「土木・景観・デザイン」考 by 榊原和彦

6.おわりに

 今夏、 筆者は、 ウィーン、 ブダペスト、 プラハ、 ナポリ、 ローマを訪ね歩いた。

ウィーンを除く全ての都市に「丘」があり、 海のあるナポリの他は、 川をもっていた。

必然的に、 全ての街は、 豊かに「土木」を有していた。

バラエティに富む表情をもった坂道、 階段、 橋、 水辺、 街路。

到るところに「風景土木(ランドスケープ・インフラストラクチュア)」(キーワード集、 筆者『風景土木』参照)があった。

それらのデザインに触れて、 本論の冒頭に述べた『土木が面白い街が、 面白い』『土木が美しい街は、 美しい』という感をさらに深くしたものである。

   

 我が国の都市に、 文化の香り豊かな美しく楽しい「土木」が満ち溢れるのは、 いつのことか。

しかし、 京都の琵琶湖疏水や大阪中之島の橋梁群、 九州に多い眼鏡橋など、 我が国にも多く遺されている歴史的土木を見ると、 決して悲観的になることはないと思わされる。

   

 状況はそう簡単ではなく、 乗り越えなければならない障害も少なくないが、 土木技術者・土木専門家と環境デザイナーとのよき「協働」によって、 よりよい方向に向かって欲しいと願ってやまない。

本論と第3回都市環境デザインフォーラム・関西が、 その契機になれば幸いである。

   

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