17名が「田園・文化・まちづくり」をテーマとするワークショップに集まり、 議論をすすめた。
今回われわれが訪れた丹波地域の人びとの暮しは、 例えば山陰地域から参加されたメンバーの指摘によれば、 住宅のたたずまいや道路沿いロードサイド・ショップの発達ぶりなどをみても大変裕福であるということであった。
たしかに、 ゆたかな自然や農業環境に包み込まれたなかに展開するこのような風景は、 農山村型地域注1における生活空間の一つのモデルであるようにも思えてくる。
しかし、 問題はそれほどシンプルには終らない。
多くの地域課題があり、 多くの人びとがこれの解決に向かって取り組んでいる。
ここでは主題に関わる議論のなかから、 主要な課題やこれに関わる議論・提案を紹介するとともに、 わたし自身の試案、 あるいは考え方を提示するかたちで、 チエアマンの役割に応えることにしたい。
時機を失しないこと、 地域の意見がまとまっていることもまた、 事業推進の条件である。
これらの点からいうと、 数十戸程度の規模の「むら単位」は優れた地域単位であり、 これを支える「むらづくり条例」のようなものをつくりたいという提案は強く印象に残るものであった。
とくに、 「環境共生」などへの地域政策の視点の移動のなかで、 身の回りに蛍やとんぼなどが入り乱れて飛ぶような自然的環境を取り戻そうといった運動が各地で進められているが、 このような小生物の生きる環境づくりはきめ細かな「むら単位」ならではの仕事であろう。
近年、 この種の地域づくりへの社会的反応は驚くほど早く、 また広範に広がる傾向にあり、 このなかで自治体や国の支援も得やすくなっているという報告があった。
マスコミなどの発達により、 小さなスケールでも、 優れた地域情報は大きい伝播力をもつことができるということであろう。
この延長上には、 情報化時代の特性を活用した地域運動の活性化策も展望される。
これらのことを考え合わせて、 歴史的な時間のなかで形成されてきた「むら単位」を、 農山村地域居住の適正単位として、 さらに環境の開発整備のための先進的地域単位として、 捉えなおし、 あらためて位置づける作業の必要性を指摘したいと思う。
ロードサイドショップ化のなかで、 これまでの農山村の生活コア「まちば」や、 地域中心都市の商店街などが衰退し、 若者を惹きつける界隈的な魅力空間が無くなってきていることも、 これにあづかっていよう。
たしかに、 農山村型地域では、 大都市のような匿名性の界隈は成立しようがない。
そこでは、 ふだんと異なる「ひと」とこれによって運ばれてくる異なる「文化」に触れられる場所こそが、 これに変わる新しい「まちば」になる、 という議論は核心をついている、 と考えられた。
ここにいう<異なる文化>は都市型地域のそれを意味するから、 新しい「まちば」は都市・農村地域間の交流拠点にほかならないわけである。
地域間交流の方法は、 異文化の相互接触機会をつくること、 ということだ。
このようなコンセプトを実体化するためには、 都市民を農山村型地域に誘い出すに足る魅力施設をつくり上げることが必要である。
「ユニトピアささやま」は、 このような効果を狙うもので、 単なる保養施設とは考えていない、 という紹介には感心させられた。
そういう文明的設備の利用を一種の自然のように見なしているのが都市住民なのである。
これが地域の人びとの志向に影響を及ぼし、 人工的施設設備を拡張させ、 自然地域に環境汚染を招来する役割を果たす恐れも十分にある。
このほか、 「くるま化」によるロードサイド景観の醜悪化、 住宅建替えに際してのプレハァブ化と在来型集落景観とのアンバランスの進行など、 一種の地域のジャングル化が大々的に展開されている。
これらは、 広義の都市化の進行が、 地域秩序の改変・悪化につながっていると見るべき事態である。
そして現在、 これらの状況を底深くから突き動かすような巨大な社会的動向・変動が生じてきており、 地域はいま一大転換点にさしかかっているように思われる。
以上に整理した諸事項のなかにも、 このような局面からみて積極的に位置づけをはかることが望ましい諸側面がある。
これらを抽出・整理することにより、 まとめにかえたい。
次の3項は、 農山村型地域固有の環境性を高める方向に関わる。
この種の作業には、 地域づくりのプロとしては、 積極的に参画していく必要がありそうだ。
このような双方向型の地域施設についての検討・創案は、 地域に投げ返すべきわれわれの役目のひとつである。
注1)ここでは、 与えられた「田園」ではなく、 「農山村型地域」という呼称を用いている。
「田園」のイメージは、 どうも日本の農山村地域にそぐわないのではないかという指摘が多かったことによる。
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