プロセスに疑問アーバンスタディ研究所土橋正彦 |
今回のお話を聞いたときにまず思ったことは、 フランスから京都の鴨川に橋を贈られる、 お金は出ないそうですがアイデアを贈られる。 その話にすぐのって、 あの場所にセーヌ川にかかっているものが簡単にかけられる。 その状況が、 非常に不快であったということです。
その不快さを何かしゃべれと鳴海先生にいわれまして、 先週確認しに行きました。
四条、 三条大橋の混雑ぶり
鴨川芸術橋を考えるにあたって、 まず橋がいるのかどうかという議論があると思います。 いるという方から良くお聞きするのは、 この歩道が狭いということです。
写真2がその歩道です。 多分3mくらいしかないのですが、 四条河原町と京阪の駅を結ぶ歩道ですから、 行き来が非常に多いのです。
写真3は橋から四条河原町までの歩道です。 橋の上はまだすいていましたが、 ここでは歩道上にたくさん物がおいてあって通りにくく、 車道を人が歩いているという状況がよく見られます。
写真4は三条の橋です。 これは川崎先生が随分悪口をおっしゃってましたが、 上は立派な木造の橋で、 こういったディティールもあります。 この下はコンクリートとおっしゃってましたが、 昔の石の柱とコンクリートが混ざったような状況です。
写真5のように橋の上は混雑しております。 お坊さんが立って托鉢をしてらっしゃいます。 また橋の上で写真を撮る人もいます。 そんなこともあって橋の上の混雑が激しい。
このように四条の橋と三条の橋が混雑している。 しかも間が670〜80mあいていますから、 間に一本作ったらよかろうというのが、 多分橋を作ろうする側の発想なんだと思います。
写真6は橋が架かるであろう場所です。 ここに減勢工がありますが、 このちょっと上のところに橋が架けられる予定です。
写真は西から東を見たところですが、 手前にみそそぎ川が流れています。 寒い時期ですが座っているカップルがいます。
東側には京阪電車が走っていました。 これが地下にもぐり、 ご覧のような改修工事が進められています。 川端通りと言う大きな道があり、 その向こうに建物がある。 昔は疎水があり、 ちっちゃな道もありました。 しかし、 昔も今も東側の町と川は全然関係のない、 言ってみたら全然行き来のできない関係にあったわけです。
写真8は西側の街並みです。 これは多分前面道路の関係とかで、 なかなかビルへの建て替えが進まずに、 幸か不幸かこういった建物がまとまって残っています。
写真9は疎水を埋めて、 京阪を地下化してできた川端通の状況です。 おかげで前面道路ができ、 東側には新しいものが随分建ち並んできております。
河原町は人が多くて歩くにも苦労するほどですから、 自転車のバイパスみたいな使われ方をしてます。
西側が鴨川になっているわけですが、 東側は花見小路とか新門前町とかいった繁華街です。 歩道橋は、 ちょうど写真を撮っているあたりにできるわけです。
そんなわけでここに橋が必要だという話が出たときに、 西側の人たち、 あるいはこの西側に視点を置く人々は、 おそらくここには何もないほうが美しい、 鴨川が美しいと思うでしょう。 ところが東の方の方は、 幹線道路も入っており川との関係が西側と比べると希薄ですから、 橋が邪魔だと感じることは少ないだろうと思います。 このあたりがアンケートなどでも出ている西側と東側での橋の受け止め方の違いの背景にあるだろうと思います。
河原がどう使われているかということを見ます。 11月も末ですから非常に寒い季節ですが、 みそそぎ川があって、 河原の幅も多分いいんですね(写真11)。 ここに歩いているこの人たちは、 後ろ歩いている人が気にならない。 こういうスペースを持っている都市は日本でもそんなにないのではないかと思います。
写真12は新しく整備された東側です。 このおじさんはユリカモメにパンの耳をあげています。 たくさん集まってきています。
人々に親しまれている西側の河原の、 みそそぎ川を除いた要素を東側にも持ってきています。 ラウンドされた護岸があって、 ここは歩かないでね、 という気分だと思うんですが、 ピンコロ敷きになってます。 おじさんが一人で座っているスペースです。
その右側が「ここは歩いてくださいよ」というスペースで、 草もちょっと生えています。 その右側に護岸があります。
大きな木を随分切りとばした乱暴な工事です。 おそらく、 西側のスペースと東側のスペースは全然違う使われ方をするだろうと思います。
ここに橋ができたときの、 今の使われ方、 西側の歩道の使われ方、 あるいは東側の歩道の使われ方、 あるいは見え方、 これに対してどんなに影響が出てくるのかということについての評価をあまりお聞きしたことがないわけです。 中村先生が「ユリカモメが自由に飛べない」とおっしゃったのは非常にいい表現だと思いましたが、 そういう意味からここに橋がいるかどうかという議論は、 まちづくりとか、 交通の機能上ここに橋がいるかどうかという話がとともに重要です。 この河原のスペースをどういう風に考えるんだという議論が十分に必要ではないかと思います。
もう一つの論点はこの川のイメージがどう変わるかです。 写真13は三条大橋から北の方を見ています。 橋があり、 奥の方に下鴨神社の森があり、 天気が悪いのでちょっとわかりにくいのですが、 北山があるという風景です。 多分川の感じが、 三条通から上と下で随分変わってくるんだろうと思います。
申し上げたいのは、 つまり三条と四条の間の河原を、 京都の皆さんはいったいどういう風に考えるんだということであります。
それからここの河原のスペースですね、 これが京都の町にとってどういう意味を持っているのかということをよく考えていただきたい。
写真14と15は三条大橋と四条大橋です。 同じような角度から見ています。 多分、 どういう風に作っても河原から見上げるとこのような橋になるであろうものは、 いらないのではないか。 河原の値打ちを損なうような橋をここに架けてもよいかどうかが二点目です。
以上が私の報告です。 橋のデザインについては、 その橋がいるよ、 ということになったときに議論を始めるのが良いだろうと思います。
一つは京都市が実施しているアンケートのことです。 いかにもお役所が考えそうなことなんですが、 「橋の基本構造はこれで決まりだよ」ということが書かれていまして「上部の高欄とその他の付属物のデザインが3通りあるけれどもどれがいいですか」と聞いています。 しかも照明はどれ、 柵はどれ、 植木箱のデザインはどれと、 バラバラに聞いている。 このアンケートは結構恐ろしいものですよね。 欄干はA案のもの、 照明灯はB案のもの、 ベンチはC案のものが人気が高かったとしたら、 どういう風にされるつもりなんでしょうか。 京都市の方がおいでなら、 是非お聞きしたいところです。
材野先生がここで橋を架けるのであれば、 がんばって超和風な橋を架けようというお話をされました。 そういうご意見が出てくるのは、 やはり写真16のような景色が楽しめるからだろうと思うわけですね。
古いものが残っており、 木製の桁があります。 必ずしも美しいというものばかりではございません。 床の資材をブルーシートでちょっと包んで置いてありますが、 ここで商売している人がこういうことをしてはあかんですよね。 それでもまあ京都だよ、 という建物がこういう風に建っています。 河原を歩いているとそういった景色が楽しめるという状況があるわけです。 橋脚も洪水の制約をクリアした構造ですが、 ちょっと昔の石の柱なんかも残っている、 ということであります。
とにかくこの橋と町との関係で京都らしさを味わうことができるのは、 これはどなたもご異論がないことではないかと思います。 ちょうど私が京都に住むようになったのが23〜4年前だと思うのですが、 その時この高欄がちょうど新築のときでした。 白木の美しい姿だったと覚えています。
そういった京都らしさも現にあるのであって、 その中で、 今回のデザインを考える必要があるだろうと、 申し添えたいと思います。
西と東の町の、 川との関わり方の違い
河原をどう考えるか
デザインの議論の前にすべきこと
デザインをどう考えるか
京都市のアンケートはおかしい
デザインについては二つ申し上げたいと思います。
京都らしさ
もう一つは京都らしさについてです。
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