『……原文の文語調を多少意訳して現代文に直すとこうである。
「美学上の哲理はわきに置き、 実際に簡略に絵画を論じる時は、 絵画は三項でなると言い得る。
第一は高尚な感情、 第二はこれを画形に表す思慮、 第三はこれの実行である。
この三項を言い換えると第一に意匠、 第二に知識、 第三に技量ということになる。
三項中第一の意匠は、 すなわち、 高尚な感情であって、 絵画妙想の基礎、 最も重要である。
(中略)第二の知識は、 第一の意匠を絵画の形状に現出させる要具であり、 第三の技量は第二の知識を画布に下す機関である。
故に知識は技量より貴重とされねばならないものだ。
……[A]……」……フェノロサの言う「意匠」と「知識」とは、 双方合わせて今日で言ういわゆる意匠に相当し、 フェノロサは今日で言う意匠を「意」に当たる主観感情の要素と「匠」に当たる造形的工夫の要素に分け、 前者を「意匠」、 後者を「知識」と呼んだことがわかり、 そう解釈すれば、 意味はすっきり通る。
なお、 その「知識」とは造形上のノウハウのことで、 主として線、 濃淡、 色彩にかかわる「知識」を指す。
また技量とはテクニックのこと、 技術とか熟練度とかである。
……』(上記引用中で{……}{……[A]……}は、 筆者が省略したことを示す。
……』と述べる。