それにはTMO(タウン・マネージメント・オーガニゼイション)を一日も早く立ち上げることが重要でしょう。 今の商店街に必要なことは、 こういう統一した組織です。 しかし、 そうした組織は自発的には出来ないものですから、 やはりここで行政のみなさんがリーダーシップを発揮していただきたいところです。 とにかくぜひとも組織を立ち上げて、 ジャスコの企業組織に対応してもらいたい。
まず最初に考えなければならないのは、 中心市街地の商店街からジャスコの専門店街へ出店する店が出るだろうということです。
神戸の例をあげると、 三宮の地下街が出来たとき、 そこの半数の店は元町から出店した店でした。 その結果、 元町の売り上げは大幅に減り、 元町にとっては打撃になってしまったのです。
ですから、 中心市街地からジャスコの専門店街への出店をできるだけ止めないといけないと思います。 ジャスコは中心市街地から店を出店してもらうと言っていますが、 それが実行されると中心市街地に空店が続出することになり、 大変なことになります。 それまでに対策を立てなければなりません。
私はまず一店一店の店を調査してみるべきだと思います。 「ジャスコから誘いがあれば出店しますか? 断りますか」と率直に聞いてみることです。 危険な調査かもしれませんが、 実際に出店してしまうと話も何も聞けないわけで、 商店街が戦略を立てる場合、 この種の調査はどうしても必要だと考えています。 アンケートは無記名でもいいですから、 経営者の胸の内を一歩中へ踏み込んで聞いてみることで、 「敵を知り、 己を知る」こともできるのです。 避けて通れない問題なのに、 デリケートなことだからと触れたがらないことが一番問題です。 自分の姿を知らずに戦うことはもっとも無謀ですから、 まずは等身大の姿を見てみることです。
また、 こういう調査をするためにも、 ジャスコの入店条件がどのようなものなのかも早く調べておかなければなりません。 ジャスコの入店条件は必ずしも安くないと聞いていますので、 流れる店舗は意外と多くはないかもしれません。 しかし、 今の商店街の賃料が高ければ、 予想以上にジャスコに流れてしまうことも考えられます。 そうなってからあわてるのではなく、 早く自分たちの商店街の状況を知っておくことが大事だと思います。
私が気になっているのは、 賃料に対する考え方が、 商店街の中でも立場が違えば意識も違ってくることです。 店舗の経営者であれば賃料に関して前向きに考えられるのですが、 不動産を所有しているだけの人は後ろ向きなんです。 やはり立場が違うと利害も違ってきますので、 有効な説得をしないといけませんし、 これは大きな課題です。 この辺を解決しないで、 ただ「団結しましょう」と呼びかけても、 まとまるわけはないのです。
ジャスコの出店で中心市街地の各店の売り上げが落ちるのは確実だろうと思われます。 今までは大型店が出来ても商店街そのものが打撃を受けたことはなかったのですが、 今度の出店はかなりの規模ですから、 直接その影響をこうむる商店街が出てくるでしょう。 売り上げは必ず落ちてくると思うのです。
対策としては、 ジャスコの専門店をよく研究してそこと差別化を図っていくことはもちろんなのですが、 結果としては商店街の中で売り上げが落ちて競争から脱落していく店も出てくると思われます。 このとき、 その店の後に入ってくる店舗がどんな店なのかを考えねばなりません。
以前の店よりも質が悪く、 他の店と雰囲気が違う店が入ってくると、 商店街の衰退も一気に加速してしまうのです。 例えば、 パチンコ屋、 ゲームセンターなどが入ってくると、 商店街のイメージがいきなり変わってしまうのはよくある話です。 中心商店街からランクが落ちて、 下町になってしまう恐れが強い。 ですから、 空き店舗対策を個々の店や経営者で考えるのではなくて、 街全体で対応していく必要があるわけです。
リーシングはもっと高度な専門能力が必要で、 日本あるいは海外の店舗のブランド力、 出店戦略、 業績などのデータを揃えており、 街の空き店舗にその街に合ったブランドを持ってこれる力がないといけません。 そういう体制を街として持っておかないと、 街に何かあったときにどんどんダメになってしまう恐れがあります。
中心市街地の良さというのは、 地元の人間と深く関わっていることです。 地元でやる気のある人間を発掘してお店をやってもらうなど、 商店街でバックアップしてみてはどうでしょうか。 地元の面白さを発揮して、 何かやりたいと思っている人は今、 大勢いるのです。 そういう人たちに商店街がチャンスを与えて育てていくことは、 商店街の大きな魅力となると思うのです。 これはジャスコには絶対出来ないことで、 彼らと違うやり方をすることで、 まさに高知らしい魅力を作っていくことだと思うのです。
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木のアーケード(高知市パンフレットより) |
高知の店はアーケードだけでなく、 ファサードや建物にももっと木を使うと面白いと思います。 京都市の清水寺近辺にもいかにも数寄屋風のたたずまいの商店がズラッと並んでいて、 いかにも京都らしい品のあるショッピング街だと思ったことがあります。 高知県には「土佐派」という骨太な建築様式があるのですから、 こういう土着の良さを商店街に活かしてみてはどうでしょうか。 ファサードや建物をそれで作れば、 坪30万円で造られたペラペラのジャスコの専門店街にはない、 格のある店構えが出来ます。 そういう所でこそ、 買い物の楽しさも味わえると思うのです。
都心のまちづくりというと、 どうしてもショップやレストランを集めることに目が向いてしまうのですが、 商業施設ばかりを集めても良い街はできません。 ジャスコと変わらないものになってしまいます。 しかし、 だからといって、 ホテルやイベントホール、 劇場、 駐車場を作っても、 その程度では街として薄っぺらいという感じです。
ジャスコのような人工的な街に対抗して、 奥行きのある本物の街を作っていくには、 やはり人が住むという機能を作っていくことでしょう。 例えば、 商店街の上にはマンションを作っていくようにすると有効です。
都心で人が住めるようにすることこそ、 これからのまちづくりに求められているのではないかと、 私はかねがね思っています。 人が住むと、 街には人間らしさがよみがえってきます。
今の都心は、 夜が淋しいですね。 昔の街の良さは人がそこに住んでいたことで、 祭も昼間よりは夜に盛り上がりを見せたものです。 今の高知の街は、 夜になると早々に商店街が店終いして、 夜10時を過ぎるとタクシーだけが目立ち、 わびしい感じがします。 私は街の楽しさは、 夜の街にあると思います。 街なかに家があれば、 飲んで変えるのも簡単です。
また、 これからの高齢化社会を考えたら、 やはり郊外よりは都心に家があった方がいいと思います。 私のように年をとってくると、 夜が淋しい郊外は嫌いになります。 いろんな刺激のある都心の方が淋しくないし、 面白い。 子供さんが小さいうちは緑も多く空気もきれいな郊外がいいでしょうが、 年をとってくるとにぎやかな都心に住みたいと考える人は多いように思います。
この間、 都心の再開発の話で橋本知事にお会いしたとき、 知事も商店街の上に老人福祉のための住宅を作ってはどうかと言っておられました。 私も大賛成です。 老人二人暮らし用に設備がしっかりした住宅が都心に出来れば、 私も妻と一緒にすぐにでも入居したいと思っています。 都心だったら日常の食事、 買い物、 医者にも不自由しませんし、 いつも人が大勢いるところですからなおさら安心です。
私の友人にこの話をしたら、 みんな賛成していました。 体が不自由になった時や連れ合いに先立たれた時にも、 バックアップシステムがあれば充分自立した生活ができます。 今一番お金を持っているのは高齢者世代なんです。 ですから、 都心に豪華な老人世帯用マンションができれば、 かなり高くても入居したい人はたくさん出てくると思います。
この間、 福岡のIFI(インターナショナル・ファッション・インスティテュート)というセミナーで講演してきたのですが、 そこで現在話題になっているインターネットの世界について話を聞いてきました。
インターネット・ショッピングは本当にスゴイ。 私は、 今までの経験を全く越えた所での小売の世界が、 あと4、 5年したら出てくるのではないかと思いました。 それを可能にしているのが、 インターネットのバーチャル・モールです。
アメリカでは、 98年12月がインターネットショッピングのターニングポイントだと言われているそうです。 クリスマスを境に、 インターネット上でのショッピングが飛躍的に伸びたらしいのです。 こういう話を聞いていると、 リアルショップ、 つまり今あるデパートや商店街は本当に存在していけるのかと考えてしまいます。
私は今仕事で、 福岡のスーパーブランドシティという商店街の中にバーチャルショッピングモールを立ち上げようとしています。 そこで考えたのですが、 インターネット・ショッピングは大型店よりは商店街の方が、 もっと面白く使える可能性があるようです。 それには、 商店街がマネジメントの組織を持って、 積極的に動いていくことが大事でしょう。 ですから、 最初に言いましたように、 TMO組織を一日も早く立ち上げていただきたいと思います。
とりとめのない話をいろいろといたしましたが、 これで終わりたいと思います。 どうもありがとうございました。