パネルディスカッション |
今日は地車(だんじり)、 酒蔵、 生協、 大学という生活に根ざした文化の話をしていただきました。 それ以外にも美術館や様々な財団など、 まちづくり文化のルーツは数多くあることを気づかせてもらったと思います。
今までのお話について、 会場からご質問や感想があれば言っていただきたいと思います。
後藤:
「大学のまちづくり」についてですが、 フォーラムが今年で終わって、 これからどうするのかについては、 ちょっともの足らなく思いました。
これから大学間競争が始まるというときに行政が関わっていくのは、 大阪のように大学が外に逃げないようにという思いからでしょうが、 公開講座や図書館開放だけではあまり決め手にならないのではないでしょうか。 地域の街がもっと魅力的な街になるよう、 神戸市としては思い入れを持ってやって欲しいと思います。
辛川:
ご意見どうもありがとうございます。 まだ経験不足ですが、 これから具体的な方向を考えていきたいと思っています。
小林:
九八年七月号の『神戸っ子』で建築家の安藤忠雄さんが「復興公営住宅に空き家が出るようになったら、 阪神間の学生宿舎にしてはどうか」という話をされています。 学生、 特に女子学生の住む部屋を探すのは難しいので、 それを学生に開放して管理費は大学に持ってもらうという提案です。
大学を地場産業だと言えるのは阪神間の特徴だと思いますので、 私も大事にしていきたいと思っています。
会場から:
生活文化の高さで昔は「西の神戸、 東の世田谷」と言われましたが、 現在の世田谷はとても進んでいて、 とうてい神戸のかなうところではないと感じます。 生活文化情報センターがあって、 芝居のできる小ホール、 練習のできる部屋、 照明を教える人も揃えたりと、 いろんな仕組みが整っているのです。 「昔こういう人がいた」という話ではなく、 今、 文化を創造できる仕組みがないと何もできないと思うのです。
もうひとつ言うと、 今、 世田谷区は「世田谷市」になろうという運動をしているのですが、 東灘や六甲もそんな素地があると思います。 もっと地域の個性を意識してまちづくりを進めれば良いのに、 今は集まってそういうことを話せる場所もない。 たまに集まりがあっても「阪神間は昭和初期がよかった。 今はだめだ」とかの愚痴ばっかりです。 なんとかそれを挽回するものは持てないか。 そんなことを感想として持ちました。
では最後に、 今後の展望についてそれぞれコメントをいただきたいと思います。
田中:
生協には昔からの双六や生活用品が大量に保管されています。 それを見ているとその時代の生活や精神のあり方が分かる文化的な資産で、 研究の対象にもなりうると思います。 今日の皆さんのお話を聞いていて、 生協でもそういったものを公開していくと地域の研究に役立つと思いました。
山本:
河内さんから外から見た地域イメージのアップを考えたいというお話がありました。 ミュージアムゾーンを作るのは私も賛成ですが、 その作戦は外に向かってのベクトルを強く意識していると思います。 イメージアップするためには、 まず地域に住んでいる人が自分たちのために東灘のイメージを上げる方が大事ではないでしょうか。 外から人が来るように(例えば観光)という目的では、 長続きしないと思うのですが。
河内:
それは同時にやるべきことだと思います。 今の観光客は、 表面だけの物見遊山を望んでいるのではなく、 いい雰囲気にひたりたいことも重要な目的ですから、 重なってくる問題だと思います。 観光は人に見てもらうことで自分を知るという営みです。
木村:
神戸市は文化に冷たいということがよく言われます。 だんじりの場合も、 未だに個人レベルで動いているのが現状です。 例えば明石海峡大橋の開通記念のだんじりパレードでも、淡路では行政が八十〜百万円を各地区に出してくれるのですが、 こちらは自前なんです。 神戸市は、 もっと生活文化の重要性を考えて欲しいですね。
道谷:
今日は文化という言葉が飛び交いましたが、 僕は文化とは何かを考えないといけないと思っています。 絵や音楽、 文学だけが文化ではない。 普段生活していることも文化なんですが、 今は文化という言葉だけが一人歩きしているようです。
我々の生活文化史料館は、 普段の生活の中で培ってきたものを見つめ直そうという理念で運営されていますし、 置いてあるものもいわゆる文化財は一切ありません。 でもそれが大切だと思っています。 以前小学生が来たとき、 戦前のSP盤を回したら、 生まれて初めてレコードを見てびっくりしてしまったことがあります。 それを見て私もカルチャーショックを受けました。 今の子供達にとっては、 レコードはすでに文化遺産の部類になっているのです。
文化を口にするなら、 まず文化とは何かを考えながら生活に取り入れることが大事だと思います。 東灘はそういう要素がたくさんありますから、 我々住民が前に押し出して、 今後のまちづくりに生かす工夫をしていきたいと思っています。
小林:
阪神間は芸術文化はB級ですが、 生活文化は一級品だと言われます。 生活の中で絵を描いたり、 演劇を見たりというレベルの高さはあるようです。 それをまちづくりにどう生かすかは今後の課題だと思います。
河内:
言葉遊びをひとつ紹介しますが、 昔「住吉詣で」という言葉がありました。 元は住吉神社に詣でることですが、 このあたりに財界人が多く住んでいて正月になるとそれぞれの会社の社員達が年始挨拶に来るため列をなしたことを言うんだそうです。 新しい時代の住吉詣では、 ぜひ文化を楽しむために訪れるようになって欲しいと思っています。
ありがとうございました。 最後に閉会挨拶として、 神戸東部市民まちづくり支援ネットワークの世話人である後藤さんに締めの言葉をお願いします。
後藤:
神戸東部市民まちづくり支援ネットワークは、 深江、 魚崎、 新在家、 住吉、 灘中央などあまり行政が関わらない地域でまちづくりを考えていこうとするものです。 約三〇人ほどのコンサルタントや行政の方、 大学の先生達が集まって、 情報交換会を二カ月に一度の割合で行っています。 震災以降の集まりですからまちの復興が主な目的ですが、 活動しているうちに単に道路や住宅を再建するだけでは不充分であると分かってきました。 歴史や自然のうるおい、 安らぎ、 文化など付加価値のあるまちづくりを求めていかないと「嘘のまち」になってしまうのではないかという思いがメンバーの共通認識です。
ですから今日のテーマである「まちづくり文化のルーツ」は実にタイミングがいいと思いました。 特に、 我々がいつも話し合っている土木・建築関係ではなく、 歴史や文化などの専門家の話を聞けたことは、 とても新鮮でした。
私個人としては、 だんじりで「何のために研究するか。 それは子供達にだんじりの話をしたいからだ」という話には感動しました。 また、 生協のお話で創業者達の「日常は質素に、 志は高く」のモットーも、 我々貧乏コンサルタントに通じるものがあると感慨深く聞きました。 こういう話を聞くと行政は文化に冷たいらしいから、 もう我々がやるしかないとの思いを強くした次第です。
主催者としては、 こんな催しを今後もやっていきたいと考えています。 今日はパネラーの皆さん、 来て下さった皆さん、 どうもありがとうございました。
今後の展望
小林:
おわりに
小林:
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