〈例ii〉谷間を通る道路をデザインするような場合、 平面線形を少し変えて高架にすれば山肌を削らなくても済むということがある。 そういうとき、 より統合性の高いデザインは、 道路のみではなく植生等周辺の条件、 地形、 平面・縦断線形、 道路構造、 道路本体などあらゆる要因を考慮するところから生まれる。 しかし、 現実によくあるのは、 高速道路など、 都市計画決定後にデザイン検討をする場合である。 とり得る手段はきわめて限られて、 統合性の高い、 言い換えれば周辺に調和し、 生態学的環境に適合した、 秩序だった美しいデザインが生まれ難い。
〈例iii〉ある高速道路のルート選定を景観的観点から行ったところ、 変更の必要性が生じ、 地元自治体に打診すると、 当初案に比べて自治体区域内を通る道路延長が長くなるので賛成できないという自治体があり、 ルート案の再変更を行うことになったという。 空間的統合という点では、 自治体区界によってルート変更を行うということは、 区界のあり方が直接には景観的様相や見えを規定するわけではないことを考えると、 あってはいけないことであって、 空間の論理に反する。 空間的統合の阻害につながる。
〈例iv〉高速道路と河川、 高速道路と公園など公共用地が互いに隣接して設けられる場合、 両者を併せて総合的にデザインすることが妥当であるが、 現実にはバラバラにデザインされることも多い。
〈例v〉ある護岸の平面線形が直線であるので、 なぜ曲線を使わなかったかを訊ねたら、 計画段階では曲線でやっていたのだが、 施工段階では時間も人手もなく、 曲線の施工図を書く余裕がなかったので致し方なく直線にしたという。 これは、 プロジェクトのデザインそのものが継承されず、 一貫性が失われた例である。 このようなことであると、 それまでの積み重ねが一切無に帰してしまうわけで、 極めてまずいことである。 プランそのもの、 デザインそのものを一貫性を有しながらながら実現に結びつけること(これは、 一旦決めた計画は決して変更しないと言うことを意味するのではない)が必要である。