JUDI関西 第2回都市環境デザインフォーラム記録

はじめに

フォーラム実行委員

宮前洋一・江川直樹・中瀬勲


 昨年に引き続き、 今年も都市環境デザインフォーラム・関西が開催された。

昨年はJUDI関西ブロックの単独事業であったが、 本年については3つのプログラムに分かれ、 そのうちの2つが共催の形となって、 より社会に開かれたものとなった。

   

 まず、 第一のプログラムは、 都市環境デザインパネル展として、 4月3日(土)〜7月18日(日)までの長期にわたり、 兵庫県立人と自然の博物館にて、 同館との共催により開催された。

展示パネルは、 昨年のフォーラム時に行なわれた〈プロジェクト展示〉に使用されたもので、 会員の作品や都市環境デザインに関する考えを広く一般の人々に紹介した。

   

 第2のプログラムは、 「田園と自然を考える」シンポジウムとして、 7月16日(金)に兵庫県立人と自然の博物館ホロンピアホールにて、 同じく同館との共催で、 約300名の参加者を得て開催された。

同館は、 神戸三田“国際公園都市“(8つの個性的なニュータウンからなり、 計画人口約14万人、2,016ha)の中核をなすフラワータウン(計画人口3.4万人、 339ha)の中心部、 深田公園内にあり、 日本でもめずらしい県立の自然系の博物館である。

   

 当日は、 兵庫県立人と自然の博物館館長加藤幹太氏の挨拶に引き続き、 京都大学名誉教授、 日本モンキーセンター所長、 河合雅雄氏による「我が少年動物記」と提する記念講演が行なわれた。

河合氏は、 兵庫県篠山町の御出身で、 驚きと不思議さに満ちていた自然とのつきあいを振り返りながら、 森や川といった自然は、 動物等生き物の棲みかでもあり、 人間にとっての単なる経済・環境資源としてではなく、 文化資源としてとらえ直す必要があると述べられ、 日本人は自然を切りとって楽しむのが上手だが、 自然をそのまま楽しむようになって欲しいと締めくくられた。

   

 午後に入り、 「田園と自然の可能性を探る-都市デザインの新たな課題」と題するシンポジウムが開催された。

シンポジウム開催にあたり、 問題提起として、 服部保氏〈兵庫県立人と自然の博物館〉による「地域づくりにおける自然の捉え方について」、 鳴海邦碩氏〈大阪大学〉による「田園地域における新しい計画課題」の2つの講演が行なわれた。

服部氏は御自身の研究をもとに、 丹波の自然における地勢と植生の関係も生活と密接な関係があり、 人の手の入った里山であると報告され、 鳴海氏は近年の田園地域における住宅地等の開発を、 周辺の自然や農地を借景とした「甘え」の郊外開発であるとし、 危機に頻している農村や田園環境のあり方を、 都市との共生、 人間との共存という視点で考えなければならないと述べられた。

   

 次にスライドによるビジュアル・プレゼンテーション「田園と自然における都市デザイン」が行なわれた。

これは、 JUDI関西ブロックの会員が、 同課題に対し、 どのように考え、 どのように答えようとしているかを分かりやすくプレゼンテーションしたものであり、 約150枚のスライドと天川佳美氏〈コー・プラン〉の素敵なナレーションは仲々の好評を得、 大学の授業で使いたいとの申し出があったほどである。

   

 休憩をはさんで、 榊原和彦氏〈大阪産業大学〉を座長として、 パネルディスカッションが行なわれた。

パネラーは、 佐藤健正氏〈市浦都市開発建築コンサルタンツ〉、 伊藤明子氏〈宝塚市〉、 上原正裕氏〈兵庫県〉、 東建治氏〈三田市〉、 広島からお招きした松波龍一氏〈都市環境研究所〉の各氏で、 活発な論議が展開された。

   

 伊藤氏は、 新たな田園開発手法として、 田園に入る作法を考えた、 小規模散在型の開発への取り組みを紹介され、 東氏は、 現在日本一の人口増加率を示す三田のニュータウン開発に対する新住民の期待の第一が自然環境であるとアンケートをもとに示された後、 旧都市の整備、 新旧の交流が難しいと述べられた。

ニュータウン内の河川の自然的整備についても紹介された。

   

 上原氏は、 景観条例に基づく兵庫県の優れた自然景観保全の取り組みを紹介された後、 先の服部氏の指摘にもあるように、 兵庫県の自然は人為的につくられたものであり、 農林業で保全されてきたが、 都市との関係において、 今後そのシステムをどうするのかが問われていると述べられた。

   

 佐藤氏からは、 ニュータウンを中心とするこれまでの閉鎖的自己完結型の開発から、 周辺の潜在的環境価値をもっと引き出して共存できるような区域一体型、 かつ地形順応型の開発への転換への必要性が述べられた。

   

 松波氏は、 御自身の農村居住の体験をもとに、 田舎を支えてきた田舎の生存技術が、 街から見えなくなっているという危機感を指摘され、 このような人間の知恵の伝え方こそが、 国土維持のシステムにつながるのではと述べられた。

そして、 その向こうに「神」を感じるようなデザインの重要性を述べられた後、 テーマはきわめてローカルなアイデアを大切にせねばならないと共に、 問題は広範な分野に渡っているので、 都市環境デザイン会議への期待もそこにあると結ばれた。

   

 会場からは、 佐々木葉二氏〈鳳コンサルタント〉が、 これからのデザインや計画とは、 人と自然の関係の在り方を形や計画にあらわす事であろうと提言され、 長谷川弘直氏〈都市環境計画研究所〉が、 農村と都市の間の思い入れのある関係の不足を指摘され、 戦後の偏った技術主義に対する批判がなされた。

最後に、 榊原氏が、 このシンポジウムを通じて、 様々な解決の糸口が述べられたと共に、 問題の広範さへの認識もまた、 大きいと締めくくられた。

   

 第3のプログラムは、 オープンワークショップin TANBAとして、 シンポジウムの後、 会場を丹波に移し、 7月16日(金)の夜と17日(土)の終日、 JUDIのメンバーを中心に、 丹波地方のオープン参加の人々も含めて、 ワークショツプ形式で行なわれた。

16日(金)の夜はユニトピアささやま花の植物館内にて、 懇親パーティーが行なわれ、 宿泊棟では夜中迄、 親密な交流が行なわれた。

翌17日は、 辻本智子氏〈ユニトピアささやま花の植物館〉をコンダクターとして、 車に分乗し、 小雨降るしっとりとした情景の丹波の里をフィールドサーベイした。

   

 その後、 丹波年輪の里を会場として、 2グループに分かれてワークショップを行なった。

テーマA「自然・環境・デザイン」のチェアマンは中瀬勲氏〈兵庫県立人と自然の博物館〉、 ゲストに四国からお招きした石井鬼十氏〈石井空間研究所〉、 テーマB「田園・文化・まちづくり」のチェアマンは田端修氏〈大阪芸術大学〉、 ゲストに同じく四国からお招きした大谷英人氏〈若竹まちづくり研究所〉、 ホスト役はそれぞれ江川直樹〈現代計画研究所〉、 宮前洋一〈総合計画機構〉が担当した。

   

 総勢48名の参加者のうち、 懇親会、 フィールドサーベイのみの参加者を除いたワークショップの参加者は各々18名、 17名の計35名で、 地元からの発言を含む種々な意見、 議論、 提案が交わされた。

最後に両グループが合流し、 小林郁雄氏〈コー・プラン〉を座長に、 総括議論の後、 現地解散となった。

中瀬、 田端両チェアマンによるまとめの中に、 田園での計画論として、 それぞれ、 「スモールタウン・プランニング」、 「むら単位」という計画単位のキーワードが見られたのが、 非常に興味深かった。

   

 本報告書は、 このデザインフォーラムの成果をまとめたものである。

   

 まず最初に、 シンポジウムの問題提起者の一人でありJUDI代表幹事でもある鳴海邦碩氏の「田園地域における新しい計画課題」と題する総括的な論文を掲載した。

   

 次にシンポジウムのために本会会員が準備した「田園と自然における都市デザイン」に関するビジュアル・プレゼンテーションを再録した。

白黒印刷の小さな写真になってしまうと、 良さが十分に伝えられないのが残念だが、 プレゼンテーションの意図はある程度お分かりいただけるのではないかと思う。

   

 また、 最後にはワークショップの参加者のレポートをチューターのまとめとともに掲載させていただいた。

   

 最後になったが、 快く執筆を引き受けていただいた鳴海邦碩氏、 またワークショップのまとめをお引き受けいただいた田端修氏、 レポートを提出いただいた参加者の皆さん、 そしてビジュアル・プレゼンテーションにスライドとコメントを提供いただいた会員の皆さん、 共催の兵庫県立人と自然の博物館、 協賛いただいた日本興業(株)、 大建工業梶A 後援いただいた(社)日本建築学会、 (社)日本都市計画学会、 (社)日本造園学会、 そのほかフォーラムにご協力くださったすべての人びとにこの場を借りてお礼を申し上げたい。

   


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