みなさんありがとうございました。 では最後に鳴海先生からコメントをいただいて、 セミナーの締めくくりにしたいと思います。
鳴海邦碩(大阪大学):
今日の話のまとめをするのはなかなか難しいので、 感想という形で述べたいと思います。
今日お話しいただいたまちづくりというテーマは、 近代の問題と大きく関係していると思います。 普通「ポストモダン」という言葉は建築の世界でよく使われますが、 今日の話こそ本当にポストモダンだと思いながら聞いていました。 我々も近代について改めて考えてみなければいけないというのが実感です。
お話の中には、 けっこう経済の話が出てきました。 今、 世界のいろんなまちづくりは同じ座標に乗ってきているようで、 この間行ってきたベトナムやインドネシアでも盛んにまちづくりの論議が行なわれていました。 どうしてそうなるのかを考えてみると、 社会がここ10年グローバルエコノミーで動いていることに関係がありそうです。
マスコミもグローバルエコノミーこそ経済だとはやし立て、 古くから我々が稼いできたローカルエコノミーについてはあまり語ってくれなくなっています。 経済新聞ではさすがに無視することはないのですが、 一般紙で話題になる経済はすべてグローバルエコノミーです。 ご近所の商売なんて、 もう記事にもなりません。 中景の話も面白かったのですが、 ここ数年経済のあり方が急激に変わってきていることの方がまちづくりに影響を与えているのだと興味深く思いました。
グローバルエコノミーは地域破壊はしても、 まちづくりには役に立たないのです。 まちづくりのスケールに適合するのは、 やはりローカルエコノミーです。 ローカルエコノミーの原則は、 ゆっくり稼ぐ、 効率悪く稼ぐ、 使って楽しい金を稼ぐ、 感謝されながら稼ぐということにあります。 反対にグローバルエコノミーは、 手早く、 効率よく、 お金がどんどん貯まっていくことだけを目標に稼ぐという特徴があります。 さらに言うと、 現場を見ないでお金だけの世界を作り出す経済ですから、 そういうシステムにからめ取られてしまうと、 どんどん遠景だけの町になっていくのは自明だと思います。
ですから、 まちづくりのためにはゆっくり、 そして感謝されながら稼いでいくローカルエコノミーが基本になると思います。 単に空間を作っていくだけがまちづくりではなくて、 お金の稼ぎ方を考えねばならないのだなということを今日のお話で教わりました。 我々にまちづくりの重要な見方を示唆していただき、 ありがとうございました。
ローカルエコノミーこそが
まちづくりの基本となる
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