都市住居のかたち・過去と未来 by 佐藤健正
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都市住居の再生を目指して

ヨーロッパでの反省と実験

 そうした問題に対する反省が70年代後半から80年代にかけて、 ヨーロッパでは盛んに議論されました。

その結果、 皮肉なことと申しますか当然のことと申しますか、 郊外のニュータウンはヨーロッパではもう随分変わってきています。

郊外ニュータウンで伝統的な都市住居を再評価し再び住居によって都市を創る、 そういう動きが80年代には活発になったのです。

画像18 画像19  図18はブリュッセル郊外のルーバン・ラ・ヌーブです。

中世都市の現代的再構築を基本理念に掲げたプロジェクトで、 その都市設計は極めて高い評価を受けました。

図19はアムステルダム郊外のアルメールというニュータウンですが、 都市住居を再生するというねらいが見事に実現されています。

画像20 画像21  ストックホルムにスカルプネックという町がありますが、 これも真の都市的環境をいかにして実現するかというテーマで町づくりが行なわれました(図20)。

 図21はサンカンタンアン・イブリーヌというニュータウンの中心部の都市住居です。

ベルリン国際建築展と東西統一後のベルリン

 こういう形で郊外やニュータウンにおいて、 住宅で都市を創るという試みが進んできましたが、 今から約10年前の1987年にベルリンで開かれた国際建築展、 これは都市住居の再生ということにおいて、 画期的、 歴史的な出来事だったと思います。

画像22 画像23 画像24 

 この国際建築展は「住む場所としての内部都市」をテーマに開催されたもので、 「批判的再構築」というスローガンが掲げられました。

近代的なリニアな住棟あるいは高層住棟、 そういうものから伝統的なブロック形式の都市住居への転換が宣言されたわけです。

図22の模型はこのベルリン国際建築展で建設された代表的なブロック形式の都市型住宅です。

図23は表通りに面して街路を構成し都市的な環境を形成する、 街区の表側です。

一方、 街区の内側ではインフォーマルで親密な私的な空間を形成する、 そういう都市住居のかたちが主張されています(図24)。

画像26 画像25 画像27 

 それだけでなく実に様々な都市住居のデザインヴォキャブラリーがその時に開発されています(図25)。

時間の都合でひとつひとつを解説できませんが、 例えば図26、 27は、 ベルリンの伝統的な住宅のタイプのひとつでありますシュタットヴィラというタイプを発展させて、 一方で町並みを形成し、 一方で個人的な生活を確保する、 そういった試みです。

画像28 画像29  あるいは図28、 29は、 大きな街区建築に囲まれた中にシュタットヴィラを配置したレジデンシァルパークで、 伝統的な都市住居のあり方に近代的なハウジングの思想を付け加えているものです。

画像30  今ベルリンでは統一後の首都になるということで、 都心部の大規模な再開発が進んでいますが、 先ほど申し上げたような思想が都市の中心部になお受け継がれて都心居住を創り出す動きが継続的に続いているように見受けられます(図30)。

最後に日本では…

 ところで我が国の場合ですが、 今ようやく都市居住の再生ということに向けてひとつのムーヴメントが形成されつつあるように見えます。

我々自身の都市住居の有り様について、 独自のデザインヴォキャブラリーを開発していくべき時代を迎えているのではないかと思います。

 私自身もささやかですが関西でいわば都市を創る住居運動を試みているところです。

もしご賛同いただけるならば都市環境デザインに関わる多くの方がそうした運動に参画していただけるようにお願いをいたしまして、 私のお話しを終わらせていただきます。

ありがとうございました。

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都市環境デザイン会議関西ブロック


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