−1− 安井地区まちづくり協議会における「地区計画」
(1)地区計画策定の経緯
安井地区は、 西宮市南部市街地の中心部に位置する交通至便な住宅中心の市街地であり、 震災直後から比較的大きな敷地に大規模マンションの建設が続発した。 地元住民の良好な住環境保全の願望から、 自治会として中高層マンション建設反対運動を展開したが、 現行法制度には勝てず、 各自治会長は疲労し困惑した。
そこで、 12の単位自治会が連合して、 中高層住宅の高さ制限を主眼とした「地区計画」に取組むため、 平成7年11月安井まちづくり協議会が結成された。
表1 安井まちづくり協議会の概要
・地区面積:約67.6ha 世帯数:約4,200世帯
・基本目標:安全、快適でうるおいのあるまち
・経過概要:H7.11:まちづくり協議会設立
H8.10:まちづくり構想(案)策定
H9.7:「地区計画」案の説明会
H9.10:「地区計画」案市へ要望
H10.3:安井地区「地区計画」の計画決定
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その後、 平成8年10月にまちづくり構想(案)の作成、 平成9年に「地区計画」(案)を作成し、 平成9年9月の臨時総会で「地区計画」(案)を市当局へ要望することを決議し、 平成10年3月に「地区計画」の都市計画決定をみた。 この間、 地域住民の意向を反映するため、 3回のアンケート調査を行った。
(2)安井地区「地区計画」の評価
○阪神・淡路大震災復興まちづくりの中で、 いわゆる白地地域において、 住民の自主的なまちづくり意欲から立ち上げたまちづくり協議会であり、 約4,200世帯という大世帯にもかかわらず、 環境整序型「地区計画」を学習し、 「合意集約」を図った。
○地区計画で定めた内容項としては、 表2に示す4項目であるが、 特に、 地区の細かい区分を前提に、 建築物の高さ制限について12m、 15m、 18m、 20m、 30mといったキメ細かい高さ制限の合意集約が得られた。
○これは、 「文教住宅都市西宮市」ならではの住民と行政の協働作業の成果といえる。
表2 安井地区「地区計画」の整備計画
| 西部市街地 | 中部市街地 | 東部市街地 |
| 沿道 | 内 層 | 沿道A | 沿道B | 内層 | 沿道 | 内層 |
建築物の用途制限 | 第一種中高層に準ずる | 第一種中高層に準じ店舗面積は150m2以下 | マージャン屋、パチンコ店、場外車券売場、その他これに類するもの | − | − |
敷地面積の最低限度 | − | 90m2以上 | − | − | − | − | − |
建築物高さ最高限度 | 18m | 12m | 30m | 20m | 20m | 20m | 15m |
(但し、現に建っている建てものはその高さまで) |
垣もしくは柵の構造の制限 | − | 生垣等によ緑化 | − | − | 生垣等による緑化 | − | 生垣等による緑花 |
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図1 安井地区地区計画図
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−2− 新在家まちづくり委員会における「まちづくり協定」
(1)まちづくり協定策定の経緯
新在家まちづくり委員会は、 神戸市まちづくり条例に基づき、 震災以前の平成3年に設立し、 平成5年5月にはまちづくり協議会の認定を受けていた。
表3 新在家まちづくり委員会の概要
・地区面積:約27ha
・世帯数:約1,000世帯
・基本目標:清潔で住み良く働きよい街への再生
・経過概要:H3.7:新在家まちづくり委員会設立
H5.5:まちづくり協議会認定
H5.7:まちづくり提案
H8.6:「まちづくり協定」を締結
H10.4:まち並み環境整備事業を適用
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阪神・淡路大震災では、 死者49人、 家屋の全・半壊約8割という甚大な被害を受けたが、 まちづくり協議会を中心として、 いち早く復旧、 復興に取組んだ。
一方、 当地区は、 灘五郷の一つ「西郷」の酒造りのまちであるとともに、 旧西国浜街道沿いの古くからの住商工複合の密集市街地であったため、 復興まちづくりにあたっては、 まず、 小規模宅地における共同建替え等を促進するとともに、 準工業地域でもあることから、 個々の被災地における再建にあたって、 パチンコ店やゲームセンター、 ドライブインホテル、 カラオケボックス等の立地を防ぐためのルールづくりが必要とされた。 そこで、 神戸市まちづくり条例に基づく「認定」をうけていることを生かして、 神戸市と「まちづくり協定」を平成8年1月に締結した。
(2)「新在家まちづくり協定」の評価
○当まちづくり協議会は、 震災前からスタートしており、 この平常時からの取組みが阪神・淡路大震災からの復旧・復興に当っていろいろと役に立ち、 特に、 復興の「まちづくり作法」としてのまちづくり協定の早期締結に結びついた。
○主な協定項目は以下のとおりであるが、 当地区が灘五郷の一つ「西郷」の酒造りのまちであり、 旧西国浜街道沿いの歴史のあるまちであることのこだわりから「意匠配慮道路」を設定し、 まち並み誘導を図っている点が特筆される。
主要な協定項目 風俗営業等の制限
ワンルームマンションの制限
意匠配慮道路の設定
荷さばき場の設置義務
○まちづくり協定締結後は、 協定委員会を設置し、 審議案件の審議を行っており、 地区内の個々の敷地の再建状況の把握、 適正なまち並みの誘導に効果を上げている。
○地域住民と行政の協働作業としてのまちづくり協定内容を実現化するための支援策として、 平成10年度からまち並み環境整備事業が始動している
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新在家地区町並み誘導イメージ
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新在家南地区まちづくり構想図
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縁は異なもの なだだもの
六甲技研
慈 憲一・馨子
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なぜ、 まちづくりシロートの私達が若手プランナーネットワーク(以下若手ネット)に入ってしまったか。 それは我々が発行していたフリーペーパー『naddism』がきっかけでした。
一部のマニア以外には全く知られていないnaddism。 その発行の経緯を簡単に説明しますと、 私達は10年以上神戸を捨て、 東京で楽しく暮らしていました。 そこに地震。 会社をやめ、 浦島太郎状態で神戸へ帰ってきたのでした。
変わり果て、 疲れ果てた神戸。 記憶を元に町を歩いて写真に撮り、 それを楽しいペーパーにしてみんなに見てもらおう。 そんな思いでフリーペーパーnaddismを発行することになりました。 その時「面白い」と受け入れて頂いたのが、 若手ネットの方々だったのです。
しかしクロートには概ね好評だったnaddismも、 一般の方々の評価は「面白いけど、 マニアックだなあ」というものでした。 同世代の若い人達程そういう傾向があったのです。 えーっ!!!こんなの知ってるでしょ?どこがマニアックなんだ?人々にあまり意識されないまま復興していく灘の町。 町を観察するメディアが必要だと感じました。
その後、 『なだだな』の企画編集に携わらさせていただきましたが、 やはりどうも一方通行感が拭えませんでした。 「印刷物の限界か…」などと思い始めた頃、 知人から「今は絶対メールマガジンが面白い」との情報が。 メールマガジンとは、 電子メールを使った電子出版システムです。 町写真構成主体のnaddismに対して町文章中心の町メディア。 金も殆どかからない。 反応も多い。 これはいけるということで昨年暮にメールマガジン『naddist』を創刊しました。 間もなく読者の方から反応がありました。
うれしいことにその多くは「町の話、 面白い。 」というものでした。 そして読者の人達が自分の町の話を語り始めたのです。 年齢層は20〜30代が中心です。
シロート的私見ですが、 このような町メディア活動をやっていると、 「まちづくり」という言葉がどうもしっくりこない。 町をつくるなんて町に失礼だと思ってしまうのです。 人々やその場所の様々な「縁」が空間になった結果が町であってほしい。 いい町とはいい縁がある町だと思います。 もちろん地震も縁です。 最初は、 「町を観察すること」に重点がおかれていた町メディア活動も、 メールマガジンnaddist以降は「町を楽しく共有すること=楽しい縁づくり」に変わってきたように思います。 naddismは、 若手ネットの方々との縁を作ってくれました。 今後は「まちづくり」ならぬ「まち編集」的な活動を通じて「普通の町と普通の人々」との楽しい縁結びができればと思っています。
さて、 若手ネットでの活動なのですが、 勉強会ももちろん勉強になるのですが、 シロートの私には難しい話も多いので、 もっぱら屋外町歩き系活動を楽しみにしています。 その一つである、 神戸市東部震災後検証企画である「M-net」は、 地元である灘区と永遠の宿敵東灘区を歩くということもあり、 ほぼ毎回参加しています。
「M-net」もそろそろ落し前をつける時期に入ってきました。 まちづくりクロートの方々に見て頂くのはもちろんですが、 私としては一般の方々にも見てもらえるようなものにできないかなと思っています。 むしろ震災後を意識していないのは一般の方々のような気がするので。 また、 それに関連していうと、 今回の町歩き企画では実現できませんでしたが、 一般の方々と町を歩くような企画や、 そこまでいかないとしても、 我々の町歩きによって町の人達が町をみる「縁」をつくるような仕掛けもあっていいと思います。
調査中、 町の人とこんなやりとりがありました。
「何か、 面白いもんでもあるの?」
「いや…その、 このベランダ面白いなあ思いまして」
「こんなん面白いの?私ら毎日見とうけどなあ」
「すいません…(なぜかあやまる)」
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リンボー洞門(naddism創刊号より)
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景空調査2:新しい町並みの兆しを発見する
大阪大学
小浦久子
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現場から発見する
被災地の大部分の市街地再建は、 ひとつひとつの敷地単位での住宅再建の積み重ねである。 確かに短期間に大量の住宅需要が発生したため、 それに対応できたプレファブ住宅が増えた。 しかしそれも含めて、 住宅のつくり手の生活ニーズや近所との関わり方、 住宅へのこだわりが並んでいるのが、 現在の町並みである。
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2項道路の花壇(芦屋市)
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路地の堀野協調化(神戸市兵庫区)
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駐車スペースの緑化(神戸市灘区)
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通常の景観調査は、 なぜそのような町並みができるのか、 どのような景観が美しいのか、 望ましいのかを、 客観的物理的指標で実証的に説明しようとする。 しかしそこからは、 時間の経過とともに増えてきた植木鉢や生活の場として使われている道や庭先の空間のつくられ方などは、 ぬけおちていく。
今回の調査は、 地域性がなくなっていくことを確認することと新しい町並みの兆しを発見することであるが、 被災地の景観の全体像を説明するのではなく、 できてきた住宅地を歩いて、 実感にもとづいて考えることにした。 特に後者については、 目に見える現象の中から、 生活環境をつくっている新たな町並み要素を、 実際の生活の場に発見していきたい。
これまでに見つけた「兆し」
どこの地区でも、 2項道路に面した再建がかなり見られる。 沿道全てが建て替わってしまったところは、 立派に4m道路ができるが、 ふつうは部分的に建て替えが行われるため、 再建された敷地の前だけ、 セットバックした空間が生まれる。 そこが花壇になったり、 昔の石垣の基壇が残ったりしている。 これを道路占用だといって否定するより、 もともと車の入らなかった道なのだから、 花壇にしているほうが気持ちがいいではないか。 セットバックの意味を、 安全のための空間の確保と考えれば、 それぞれの路地や道に応じて花や木を植えるような使い方も、 2項道路型更新の町並みづくりにつながるかもしれない。
区画整理地区である西宮の森倶では、 仮換地が進み、 再建が一斉に始まると塀の高さが揃ってくる。 隣同士で相談して生垣を揃えたりしているところもある。 似たようなプレファブ住宅が並んでも、 町並みが揃っていると感じないし、 逆に気持ちが悪いくらいなのに、 塀の素材感や生垣や塀の高さが揃っていると、 町並みになっているように感じる。 他地区でも、 表通りより小さな路地のほうで、 外溝の協調化が発見できている。
どこでも敷地道路際が駐車スペース化しているが、 時間とともに工夫が見られる。 ブロックや木を敷いたり、 植裁をしたり、 新しい敷き際デザインがでてきている。 敷き際がオープンになることは、 また隣地との関係も変わるのかもしれない。 特に敷地の狭い長田のようなところでは、 隣棟間のすき間が連続した通り抜け空間ができたりしている。
このように敷き際や道の使い方・作り方には、 生活が表現され始めているが、 住宅デザインではなかなかこれといった工夫や町並みにつながる兆しを発見できていない。
景観を育てるために
復興まちづくりのなかで、 もう一度阪神間の風景を育てていくために、 芦屋や西宮では、 市が町並み緑化のための小さな工夫を提案するパンフレットをつくったり、 生垣助成の拡充や復興基金を利用した制度をつくったりしている。 これから全国の都市で市街地更新が進む。 市街地更新の先進地である被災地の実態を読み込むことから、 住宅の作り方や環境デザインを考える手がかりを提示したいと考えている。
神戸東部白地まちづくり支援ネットワーク 第28回連絡会記録
〜民営コレクティブハウスのいろいろ〜
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5月7日(金)、 神戸東部白地まちづくり支援ネットワークの28回目の連絡会が行われました。 今回のテーマは、 「民営コレクティブハウスのいろいろ」で、 次の3人の方々から報告がありました。
- 野崎瑠美さん(遊空間工房)/「魚崎北町コレクティブハウス」のすまい方等
- 竹山清明さん(京都府立大学)/
「きらくえん倶楽部」のすまい方等
- 石東直子さん(石東・都市環境研究室)/「サン・セゾン(東京北区)」の住まい方等
野崎さんからは、 神戸市東灘区魚崎地区の300m2弱の敷地で、 コレクティブハウスとグループハウスの建設を地元で活動しているNPOと協働しながら進めている内容の報告がありました。 竹山さんからは、 コーポラティブ型生活支援グループハウスの建設計画の内容についての報告がありました。 石東さんからは、 東京の民間コレクティブハウスの見学のスライドを交えた報告がありました。
次回は8月開催予定。
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連絡会風景
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●神戸東部白地まちづくり支援ネットワーク
第4回まちづくりフォーラム
震災の翌年から年1回行われてきた当ネットワークのフォーラムが以下のように行われます。
- 日時:7月11日(日)13:00〜17:00
- 場所:岡本好文園コミュニティホール
- テーマ:「東部文化核としてのコミュニティ施設の運営」
- 内容:
<第1部>「まちづくりと民間コミュニティ施設の紹介」:岡本のまちづくりと好文館コミュニティホール、 神戸東部地域の文化的コミュニティ施設の実態報告
<第2部>「民間コミュニティ施設の文化的運営について」
◇リレートーク:沢の鶴史料館/西村隆治、 世羅美術館/世羅臣繪、 和田ホール/和田憲昌
◇コメンテーター:角野幸博(武庫川女子大)、 庵原豊治(イハラ楽器)
●阪神白地まちづくり支援ネットワーク/第8回連絡会
- 日時:6月4日(金)18:00〜
- 場所:神戸市勤労会館403号
- 内容:テーマ「密集市街地住環境整 備事業の展開」
芦屋若宮町/鷲尾健(芦屋市開発事業課)、 淡路一宮町郡家/石原清行(じゅう総合計画研究所)、 尼崎築地+川東/太田尊靖(都市・計画・設計研究所)
●南芦屋浜団地・だんだん畑
−さつまいも苗植え−
- 日時:5月30日(日)9:30〜(雨天中止)
- 場所:南芦屋浜団地県営だんだん畑
- 問合せ:Community&Artproject Fe llowship(MACA)事務局/橋本・久保田
(tel/fax 06-6231-1748)
●ハンブルグのNPOのまちづくり
- 日時:5月28日(金)18:30〜21:00
- 場所:こうべまちづくり会館2階
(神戸市元町通4-12-14)
- 参加費:1,000円(学生・NPO半額)
- 講師:ウーリッヒ・トルーマン(建築家)
グラント・レーマー(都市計画家)
- 問合せ:神戸復興塾
(TEL.078-326-7888 FAX.326-7890)
●第6回ふれあい住宅居住者交流会
- 日時:6月7日(月)14:00〜16:00
- 場所:宝塚福井住宅
- 内容:居住者同士の情報交流会
- 主催:コレクティブハウジング事業 推進応援団
- 問合せ:コー・プラン/天川・吉川
(TEL.078-842-2311 FAX.842-2203)
●第3回被災実態学生発表会
- 日時:6月12日(土)13:30〜17:00
- 場所:神戸芸術工科大学
- 参加費:500円
- 問合せ:神戸芸工大・齋木研究室
(tel.078-796-2624)
学生による震災関連の研究テーマは様々 な大学で取り組まれています。 こうした研究の成果を持ちより、 大学や分野の枠を越えた互いの交流をはかるために開催します。 ふるってご参加ください。
(神戸大学 大西)
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(C) by 阪神大震災復興市民まちづくり支援ネットワーク