込まれています。「杜の下町」を掲げて取り組んできました環境整備は、せせらぎ通り、通りごとの特徴ある街路樹、住民による足元緑花など、高取山の麓の町にふさわしい環境が育ちつつあります。

 平成18年7月、兵庫県は「まちのにぎわいづくり一括助成事業」を発表しました。これに新長田駅北地区東部まちづくり協議会連合会は、「くつのまちにぎわい10事業」提案をもって応募し、採用されました。「高取山の登山口のまちPR事業」はそのうちの1事業です。

 

高取山本道

 長田は、北に神奈備山である高取山を、南に瀬戸内海を、近くに望む地域です。しかし建物の建て詰まりとともに人々の目から遠ざかっていきました。そのような中、はからずも震災後に、高取山はその姿の全容を当地区の人々の前にあらわしました。

 高取山と大阪湾を隔てた葛城山を結ぶ軸線は、この地域の条里地割の方向と一致しています。同時に高取山の山容はこの軸線上から最も美しく見えます。この軸線上に広幅員の都市計画道路神楽西代線が計画、整備されて、この道路の正面に高取山の姿が眺められるようになりました。まちづくり協議会では、この道路を当地区のシンボル的な道路として「高取山本道」と名付けました。

 

高取山の登山口のまちPR事業

 この「高取山本道」を北に向かい、蓮池小学校西側の道を北に行けば「右高取神社本道」の道標があります。「高取山の登山口のまちPR事業」は、JR新長田駅北口〜シューズプラザ〜高取山本道〜右高取神社本道の碑〜高取山頂上に至るルートを高取山の表登山ルートとして位置づけPRすることにより、高取山とともに当地区へ地域外の人々を呼び込み、これまで当地区で培ってきた資源を生かし町の活性化を図ろうという事業です。

 

高取山登山マップの配布

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図1 高取山登山マップ
 
 この事業の一環として当地区内の施設案内を含めた高取山へのハイキングマップ(図1)を作成し、広く配布を行っています(現在はシューズプラザでもらえます)。

 

高取山の表登山口ルートのご案内

 それでは、高取山登山マップを手にして、新長田駅北地区東部をご案内しましょう。

町の玄関口・JR新長田駅の北口

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図2 JR新長田駅の北口広場 図3 シンボルマーク・バナーと有名選手の靴タイル
 
 JR新長田駅北口はこれまで放置自転車が多く、またJR壁面にしばしば落書きされることが多くありました。このため自転車防止柵の設置やJR壁面に町のPRパネルの設置をするなど町の玄関口にふさわしい環境整備を進めてきました(図2)。

地区への誘導デザイン

 「高取山登山道」へ誘導するためこのルートに町のシンボルマーク・バナーを設置しています。またシューズプラザへ人々を誘導するため有名スポーツ選手の靴を紹介するタイルを設置するなど地区の町歩きを楽しめる工夫を行っています(図3)。

せせらぎ通りとシューズプラザなどの施設

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図4 せせらぎのあるコミュニティ道路 図5 せせらぎの名称は、高取山湧水路
 
 シューズプラザ、アジアギャザリー神戸、長田郵便局、など地域の核施設は、せせらぎのあるコミュニティ道路に面して立地しています(図4)。シューズプラザは、地区のにぎわいづくりの核としてつくられましたが、いろいろな運営上の工夫が続けられています。

高取山湧水路

 水笠通公園から湧き出たせせらぎは公園内を100m、そしてコミュニティ道路に沿ってさらに400m流れています。このせせらぎの水は高取山の地中を通る阪神高速道路の工事で湧き出た清水です。そこでせせらぎは「高取山湧水路」と名付けられました(図5)。

高取山本道

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図6 高取山本道と高取山 図7 水笠通公園から見る高取山
 
 協議会では住民にアンケート調査を行い、主要道路の愛称名を定めました。その結果、高取山がほぼ真正面に見える都市計画道路神楽西代線を「高取山本道」と名付けることになりました。道標は、都市計画道路の愛称を示すとともに高取山への誘導標識となっています(図6)。

高取山の眺望保全

 水笠通公園から高取山を望む位置に建設された大型ショッピングセンターの当初の計画では、公園から高取山への眺望が阻害されるものでした。協議会は建築主に建物の一部の高さを下げてもらうよう要請し、建築主もこれに協力され、高取山への眺望が保全されました(図7)。

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