行ってみたい大阪・船場
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3 行ってみたいまち

 

 一方、 新しい船場の姿として「行ってみたい大阪・船場」というテーマを設定しました。 魅力が無くなって人が集まらなくなったまちは、 もはやまちとは呼べないからです。

 ではどうすれば「行ってみたいまち」にできるかですが、 筋や通りといった昔からのまちの構造を大切にし、 多様な機能が混合し、 色々なアクティビティが息づき、 住んでいて楽しく活気などあふれるまち、 すなわち船場の歴史や特徴を生かしたまちをイメージしています。

 言い換えると、 かつての船場の活気を取り戻したい、 大阪のOld Townを再生したい、 そんな気持ちを込めています。

 具体的には「行ってみたい大阪・船場」とはどのようなまちかを、 次の七つにまとめてみました。


(1) 働いて楽しいまち

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図20 働いて楽しいまち
 まず行ってみたいまちとは、 働いていて楽しいまちではないでしょうか。 私も大阪で働く身なので、 まず働いていて楽しいまちであってほしいと考えます。

 例えば、 大阪の道路は活気に満ちて車と人が溢れていますが、 セットバック空間や通り抜け空間を利用すれば、 歩きやすくなっていいまちになるんじゃないかと思います。

 公開空地等を利用したサイドウォークカフェでサボったり、 ぼんやり休憩を取りながら行き交う人を眺めているのもリラックスできて素敵です。

 天気の良い日にコーヒーとサンドウィッチを買ってきて公園で食べてみるのも、 働いていて楽しいまちでしょう。


(2) 訪れて楽しいまち

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図21 訪れて楽しいまち
 行ってみたいまちは、 日帰り観光や遊びで行きたいまちでもあります。 浮世小路や三休橋筋を辿って、 大阪の26の史跡を巡ってみるのもいいかもしれません。

 三休橋筋にはいろんな近代建築があります。 こういった建物の1階をレストラン、 ブティック、 雑貨屋さん等に改装して転用していくと、 休日には平日と全く異なったまちができます。 ライトアップすると時間帯によって変わるまちを楽しむことができるでしょう。


(3) 住みたくなるまち

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図22 住みたくなるまち
 「行ってみたい」という思いがつのると、 だんだん住んでみたくなるんじゃないかと思います。

 先ほど近代建築の1階をレストランに使おうと提案しましたが、 場合によってはもう少し長く滞在できるホテルに改装するのも良いかもしれません。 賃貸住宅に改装することも考えられます。

 まちを歩いていると、 下はオフィスでも上を見上げると人が住んでいそうなビルが結構あります。 最上階やペントハウスが住宅になっているのも魅力的だと思います。

 住むためには、 生活を支える市場や商店などの機能も必要になりますが、 実は船場にも公設市場が一つあります。 平野町などの低層のまちなみの中にある商店街を活性化することも大切だと思います。


(4) 学ぶこともできるまち

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図23 学ぶこともできるまち
 大阪は働く場として大きな存在感がありますが、 いろんな人を引きつけるためにも学ぶ場でもあってほしいと思います。

 船場の中には小学校が四つありますが、 人口減少によって小学校は統廃合されてゆきそうです。 かつて大阪市内にあった大学も千里などへ行ってしまい、 まちの中に学生の姿が少なくなりました。 それに対して、 最近では大学のエクステンション教室を駅前にもってくることがありますが、 これを船場に引っ張ってくることや、 後ほど説明する都心学校なども考えられます。

 このように新しい試みをしていくことによって、 いろんな人を大阪・船場に引きつけることができると思います。


(5) 多くの活動のネットワークのあるまち

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図24 多くの活動のネットワークのあるまち
 働く人、 訪れる人、 住む人、 学ぶ人など、 集まってきた老若男女たちを互いに結びつけるネットワークがあれば、 初めて来たまちでも馴染みやすくなると思います。

 社会的、 情報的ネットワークなど、 いろいろなネットワークの構築が重要です。

 例えば、 アメリカではBID (Business Improvement District) という組織が都心部のビジネス地区の再活性化のために、 いくつかの都市で活動し、 成果を上げていると聞きます。

 また大阪では「何々通りのどこそこで待ち合わせようか」ということはよくありますが、 初めて来る人にとって「何々通り」では分かりにくいようです。 アメリカのまちでは「何番通り」となっていて、 グリッドシステムの中で自分の位置が把握しやすくなっています。 今ある名前をなくすのではなく、 ナンバリングと通りの名前を併用すると、 初めて来た人に馴染みやすいまちにできると思います。


(6) 様々な情報が発信されているまち

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図25 様々な情報が発信されているまち
 これまで見てきたように大阪・船場にはいろんな資源がありますが、 何もしなければ人は集まりませんし何も変わりません。 近代建築は戦前からずっと残ってきているわけですが、 静かに残っているだけで、 中にはつぶされてしまったものもあります。

 「こういうものがあるよ」と積極的に外に向かってアピールすることで、 大阪の魅力が広く知られ、 人が集まることになると思います。

 例えば、 閉鎖された旧証券取引所の立会場を利用して公開オークションをしてみたら、 かつての賑わいが再現されるかもしれません。 年末年始の大納会と大発会でいつも見ているあの空間で、 何か自分が証券マンになった気分で空間のアクティビティに参加できる機会になります。

 北御堂の階段空間を使って、 イベントやライブシアターなども考えられます。


(7) 新しい試みが繰り返し行われているまち

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図26 新しい試みが繰り返し行われているまち
 ものをつくってしまって終わり、 ということはまちづくりではないと思います。 常に新陳代謝があって、 いろんなハードやソフトの部分での試みが必要だと思います。

 大阪は不法駐車が多く、 歩きづらいうえに、 交通渋滞を引き起こす一因になっています。 最近増えたコインパークでは細かな料金設定がされており、 できるだけ利用してほしいという意気込みは見えるのですが、 大阪の人はなかなか利用しません。 これを最初の15分だけ無料にしたら、 ちょっと銀行にお金をおろしに行くのに停めてしまうといった違法駐車が減るんじゃないかと考えます。

 また、 料金システムをプリペイドカード化できないでしょうか。 例えば、 テレホンカードやJスルーカード、 スルッと関西でもいいのですが、 財布の中に貯まっているいろいろなプリペイドカードを使って駐車料金を払うことができれば、 もっと便利になると思います。

 最近では都心を巡回するバスが、 これまでとは全く違ったかたちで各地で試みられています。 地下鉄の駅とその周辺を巡回する100円ループバスが福岡では始まっています。

 私は船場の中で仕事をしていますが、 南船場の事務所から堺筋本町に行こうとすると、 歩くにはちょっと遠いのですがタクシーに乗るには馬鹿みたいに近く感じます。 そういった不便さがある所をきめ細かくクルクル回っていて、 かつ料金がリーズナブルなバスがあれば利用され、 ひいては交通渋滞の軽減につながると考えます。

 情報を得る場として情報ステーションもあるといいと思います。

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