発行:財団法人 まちづくり市民財団
阪神大震災復興市民まちづくり支援ネットワーク事務局
もちろん、インフラや建物の復興と生活再建や産業復興との格差をはじめ問題は山積しているが、この1年近くの被災地は「緊急復興3年」を経て、一種の“踊り場”に立っている。行政のみならず被災者も支援者も“次の一手”を考えあぐねている時期といえる。
「プロジェクト型まちづくりから居住型まちづくりへ」と題して、復興問題のこれまでと今後を議論した9月5日のHAR基金討論会も、復興の見直し時期に直面していることが浮き彫りにされた。
もう一つは、復興まちづくり。事業地区で着手段階に入るにつれて、まちづくり運動は新たな展開を求められているが、まちの将来像やソフト面を含めた本格的なまちづくり活動に発展させていく課題に対応しきれない地域が多く、住民主体のまちづくりは試練に直面している。“火事場状態”の中でプロジェクト型まちづくりに取り組んできたまちづくり協議会が、長期的な居住型まちづくりへ移行できるかどうかが問われているからだ。
行政が策定した震災復興計画は、ひと口に「復興10年」といわれているが、まちづくりはもともと「終わりのない旅」である。当初の3年間は本来、壊滅的な震災のダメージからの「仮復興(復旧)」期間とすれば、本来的な「復興まちづくり」はこれから本格的に始まるといってもよい。
9月5日開催の「討論会」でも、「中長期的な視点で、もう一つ上のランクの復興課題をさぐる」ことが提起された。震災前の“右肩上がり”志向から脱却し、プロジェクト型の復興計画を全面的に見直して、市民の目で見た復興計画を市民の手で立ち上げる時期がきている。そのためには、担い手になる市民の力を高め、専門家と中間支援組織とのネットワークを広げることが必要だ。HAR基金のような市民活動やまちづくりを財政的に支援するファンド、阪神・淡路まちづくり支援機構のような専門家組織の全国展開を図ることも急がれる。こうした市民活動支援組織の再構築のうえに、市民による市民のための復興シンクタンクの立ち上げを、復興5年目の課題としたい。
活動のテーマ | 活動グループ名 | 活動の目的 | 助成金額(万円) |
御万人(ウマンチュ)と共に未来を拓く「わんからの家」 | わんから | 垂水・須磨近辺で一人で生活する“おとしより”と、まず電話でお話相手となり友達となると共に、手芸などをやってもらい作品を「わんからの家」で販売 | 36 |
長田のまちづくりに関する経験交流、学習の研究、発表 | 長田のよさを生かした街づくり懇談会*2 | 今まで行ってきた長田のまちづくりに関する問題の調査・報告・学習研究を継続し、各分野の活動を支援する | (10) |
「わがまち再発見ワークショップ」によるまちづくり | 日本災害救援ボランティアネットワーク | 住民が実際にまちを歩き、「ちょっと気になるわがまちマップ」を作成することを通じて、まちへの愛着を喚起する | 50 |
「ドングリ育成クラブ(仮)」被災地の緑を市民が育て植える | ドングリネット神戸 *3*4*5 | 市民が自分たちで拾ったドングリを育て植えるプログラムを提供し、被災地での緑の復興と新生に直接的に参加できるようにして、今後街の中での緑について考える場とする | 55 |
白地地域における住民のまちづくり活動の報告書作成 | 天神町3・4・5丁目自治会 | 白地地域における住民のまちづくり活動の報告書の作成とまちの復興基本構想の策定 | 45 |
見る、聴く、食べるが体験できるアジアタウンづくり | 神戸アジアタウン推進協議会*2*4*5 | 外国人住民と日本人住民の協力による復興まちづくりの推進 | 50 |
専門家・地主・住民の連携によるまちづくりの支援 | まち・コミュニケーション*4 | 住宅・生活再建が停滞している原因を調べ、住民の意向を確認するとともに、打開に向けて住民・専門家・行政との橋渡し的役割を担う | 90 |
住吉地区における住民主体の復興まちづくり支援活動 | 住吉地区復興支援グループ*1*3*5 | 白地地区における復興まちづくりの主体となる様々な住民組織の結成促進、「住吉第一住宅復興まちづくり協議会」に対する計画調整・支援、空地・未整備道路・緑化方法の現況調査、求女・神東市場での再建組織化・案の作成・提案 | (10) |
被災地の課題の整理と情報発信、ネットワークづくり | 「エイドの会」事務局(震災しみん情報室) | 震災から見えてきた課題(日常の地域の課題と災害固有の課題)を整理し、発信するとともに、市民自らがそれぞれの課題に対処するのに必要なネットワークを形成すること | 50 |
「お店やさん」ごっこで易しいまちづくり | 須磨浦通6丁目自治会専門委員会*4 | むつかしくないまちづくりを進めるため、より多くの人が楽しく参加してアクティブに活動できる場をつくる | 50 |
高齢者と顔見しりなかよくなるボランティア活動 | コレクティブタウン確認グループ | 高齢者向け朝食サービスの実施や給食サービスでのボランティアイベントを実施を通じて、高齢者にも住みよいまち「コレクティブタウン」を確認する | 50 |
ふれあい住宅コレクティブ居住者交流会の企画・運営 | コレクティブハウジング事業推進応援団 *1*3*4*5 | 公営コレクティブ居住者の交流を通じて、各々の住宅に適応した協同居住の活性化を図る | 30 |
白地地域における新築住宅・3年目の記録とアピール | M─NET*5 | 3年目を迎えた白地地域での新築住宅の現況を把握し、そこに潜む都市・建築計画、まちづくりの課題を発見し、広くアピールする | (10) |
「灘の浜・ガーデンクラブ」発足支援 | 「灘の浜・ガーデンクラブ」発足支援の会 | 「灘の浜・ガーデンクラブ」発足支援の為の入居者とのワークショップ、会合諸活動 | (10) |
合計金額 | 546 |
注)*○(数字)は第○回助成団体をあらわす |
今年6月に「まち・コミュニケーション」「阪神大震災を記録しつづける会」との共催で実施した『エイドの会』は、「被災者生活再建支援法」の成立を受け、それだけでは解決のつかない問題、あるいは災害対策をこえた日常の地域づくりのテーマとして何があるのか、その課題を持ち寄り共有しようという趣旨でした。80団体からアンケートのご回答をいただき、団体間の情報交換や相互理解の場づくりという役割を果たせたと思います。
12月にNPO法が施行され、市民活動団体自身の活動の深化・発展が求められています。震災を契機に誕生・活発化した市民活動団体を、情報提供やネットワークづくりを通してサポートし、市民社会の成熟に寄与したいと思います。
私達天神町3・4・5丁目自治会は、震災を教訓として、新たなるコミュニティーの構築に取り組むべく、日夜努力しています。そのための最重要事項、それは、地域住民の「合意」形成にあると考えられます。如何に民主的・合理的にそれを作り出すか。幸い京都大学農学部造園学科の皆さまのご協力を得て、「ワークショップ」に基づく住民集会を重ねながら、少しずつではありますが、目標に向かって前進しつつあります。写真は9月上旬に行なわれた集会のスナップです。今までに、ゴミ問題・排水溝の復旧・街頭問題等を解決してきました。当地区では神戸市による「都市計画道路建設強行」という大変な問題を抱えています。
この大問題に対処するためにも、今までの活動の成果を総括し、更なる活動の発展に向けて、今回ご助成いただいた資金をもとに、「活動記録集」発刊のため頑張っているところです。
2。真野/真野地区復興まちづくり事務所にて、ヒアリング
真野地区(密集事業・地区計画)→東尻池町7丁目立江地区共同建替 →コレクティブハウジング →地域福祉センターなど(解散)
支援者の皆さんからも、今後の運営について是非ご意見をお寄せ下さい。次号(第7号)のニュースレターでは、より詳細な活動予定をお伝えできると思います。
〈今号の編集〉
東京都立大学建築学科 都市計画研究室
大阪市立大学生活科学部
藤田 忍・福島 麗実子
〒558 大阪市住吉区杉本3-3-138
TEL.&FAX. 06-605-2821
高見澤邦郎・岡崎篤行・関 真弓
〒192-03 東京都八王子市南大沢1-1
TEL.0426-77-1111 ex.4786 FAX.0426-77-2793
http://www.arch.metro-u.ac.jp/~msuzuki/
HAR第7回ニュース(未)
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