一つは、 “近都心居住”。
都心に近接するところに快適な住宅と住環境を積極的に拡大する新しいプログラムが必要である。 都心近接エリアは、 従来雑多な機能が混在する都心周辺地であり、 密集市街地であり、 産業用地である。 今その多くに老朽化、 空洞化、 機能転換が進行している。 一方近年の地下鉄網など交通の発達は、 近都心エリアを思いがけないところに拡大し、 埋もれていた快適居住資源を発見している。 斬新な環境デザインの提案を含む近都心居住の概念と手法を確立することが、 都心周辺空洞化の再生策として、 インナーエリアの人口回復策として大きな効果を生む可能性がある。
もう一つは、 “田園都心居住”。
田園都市ならぬ田園都心というところがミソである。 都市圏近郊または遠郊のカントリーエリアに都心居住を移転するプログラムであり、 ニュータウンのタウンセンターという概念とは異なるもの、 区別されるものである。 近代社会は郊外を発見したといわれている。 人は都心に住むものと思っていた人々が、 都心を追い出され都心から避難するプロセスで郊外居住が進み、 郊外にも安住の地があることを発見してしまったのである。 しかし現代社会及び来るべき社会のひとびとのライフスタイルにおいては、 郊外は決して安住の地ではないと考えられる。 このままでは郊外の空洞化が進行すること必定である。 田園都心居住の新たな概念と手法を確立することが、 来るべき郊外空洞化の再生策として必須である。
“近都心居住”“田園都心居住”の2つのキーワードは、 都心居住概念の拡大を目指すものではなく、 むしろ都心居住概念そのものを目指すものである。
さらに言えば、 都心概念の解体と再構成を目指すと言うべきか。
環境デザインの手法がそれを支えることができるか。