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京都市の新景観政策に対する意見書

京都市長 桝本頼兼殿

2007.3.6 都市環境デザイン会議・関西ブロック

 京都市が提示された新景観政策を基本的に支持し、積極的に推進されることを期待します。素案は京都市民の永年のまちづくりへの思いと努力が結実した先進的な理念と構成内容からなるものであり、都市環境デザインの向上に取り組んでいる専門家集団として敬意を表します。特に、市街地の全域を対象とし、地区の特性を尊重し、屋外広告物を含むきめ細かで具体的な景観基準をつくろうとしていること、さらに今回の基準をスタートとして年月をかけてより広範な市民の合意を形成し、内容をより確かなものにするプロセス形成を目指していることは高く評価したいところです。
 京都市がわが国の景観政策の推進や水準向上に与える影響は極めて大きなものであり、確固たる姿勢を堅持し、遅滞なく推進されることを期待します。
 いっぽう、より多くの市民の参加を得つつ、豊かな景観政策としての質を高め、政策の実効性を確かなものとするうえで、政策案については若干の懸念を感じており、これに応じる提言を添えてここに意見書を提出します。
1.景観基準とその運用は地域の十分な理解によって支えられる。そのためのプログラムを早急に市民に示すことが必要である。プログラムには、小地域ごとの景観特性を掘り下げ、合意を得 ながら景観基準を定め、絶えざる修正・変更を可能にするしくみ、また、運用段階における市 民と専門家が参加するデザイン審査システムなどが含まれよう。
2.景観基準にもとづくデザイン・コントロールを広汎な地域のなかで実行していくためには、また長続きのする地域参画型のシステムを運用していくためには、市の担当部局の人員増強を中心とする充実強化が必須である。
3.建て替え誘導ではなく、修復や保全策を充実するなかで、環境共生・ストック重視の新しいまちづくりにつながる政策となるよう方向づけたい。従来なら既存不適格となる高層マンションについても、現存する建物として大切に扱うなどの対応策を工夫すべきである。
4.住み続けられてきた都心というのが、他の大都市にはみられない、京都の都市づくりの伝統である。とくに職住共存地区における15mの高さ制限は、住みかつ働く環境を確保しようとする力強い宣言である。ここでは、地上階まわりのデザイン誘導とともに、歩行環境や身近かな生活環境改善策を合わせた総合的なまちづくり策としての取り組みが期待される。
5.建築的に洗練された京町家などの低層建物と未だ定形を模索しつづけている中高層建物が混在する状況のなかで、これからどのような町並みが形成されていくか、決定的な見通しはいまのところない。市民の参加を得つつ、気長に地域ごとの景観イメージを捜し続けるしくみをつくり、支援すべきである。
以上

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