マリ共和国での調査について発表させていただきます。
マリ共和国の集落を調べた調査はすでに他の方がされたものがいくつかあったのですが、 マリでもおそらくはじめての都市住居の詳細な実態調査を1995年と1996年に行いました。 それまでの経緯としては、 サコ君と環境共生の研究会を93年からやってまして、 環境共生のテーマをアフリカのマリで考えてみたらどんなふうになるのかを一緒に考えてみよういうのがきっかけでした。 この調査の結果を今日報告させてもらいます。
マリ共和国はサハラ砂漠の南にあります。 国の北の方の部分が砂漠になり、 現在の首都はマリの南西に位置しているバマコになります(図01)。 昔の国の中心はかなり北の方にあったようで(ジェネ)、 この辺りは世界文化遺産になっている土の伝統的なモスクがあります(図02)。
その他、 斜面に立っている一つ一つが住宅になっているわけですが、 このような場所も世界文化遺産になっているような、 かなり歴史の古い国です(図03)。
現在のマリ共和国がどんな状態にあるかですが、 人口が1000万ぐらい。 1960年ぐらいまでフランスが植民地にしておりましたので、 公用語はフランス語になっております。 宗教はイスラム教で、 これが半数以上を占めております。 GNP等は一人当たり200ドルぐらいですから、 あまり豊かな国ではありません。
もともとはニジェール川のそばに2家族が住んでいる漁村だったそうです。 この町にフランスが40年前か50年前に駐屯地をつくってから、 人口が増えるようになりました。 60年ほど前に16万人ほどになっていた人口が現在100万人、 更に現在でも人口は増え続けており、 年間の人口増加率が7%です。 毎年7万人ずつぐらい増えていっていることになります。
農村人口がどんどん田舎からやってくる。 いろんな部族からやってくる。 暮らし方が混ざるし、 言葉も混ざってくる。 国連なんかが伝染病の予防薬を配っているようでして、 幼児死亡率はかなり低下しているそうです。 ですからこの両方が相まって人口が爆発的に増えているようで、 そこから派生するいろんな問題が生じているというのがこの国の大まかな状況です。
資源としてはリンとかウランですが、 興っている産業は大まかに言えば軽工業です。 仕事が持てずに田舎からやってきて、 とりあえずなんとなく都会で暮らしてみたいという人が軽工業に従事しています。
この写真を見てもらうとわかるように、 ニジェール川が流れておりますので、 周りにもかなり緑がありまして、 いわゆる貧しいアフリカという印象はありせんでした(図04a、 図04b)。 雨期もあり、 かなり過ごしやすい場所です。
市街地は都市基盤を整備するよりも先にどんどんスプロールして広がっています(図05)。 ベトナム辺りに行きますと、 オートバイに乗っている人が沢山いるんですが、 この国にいってみますと、 この写真にありますように、 舗装されてない道に車がぎっしり詰まっていてます(図06)。 新しい車もありますし、 古い中古の、 何で走ってるかわからないような車も走っている変な風景です。 誰でもかれでも車を欲しがります。 そして最初は市街地に密集して住んでいた人たちがみんな田舎の方に勝手に住みだす。 そういうところに町が発展していく。 ですから市街地の整備がそれに追いついていないというのが現在のバマコの状態であります。
これが一番の郊外のイリマジョという所なんですが、 町中には土地が手に入らないというので田舎の方に勝手に家建ててしまったっていうような場所で(図05)、 かなり密度の低いところです。
これはかなり町中の方ですが、 スラムみたいな所です。 写真を撮るというとこれだけいっぺんに集まってしまうんですが、 こういう過密の居住をしている所です(図07)。 政府の方も市街地の整備を都市計画でやろうとしてるのですが、 上水道・電気など一部分は整備するのですが、 この人口増加に見合ったゴミ処理の仕方とか下水処理の仕方等は整っていません。 これが今一番大きな問題になっているそうです。 人口がどんどん増えていっておりますから、 住宅が不足して、 一軒あたりで見ましても過密居住になっています。
ソゴニコは先ほど車の写真が写ってました辺りになるのですが、 政府がきっちり区画整理し、 道路もグリット状で、 一つの敷地が500m2ぐらいの宅地がつくられ、 上水道と電気・電話をしっかりひいた高級なニュータウンです(図08)。
次はバンコニですが、 これは都心部です(図09)。 かなり密集した市街地になっています(図07)。 ここは、 上水下水はもちろんありませんで、 屎尿の垂れ流しになった臭い所でした。 これからスクラップしていく住宅に勝手に政府が「×」を描いてまわるような高密度地域です。
3つ目に調査の対象としたのが田舎のイリマジョです。 (図10)もう町中には自分の収入ではとても住めないと逃げ出した人の集まった所で、 不法占拠の地域なんですが、 この写真からもわかると思いますが、 密度がかなり低い田舎です(図05)。 この場所の地図をみてみると、 住宅だけを見ると、 どこが敷地かわからないポツンポツンとしたような感じの場所になっています。
この3つで住宅でどんなふうに住まれてるのかということについて調査を行ってきました。
バマコの都市住居、 伝統を受け継いだ住居は一夫多妻制で、 1人の旦那に4人の奥さんが一緒に住んでいます。 これに親戚の人達が数人同居しているという血縁同居を行っています。 アフリカですから当然コートヤード形式です。 土でつくった一階建ての中庭型の住居に住んでいます(図13a、 図13b)。
これは岡山に山本理顕さんがつくった住宅なんですが、 いつもマリの住宅を人に説明するときに見せる図面です。 中庭の周り部屋が沢山並んでいまして、 岡山の住宅の場合は一個の部屋には一人しか住まない「個室群住居」なんですが、 アフリカのバマコの場合にはこの一部屋に第一婦人とその子供たち、 次の一部屋に第二婦人とその子供たち、 子供の数は増えてますから一部屋に子供が6人か7人ぐらい入っていたりします(図14)。
それが貧しい人になればなるほど婦人の数が増えて、 横に第三婦人、 第四婦人と住んでいる。 旦那は他の1室に住んでいて、 敷地の入口の部分にトイレと風呂を兼ねたスペースがある。 大まかにそんな形式が基本になっています(図12)。
これに加えて、 旦那の兄弟が部屋を造ってみたりですとか、 最近は人口がどんどん増えていますので、 この一部屋を賃貸住居で貸してみたりとか、 一つの敷地の中でかなり混住が進んでいます。 血縁のある人、 ない人が混ざって住んでいる、 いろんな部族が住んでいる、 それから子供の数が多いというのが基本的な状況だと思っておいてください。 それで、 その住宅がどんなふうに伝統型から都市住宅に移行していったのかを、 これからサコ君に発表してもらいます。
首都バマコの住宅事情と調査の概要
吉田哲
マリ共和国の概要
京都大学の吉田です。首都バマコの様子
マリ共和国というのは“カバの国”という意味だそうですが、 バマコというのはその中で“ワニのいる川”の町という意味です。調査対象地区
そういう状況の中で調査を行ってみましたのが、 ソゴニコ、 バンコニ、 イリマジョの3つの場所です。マリの住宅の概要
最初にアフリカのマリの住宅がどんなものかを僕の方から説明しておきたいと思います。
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