21世紀 都市デザインの課題


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韓国・大邱セミナー2003
 
小浦 久子/大阪大学

  韓国・大邱において、2003年度のJUDI 関西国際セミナーを開催した。大邱で行ったシンポジウムは、大邱都市デザイン研究会(DUDI)の設立を記念するものであり、今後、都市環境デザインへの関心が高まることが期待される。

都市づくりの課題と都市環境デザイン
  大邱は韓国第3の都市である。サッカーのワールドカップが日韓共催で行われたときに韓国会場の1つとなり、また、2003年にはユニバシアードの開催都市となり、こうした国際的イベントにあわせて、都市開発が急速に進んでいる。
  中心部は、古い城郭都市で、入り組んだ街路が都市空間を構成する歴史的市街地であるが、その都市空間を特徴づけてきた韓屋の塀が続く町並みは、韓屋の建て替えによりかなり失われてきている。また、中心市街地では再開発が進められ、周辺部では、グリーンベルトにより極端な市街地拡大は抑制されるものの、大規模な宅地開発や複合開発が行われている。
  このような状況で、大邱の都市づくりにおいては、1)歴史的市街地を中心として個性豊かな都市環境を形成していくこと、2)周辺に展開されている大規模開発を魅力あるものにしていくことが、課題になっているのではないかと考えた。これは、日本にも共通する課題であり、都市環境デザインは、そうした都市づくりにおいて個性や魅力の創出に関わる。そこで、実際に新旧市街地の現状を見ること、そして日本の経験と大邱での取り組みを報告しあい、今後の都市環境形成の方向を考えるために意見交換をすることを目的に、大邱でのシンポジウムを計画した。

開発と歴史と地域性
  日本からは、新たに環境をつくるときにも、歴史性や地域性を活かして継承することが試みられていること、開発においても地域との連続性や地域にとって豊かな都市空間を生み出すことが試みられていることが報告され、開発も保全と共存できるものであり、いずれも都市環境の創造的デザインであることが認識された。また、韓国からは、住宅地の生活道路の共用空間の魅力や公共性と安全性、地域の風土と風景の問題が出され、環境デザインはつくるだけでなく、空間の管理や使い方とも関わっていることがわかる。
  いずれもそれぞれの土地の地域性への関心がみられる。しかし開発は、近代化を促進し経済的活力を生み出してきたが、同時に歴史や自然を壊し、デザインは美しいけれど、どこも同じようになっていくという側面もある。開発と保全をうまく組み合わせながら、それぞれの都市の個性を創造していこうとすることは、それぞれの地域が地域性を認識し創造していくことに主体的に取り組む都市づくりが求められているということである。
  韓国では、2000年の法改正でいわゆる集団規定に関する地域指定および建築制限は都市計画法に一元化され、2003年には、国土利用法と都市計画法が統合され、都市も農山村も自然地も総合的に土地利用管理するようになった。都市計画も枠組み法となり、各都市が都市計画条例で指定内容の詳細を決めるようになった。制度的には地域の自律は日本より進んだことになる。景観や都市環境は、総合的な空間づくりとその環境管理であることから、今後の韓国におけるデザインと都市計画の連携がどうなるのか注目したい。


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