SessionC3 参加型デザインの課題(ディスカッション)参加型都市環境デザインの理論のための
|
ひとつは、 人工物哲学から、 デザインの一般理論・当該問題についての理論枠であり、 次に合意と公共性概念についてのいくつかの論点である。
(1)計画主体が、 あるシステム(建築物、 街区)をつくり、 環境との適合を計る場合。 とくに、 計画主体とシステムと環境が互いに独立したものとして扱うことが可能である場合。
(2)計画主体が市民である場合
しかし、 「参加型」という場合、 本来問題となるのは、 上の二つのケースで先行的に与えられたと設定した、 合意によるシステムの目的であって、 その場合は以下のようになる。
さらにこのプロセスにともなう時間における環境変動とそれに適応するシステムの再―自己組織化は、 「自己言及性」の問題へとすすむ。 例えば、 社会学者マートンの「自己破壊 self-destorying prophet」、 「自己成就的予言 self-fulfilling prophet」のように、 システム形成において、 システムの未来についての言説が、 新しい要因となって、 初期条件を変化させ、 システムの振る舞いに反映するというパターンであり、 この場合、 主体もシステムも環境も外的に切り離せず、 それぞれを固定したものと扱えない。
したがって、 以下のようになる。
(1)行動に関わる場合。
(2)意志決定に関わる。 つまりみんなで決める場合。 このときの論点は、
最後に、 具体的な合意の条件として、
(3)行動と意志決定の規範の設定。
上の行動と意志決定が可能になるには、 論理的には以下の規範が要請されよう。
○序
参加型都市環境デザインについて、 哲学の立場から二つの観点から理論枠を提供したい。
1。 デザイン=計画のシステム論
ここでは、 参加型都市環境デザインをシステム論の視点から、 より厳密な仕方で、 主体−システム−環境の関係に沿って、 いくつか定式化していく。
(1)計画主体が行政の場合
(2)計画主体(市民)自体が、 人工物を含むシステムとなって環境との適合が計られる場合。 つまり主体が、 はじめから設定されるのではなく、 自らシステムとして合意を通じて形成されるプロセス、 そしてこのプロセスにおいてシステムの目的が設定される。 換言すると、 このプロセスにおいて同時に主体がシステム化する、 あるいはシステム自身が主体となる、 システム=主体の「自己組織化」が問題となる。
この場合、 行政(主体)−システム−環境のなかで、 市民は、 環境の要因となる。 つまり、 計画主体−システム−環境が、 互いに外的であり、 市民が要因として含まれる環境も固定化して取り扱え、 システムの目的や機能は行政が与えるので、 それは市民にとってもシステムにとっても外的なものとなる。 問題としては、 二つあり、 まず、 システムの機能性あるいはシステムと環境との適合、 最適化をどのように計るか、 そのパラメータの設定という「最適化」が問題となる。 また、 最適化の解が得られるにしても、 現実には最適化を満たす解答は複数あり得るので、 それらの解答のいずれを選択するかが問題となる。
例えば、 歴史的街並み保存ということが行政として決定されたとしよう。 これには、 街並み保存という目的の設定、 つまり合意が先取りされており、 ここに「参加」の余地がある。 しかし、 その後は、 保存対象そのものが評価基準になり、
(1)保存対象のシステム化(機能修復と維持、 保全)
という次第で、 最適解が求められよう。
(2)システムとその環境との適合
(3)保存対象を環境とした新しい街並み(システム)の構築
(4)システムとその環境との適合
この場合は行政が、 環境の要因となる。 しかし、 計画主体−システム−環境の外的関係は上と同じであり、 システムの目的あるいは機能は、 行政に代わって、 先行する市民による合意によって外的に与えられる。 この場合も、 システムの機能性あるいはシステムと環境との適合、 最適化が問題となり、 問題構成は上と同じである。
(1)暫定的合意主体による暫定的合意によるシステム=主体形成
(2)環境のサンプリング
(3)暫定的システムとサンプリング環境との適合性基準の設定
(4)暫定的システムと現実環境との不適合性の評価
(5)評価にともなうシステム改変による暫定的システム=主体形成
(6)新たな環境のサンプリング……
2。 公共性
次に、 システム形成、 主体形成に関わる合意の観点から、 「公共性」を考えてみたい。 前提として、 自己決定的な価値観の多様性と、 それに基づく汎メディア化状況(体験的メディアの氾濫)ならびに、 分断化された情報の受発信、 メタクリティックの欠如あるいはそれを囲む集客的消費空間環境といったものに対置するものとして、 ネットワーク化された意味解釈と価値の多様性を共存させるメタ規範と責任概念を、 公共性の軸に据えたい。 「参加」のケースとしては、 以下が想定される。
(a)社会的意志決定、 合意とメタ合意の無限遡行とそれを断ち切る権力(決断)
これは、 何を合意の対象とするかについての暗黙のメタ合意が要求されること、 そこから、 合意においては、 答えを出すことよりも問題を問題として取り出すことが何よりも重要であることが予想される。 またそうしたメタ合意、 顕在的合意の担い手である主体や、 そこから排除される非合意主体をどう考えるか、 最後に、 合意のプロセスでは、 反証例や問題範囲の広がりへの考慮が必要となることを意味している。
(1)〜についての合意と、 その合意についてのメタ合意
(2)合意の方式のための合意
つまり、 ある事柄について合意を取り付け、 意志決定をしようとするとき、 それについて合意をしようという合意=メタ合意が必要である。 また、 合意をどのように取り付けるかについて、 方式についても合意が必要である。 さらに、
(b)合意のための前提として、 次のことが問題とされる。
(1)問題空間の認知と問題設定(→(a)(1))
(2)合意主体の設定
(3)問と反証例、 範囲の広がりへの考慮
(c)話し合いのための具体的条件
が要求される。
(1)話題についての誠実さ
(2)言説の真実
(3)他者の言説への寛容
(4)発言資格の公正さ (→(b)(2))
(5)発言機会の平等性
(a)普遍的妥当的行動の条件としての倫理的メタ規範
(4)認知に関わる場合
例えば、 現実に列を乱して得をするという人がいるのは、 「列を守る」という規則が規範として働いているからである。
(b)価値の多様性のための価値的メタ規範
現実の価値観が個人によって異なるとしても、 「〜すること(事実)が幸せ(価値)」という価値規範は同一のものとして前提されている。
(c)コミュニケーションと合意の条件としての言説的メタ規範
「列を守る」と同様、 「嘘をつかない」は、 嘘をつくことが可能になる規範である。
いずれにしても、 現実の多様性を可能にする単一な規範が前提とされていることが見逃されてはならないし、 またその規範と現実の規則との混同は避けねばならない。
最後に、 規範の設定には「権力」に関わる問題が伴う。
(d)合意あるいはコミュニケーションに関わる権力
つまり、 コミュニケーションが可能になるには、 規則(コード)が必要であり、 その規則に則った発話が乱れることなく伝わるには、 その規則が維持される必要があり、 その維持のためには権力が要求されるということである。 市民の合意による参加は、 行政の力からの避難にはなっても、 それ自体が権力関係を免れているわけではないのである。
合意主体における知識や価値の分布に関しては、 以下のものが設定される。
(a)共有する知・情
以上が、 参加型都市環境デザインを論じる際の問題所在である。
みなが同じ知識や価値を共有している。 この場合は画一的な知識や価値が存在する。
(b)相補する知・情
知識や価値を補いあって、 公共性を形成している場合。 この場合は、 相補する知や価値が集まって、 全体的な知や価値を構成し、 全体として機能を発揮する。
(c)分散する知・情
知識や価値が、 流動的になり、 かつ個人の頭の中だけでなく身体・人工物・他者と分かちもった知識や価値が、 機能を発揮する。
このページへのご意見は前田裕資へ
(C) by 都市環境デザイン会議関西ブロック JUDI Kansai