質疑応答
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司会(鳴海):
発表して下さったみなさん、 どうもありがとうございました。 これより質疑応答に移ります。 今日のお話は広範囲にわたっておりますが、 質問のジャンルは問いませんので、 どうぞお聞きになりたいことがあればおっしゃって下さい。
加西市でまちづくりに携わっている澤です。 今、 加西市で問題になっているのが山の松枯れで、 それをなんとか再生できないかという動きがあり、 その対策に私が選ばれました。 もともと私は色彩の仕事を専門としていましたが、 いろいろまちづくりにも携わっていたことから、 加西市にも関わりを持つようになって、 こうした自然関係の課題にも取り組むようになりました。 松枯れの問題は加西市だけでなく、 兵庫県全域にわたって今問題になっています。 この問題をどのようにお考えなのかをうかがいたいと思います。
斉藤:
松枯れは淡路島でもヒドイ状態になっています。 幸いウチの学校ではその専門家が二人いて、 いろいろと取り組んでいます。 私の気持ちとしてはもっと本格的に取り組んで、 兵庫県全域で展開できればいいと思っています。 もし、 澤さんの所が住民参加型で取り組んでおられたら、 ウチの学校も参加できる方向を検討できればと思います。
澤:
実はこの問題に関しては景観園芸学校にも協力していただきたいというのが本音です。 中心となっている私自身がそうした専門知識を持っていませんし、 むしろ私の仕事はコーディネーターとしての役割だと思っています。 まちづくり活動をやっておりますと、 高齢者の方は昔の松林の姿を知っており、 そこで遊んだ想い出を持っていますが、 若い人にはそうした体験も記憶もないという世代の断絶に気づくことがあります。 もう一度松林を再生して想い出を共有したいと、 今地区の人々中心で取り組んでいるところです。
斉藤:
私もその取り組みには大賛成です。 学校が協力できれば、 学校にとっても幸いだと思います。
もうひとつは、 園芸療法についてです。 私の関係している所で温泉療法というのがありますが、 ヨーロッパではこうした療法はたしか保険が下りる仕組みになっているはずです。 日本でもそんな風にならないかと考えているところですが、 園芸療法もいろんな療法と組み合わせて体系化すればさらにいろんな展開が開けるんじゃないかと思います。 その辺りをえ、 どうお考えでしょう。
斉藤:
園芸療法は作業療法のひとつです。 今のところ、 どういう展開をしていくかはまだ不明ですが、 いろんな療法と組み合わせていく展開は今後あってもいいと思います。 園芸療法は今年始まったばかりの課程ですので、 これからいろんな可能性が出てくると思います。 いろんな療法との連携も考えられることでしょうし、 こちらからもよろしくお願いします。
学生さんがユニークで、 いろんな分野の出身の人が入学して来るというお話がありました。 その入学者の選抜方法はどのようにされているのでしょうか。 一定の条件がありましたら、 お聞かせ下さい。
斉藤:
まず専門課程の選考方法を紹介しますと、 (1)一般的な園芸の基礎知識を問うペーパー試験、 (2)自己表現を問うデッサン、 (3)小論文、 (4)面接、 (5)語学(英語)を行って総合的にいい人を選ぶようにしています。
ただし、 今年の後期の試験ではデザイン重視の試験を初めて行いました。 これはデッサンのポイントを高くすると共に自分の作品のプレゼンテーションをしてもらうという試験にしました。 まだ、 この人達は入ってきてないので、 この試験がどんな人材を選んだかはこれからというところです。
園芸療法課程の試験は、 最初に書類選考を行います。 その選考を通った人には、 2次試験として集団面接と集団討論を行って総合的に人物を見るというやり方をしています。 この時には精神科の先生にも立ち合ってもらい、 人物像を見てもらうのですが、 その見分け方が面白くて園芸療法課程だけでなくて専門課程にも取り入れたいと思いました。 例えば、 意地悪な質問をして、 その答え方の反応でどんな性格かを見るとか。 今年、 専門課程に取り入れたプレゼンテーションがその一例で、 話し方や受け答えでかなり一人一人の性格が分かりました。
ですから、 我が校の試験はかなりユニークさを目指しているとも言えます。
先ほど就職の話がチラッと出ましたが、 学生のみなさんはどういうイメージで就職をとらえていらっしゃるのでしょうか。 私なんか終身雇用にどっぷりつかっている世代で若い人の就職イメージがなかなかつかめないのですが、 今までの雇用形態と違うイメージをお持ちでしたら、 参考までに教えて下さい。
斉藤:
それはむしろ学生自身に答えてもらう方がいいですね。
安尾:
私の場合は一度勤めていたところをやめての再出発ですから特殊なケースだと思いますが、 客観的に考えるとゼネラリストを目指す人材が育つといいと思っています。 現実的に考えると公務員が妥当な線でしょうが、 単なる公務員じゃなくて植物から建築まで全ての事が分かってよりよい人間環境を築いていって、 いろんな企画をしたいと考えている人が多いんじゃないでしょうか。 その他、 コンサルタントや建築方面にいきたいと考えている人も多いようです。
私自身はNPOのコーディネーターを目指していますが、 それで食べていくのはなかなか難しいようです。 単なるボランティアではなくて、 それでプロとして食べていくにはどうしたらいいかを私自身も模索中で、 これは景観園芸学校の課題でもあると考えています。
烏賀陽:
私はできれば、 イベントの企画をして、 人を集めコミュニケーションを行って、 人々や地域を活性化させる仕事がしたいと思っています。 この学校に来てからそんな希望を持つようになりました。 そんな道が開ければいいなと思っているのですが、 実際にそんな会社があるのか、 それよりそんな仕事があるのか疑問です。 むしろ、 会場におられる方々に私たちのような学生をとりたいと思う会社があるのかどうか、 うかがいたいのですが。
鳴海:
ではせっかくですから、 その手の会社の人にコメントしていただきましょう。 まずはコンサルタントの堀口さんから。
堀口(アルパック):
はい、 そういう仕事は現実にちゃんとあります。 あるんですけれど、 そういう仕事は土日に集中してしまうんです。 だから、 普通の休日がとれなくて、 家族と遊べないことになります。 また、 イベントだけを続けていくのはなかなか難しくて、 ある時期になると行き詰まってしまう危険性もあります。
鳴海:
イベントの仕事だけでなく、 景観園芸学校全体の教育方針と仕事の可能性についても答えていただきたいのですが。
佐々木(京都造形芸術大学・鳳コンサルタント):
私は大学で教えると同時に鳳コンサルタントも同時にやっていますので、 両方の立場からお答えします。
まず、 コンサルタントを目指すなら、 目指す分野の大学での専門教育程度の知識が必要になるでしょう。 ただ私はこの学校の目標を高く評価しておりますし、 ここの学生がどんどん伸びて欲しいと思っています。
京都で教えている学校では行政と一緒に活動する機会が多く、 ワークショップや行政事業に学生もたくさん参加させています。 頭が固くなりがちな行政の現場に、 柔らかい学生の感覚や刺激が必要とされることが多いんです。 ですから多くの若手行政マンの人たちはあなた方のような人材が市を活性化してくれることをすごく期待しています。
今、 地方行政でも生涯学習教育課、 社会教育課、 母親と子供の学校教育などいろんなことをやっていますが、 その担い手がいないのが現状なんです。 今の行政マンはほとんどが経済関係の専門知識を持っているのですが、 地域コミュニケーションを活性化できる専門家ではないのです。 ですから、 地方の自治体に集中的にみなさんが入っていくと、 地方行政はもっと豊かになっていくでしょう。 もっと言えば、 その地域のトップを園芸療法で意識改革して欲しい。 それが一番大事ですね。 そういう人材を育ててもらうと、 関西どころか日本中が活気づくだろうという気がしました。
今日の話を聞いていても、 これだけとうとうとしゃべれる学生はウチの学校にはいません。 日頃お付き合いをしている感覚からも、 優秀な学生が多いと思います。 地方行政の中に入っていくと、 大きく羽ばたける分野があることでしょう。
長谷川(都市環境設計):
私は民間でランドスケープのコンサルタントをしています。 そして、 非常勤ですが、 淡路景観園芸学校に行っていますので学生さん達ともお付き合いがあります。 この学校の特徴は、 今お話にあったように幅広い形で実践を中心に教育をしていくところだと認識しております。
ランドスケープの仕事を私なりの言葉で言いますと、 頭で考えながら体験からものを作っていって人々に美しい風景や楽しい場所を提供するための技術者だと位置づけています。 何か目に見える形でものを作っていくことを目的にコンサルタントをやっているわけです。
今、 景観園芸学校の学生さんの中でどのくらいの人がランドスケープの仕事に就きたいのかを考えると、 おそらく数%ぐらいだろうと思っています。 ここ2、 3年のつきあいの中で考えるとそんな感じです。
また、 ここの学生さんが本気でランドスケープの仕事をやりたいと考えているならば、 相当力を入れてデザインを勉強していただかないといけません。 まずはフリーハンドでものが描けるところから学んでいかないと、 私の事務所に来てもらっても役に立たないというのが正直なところです。
もうひとつの道としては、 佐々木さんのお話にあったように、 地方行政の中でソフトな形でお祭りやワークショップを手がけ、 いろんな体験の中から行政と共に新しい分野を開拓していくことも考えられます。 そういう道を選択するなら、 デザインなどのひとつの分野にこだわらずに幅広い技術や知識を学んでいった方がいいように思います。 ただ、 民間のコンサルタントの会社でそれなりにプロフェッショナルになろうとするなら、 相当専門の知識や技術を身につけておかないと、 こういう社会背景の中では生き抜けない厳しい状況であることを知っておいて下さい。
鳴海:
予定の時間となりましたので、 これで今日のセミナーを締めたいと思います。 斉藤先生、 中瀬先生、 学生のみなさん、 豊富な話題提供をありがとうございました。 今年最後のセミナーを終わりますが、 また来年もよろしくお願いします。
松枯れの対策はないのか
澤(カラーテクノロジー研究所):
園芸療法の展開について
澤:
学生の選抜方法について
金澤(大阪産業大学):
就職についてのイメージ
難波(兵庫県):
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