21世紀 都市デザインの課題 |
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関西大学 丸茂弘幸
JUDI 関西の国際セミナーも回を重ねて来ましたが、訪問する国によって内容はその都度違うのでいつも新鮮な気分で参加できます。参加者の顔ぶれはやや固定気味ではありますが少なくともマンネリとは程遠い状態で、この調子ならまだ当分持続的発展を期待できそうです。
視察プログラムの中では、慶州の良洞や玉山書院をはじめとする伝統的な韓国と、大邱のワールドカップ競技場やユニバーシアード選手村住宅地などの新しい韓国とをバランスよく見せてもらいました。最新鋭の設備を備えたサムハン煉瓦工場の見学も貴重な体験でしたが、慶北大学校の先生方もお付き合い下さったウーバンタワーランドのホラーハウスと急流すべり、これも普段は味わえないなんとも楽しい思い出です。 欧米の<知の空間>としての大学キャンパスや大学都市を数多く見て回って帰国したばかりの私には、韓国の伝統的な<知の空間>である玉山書院と独楽堂に特に興味をそそられました。以前見せてもらったことのある屏山書院や陶山書院と同様に、ここもまた立地がすばらしく、渓流の河床から露出した大きな石の上をこわごわ渡りながらの書院へのアプローチ、そして渓流に張り出すように建てられた独楽堂の渓亭の景観はとても印象的でした。書院のたたずまいの中に、韓国の伝統的な環境デザインの粋を見る思いがします。 韓国の書院に最も近い対応物を日本に求めるならば、やはり江戸時代の諸藩の藩校、郷校や私塾だと思います。岡山藩の郷校閑谷学校と、そこから細い渓谷を登ったところにあるゲストハウス黄葉亭との関係は、建物自体は大いに異なりますが、玉山書院と独楽堂渓亭の関係によく似ているように思います。同じ儒教文化圏の中での伝統的な<知の空間デザイン>の差異性と共通性を考えるのも面白そうです。 シンポジウムでの日本側への質問に「景観計画において人間性や場所性をどこに求めるのか」というのがありました。そのやりとりを聞きながら、あるいは宴席での歓談の中で、何か漠然とした思いが胸につかえるのを感じていました。そのときはそれほどはっきり意識していませんでしたが、今にして思うと、それは、同じく近代化に伴う場所性の喪失といっても、日本と韓国ではまるで意味が違うことに由来するものだと思います。ほとんど欧米との関係だけで語られる日本の近代化と、日本による支配の歴史を考えざるを得ない韓国の近代化、その日本の支配はまさしく韓国という場所性を否定し、人間性をも否定するものであったはずです。 そんなことに思いを致すにつけ、われわれを屈託のない親しさと温かさで迎えてくれ、その上 DUDI の発足というまことに慶賀すべき、そしてわれわれにとっても大いに励みになるニュースまでもお土産にくれた韓国の皆さんに、あらためて感謝とお祝いの気持を申し上げたいと思います。 |
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