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兵庫県緑条例の背景

兵庫県 難波健

 

 今日は兵庫県の緑条例を紹介させていただきます。 具体的な内容は横山さん、 金野さんが報告して下さいますが、 私は前座としてこの条例がどんな背景で成立したかを景観と土地利用に関する制度上の枠組みから簡単にお話ししたいと思います。


兵庫県における景観関係施策の全体像

 兵庫県における景観関係の施策の全体像はおおむね次のとおりです。

     
     兵庫県の景観関係施策
     1景観条例
      都市景観の形成に関する条例     昭和60年公布
      景観の形成等に関する条例      平成 5年公布
     2ランドスケーププランニング
      美しい県土の風景形成に向けて    平成元年作成
     3緑豊かな地域環境の形成に関する条例 平成6年公布
 
 景観条例として「都市景観の形成に関する条例」が昭和60年3月に公布され、 ランドスケープ・プランニングとして「美しい県土の風景形成に向けて」が平成元年6月に作成されています。


景観条例

 このうち「都市景観形成等に関する条例」では、 大規模建築物等の届け出、 都市景観形成地区指定、 都市景観形成助成事業の三つが定められました。

     
     都市景観形成等に関する条例(昭和60.3)
     ・大規模建築物等の届出
     ・都市景観形成地区指定
     ・都市景観形成助成事業
 
 「大規模建築物」は昭和61年3月から届け出が開始されました。 「都市景観形成地区」の第1号としては、 昭和61年12月に姫路市の大手通り地区が指定されています。 その後、 出石町城下町地区、 社町メモリアルガーデン周辺地区等が指定され、 平成16年3月末までに14地区が指定されています。

 この条例は、 平成5年3月に「都市」という言葉が抜けて、 「景観形成等に関する条例」に変わりました。 この中で新たに、 景観形成基本方針、 風景形成地域指定、 景観形成等住民協定が定められました。

     
     景観の形成等に関する条例
     ・景観形成等基本方針
     ・風景形成地域指定
     ・景観形成等住民協定
 
 「景観形成等基本方針」は平成5年9月に策定されました。 また「風景形成地域」は、 都市景観よりももう少し広く景観をとらえたもので、 平成8年3月にデカンショ街道地域が指定され、 その後、 円山川下流地域、 西播磨海岸地域、 但馬海岸地域の4地域が指定されています、 名称から指定の意味合いが分かるかと思います。

 住民協定については、 平成13年2月、 同14年3月に加美町の箸荷(はせがい)景観むらづくり協定、 岩座神(いさりがみ)景観むらづくり協定が各々認定されています。

 また、 景観条例に先立つ昭和59年に「明日の景観をつくる」と題した小冊子を作成しており、 この頃から鳴海先生が兵庫県の景観の検討に加わっておられます。 こういった経過を経て景観条例に至ったわけです。

 兵庫県の景観条例は、 同趣旨の条例を持っている市町は対象とせず、 また、 新たに条例設置する市町は対象からはずす、 市町の独自性を尊重するという大きな特徴を持っています。

 県下で独自条例を持つのは、 神戸市、 姫路市、 尼崎市、 明石市、 西宮市、 芦屋市、 伊丹市、 宝塚市、 赤穂市、 川西市、 加古川市の11市です。


ランドスケープ・プランニング

 ランドスケープ・プランニングは、 私も最初の頃に関わっていました。 「風景形成のための基本構想」が昭和63年に策定され、 その後地域別の計画が以下のように作られていきました。

     
     淡路島ランドスケープ広域計画(昭和63年)
     播 磨ランドスケープ広域計画(平成2年)
     但 馬ランドスケープ広域計画(平成3年)
     丹 波ランドスケープ広域計画(平成4年)
     

     美しい県土の風景形成にむけて(平成1年)

 
 また、 建築や施設と風景の間でかなり大きなスケールで景観をとらえる計画概念への取り組みとして平成元年には「美しい県土の風景形成に向けて」を作成しています。

 ランドスケーププラニングの具体的な内容には、 景観評価支援システム(平成2年)、 美しい県土の風景をつくる(平成3年3月)などがあります。

     
     ランドスケーププランニングの内容
     ・景観評価支援システム(平成2年)
     ・美しい県土の風景をつくる(平成3年3月)
     ・ランドスケープ百景(平成5年)
        百景鳥瞰図
        百景マップ
 
 また、 平成5(1993)年には冊子として「
ランドスケープ百景」が出版されています。 これには百景鳥瞰図、 百景マップが収められています。 震災後にまとめられた「伝えたいふるさとの風景」は、 震災でなくしてしまった風景、 あるいは生き残った風景をどう伝えていくかを考えたもので、 なかなかいい本です。


緑条例公布のいきさつとその内容

 平成6年3月に「緑豊かな地域環境の形成に関する条例」が公布されました。 しかし、 実はそれ以前の平成1年4月に「淡路地域の良好な地域環境形成に関する条例」が公布されています。

     
     緑条例
     淡路地域の良好な地域環境形成に関する条例 平成1年4月公布
     緑豊かな地域環境の形成に関する条例    平成6年3月公布
 
 昭和63年10月に淡路が総合保養地整備法、 いわゆるリゾート法の適用を受けるについて、 淡路の緑を保護しながら地域整備をしていこうという趣旨で制定された条例を、 淡路だけでなく一般的なものにしていこうということになり、 平成6年に淡路条例の名称を変更し、 現在の緑条例が公布されることになりました。

 緑条例の最近の動きとしては、 以下のようなものがあります。

     
     ・「淡路条例」を「緑条例」に移行(平成6年3月)
     ・「緑条例」丹波地域指定(平成6年9月)
     ・丹波地域見直し(平成14〜15年)
     ・淡路地域見直し(平成14年〜)
     ・播磨地域への区域拡大調査(平成15〜)
     ・但馬地域への区域拡大調査(平成15〜)
 
 緑条例には「適正な土地利用の推進」「森林、 緑地の保全と緑化の推進」「優れた景観の形成」の三つの視点があり、 淡路、 丹波に続き、 現在、 線引き都市計画区域以外の全ての区域での適用を目指して調査等が進められております。

 

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兵庫県の都市計画区域図
 
 土地利用は普通、 都市計画法等でカバーされているのですが、 この条例でゆるやかに総合的にカバーして美しい兵庫づくりを進めていこうと考えられているところです。 図は兵庫県の都市計画区域図で、 臨海部(ピンク色)は市街化区域、 グリーンは市街化調整区域で、 茶色部分が非線引きの都市計画区域になっています。

 市街化調整区域と市街化区域の線引きが行われている区域は土地利用規制がきついのですが、 非線引き部分は極端に緩くなっているのが現行の都市計画法です。 緑条例はそうした非線引き部分を対象として考えられた条例です。

 

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緑条例と都市計画法の棲み分け
 
 この図は緑条例と都市計画法の棲み分けを示したものです。 市町合併後の都市計画区域の展開も含めて、 対象となる区域を分類してみました。

 要するに都市エリアとして線引きされている市街化区域と市街化調整区域は都市計画法で土地利用を考えていく、 それに対して線引き以外の区域は緑環境エリアとして緑条例による開発コントロールや自然保全、 そして過疎地の地域振興を行っていくという構図です。

 

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都市エリアと緑環境エリアの2区分による土地利用計画の考え方
 
 この構図をもとに、 2つのエリアの土地利用計画を表にしたもので、 都市エリアと緑環境エリアの特性の理解に役立つかと思っております。

 では、 丹波地域における緑条例の見直し作業を具体的にやってこられたコンサルタントの横山さんと、 行政の金野さんに現場のお話をしていただきます。

 まず、 「兵庫丹波の環境的な魅力」というタイトルで横山さんにお話しいただきます。

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