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ジェームス・ワインズの翻訳の仕事

橋本完

 以前、 80年代の終わり頃に三好さんはジェームス・ワインズの『デ・アーキテクチャー』という本を翻訳されていましたね。 今日お話しされた中で、 ジェームス・ワインズの思想の影響を受けたということがあればお聞かせ下さい。 (三好注:SDライブラリー『デ・アーキテクチュア―脱建築としての建築』鹿島出版会のこと。 )

三好

 ジャームス・ワインズの本を一言で言うと「脱建築」ということになると思います。 その考え方が面白くて、 翻訳を気軽に手がけてけっこう苦労した記憶があります。

 ジェームス・ワインズという人は彫刻家で、 かつ「サイト」という建築事務所を率いています。 作品にはアート的な観点がかなり入っていて、 そのアプローチの仕方が好きでした。 本の中には、 環境や建築デザインは「コミュニカティブ」でないとだめだという言葉がよく出て来ます。 つまり応答性のある関係ですね。 応答性を感じられる空間や建物がいいのだということを歴史的にひもといている本だったので、 その面白さを翻訳できたらいいと思ったんです。 建築家特有の難しい文章だったのですが、 「応答性のある空間を。 建物に物語性を盛り込もう」との主張には大いに共感しました。

 この本の中には「物語性の有る建築=ナラティブ・アーキテクチャー」という言葉もよく出てくるのですが、 それに習って僕もプランニングに物語性を盛り込もうと「ナラティブ・プランニング」を主張しています。 ただ効率のよい建物や街区を作るんじゃなくて、 そこに物語性を仕込む計画をしようと思ったのです。 今でも、 僕の仕事の精神はそこにありますが。

 もうひとつ、 付け加えて話しておくと、 僕の友人で東京大学の社会情報学を研究している松原隆一郎さんがこんなことを言っています。

 「流通が発達した結果、 コンビニが日本中に出来た。 悪いことだとは思わないが、 これがベストな状況だと誰も思っていない」。

 確かに今の社会はいろんなシステムが高度に発達していますが、 こういう社会は決してゴールではないと思います。 むしろ課題はいっぱいあります。

 そんな社会の中でジェームス・ワインズが言った「応答性」や「物語性」は確かに僕の仕事に影響を与えたと思います。

鳴海

 ではそろそろ今日のセミナーを終わりたいと思います。

 最近のJUDIセミナーの講師で、 実際に建築実務に携わっている人にご登場願うのは久しぶりのことで、 今日は三好さんにお話しいただきました。 学生時代からどういう風に環境デザインに関わってきたかという話などは、 若い人にはずいぶんと刺激になったことだろうと思います。 今すぐ就職のことを考えるんじゃなくて、 30歳になるまではどうやって自分を鍛えるかが大事だということを教えていただいたと思います。

 三好さんが最後におっしゃったように、 いろんなジャンル、 いろんな立場の人が都市環境デザインに関わっていくことが必要ですので、 みなさんがいろんな観点で取り組んでいかれることを期待します。 9月頃には、 何人かのグループで環境デザインの本を出版する予定で、 そのうちの建築分野を三好さんに担当していただいてますので読んでいただくと今日のお話もより深く分かると思います。

 では今日はこれで終わります。 みなさんどうもありがとうございました。

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