21世紀 都市デザインの課題


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日時:2003年11月3日(月)14:30〜19:00
場所:大邱広域市 建築協会会館5階 大講堂
主催:大韓建築学会(大邱・慶北支部)
   大邱都市デザイン研究会 準備委員会
主管:慶北大学校 建築学部
   大邱韓医大学校 建築・建設システム工学部
後援:サンハン煉瓦
趣旨:
 近年、都市環境と暮しの質に関する要求がより高まりつつあり、これに対して地域の自律的、創意的発展方向が多様に模索されています。
 このような時期に、「21世紀 都市デザインの課題」というテーマで、韓・日国際シンポジウムを開催し、関連した専門知識と情報交換の場を提供します。

特別講演 戦後の都市デザイン状況を振り返り、
     21世紀の都市づくりの課題を考える(日本を事例に) 角野幸博(武庫川女子大学)
      主題発表
   ・日本のランドスケープデザインの実際:長谷川弘直(都市環境計画研究所)
   ・日本の高容積集合住宅のデザイン:江川直樹(現代計画研究所)
   ・大阪における商業空間の新傾向と課題:堀口浩司(アルパック)
   ・大邱市における戸建住宅地の街路空間のあり方:ハ ゼミョン(慶北大)
   ・大邱市南山地域の景観計画試論:クォン ギチャン(大邱韓医大)
討論
    討論参加者
   ・司会:キム ドンヨン(大邱カソリック大)
   ・キム チョルス(啓明大)
   ・キム ギョンデ(慶州大)
   ・キム ゾンハ(東洋大)
   ・ハ ゾンソン(大邱市)
   ・難波 建(兵庫県)


意見交換の一部(文責:難波 建)

◇日本側コメント 難波
○1995年の阪神・淡路大震災では、精神的、物質的に様々な援助をいただいたことにお礼を申し上げます。
・私がJUDIに入会したのはその2年前、当時、新都市計画を担当していた。
・造園だけでなく、農業、林業、土木では交通、河川など、新都市づくりには様々な分野との関わりが必要、そのための専門家との繋がりを持つために入会した。
・震災後、震災復興を中心とした密集市街地の整備を4年やり、現在、都市の土地利用計画、都市のマスタープラン策定を担当して5年になる。
○都市をつくるには、行政それぞれの分野が頑張ることも必要だが、協調し、共同で作業しないといい都市づくりにならない
・いい建物ができても裏側が不良住宅地ではいい都市とは言えない。
・行政各分野のコラボレーションと専門家の活用が大きなテーマ。
○学会は、専門的に深く極めて、人がやっていないこと、人とちがったことを研究するが、JUDIはみんなで知恵を出し合ってものをつくっていく違いがある。
・JUDIで活動していると、誰がどんなことをやっているのか、全体の方向性を掴むことができる。
・学者、コンサルタント、行政のフランクな関わりにより、都市をどう作っていくかのテーマを廻って議論が展開される。
○具体的な活動としては、年1回フォーラムを開催、ほぼ毎月セミナーをやり、毎年、今日のような海外セミナーも行っている。
・学会と違うところは、研究発表のような形式はなく、参加することがJUDIをつくることで、主体的な関わりの集まりで成立している。
○DUDIの誕生が、大邱の都市の問題の解決方向を見つける議論の場となり、JUDIと共通のテーマを議論できるようになればよい。

◇韓国側のコメント1
・韓国でも美しいまちについての興味が増している。
・日本で試みられている美しいまちづくりを見習うことは必要である。
・しかし、見習うのにも限界がある。
・韓国の持つ資源の活用が必要。
・共同でデザインを議論していくことが大切。

◇韓国側コメント2
・デザインには地学的なデザイン、エコロジカルなデザイン、景観と環境の要素がある。
・日本版の都市デザインシステムにおいて、物理的よりコミュニティに興味を持っており、デザインのソフト面の話が聞けた。
・幕張は景観の解放感、アメニティ、景観の変化がわかった。
・建物ファサードの店舗はいいが、車を入れないと都市の発展が止まるのではないか。
・ヨーロッパ風とか南イタリア風というのがあったが、日本には積み上げた独自性があるはずで、○○風というのを採る必要があるのか疑問。
・住民との協議をどうやっているのかを聞きたい。
・まちにはコミュニティ施設が必要、そのあたりはどうなっているのだろうか。

◇韓国側コメント3
・日本と韓国は同じ問題を持っていると感じた。
・都市の文化、住民参加といった問題だが、違うアプローチに興味を持った。
・歴史的なものをうまく使っている。
・マスターアーキテクトが日本では一般化されていることがわかる。
・まちづくり、景観ガイドラインがエコロジー、環境、景観が抱えている問題に有効か。
・出会うということ、人と人、人と物、物と物の出会いに注意。
・手法として、エコロジカル、歴史環境、企業の役割(未来に対する分担)など。
・未来都市のキーワードとして、ファサード、ネットワーク、インターフェイス。
・都市は集まって住むのか、分散がいいのかの問題があるが、一つの塊としてつくっていかねばならない。

◇韓国側コメント4
・大邱で都市景観の都市環境基本計画をつくった。
・平面計画から重視への転換が必要。
・都市の眺望など7つの要素を取り上げた。
・日本も視てきたが、専門家、行政、住民が共同しているのが印象的。
・日本では、水辺とか家の間の道、せせらぎをうまく使った計画に人間性が感じられた。
・開発すると直線的なまちになるが、日本は曲線をうまく使っているなど、衝撃を受け、参考になることが多い。
・大邱は、川を中心に人が住んでいる昔からの都市で、歴史と文化があるのをうまく利用すればよい。
・大邱の衰退を止めるためには、転換が必要で、アイデンティティを発見して昔の都市の名声を蘇らせたい。
・外国は歴史を残して活用しているが、大邱は開発でなくしてしまっている。

・計画は多いが、実際に実現されるのが少ないのが残念。
・台風で川が潰されたが、これは神の領域を壊したことの報いで、自然にやさしい整備にしなければいけない。

◇日本側への質問1
・景観計画において人間性、場所性をどこに求めるのか。
長谷川:景観をデザインする人の個性が空間に反映される。美しいものをみて感動する気持ちを持つ人はランドスケーププランナーになれる。
江川:南欧風の商業施設の紹介があったが、これは商業向けのファッションの例。居住空間については、如何に空間を感じられるかを示すことが人間性ということ。

◇日本側への質問2
・住民のまちづくりの意見をどうまとめるのか。
長谷川:ワークショップ方式を設計手法として採る。

◇大邱側への質問(鳴海)
・17年前から10回大邱に来ている。韓屋や韓式住宅の大門や塀が大邱の重要な景観だったがこれがほとんど無くなっているのが残念。歴史的なまちの財産を壊していくことについてどう感じているか。
韓国側回答:同感である。城内の公園整備においても、伝統的な塀が取り除かれてしまった。間違った事業であると反省している。事業を意志決定する過程がオープンになっていなかったため、歴史を破壊する事業が行われてしまった。計画者が伝統を理解していなかった。


日本側参加者(上記以外)
   丸茂弘幸(関西大学)、鳴海邦碩(大阪大学)、山本 茂(生活環境問題研究所)、澤木昌典(大阪大学)、小浦久子(大阪大学)、大矢京子(都市環境計画研究所)、西川孝雄(アーテック・にしかわ)

感想
 韓国、大邱市における都市環境デザインの課題の一端を知ることができた。都市の個性、地域性に関する関心が高いと見受けられた。定員150名の会場に、座りきれないほどの参加者が集まった。学生の参加が多数あり、このようなことはこれまでなかったと、主催者が感想を述べていた。
 DUDIの将来の発展に期待するともに、将来、新たな観点・アイディアで交流を深めて行きたい。(鳴海)

 


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