きんもくせい50+2号
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東京が阪神・淡路大震災から
学ばせてもらったもの

−学び続けることが支援することになりますか−

東京都立大学大学院都市科学研究科教授

中林一樹

改行マークあれから5年目になる。 当初から復興には10年かかるのではないかと言われてきたのだから、 3年で8割復興は、 決して遅いものではない。 しかし、 これからが正念場であることは間違いなかろう。 こうした復興まちづくりの進展に対して、 東京からどのような支援ができるのか。 最近、 私は、 「東京が阪神・淡路大震災の復興街づくりから学び続けることが、 復興まちづくりに取り組んでおられる専門家・行政・市民の皆さんへの支援になるのではないか」と身勝手に考えることにした。

改行マーク私は、 東京都での取り組みを中心に、 防災街づくり・復興街づくり・震災対応対策の見直しなどに関わってきた。 その意味では、 阪神・淡路大震災で学ばせていただいたことを東京を通して考えてきたと言ってもいいかもしれない。 阪神・淡路大震災以降の動きを見ると、 東京都では、 2度の「地域防災計画」の見直しによる震災対策の改訂に加えて、 1997年3月に従来の防災生活圏整備構想を拡張した「防災都市づくり推進計画」及び「木造住宅密集地域整備プログラム」の策定、 同5月に「都市復興マニュアル」策定、 1998年3月「生活復興マニュアル」を策定してきた。 さらに、 こうした震災対策の総合実施計画という性格を持つ東京都震災予防条例に基づく「震災予防計画」も2度見直された。

改行マーク切迫しつつある直下の地震に対して、 28,000haの木造住宅密集地域での防災街づくりを6,000haの重点整備地域を優先して20年間で推進しようという計画をたて、 モデル的に1,880ha11箇所の重点地区を指定した。 さらに、 防災都市づくりとしては延焼火災を阻止するための延焼遮断帯も優先順位を与えつつ、 防災骨格軸150km、 主要延焼遮断帯210kmの整備を急ごうとしている。 重点地区の防災街づくりは、 修復型街づくりを基調とするものである。 しかし、 一方で地震はいつ襲ってくるかもしれない。 区部直下の地震に関する被害想定(1998年公表)によると、 東京の直下の地震は、 兵庫県南部地震とは異なり、 深さ20〜30kmにほぼ水平に震源断層を持つものであり、 揺れによる全半壊143,000棟に対して火災による被害が38万棟、 焼失面積9,580haである。 この被害から東京をどのように復興させるかは、 防災街づくりが遅々とした進展の中で、 最も大きな課題のひとつとして受け止められた。 都市復興マニュアルの策定は、 こうした背景から進められたのである。 この広大な焼失地を念頭に、 阪神・淡路大震災からの復興の時間経過の中で、 東京の都市復興を進められないかという考え方であり、 事前の防災街づくりとの連続性の中に復興街づくりを位置付けようというものでもあった。 そのアイデアのひとつが、 まちに住まい続けながら復興街づくりを考えていくための仮設市街地づくりであった。

改行マーク復興マニュアルが有意義なものであるか否かは、 マニュアルを使ったシミュレーションによる点検が必要だとの考えから、 昨年9月1日(総合訓練)の3日後の4日に復興本部を設立し、 防災街づくり重点地区を有する7区の参加をえて東京都で「都市復興基本計画策定模擬訓練」を実施した。 その訓練を通して、 様々な課題が明らかになってきたが、 そのうちの一つが、 「修復型街づくりでの目標像が、 復興まちづくりの目標像となりうるのか」という課題であった。 その回答は、 これからも阪神・淡路大震災の復興街づくりを学び続ける中から見つけだしていきたいと思う。


復興まちづくりの実践報告(その1)
ルールづくりの白星・黒星

(株)ジーユー計画研究所

後藤祐介

はしがき

改行マーク「きんもくせい」が月刊「報告きんもくせい」として復刊されることとなった。 阪神大震災復興市民まちづくり支援ネットワークのメンバーとしての私も報告に参加しなければならないと思っている。

改行マークこれは、 阪神・淡路大震災が自分達の職域に起こった天変地異であり、 この復興まちづくりに全面的、 長期的構えで取組んでいる私にとって、 これまでしてきたこと、 今していること、 これからやろうとしていること等を整理する良い機会である。

改行マークしかし、 毎月報告するのは荷が重いので、 3ヶ月に1回、 年に4回、 2年間に合計8回を内容を整理しつつ、 続けてみることとした。

改行マーク整理方針としては、 いろいろな地区において行ってきたまちづくり協議会の支援業務や共同建替えのコーディネーター業務等について地区単位に実践してきたことを整理する意味で、 業務内容別にとらえることとし、 成功(完成)例に隠された失敗(未完成・廃案等)例も報告していこうと思っている。

改行マークこれは、 どのように書けるか今は解らないが、 「きんもくせい」の読者のためにも、 自分自身のためにも成功例だけを報告するよりも有意義なことになるかもしれない。 少なくとも、 月刊「報告きんもくせい」編集長の小林郁雄氏の思いに沿うようなものにしたい。

改行マーク復興まちづくりにあたって、 私が取組んできた内容としては2つあり、 一つはまちづくり協議会の支援業務であり、 ルールづくり、 道づくり、 公園・緑地づくり、 まち並み環境づくり等である。

改行マークもう一つは、 建築物の再建等のコーディネーター業務であり、 市場の共同建替え、 住宅の共同建替え、 密集市街地の住環境整備、 賃貸収益物件事業等である。

改行マークそこで、 第1回の今回は、 「ルールづくりの白星と黒星」と題して、 各地の復興まちづくり協議会において取組んできたいろいろなルールづくりの成功例と失敗例を報告する。

私が取組んできたルールづくり

改行マーク私が復興まちづくり協議会の支援を通じて取組んできたルールづくりは、 表1のとおりであり、 現在支援している9地区のまちづくり協議会のうち8地区で何らかのルールづくりに取組んできた。

表1 復興まちづくりにおけるルールづくりの取組み

(私が支援している)
まちづくり協議会の名称
ルールの種類策定段階
深江地区まちづくり協議会まちづくり協定H7.11 締結
新在家まちづくり委員会まちづくり協定H8.6 締結
美しい街岡本協議会まちづくり協定
地区計画
景観条例
S63.6 締結
H1.3 計画決定
H2.10 地区指定
安井まちづくり協議会地区計画H10.3 計画決定
北口・高木まちづくり協議会地区計画
(まちづくり憲章)
H10.10計画決定
(検討中)
若江・神園町地区まちづくり協議会地区計画市へ要望中
東芦屋まちづくり協議会まちづくり憲章意向調査中
若宮地区まちづくり協議会
JR芦屋駅南地区まちづくり研究会地区計画勉強会中

(平成11年5月現在)

改行マーク表1のうち、 神戸市の美しい街岡本協議会だけは震災以前からの取組み地区である。 その他の神戸市深江地区、 新在家南地区、 西宮市の安井地区、 北口・高木地区は震災後におけるルールの締結であり、 計画決定である。

改行マークこのようなルールづくりでは、 震災復興のまちづくりにおいて、 特に事業地区でない、 いわゆる白地地域においては、 単なる復旧でなく、 少しでも住み心地の良いまちにするため、 また、 地区固有の魅力的なまち並みに復興するための「まちづくりの作法」としてのルールづくりに取組んできた。

改行マーク本稿では、 表1のうち、 震災復興のまちづくりとして比較的有意義なルールづくりが出来た事例として安井地区の「地区計画」と新在家南地区の「まちづくり協定」を、 一方、 ルールづくりがうまく運ばなかった事例として、 西宮市の北口・高木地区における「地区計画」の取組み事例を報告する


比較的有意義なルールづくりができた事例

 

−1− 安井地区まちづくり協議会における「地区計画」

(1)地区計画策定の経緯

改行マーク安井地区は、 西宮市南部市街地の中心部に位置する交通至便な住宅中心の市街地であり、 震災直後から比較的大きな敷地に大規模マンションの建設が続発した。 地元住民の良好な住環境保全の願望から、 自治会として中高層マンション建設反対運動を展開したが、 現行法制度には勝てず、 各自治会長は疲労し困惑した。

改行マークそこで、 12の単位自治会が連合して、 中高層住宅の高さ制限を主眼とした「地区計画」に取組むため、 平成7年11月安井まちづくり協議会が結成された。

 

表1 安井まちづくり協議会の概要

・地区面積:約67.6ha 世帯数:約4,200世帯
・基本目標:安全、快適でうるおいのあるまち
・経過概要:H7.11:まちづくり協議会設立
  H8.10:まちづくり構想(案)策定
  H9.7:「地区計画」案の説明会
  H9.10:「地区計画」案市へ要望
  H10.3:安井地区「地区計画」の計画決定
 
改行マークその後、 平成8年10月にまちづくり構想(案)の作成、 平成9年に「地区計画」(案)を作成し、 平成9年9月の臨時総会で「地区計画」(案)を市当局へ要望することを決議し、 平成10年3月に「地区計画」の都市計画決定をみた。 この間、 地域住民の意向を反映するため、 3回のアンケート調査を行った。

(2)安井地区「地区計画」の評価

○阪神・淡路大震災復興まちづくりの中で、 いわゆる白地地域において、 住民の自主的なまちづくり意欲から立ち上げたまちづくり協議会であり、 約4,200世帯という大世帯にもかかわらず、 環境整序型「地区計画」を学習し、 「合意集約」を図った。

○地区計画で定めた内容項としては、 表2に示す4項目であるが、 特に、 地区の細かい区分を前提に、 建築物の高さ制限について12m、 15m、 18m、 20m、 30mといったキメ細かい高さ制限の合意集約が得られた。

○これは、 「文教住宅都市西宮市」ならではの住民と行政の協働作業の成果といえる。

 

表2 安井地区「地区計画」の整備計画

 西部市街地 中部市街地東部市街地
 沿道内 層沿道A沿道B内層沿道内層
建築物の用途制限 第一種中高層に準ずる第一種中高層に準じ店舗面積は150m以下マージャン屋、パチンコ店、場外車券売場、その他これに類するもの
敷地面積の最低限度90m以上
建築物高さ最高限度18m12m30m20m20m20m15m
(但し、現に建っている建てものはその高さまで)
垣もしくは柵の構造の制限生垣等によ緑化生垣等による緑化生垣等による緑花
 

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図1 安井地区地区計画図
 

−2− 新在家まちづくり委員会における「まちづくり協定」

(1)まちづくり協定策定の経緯

改行マーク新在家まちづくり委員会は、 神戸市まちづくり条例に基づき、 震災以前の平成3年に設立し、 平成5年5月にはまちづくり協議会の認定を受けていた。

 

表3 新在家まちづくり委員会の概要

・地区面積:約27ha
・世帯数:約1,000世帯
・基本目標:清潔で住み良く働きよい街への再生
・経過概要:H3.7:新在家まちづくり委員会設立
 H5.5:まちづくり協議会認定
 H5.7:まちづくり提案
 H8.6:「まちづくり協定」を締結
 H10.4:まち並み環境整備事業を適用
 
改行マーク阪神・淡路大震災では、 死者49人、 家屋の全・半壊約8割という甚大な被害を受けたが、 まちづくり協議会を中心として、 いち早く復旧、 復興に取組んだ。

改行マーク一方、 当地区は、 灘五郷の一つ「西郷」の酒造りのまちであるとともに、 旧西国浜街道沿いの古くからの住商工複合の密集市街地であったため、 復興まちづくりにあたっては、 まず、 小規模宅地における共同建替え等を促進するとともに、 準工業地域でもあることから、 個々の被災地における再建にあたって、 パチンコ店やゲームセンター、 ドライブインホテル、 カラオケボックス等の立地を防ぐためのルールづくりが必要とされた。 そこで、 神戸市まちづくり条例に基づく「認定」をうけていることを生かして、 神戸市と「まちづくり協定」を平成8年1月に締結した。


(2)「新在家まちづくり協定」の評価

○当まちづくり協議会は、 震災前からスタートしており、 この平常時からの取組みが阪神・淡路大震災からの復旧・復興に当っていろいろと役に立ち、 特に、 復興の「まちづくり作法」としてのまちづくり協定の早期締結に結びついた。

○主な協定項目は以下のとおりであるが、 当地区が灘五郷の一つ「西郷」の酒造りのまちであり、 旧西国浜街道沿いの歴史のあるまちであることのこだわりから「意匠配慮道路」を設定し、 まち並み誘導を図っている点が特筆される。

 

 
○まちづくり協定締結後は、 協定委員会を設置し、 審議案件の審議を行っており、 地区内の個々の敷地の再建状況の把握、 適正なまち並みの誘導に効果を上げている。

○地域住民と行政の協働作業としてのまちづくり協定内容を実現化するための支援策として、 平成10年度からまち並み環境整備事業が始動している
 

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新在家地区町並み誘導イメージ
 
 
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新在家南地区まちづくり構想図
 

うまく運ばなかったルールづくりの事例

 

−1− 北口・高木まちづくり協議会における「地区計画」

(1)地区計画策定の経緯

改行マーク北口・高木まちづくり協議会は、 西宮市による北口北東震災復興土地区画整理事業に対応するために発足した。 この協議会は、 当初から区画整理事業の反対派と推進派に2分され、 協議会立ち上げにも困難を極めた。 設立後も事業を進めながら計画案の作成に取組むという難しい進行を辿ったが、 時間の経過とともに区画整理事業が一定に進んだ段階で、 ルールづくりとしての「地区計画」(案)の策定に取組み、 平成10年10月一応の「地区計画」の計画決定をみた。

 

表4 北口・高木地区まちづくり協議会の概要

・地区面積:約31.2ha  世帯数:約1,700世帯
・基本目標:安全、快適でうるおいとコミュニティのある田園住宅都市
・経過概要:
 H7.3:区画整理事業地区の計画決定
 H7.11:まちづくり協議会設立
 H8.6:北口北東地区まちづくり提案
 H8.8:第2次事業計画決定
 H9.4:「地区計画」案のアンケート調査
 H10.3:「地区計画」案を市へ要望
 H10.10:「地区計画」の都市計画決定
 

(2)北口・高木地区「地区計画」の評価

●当地区「地区計画」の最重点課題は建築物の高さ制限にあった。 即ち、 当地区の基本目標は、 郊外の住宅市街地として「安全・快適でうるおいとコミュニティのある田園住宅都市」としており、 これを実現するため、 中高層住宅と低層戸建住宅の乱雑な配列による住環境の劣化を避けるねらいがあった。

改行マーク一方、 当地区の大部分は第一種中高層住居専用地域(容積率 200%)である。 高度地区の高さの最高限度は20mであり、 面積500m以上の敷地においては、 おおむね6〜7階建ての建築が可能である(※西宮市環境保全条例において、 敷地面積が500m未満の場合は、 建物の高さは10m以下に制限)。 そこで、 当初の「地区計画」(案)では、 図4のAゾーンは15m以下、 B.C.Dゾーンは18m以下とした。

 

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図4 「地区計画」原案 図5 「地区計画」決定図
 
改行マークしかし、 この案については、 住民の一部に15mや18mでは高さ制限になっていないとして反対があり、 また、 一部の地主からは、 高さ15mの制限は厳しすぎるとして反対があり、 この原案は否決され、 結果として表5に示すような内容で計画決定された
 

表5 「地区計画」における「地区整備計画」

地区の細区分第二種中高層第一種中高層準工業
Aゾーン
〈中津浜線沿い〉
Bゾーン
〈内層街区〉
Cゾーン
〈車庫北線以南〉
建築物等に関する事項建築物の用途制限風俗営業、風俗関連営業の制限
敷地面積の最低限度90mu以下を制限
(※)
90m以下を制限
(※)
90m以下を制限(※)
かき、さくの構造制限 道路沿いは、生垣、植栽により緑化に努める

(※)但し、既存不適格は除外

 

縁は異なもの なだだもの

六甲技研

慈 憲一・馨子

改行マークなぜ、 まちづくりシロートの私達が若手プランナーネットワーク(以下若手ネット)に入ってしまったか。 それは我々が発行していたフリーペーパー『naddism』がきっかけでした。

改行マーク一部のマニア以外には全く知られていないnaddism。 その発行の経緯を簡単に説明しますと、 私達は10年以上神戸を捨て、 東京で楽しく暮らしていました。 そこに地震。 会社をやめ、 浦島太郎状態で神戸へ帰ってきたのでした。

改行マーク変わり果て、 疲れ果てた神戸。 記憶を元に町を歩いて写真に撮り、 それを楽しいペーパーにしてみんなに見てもらおう。 そんな思いでフリーペーパーnaddismを発行することになりました。 その時「面白い」と受け入れて頂いたのが、 若手ネットの方々だったのです。

改行マークしかしクロートには概ね好評だったnaddismも、 一般の方々の評価は「面白いけど、 マニアックだなあ」というものでした。 同世代の若い人達程そういう傾向があったのです。 えーっ!!!こんなの知ってるでしょ?どこがマニアックなんだ?人々にあまり意識されないまま復興していく灘の町。 町を観察するメディアが必要だと感じました。

改行マークその後、 『なだだな』の企画編集に携わらさせていただきましたが、 やはりどうも一方通行感が拭えませんでした。 「印刷物の限界か…」などと思い始めた頃、 知人から「今は絶対メールマガジンが面白い」との情報が。 メールマガジンとは、 電子メールを使った電子出版システムです。 町写真構成主体のnaddismに対して町文章中心の町メディア。 金も殆どかからない。 反応も多い。 これはいけるということで昨年暮にメールマガジン『naddist』を創刊しました。 間もなく読者の方から反応がありました。

改行マークうれしいことにその多くは「町の話、 面白い。 」というものでした。 そして読者の人達が自分の町の話を語り始めたのです。 年齢層は20〜30代が中心です。

改行マークシロート的私見ですが、 このような町メディア活動をやっていると、 「まちづくり」という言葉がどうもしっくりこない。 町をつくるなんて町に失礼だと思ってしまうのです。 人々やその場所の様々な「縁」が空間になった結果が町であってほしい。 いい町とはいい縁がある町だと思います。 もちろん地震も縁です。 最初は、 「町を観察すること」に重点がおかれていた町メディア活動も、 メールマガジンnaddist以降は「町を楽しく共有すること=楽しい縁づくり」に変わってきたように思います。 naddismは、 若手ネットの方々との縁を作ってくれました。 今後は「まちづくり」ならぬ「まち編集」的な活動を通じて「普通の町と普通の人々」との楽しい縁結びができればと思っています。

改行マークさて、 若手ネットでの活動なのですが、 勉強会ももちろん勉強になるのですが、 シロートの私には難しい話も多いので、 もっぱら屋外町歩き系活動を楽しみにしています。 その一つである、 神戸市東部震災後検証企画である「M-net」は、 地元である灘区と永遠の宿敵東灘区を歩くということもあり、 ほぼ毎回参加しています。

改行マーク「M-net」もそろそろ落し前をつける時期に入ってきました。 まちづくりクロートの方々に見て頂くのはもちろんですが、 私としては一般の方々にも見てもらえるようなものにできないかなと思っています。 むしろ震災後を意識していないのは一般の方々のような気がするので。 また、 それに関連していうと、 今回の町歩き企画では実現できませんでしたが、 一般の方々と町を歩くような企画や、 そこまでいかないとしても、 我々の町歩きによって町の人達が町をみる「縁」をつくるような仕掛けもあっていいと思います。

改行マーク調査中、 町の人とこんなやりとりがありました。

改行マーク「何か、 面白いもんでもあるの?」

改行マーク「いや…その、 このベランダ面白いなあ思いまして」

改行マーク「こんなん面白いの?私ら毎日見とうけどなあ」

改行マーク「すいません…(なぜかあやまる)」

 

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リンボー洞門(naddism創刊号より)
 

景空調査2:新しい町並みの兆しを発見する

大阪大学

小浦久子

現場から発見する

改行マーク被災地の大部分の市街地再建は、 ひとつひとつの敷地単位での住宅再建の積み重ねである。 確かに短期間に大量の住宅需要が発生したため、 それに対応できたプレファブ住宅が増えた。 しかしそれも含めて、 住宅のつくり手の生活ニーズや近所との関わり方、 住宅へのこだわりが並んでいるのが、 現在の町並みである。

 

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2項道路の花壇(芦屋市) 路地の堀野協調化(神戸市兵庫区) 駐車スペースの緑化(神戸市灘区)
 
改行マーク通常の景観調査は、 なぜそのような町並みができるのか、 どのような景観が美しいのか、 望ましいのかを、 客観的物理的指標で実証的に説明しようとする。 しかしそこからは、 時間の経過とともに増えてきた植木鉢や生活の場として使われている道や庭先の空間のつくられ方などは、 ぬけおちていく。

改行マーク今回の調査は、 地域性がなくなっていくことを確認することと新しい町並みの兆しを発見することであるが、 被災地の景観の全体像を説明するのではなく、 できてきた住宅地を歩いて、 実感にもとづいて考えることにした。 特に後者については、 目に見える現象の中から、 生活環境をつくっている新たな町並み要素を、 実際の生活の場に発見していきたい。

これまでに見つけた「兆し」

改行マークどこの地区でも、 2項道路に面した再建がかなり見られる。 沿道全てが建て替わってしまったところは、 立派に4m道路ができるが、 ふつうは部分的に建て替えが行われるため、 再建された敷地の前だけ、 セットバックした空間が生まれる。 そこが花壇になったり、 昔の石垣の基壇が残ったりしている。 これを道路占用だといって否定するより、 もともと車の入らなかった道なのだから、 花壇にしているほうが気持ちがいいではないか。 セットバックの意味を、 安全のための空間の確保と考えれば、 それぞれの路地や道に応じて花や木を植えるような使い方も、 2項道路型更新の町並みづくりにつながるかもしれない。

改行マーク区画整理地区である西宮の森倶では、 仮換地が進み、 再建が一斉に始まると塀の高さが揃ってくる。 隣同士で相談して生垣を揃えたりしているところもある。 似たようなプレファブ住宅が並んでも、 町並みが揃っていると感じないし、 逆に気持ちが悪いくらいなのに、 塀の素材感や生垣や塀の高さが揃っていると、 町並みになっているように感じる。 他地区でも、 表通りより小さな路地のほうで、 外溝の協調化が発見できている。

改行マークどこでも敷地道路際が駐車スペース化しているが、 時間とともに工夫が見られる。 ブロックや木を敷いたり、 植裁をしたり、 新しい敷き際デザインがでてきている。 敷き際がオープンになることは、 また隣地との関係も変わるのかもしれない。 特に敷地の狭い長田のようなところでは、 隣棟間のすき間が連続した通り抜け空間ができたりしている。

改行マークこのように敷き際や道の使い方・作り方には、 生活が表現され始めているが、 住宅デザインではなかなかこれといった工夫や町並みにつながる兆しを発見できていない。

景観を育てるために

改行マーク復興まちづくりのなかで、 もう一度阪神間の風景を育てていくために、 芦屋や西宮では、 市が町並み緑化のための小さな工夫を提案するパンフレットをつくったり、 生垣助成の拡充や復興基金を利用した制度をつくったりしている。 これから全国の都市で市街地更新が進む。 市街地更新の先進地である被災地の実態を読み込むことから、 住宅の作り方や環境デザインを考える手がかりを提示したいと考えている。


神戸東部白地まちづくり支援ネットワーク
第28回連絡会記録

〜民営コレクティブハウスのいろいろ〜

 
 5月7日(金)、 神戸東部白地まちづくり支援ネットワークの28回目の連絡会が行われました。 今回のテーマは、 「民営コレクティブハウスのいろいろ」で、 次の3人の方々から報告がありました。

改行マーク野崎さんからは、 神戸市東灘区魚崎地区の300m弱の敷地で、 コレクティブハウスとグループハウスの建設を地元で活動しているNPOと協働しながら進めている内容の報告がありました。 竹山さんからは、 コーポラティブ型生活支援グループハウスの建設計画の内容についての報告がありました。 石東さんからは、 東京の民間コレクティブハウスの見学のスライドを交えた報告がありました。

改行マーク次回は8月開催予定。

 

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連絡会風景
 

情報コーナー

 

●神戸東部白地まちづくり支援ネットワーク

改行マーク第4回まちづくりフォーラム
 震災の翌年から年1回行われてきた当ネットワークのフォーラムが以下のように行われます。

●阪神白地まちづくり支援ネットワーク/第8回連絡会

●南芦屋浜団地・だんだん畑

−さつまいも苗植え−

●ハンブルグのNPOのまちづくり

●第6回ふれあい住宅居住者交流会

●第3回被災実態学生発表会

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このページへのご意見は前田裕資
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