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外国人との共生を考える第一歩は
日本のルールを国際基準に
普遍化すること

宮島 喬さん(立教大学社会学部教授)に聞く

欧州での移民事情に詳しく、 実際に欧州での生活のご体験もある宮島先生に、 外国人を地域の一員として受け入れていくための日本の課題を語っていただいた。

*外国人にも分かりやすいルールに

 まず、 住宅の問題についてですが、 日本では入居時に保証人を要求したり、 集合住宅では自治会や管理組合を作って入居者自身で管理することが一般的に行われています。

近年外国人が身近に暮らすようになってきて、 生活習慣や言葉の問題でトラブルが多いと聞きますが、 その要因は、 上記のように住宅に関するルールには日本独特なものがあり、 外国人に分かりにくかったり負担になるからではないでしょうか。

例えば、 私の経験では海外で住宅を借りる際に保証人を要求されたことは一度もありません。

また、 仏国等では、 集合住宅には管理人を常駐させる方式が一般的で、 言葉の問題がある場合には、 管理人がゆっくりとしたフランス語で丁寧に教えている光景に出会います。

外国人との共生を考える場合には、 日本のルールや制度を誰にでも分かりやすいものに変えること、 即ち普遍的な国際基準ですっきりさせる必要があるのではないでしょうか。

一方、 他人に迷惑をかけない生活ルールは誰もが納得する普遍的ルールですので、 よく問題視される生活音やゴミ出しについては、 日本人はもっと彼らに発言してもいいと思います。

きちんと伝えることができれば、 彼らも守るはずです。

   

*「地域への愛着」外国人への押付は発想が逆

 次にコミュニティの問題についてですが、 ドイツに住み着いて20年に近いトルコ人に行ったある調査では「ドイツに定住する」という回答は全体の3割程度だと聞いたことがあります。

「帰国する」という答えはさすがに減りますが「どうするか分からない」が非常に多いのです。

この調査が示しているように、 外国人労働者というのは、 いつまで経っても心理的には猶予状態が続きます。

母国に土地や家を残している場合が多く、 郷里のことが常に心にあるので、 ホスト国であまり住生活に投資しようという気にはならないのです。

だから外国人にとって住宅は、 仮の住処という意識がなかなか抜けないのです。

これは、 移民や外国人の共通の心情ではないかと思います。

そういう中で「さあ、 あなたたちは定住するはずだから、 一緒にまちづくりに参加して下さい」と言ってもなかなか難しい。

地域の一員としての意識とか、 コミュニティの中での役割といったものは、 育つものなら自ずと育ってくるのではないかと私は考えています。

ですから、 ホスト社会の方から、 地域への愛着を持ちなさいと彼らに押しつけるという発想は逆だと思います。

一人の人間としての権利を保証してくれれば、 自分も地域に貢献しようと思うはずです。

その結果、 外国人が持続的に住むようになり、 そして、 そこから何かが始まるという気がしてならないのです。

   

*地方参政権はマイノリティにとって重要な鍵

 外国人地方参政権は、 欧州では一部の国を除いて、 まだ実現していません。

特に仏国は「参政権が欲しければ国民になりなさい、 帰化は難しくありません」という立場をずっととってきました。

地方参政権だけを持つ市民がいることは不平等だと考えられてきたためです。

しかし、 今日の欧州では、 二重国籍を持てないなら、 帰化しない方がいいと考える人が増えています。

同じように、 日本の在日韓国人の中にも、 韓国が経済発展を続けており、 韓国国籍を保有していることが今後の幅広い活躍のためにも有利だ、 日本では永住許可を持っているのだから、 あえて帰化をしなくても、 と考える人が出てきています。

世界的に忠誠と国家を結びつけて考える時代ではなくなってきたことを考えると、 住民としての外国人への地方参政権付与は、 重要な課題です。

欧州では例の少ない地方自治体職員への外国人登用が日本では行われ始めていますし、 地方自治、 地方分権の問題も併せて、 今後の動向に注目したいと思います。

(インタビュー:稲葉佳子・小菅寿美子、 文責:小菅寿美子)

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