今ご紹介頂きました都市公団の千葉です。 私は都市公団がまだ「日本住宅公団」の頃から30年のあいだ仕事をしてきました。 そのあいだ私は、 いわゆる郊外のニュータウンなど団地開発と呼べるようなものには一切関わらず、 「まちなか」の、 それも都心に近い所ばかりで仕事していました。 従って「まちづくり」と言っても主に既成市街地でのまちづくりについてお話したいと思います。
最近はご存じの通り、 もう郊外に都市がどんどん増えるという時代ではなくなり、 むしろ都市の中に人がどんどん戻って来ているようですが、 しかし実際に都心とその周辺といった既成市街地を見てみると、 様々な問題があり、 そこでの整備、 特に住環境整備や再開発事業といった都市再生の事業がなかなかはかどっていないというのが現状ではないでしょうか。
幸いにも、 私のやってきた事業はそういった都心とその周辺での仕事が多かったものですから、 それらを中心に今までやって来た仕事を少し筋をたててまとめてみたいと考え、 このたび大阪市立大学の土井先生に師事し、 論文にまとめました。
この論文は「既成市街地における連鎖型面整備事業の展開に関する研究」というタイトルで、 既成市街地において行われる住環境整備や駅前整備といった面的整備事業を対象に、 そこで実際に様々な展開があった事業例について系統的に研究してみようというものです。
まずはその市街地自体が持っている問題です。 例えば権利が細分化され錯綜しているとか、 良い市街地と悪い市街地が混在しているとか、 あるいは密集老朽化、 つまり木賃アパートのような建物が広範囲に広がっているなどといった理由から、 市街地ではなかなか整備が進んでいないという現状があります。
また一方で、 それらの市街地を整備する際、 従来は大きな事業手法としては区画整理事業と市街地再開発事業の二つしかなかったため、 これらだけでは到底カバーできない既成市街地の課題地区が増えているという事が言えるでしょう。
そこで、 昭和50年代前半にいわゆる「要綱事業」と呼ばれる事業が沢山つくられ、 これらを駆使して問題市街地を法定事業並みの補助金を入れて整備していこうという動きが随分ありました。
今日ご紹介する様々な事業も、 そういった流れの中で展開したという背景があります。
私としては都市計画事業がもう行き詰まってる、 あるいは手に負えなくなっているということ、 あるいは都市計画の対象が国家的な基盤整備から生活基盤の整備レベルへ段々と降りて来るにしたがって「公共性」という概念が多様化してきている。 この「公共性」というものをどう考えるか、 ということが問題意識としてありました。
また、 大規模開発や広域開発といった大規模プロジェクトに対する若干の問題意識もありました。
そこで私が考えたのは、 そのような非常に大きな広がりのある問題市街地について、 その全体をクリアランスしながら大規模に開発していくという整備手法ではなく、 小規模な部分の開発を周りにどうにか繋げていけないか、 それを効果的に全体に広げる何か良い手法は無いかという事でした。 《それが「連鎖型面整備」という言葉で表した事業のイメージです。 》
今日はそれをおそらく具現しているだろうと思われる事例をいくつか紹介しながら議論していこうと思います。
それから、 私の最終的な目的は「部分的な事業をきっかけとして地域全体に整備が連鎖的・面的に拡大していく」といった整備の枠組みといえるものをイメージしたいということです。 今日も最後にはその話をさせていただきたいと思います。
とにかく色んな事例・事象を取り上げて、 連鎖という事をどのようにイメージしたかをご理解頂けた方が面白いと思いますので、 そちらに重点をおいてご紹介します。
1.はじめに
(1)今までの仕事
千葉:
(2)既成市街地の整備が遅れている理由
私は既成市街地での整備が捗っていないのには、 二つの理由があると思っています。
(3)連鎖型とは
ところで「連鎖型」という言葉についてですが、 「連鎖」というのはすなわち「物事が繋がっていくこと」で、 広辞苑では「鎖のようにつながること」と書かれています。 また「連鎖反応」というのは「連続的に反応が進んでいくこと」を言いますし、 英語では“chain reaction”となり、 つまり「鎖のようにアクションが繋がっていく」というイメージを表しています。
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