都市にミュージアムは不要か?
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はじめに〜震災の影響

 

 角野です。よろしくお願いします。拝見したところ、いつもの例会とは違った顔ぶれですね。我々のNPOは芦屋市立美術博物館の運営を昨年より芦屋市から受けています。指定管理ではなく業務委託ですが、色々試行錯誤しながらやっています。1年経った今の我々の考え方を、皆さんに聞いて頂こうと思います。

 実は先日、芦屋市立美術博物館でNPOとしての報告会をいたしました。私だけではなくて、他の理事や学芸員などがそれぞれの立場から話をしました。そのときに資料を作成いたしました。

 本当はNPOの資金稼ぎのために立派な資料を作って、報告会で一部2000円くらいでお売りしたいと思い、私がその前文を書いたのですが、結局うまくいかず、これは2000円の価値はないだろうということで、やむを得ず無料でお配りしました。今日はその無料でお配りした物の、さらに抜粋した物を皆さんにお配りしています。


震災による財政難

 そもそも芦屋市立美術博物館というのは何なのかという話と、それから何故問題になったのかということをお話ししなければいけないわけですが、これはJUDI、都市環境デザイン会議の会合ですので、やはり都市との関わりの中でお話したいと思います。

 阪神淡路大震災から10年経ったときに、兵庫県に震災復興10年検証のための研究委員会が出来ました。様々な視点から震災復興が何だったのかという議論をいたしました。そのときに共通して出てきたのが、10年かかった震災復興のプロセスというものが、普通の都市が時間をかけて、例えば20〜30年かけて変化していくはずだったプロセスを早送りしたようなものであったという話です。確かにその通りになりました。文化施設を取り巻く環境も、例外では無かったと考えています。

 震災復興の中では、文化の復興という話がいろんなところで議論されました。個々のミュージアムを見ても、建物や収蔵物に大きな被害があったことはご存知のとおりです。

 震災復興は地元の自治体に大きな財政負担を強いたのですが、とりわけ芦屋市では震災復興の中で随分色んなお金を使って、財政状態は厳しい状態になっておりました。そういった中で行財政改革をいろんな方面でやらざるを得ない状態になりました。文化施設についてももちろん聖域ではありませんでした。


芦屋市文化振興財団の解散と指定管理者制度の導入

 芦屋市は、他市でもよくあることですが、文化・スポーツ施設の運営については別途財団法人を持っておりました。芦屋市文化振興財団です。ここが、美術館やルナホール、市民センター、体育館などの運営をしていました。

 それが財政改革の中で財団をなくすことになり、その財団が運営していたいろんな施設が宙ぶらりんになったわけです。

 例えばプールやホールといった箱物施設は、運営管理を別の所に委託しやすい性格の施設だと思います。ところが、これがミュージアムになると、色々と面倒くさい話があります。なかなか出来ないわけです。

 そうしたなかで、難しいけれども芦屋美術博物館の民間委託先を探すことになりました。そして、もし受託してくれる所がなければ「休館やむを得ず」という話が出ました。それはちょっと待ってよ、という話が各方面から出てきたわけです。

 
 それからご存じのように、震災復興に関わらず全国的に公共施設の「指定管理者制度」導入がすすめられてきました。基本的に全ての公共施設において、今までは一義的に特定の外郭団体に管理委託していたものを、民間からの競争原理を入れて、そしてローコストで質の良いサービスと質の良い環境を整えようというのがこの制度のねらいです。

 このような震災の影響と指定管理者制度の話、両方の問題がかかって出来た交点に、この美術館がいたという事です。

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