手のひらに載る都 by 佐々木幹郎
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最後の風景−宗教と造形

赤い岩の信仰と造形

画像sa71  ムスタン王国を紹介する最後の風景です(図71)。

冒頭で参道の話をしました。

荒野の真ん中に長い塀があって、 古い大きなチョルテンがあるといいました。

この写真はタグマールという村です。

参道を一日ほど北へ行くとこの村にはいるのです。

タグマールの「マール」というのは「赤い」という意味のチベット語。

「タグ」は「山」。

タグマールといった場合は、 「赤い山」という意味になります。

 タグマールはチベットに仏教が伝搬される前に、 仏教の聖地となった場所です。

チベットで一番古い寺院は「サムイエ寺」ですが、 この寺院は日本の法隆寺と同じ年代に創建されています。

そのサムイエ寺ができる前、 ムスタン王国で最初にできた寺院がタグマールから半日ほど北方の場所にあります。

ローゲカールという寺院ですけれども、 これがいつできたのかわかりません。

ただものすごく古くていい仏像が寺院にありました。

本堂は撮影禁止でしたので残念ながら紹介することはできません。

画像sa72 画像sa73  ダグマールでは真っ赤な岩肌の麓にマニ石が並んでおります。

そしてこの岩を見てください。

実に見事なきれいな岩肌です。

そこに寺院の跡、 それから僧侶たちが住んだ部屋が残っています(図72)。

ガウディが作りそうな建物のように思いますけれども、 これはほんとにそのままの自然景観を利用して作られた寺院なのです。

そしてそういう部屋がいくつもできています(図73)。

画像sa74 画像sa75  岩の下のところに、 お祈りをした跡を示すケルンが作られています(図74)。

これもやっぱり赤い色が塗られていますね。

巨大な赤い岩とその下に散らばる無数の赤いケルン。

この組み合わせが実にうまく自然景観の中に溶けあい、 つりあっています(図75)。

最後に−ヒマラヤと釣り合う造形

 ヒマラヤの山を歩くたびに思うことがあります。

現代の彫刻家たちが、 ヒマラヤの8000m級の山を前にしてどんな石の彫刻を作れるだろうかと。

 ヒマラヤの山岳部で、 国際彫刻展をやるのが一番いいと思います。

ここにはあらゆる石があります。

それを使って作品を作ってほしい。

そしてヒマラヤ山脈と釣り合うことのできるような作品のコンテストをやったらどうだろう、 と。

画像sa76 画像sa77 画像sa78 

 しかしもう既にヒマラヤ山岳部の人たちがやっているんですね。

これはチベット仏教徒たちが13世紀から続けてきたお祈りの仕方です。

この石のインスタレーションは見事にこの大きな岩山と釣り合っています(図76)。

 宗教とともにこういう造形感覚が育っていくということ(図77)。

 現代美術を越える作品が、 ヒマラヤの山麓で無名の人の手によって製作され、 人知れず転がっています。

タグマール岩山の全景です(図78)。

 以上で終わります。

ありがとうございました。

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都市環境デザイン会議関西ブロック


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