JUDI関西 土木デザインキーワード集

はじめに

 土木という言葉はなかなかシンボリックな言葉である。 それは土と木を意味し、 環境的で、 非常に未来的なイメージを与える。 また、 土木という言葉からは、 大地と架構が連想される。 大地については、 土地に手を加え人間と大地のさまざまなインターフェイスを調整していくことであり、 架構というのは橋のようなものをつくることである。 それは言ってみれば、 国土の造形である。 つまり、 土木事業は、 機能的な地域のインフラストラクチャーの整備を担っていると同時に、 地域の景観のインフラストラクチャーの形成も果たしているわけである。

 地域の魅力ある景観の形成が望まれている今日、 土木事業に期待されるところはこのように大きく、 それにふさわしいデザインの考え方が確立される必要があろう。 先のような視点に立てば、 大地や架構のデザインは、 建築とか彫刻をつくるのとはまた違ったデザイン論に基づくべきであると考える。

 近年の新しい土木技術によって造られた施設には、 合理的な力強さがあるが、 人間の感覚的な側面に対する配慮に欠けるきらいがある。 望ましい地域景観ないし環境を形成していくためには、 土木デザインにおいて、 一種の人間化や自然化の方法を見出していかなければならないのではないだろうか。

 今回ここに作成した『土木デザイン・キーワード集』は、 環境の形成に関わっているさまざまな分野の者が集まり、 日ごろ土木的な環境形成のあり方について感じ考えているところを、 取りまとめたものである。 これがひとつの糸口となり、 魅力のある環境、 ひいては後世に伝えられるべき国土の形成に寄与する、 土木デザインの方向が見出されていくことを期待するものである。

  1994年11月
  都市環境デザイン会議・大阪大学教授 鳴海邦碩


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